2016年09月28日 (水) 22:14:00

来週月曜日に公表予定の9月調査日銀短観予想やいかに?

来週月曜日10月3日の発表を前に、シンクタンクや金融機関などから9月調査の日銀短観予想が出そろっています。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、ネット上でオープンに公開されているリポートに限って、大企業製造業と非製造業の業況判断DIと大企業の設備投資計画を取りまとめると下の表の通りです。設備投資計画は今年度2016年度です。ヘッドラインは私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しましたが、今回の日銀短観予想については、今年度2016年度の設備投資計画に着目しています。ただし、三菱総研だけは設備投資計画の予想を出していませんので、適当に取っています。それ以外は一部にとても長くなってしまいました。いつもの通り、より詳細な情報にご興味ある向きは左側の機関名にリンクを張ってあります。リンクが切れていなければ、html の富士通総研以外は、pdf 形式のリポートが別タブで開くか、ダウンロード出来ると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちに Acrobat Reader がインストールしてあってリポートが読めるかもしれません。

機関名大企業製造業
大企業非製造業
<設備投資計画>
ヘッドライン
6月調査 (最近)+6
+19
<+6.2%>
n.a.
日本総研+7
+19
<+6.4%>
先行き、設備投資の腰折れは回避される見通し。円高や海外情勢不安が重石となるものの、維持・更新需要に加え、人手不足下で、省力化・合理化などに向けた投資も期待可能。低金利や比較的高水準を維持している企業収益を背景に、力強さには欠けるものの、例年の足取りに沿った上方修正となる見通し。
大和総研+6
+17
<+6.8%>
2016年度の設備投資計画(全規模全産業)は前年比+2.5%と、前回(同+0.4%)から上方修正されると予想する。9月日銀短観の設備投資計画には、中小企業を中心に上方修正されるという「統計上のクセ」がある。今回は、昨年末以降の円高進行が輸出関連製造業にマイナスの影響を及ぼす一方、非製造業の企業業績の底堅さや人手不足感、さらには英国のEU離脱問題に伴う混乱が落ち着きを取り戻していることなどから、例年の修正パターン並みの上方修正になると想定した。
みずほ総研+8
+20
<+7.3%>
2016年度の設備投資計画(全規模・全産業)は、前年比+2.3%と、6月調査(同+0.4%)からの上方修正を予想する。ただし、9月計画としては、昨年よりも低い伸びとなる公算だ。
ニッセイ基礎研+7
+17
<+6.4%>
16年度の設備投資計画(全規模全産業)は、前年度比1.9%増と前回調査時点の0.4%増から上方修正されると予想。例年、6月調査から9月調査にかけては、中小企業を中心に計画が固まってくることに伴って上方修正されるクセが強く、今回も上方修正されるだろう。ただし、円高によって輸出環境が厳しさを増し、企業収益も悪化しているため、一部で様子見や先送り姿勢が広がりつつあると考えられ、例年と比べて上方修正の度合いが抑制的になると見ている。
第一生命経済研+7
+16
<+6.8%>
毎回、9月の大企業・設備投資計画は、ほとんど修正されない。大企業・製造業は、2016年度の前半比が12.5%と比較的高めの計画となっている。また、中小企業は、毎回の調査ごとにマイナス幅が縮小される流れを踏襲するとみられる。実体面では、設備投資は好調とは言えないのだが、短観をはじめとする企業アンケートでは割と高めの伸びになっている。おそらく、企業の年度の収益計画が固まっていくと、それに鞘寄せされる格好で、下方修正されることになるだろう。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券+6
+18
<+6.9%>
16年度の大企業の設備投資計画は、小幅の上方修正が見込まれる。借入金利の低下が続くなど投資環境は引き続き良好だが、企業経営者は依然として設備投資に慎重な姿勢を崩していない。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング+5
+19
<+6.9%>
2016年度の設備投資計画は、大企業製造業は前年比+13.5%、非製造業は同+3.4%と、例年どおり上方修正されたと見込まれる。将来に向けて国内需要の急速な拡大は見込めず、新興国など海外へ投資先を移す流れに大きな変化はないが、引き続き設備の維持・更新への投資が行われる計画であるほか、生産(販売)能力の拡大や効率化を進めるための前向きな投資も行われると予想される。
三菱総研+7
+19
<n.a.>
先行きの業況判断DI(大企業)は、製造業は+8%ポイント、非製造業は+20%ポイントと、それぞれ小幅の改善を予測する。製造業では、資源価格の動向、円高など懸念材料はあるものの、海外経済の緩やかな持ち直しを背景に、業況の改善は続くとみる。非製造業では、雇用・所得環境の改善を背景とする消費の緩やかな持ち直しや、大型経済対策への期待が業況の下支えとなろう。
富士通総研+7
+18
<+6.7%>
2016年度の設備投資計画(全規模・全産業)は前年度比2.1%と、6月調査から上方修正されると見込まれる。円高で企業業績は悪化し、世界経済の先行き不透明感も強いが、維持更新や省力化投資に対する企業の意欲は依然強く、上方修正されると見込まれる。企業の省力化投資への注力は、最近の労働需給の逼迫が、さらに拍車をかけている。先行きは、業績悪化の一巡と生産底入れが、設備投資のプラス要因になると考えられる。大企業は製造業、非製造業とも、昨年度の伸びは下回るものの、6月調査に続き、過去の平均を上回る伸びを保つと予想される。中小企業も上方修正されるが、製造業では先行き不透明感の強さが勝り、6月調査に続き、過去の平均の伸びを下回ると見込まれる。


ということで、上のテーブルから明らかな通り、景況感は製造業・非製造業とも6月調査から大きな変化はない印象です。同時に、設備投資計画についても、9月調査の日銀短観は中小企業を中心に計画が固まってくることに伴って上方修正されるクセが強く、今回も従来と同様に上方修正されるだろうとの予想が中心となっています。上のテーブルでは取り上げませんでしたが、かなり無風状態の日銀短観予想の中で、ほぼ完全雇用の状態にある現在の我が国経済の下で、雇用判断DIなどについても注目が集まるんではないかと私は予想していたりします。
最後に、下のグラフはニッセイ基礎研のリポートから、設備投資計画のグラフを引用しています。ただ、タイトルに明記されている通り、全規模・全産業ですから、上のテーブルで取り上げている大企業全産業とはベースが異なるので注意が必要です。

photo


諸般に抒情により、国際通貨基金(IMF)の「世界経済見通し」World Economic Outlook の分析編 Analytical Chapters は明日に取り上げたいと思います。
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2016年09月27日 (火) 21:30:00

消化試合でもスクイズ試みる超変革野球でヤクルトに勝って5連勝4位浮上!

  HE
ヤクルト001000110 361
阪  神10000012x 4123


毎度おなじみの完全な消化試合ながら、ヤクルトに勝って5連勝4位浮上です。消化試合でもスクイズを試みる超変革野球で、何とスクイズ失敗後に梅野捕手の勝ち越しタイムリーが飛び出しました。ソフトバンクもスクイズで決勝点だそうですから、順位は違えど同じ趣向なのかもしれません。

来シーズンは、
がんばれタイガース!
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2016年09月27日 (火) 20:21:00

OECD「中間経済見通し」やいかに?

国際機関などの海外情報が遅れ気味で、昨夜のピュー・リサーチに続いて、今夜は国際協力開発機構(OECD)から先週水曜日9月21日にOECD「中間経済見通し」Interim Economic Outlook が公表されています。図表を引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。まず、OECDのサイトにアップされているリポートから最初の4パラを引用すると以下の通りです。

Global growth warning: Weak trade, financial distortions
Global GDP growth is projected to remain flat around 3% in 2016 with only a modest improvement projected in 2017. This forecast is largely unchanged since June 2016 with weaker conditions in advanced economies, including the effects of Brexit, offset by a gradual improvement in major emerging market commodity producers. Overall, the world economy remains in a low-growth trap with persistent growth disappointments weighing on growth expectations and feeding back into weak trade, investment, productivity and wages.
Continued weak trade growth, and the sharp slowdown in 2015 and 2016, underlines concerns about the robustness of global growth. While demand factors play a role, weak trade also reflects structural factors and a lack of progress - together with some backtracking - on the opening of global markets to trade in goods and services. Slowing trade growth will depress productivity growth in future years.
Long-term interest rates have fallen further in recent months, reaching exceptionally low levels in many countries, with more than 35% of OECD sovereign debt trading at negative yields. At the same time, equity valuations remain high and have continued to increase in some economies despite weak profit developments and reduced long-term growth expectations. Real estate prices are rising rapidly in many economies, while credit quality and credit spreads are declining in some markets.
Monetary policy has become overburdened and is creating distortions in financial markets. Effective monetary policy support requires more and collective fiscal policy, as well as implementing structural reforms to boost growth and inclusiveness. Monetary policy has created a window of low interest rates. Fiscal policy should take advantage of the increase in fiscal space to increase growth-enhancing spending. Structural reform momentum needs to be intensified, rather than continue to slow as in recent years. Trade policies are a key lever to boost growth and should be supported by measures that ensure the gains from globalisation are widely shared. A more balanced policy mix would put the global economy on a higher growth path and reduce financial risks.


リポートの最初にサマリー的にイタリック体で4パラだけ置かれているんですが、それでもかなり長くて包括的な記述ですので、これを読むだけで十分という気もします。要するに、下線を付した通り、需要サイドの問題ながら (While demand factors play a role)、世界貿易が振るわず将来の生産性向上を阻害する恐れがあり (Slowing trade growth will depress productivity growth in future years.)、金融政策に負荷がかかり過ぎて市場を歪めている (Monetary policy has become overburdened and is creating distortions in financial markets.) 可能性が指摘されています。ということで、後は、図表を引用しつつ、簡単に見ておきたいと思います。

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まず上のテーブルはOECDのリポートから経済見通しの総括表 OECD Interim Economic Outlook Forecasts を引用しています。今年2016年6月時点の見通しと比較して、成長率がやや下方修正されていますが、ほぼ変わりないという印象です。下方修正の大きな要因は英国のEU離脱、いわゆるBREXITであり、我が国だけでなく先進国全体に影響を及ぼしていると考えられます。日本の成長率は依然として低く、かつ、振れも小さくないが続き、円高及びアジア貿易の低迷が輸出に与える影響も原因となり、2016年は+0.6%、2017年は+0.7%の成長がそれぞれ予測されています。他方、OECD非加盟国ながら、中国、ロシア、ブラジルといった新興国は商品市況の持ち直しもあって、先進国のように成長率の下方修正はされていません。

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次に、上のグラフはOECDのリポートから Real time global value chain indicator を引用しています。世界貿易は量的に弱含んでいるとともに、貿易自由化に逆行する動きやグローバル・バリューチェーン(GVC)の弱体化が進んでいるとして、最後のGVCの指標を上のグラフで示しています。特に、GVCは中国と東アジアで弱まっていると指摘しています。

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最後に、上のグラフはOECDのリポートから A high share of government debt is trading at negative yields を引用しています。OECDはリポートで加盟各国の国債のうち35%がマイナス金利で取引されていると指摘していますが、特に、日本と欧州のいくつかの国では上のグラフに見る通り、70%を超える割合の国債がマイナス金利での取引となっています。金融市場の歪みのひとつと指摘されています。
最後の最後に、政策対応として、財政政策と構造政策抜きでは金融政策に負荷がかかり過ぎるとして、インフラ整備などの財政政策、また、グローバル化を強化する構造政策、技能向上やマッチング改善を促進する積極的労働市場政策などが重要と指摘されています。

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なお、本日、日銀から8月の企業向けサービス物価指数(SPPI)が公表されています。前年同月比上昇率で見て、ヘッドラインのSPPI上昇率は+0.2%、国際運輸を除くコアSPPIは+0.3%と、ギリギリでプラス圏を維持していますが、大きな変化は見られず膠着状態が続いている印象です。

なお、次々に国際機関の経済見通しが公表されますが、10月7-9日のIMF世銀総会を前に、本日9月27日には米国東部海岸時刻で9時に国際通貨基金(IMF)の「世界経済見通し」World Economic Outlook の分析編 Analytical Chapters が公表される予定となっています。国際貿易、ディスインフレと金融政策、中国経済の3章立てです。明日か明後日にでも日を改めて取り上げたいと思います。
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2016年09月26日 (月) 22:41:00

日中関係についてのピュー・リサーチの世論調査結果やいかに?

とても旧聞に属する話題かもしれませんが、私がちょくちょく参照している米国の世論調査機関であるピュー・リサーチ・センターから9月13日付けで Hostile Neighbors: China vs. Japan と題して日中二国間の相互の見方についての世論調査結果が明らかにされています。もちろん、pdfの全文リポートもアップされています。当然ながら、尖閣諸島の問題もあって、日中関係はここ10年でも決して改善を示していませんが、最悪期は脱したかという気もします。まず、ピュー・リサーチのサイトからリポートの最初の4パラを引用すると以下の通りです。

Hostile Neighbors: China vs. Japan
China and Japan - neighboring economic and military powers - view each other with disdain, harbor mostly negative stereotypes of one another, disagree on Japan's World War II legacy and worry about future confrontations.
The two East Asian nations have a centuries-old relationship, punctuated by major conflict and strife. Most recently, Beijing and Tokyo have been at loggerheads about sovereignty over a group of uninhabited islands in the East China Sea, called the Senkaku by the Japanese and the Diaoyu by the Chinese.
Today, only 11% of the Japanese express a favorable opinion of China, while 14% of the Chinese say they have a positive view of Japan. In both countries positive views of the other nation have decreased since 2006.
Sino-Japanese antipathy can also be seen in a regional context. Influenced by history, economic ties and current events, Asian publics' views of each other vary widely.


諸事情あって、今夜のエントリーの取りまとめが遅い時間帯になってしまいましたので、ピュー・リサーチのサイトからいくつかグラフを引用しつつ、かんたんに取り上げておきたいと思います。

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あず、上のグラフは最近10年の日中両国間で相互にどう相手国を見ているかの推移です。グラフのタイトルは、Japanese and Chinese hold negative views of each other となっています。見れば明らかですが、両国ともに相手国に対する見方は Unfavorable が80%を超え、逆に、Favorable が10%台となっています。まだまだながら、あえて好意的に解釈すれば、両国間で反目し合う最悪期は脱したかもしれません。

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次に、日中の相手国に対する見方です。グラフのタイトルは、Japanese views of Chinese turn more negative over past decade 及び Changes in Chinese views of Japanese と題されています。この10年で、ナショナリスティックという評価こそ両国で低下しましたが、近代的や勤勉といった肯定的な評価が低下した一方で、傲慢とか暴力的といった否定的な評価が増加しています。

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最後に、1930-40年代の我が国の軍事行動に対する謝罪が十分かどうかに関する世論調査結果で、Roughly a quarter of Japanese believe they have not apologized sufficiently for World War II 及び Chinese unchanged in belief that Japan has yet to sufficiently apologize for actions during World War II と題されています。日本人自身もまだ直近で4人に1人が不十分と回答していますが、過半数の日本人は十分と考えているようです。もっとも、中国人の中では80%近い割合の人々が謝罪は不十分と受け止めているようです。私は決して右派ではないんと自分自身を位置づけているんですが、どこまで謝罪すればいいんでしょうか?

先週金曜日の9月23日に明らかにされた言論NPOによる「第12回日中共同世論調査」の結果もかなり似たような傾向を示していると私は受け止めています。なお、明らかに外交関係に関する世論調査を取り上げた記事でありながら、かなり無理やりですが、経済評論のブログに分類しておきます。
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2016年09月25日 (日) 20:18:00

シルバー・ウィークを終えて9月25日の雑感、宮部みゆきの『模倣犯』と『楽園』のドラマ化など

お彼岸を含む先週のシルバー・ウィークを振り返ります。
まず、よく読書しました。プールにも通いました。要するに、いつもと同じ休日だった気がします。でも、これだけ雨が降ると困ったものでした。自転車での移動に支障を来します。

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特筆すべきイベントとして、宮部みゆき『模倣犯』がテレ東でドラマ化され、9月22日23日と二夜連続で放送されました。私は宮部作品では直木賞受賞の『理由』や『火車』などもさることながら、『模倣犯』が最高傑作だとみなしています。それから、2002年に森田芳光監督作品として「模倣犯」の映画がヒットしたのは情報として知っているんですが、何せ、我が家はその年は南の島のジャカルタでのんびりと過ごしていましたので、映画「模倣犯」は見ていません。主人公の前畑滋子は映画では木村佳乃が演じたのは知っています。今回は中谷美紀でした。何となくよく似たラインかもしれません。テレビの前にかじりつきで、どっぷりと浸かっていたわけではありませんが、やっぱり、最後のテレビ局内のシーンは迫力ありました。でも、あんなにお昼の時間帯だったのでしょうか?
また、この続きで『楽園』という宮部作品があって、同じ主人公を配して『模倣犯』の9年後という設定らしいですが、WOWOWでドラマ化されるそうです。前畑役は仲間由紀恵が演じます。2017年1月スタートで6回の放映と報じられています。ところが、私はさすがに『模倣犯』はよく覚えているんですが、『楽園』はすっかり忘れました。読んだことがあるのは確かです。もう一度読みたいと思っています。
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2016年09月24日 (土) 15:11:00

今週の読書も盛り沢山にペースダウンできず!

今週の読書は、月曜日にアップした話題の小説3冊を別にしても6冊でした。経済書と教養書と小説と新書です。新書はなぜか、日本会議についてでした。月曜日にアップした3冊の小説を含めると計9冊になります。シルバー・ウィークでお休みが多いとはいえ、少しこれからはペースダウンしたいと思います。

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まず、藤井聡『国民所得を80万円増やす経済政策』(晶文社) です。現在の安倍総理は民主党政権から政権交代した際に、いわゆる「3本の矢」で有名なアベノミクスを提唱しましたが、昨年9月に自民党の総裁に再選された際、「新3本の矢」として、その最初に名目GDP600兆円を打ち出しました。その名目GDP600兆円を労働分配率などを無視して、国民1人あたりの所得で引き直すと、本書のタイトルのように1人当たり80万円の増加、ということになります。そのための提案として、本書冒頭のはじめにのp.7で5項目上げられています。すなわち、消費増税の延期、所得ターゲット政策、デフレ脱却、デフレ脱却までの財政拡大、デフレ脱却後の中立的な財政運営、の5点です。そして、昨年の国際金融経済分析会合に招かれたスティグリッツ教授とクルーグマン教授の説を援用しています。ほぼ金融政策が無視されていて、実物経済における財政政策だけが重視されているのがやや不思議ですが、かなりイイ線行っていると私は思います。本書でも指摘されているように、自国通貨建ての国債発行はかなり膨らんでも、ソブリン・リスクとしては破綻の懸念は極めて低いと私は考えています。その昔から、私は財政再建には否定的な財政に関しては能天気なエコノミストだったんですが、本書の指摘はこの点だけはかなり正しいと受け止めています。我が国が財政破綻するリスクは極めて小さいのは確かです。ただ、金融市場のボラティリティが急速に高まる場合もありますから、一定の収束点は追求する必要があります。いずれにせよ、デフレを実物経済現象に偏って分析している点が気になるものの、本書はかなり正鵠を得た政策提案ではないかと私は考えています。なお、今年2016年5月28日付けの読書感想文で立命館大学の松尾匡先生の『この経済政策が民主主義を救う』を取り上げましたが、基本的な主張は同じです。この経済政策を左派が実行して憲法改正を阻止しなければならない、というのが松尾先生の主張でした。

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次に、譚璐美『帝都東京を中国革命で歩く』(白水社) です。今年2016年5月8日付けの読書感想文で岩波新書の『京都の歴史を歩く』という歴史書を取り上げましたが、よく似た趣向だという気がします。でも、本書は地図こそ豊富に紹介していて、どうも著者自身はホントに歩いたような気配がうかがえるんですが、「歩く」ことは重視されていないようで、そういった本文中の記述はほとんどありません。ということで、明治維新の成功と日清・日露戦争の勝利という目をみはるような日本の躍進の一方で、1905年には中国で科挙制度が廃止され、こういった事情も手伝って、明治・大正の東京では中国から多くの亡命者や留学生を受け入れていたようです。特に、近代的な軍制を重視する中国ながら、欧米では軍学校、すなわち、陸軍士官学校や海兵学校に中国人を受け入れる日本が海外留学先として選ばれたようですが、本書では早稲田大学をはじめとする高等教育機関に受け入れた留学生や亡命者だけを取り上げています。解像度はかなり低くて、特に古い地図は同じようなのばっかりですが、かなり多くのカラー写真が取り込まれていますし、章ごとに関連する中国人留学生や亡命者の住まいの地図が示され、それなりにビジュアルに仕上がっています。でも、例えば、p.58の蒋介石の下宿先周辺地図など、どうも南北の上下が反対ではないかと疑わしい地図もあったりします。肩も凝らずに、気軽に読める教養書かもしれません。

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次に、エドワード O. ウィルソン『ヒトはどこまで進化するのか』(亜紀書房) です。著者は米国の生物学者であり、ドーキンス教授やグールド教授などとともに、現在正靴学界でももっとも影響力の大きい大先生ではないかと思います。生物学の世界は私の大きく専門外ですので、実はよく知らないんですが、この3人くらいは私もご尊名を存じ上げています。物理学会のホーキング教授やかつてのカール・セーガン教授などと同じランク、と私は考えています。本書は The Meaning of Human Existence の原題で2014年に出版されており、本書には長谷川眞理子先生の解説が付け加えられています。なお、著者のウィルソン教授は社会生物学の創始者とされており、本所でも狭い意味の生物学にとどまらず、人文科学も視野に入れた議論が展開されています。例えば、最近の心理学などの知見からは、人類が進化したのは、社会的知能を身体的能力とともに進化させ、集団の生存率を高めたためだといわれており、要するに、人間は人間に魅力を感じるからこそ、物語やゴシップやスポーツを好むということになります。ですから、同族意識があるからこそ仲間内で協力もするが、その同族意識は集団外への攻撃、つまり現在も頻発するテロや紛争の源泉ともなる可能性があるというわけです。それを難しい生物学の用語で表現すると、包括的適応度の限界から、データ本位の集団的遺伝が取って代わるべきである、ということになります。補遺に収録されているPNAS論文はそれを明らかにしており、原著論文へのリンクは以下の通りです。


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次に、門井慶喜『ゆけ、おりょう』(文藝春秋) です。作者は前作の『家康、江戸を建てる』が第155回直木賞候補にもなった新進気鋭の時代小説作家です。この作品はタイトルから判る通り、おりょうを主人公にしていて、そのおりょうとは坂本龍馬の妻なわけです。もちろん、上の本書の表紙画像から連想される通り、有名な日本で初めてのハネムーンとか、京での寺田屋事件なども詳しく取り上げられています。ただ、おりょうが主人公ですから、龍馬との出会いの前から、軽くおりょうの人生が振り返られており、まるで、終盤に差しかかったNHK朝ドラ「とと姉ちゃん」のように、気丈に家族や幼い弟妹を守る姿が描かれています。おりょうはいうまでもなく京女なんですが、その昔の男についていくタイプの女性としては描かれていません。たぶん、東山彰良だと思うんですが、何かの小説で「中国の女性は気が強い」といった旨の評価を見た記憶があるんですが、その東山流の「中国女性」のような気の強さをおりょうは見せています。口が達者で、ものすごく酒に強く、したたかに生きる幕末の女性がここにいます。龍馬に対するおりょうの評価は厳しく、最初のころは頼りないと思いつつも結婚した龍馬が、実は、日本を動かす英雄と成長していく中で戸惑いながらも、自分なりのやり方で龍馬を愛し、また、夫を支える姿は共感を呼ぶんではないでしょうか。最後に、おりょうと龍馬が結婚していた期間はそう長くはないわけで、龍馬が死んだ後の落魄したおりょうの後半人生についても著者は温かい目で描き出しています。でも、残念ながら、デビュー作を超えるものではありません。

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最後に、菅野完『日本会議の研究』(扶桑社新書) と山崎雅弘『日本会議』(集英社新書) です。急に思い立ったわけでもないんですが、日本会議に関する新書を2冊ほど読みました。日本会議とは現内閣を支える勢力のひとつであり、憲法改正や靖国神社問題などでウルトラ右派の活動を続けている団体です。私は明確に自分を左派だと認識していますので、こういった団体には馴染みがなく、それなりに新鮮な情報が多かった気がします。『日本会議の研究』はほぼ人脈情報に限定して情報収集している雰囲気なんですが、何といっても扶桑社からの出版というのに驚きます。扶桑社とはメディアの中でももっとも右派的なフジサンケイ・グループの出版社です。集英社の方は人脈や組織を始めとして、広範な情報を網羅していますが、全体的にやや薄い気がしないでもありません。ということで、前にもこのブログで私の考えを明らかにしたことがあるような気がしますが、保守主義とは歴史の進歩に棹さす勢力であり、フランス革命の前後では民主主義を否定して王政を擁護し、社会主義・共産主義に進もうとするマルクス主義を否定します。ですから、保守主義の反対は進歩主義であり、もっとイってるのが急進主義です。逆に、歴史の進歩を否定するだけでなく、逆行させようとするのが反動ないし懐古主義・復古主義です。日本会議はこの最後のカテゴリーかと受け止めています。もう少し踏み込んで、人脈だけでなく、金脈、というか、資金源なども明らかにして欲しいところです。
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2016年09月23日 (金) 21:29:00

2008SNA対応による名目GDPの上振れは20兆円近く!

やや旧聞に属する話題かもしれませんが、先週木曜日の9月15日に内閣府から
「国民経済計算の平成23年基準改定に向けて」と題するアナウンスがなされていて、基準年の改定に合わせた国連の2008SNA基準への準拠により名目GDP水準が約20兆円増加するとの公表がなされています。
すなわち、現在の2005年基準から2011年基準に基準年を改定するとともに、1993SNAから2008SNAに対応を進め、その結果、それまで中間投入とされていた民間企業の研究・開発(R&D)を固定資本形成=投資とみなしたり、政府消費だった防衛装備品も同様に固定資本形成=公共投資と同じ扱いに改めたりして、約+19.8兆円、改定前GDP比で+4.2%の上振れが生じる、と明らかにしています。

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上のテーブルは内閣府の公表資料のp.9を画像化して引用しています。5年前の2011年時点の計数ですが、名目GDP471.6兆円が491.4兆円に+19.8兆円の増加になるんですから、アベノミクス新3本の矢の1番目で掲げた名目GDP600兆円を目指す現内閣には朗報かもしれません。
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2016年09月22日 (木) 17:00:00

消化試合ながら藤浪投手が1失点完投勝利!

  HE
阪  神000101020 480
広  島000000001 151


すでに優勝を決めた広島、そして、クライマックス・シリーズ出場の亡くなった阪神と、完全な消化試合ながら、藤浪投手が1失点完投勝利でした。来年につながることを期待します。
ところで、日本ハムとソフトバンクの首位攻防第2戦はどうなってるんですかね?

来年は、
がんばれタイガース!
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2016年09月22日 (木) 10:18:00

「2016年広島東洋カープ優勝の経済効果」やいかに?

とても旧聞に属する話題ですが、9月7日付けで関西大学宮本名誉教授の推定による「2016年広島東洋カープ優勝の経済効果」の結果が明らかにされています。広島県だけでしめて約331億4,916万円と推計されています。そして、「阪神タイガースや読売ジャイアンツには及ばないものの、過去の他球団の優勝と比較しても、非常に大きな経済効果である」と結論しています。

ただし、ややケチいことに、詳細な推計方法や分析結果はウェブサイトには掲載せず、個別に関西大学まで連絡する必要があるようです。宮本教授のこういった推計は研究成果ではないことが明確にされた瞬間のような気がします。
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2016年09月21日 (水) 21:22:00

3か月振りに赤字を記録した貿易統計をどう見るか?

本日、財務省から8月の貿易統計が公表されています。季節調整されていない原系列の統計で、輸出額は前年同月比▲9.6%減の5兆3163億円、輸入額は▲17.3%減の5兆3350億円、差し引き貿易収支は▲187億円のわずかな赤字となりました。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

8月の貿易収支、3カ月ぶり赤字 187億円
財務省が21日発表した8月の貿易統計速報(通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は187億円の赤字だった。貿易赤字は3カ月ぶり。QUICKがまとめた市場予想は2000億円の黒字だった。円高の影響で輸出入ともに減少が続いていることに加え、8月はお盆休みなどによる工場の稼働停止の影響から輸出額が落ち込んだ。
輸出額は前年同月比9.6%減の5兆3163億円にとどまった。減少は11カ月連続。8月の為替レート(税関長公示レートの平均値)は1ドル=103.24円と、円が対ドルで前年同月と比べて16.8%上昇したことが響いた。
米国向けの自動車、鉄鋼で韓国向けの鋼板製品が減った。地域別では米国が14.5%減、中国を含むアジアは9.4%減だった。
輸入額は17.3%減の5兆3350億円と20カ月連続で減少した。サウジアラビアからの原粗油、カタールからの液化天然ガス(LNG)などの減少が目立った。


いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

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上のグラフを見ても明らかな通り、季節調整していない原系列の統計では、まだ時折貿易収支が赤字を記録するものの、トレンドに沿った季節調整済みの系列ではほぼ貿易黒字が定着したように見受けられます。もちろん、まだ、国際商品市況の石油価格安に起因した輸入額の落ち込みによる貿易黒字であり、その意味で、どこまで持続性があるかは不安なしとしませんが、中国を除く地域別・国別や財別の貿易動向を見る限り、リーマン・ショック前までいかないとしても、震災以降の貿易赤字からは脱したと考えるべきです。ただ、引用した記事にもある通り、輸出も輸入も数量ベースでは前年同月比で増加を示しているにもかかわらず、為替が円高に振れた影響で輸出額と輸入額がマイナスを記録しています。円高は企業収益に悪影響をもたらし、物価の下押し圧力となり、もちろん、貿易にも自国通貨建てで見て縮小効果をもたらします。インフレ目標とともに、金融政策当局には為替も視野に入れた政策運営が求められるのはいうまでもありません。

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輸出をいくつかの角度から見たのが上のグラフです。上のパネルは季節調整していない原系列の輸出額の前年同期比伸び率を数量指数と価格指数で寄与度分解しており、まん中のパネルはその輸出数量指数の前年同期比とOECD先行指数の前年同月比を並べてプロットしていて、一番下のパネルはOECD先行指数のうちの中国の国別指数の前年同月比と我が国から中国への輸出の数量指数の前年同月比を並べています。ただし、まん中と一番下のパネルのOECD先行指数はともに1か月のリードを取っており、また、左右のスケールが異なる点は注意が必要です。ということで、BREXITによる公表取りやめが解除され、OECD先行指数との対比も復活しました。円高の価格効果への悪影響はまだ残るものの、所得効果の基となる海外需要は最悪期を脱しつつあるのが見て取れると思います。特に、中国については急速に回復する可能性を示しています。繰り返しになりますが、地域別・国別や財別の貿易動向を詳細に検討して、そろそろ我が国の輸出数量も増加する局面に達しつつあると私は考えています。

最後に、日銀は金融政策決定会合にて、ビミョーなレジーム・チェンジを行い、金融政策の操作目標をマネタリーベースから、長期金利の低め誘導によるイールドカーブ・コントロールへシフトしました。というか、シフトではなく、マイナス金利と同じく操作目標が追加されたということのようです。バーナンキ議長のころの米国連邦準備制度理事会(FED)もいわるゆるツイスト・オペレーションによって長めの金利を低め誘導しようと試みましたが、意図としては同じではないかという気がします。ただ、国債のストックが急速に減少するという意味で、量的緩和が長期戦に適さないので、色々と考える必要がありそうです。
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