2017年03月24日 (金) 21:41:00

米国への移民は米国の労働力人口にどれほど貢献しているのか?

とても旧聞に属する話題ですが、私が時折チェックしている米国の世論調査機関であるピュー・リサーチ・センターから3月8日付けで Fact Tank として、Immigration projected to drive growth in U.S. working-age population through at least 2035 と題するリポートが明らかにされています。通常の世論調査 = Opinion Pollではなく、Fact Tank と題されていて、違いについては私もそれほど理解ははかどらないんですが、2035年までの米国の労働力人口における移民などの構成を分析しています。グラフを引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、上のグラフはピュー・リサーチのサイトから Immigrants and their U.S.-born children expected to drive growth in U.S. working-age population を引用しています。日本では労働力人口は15-64歳なんですが、米国では25-64歳と少し違いはあるものの、上のグラフのいずれのパネルでも、グレーが米国生まれの両親の下に生まれた米国生まれの労働力人口、濃い黄土色が移民の労働力人口、薄い黄土色が移民の両親の下に生まれた米国生まれの労働力人口となっています。移民と米国生まれの両親の下に生まれた米国生まれの労働力人口がどこに属するのかは明らかではありません。なお、我が国では団塊の世代と呼ばれるベビーブーマーは極めて狭い範囲で1946-48年生まれ位を指す場合が多いんですが、米国のベビーブーマーは戦後生まれで1965年くらいまでに誕生した世代を指します。ということで、ピュー・リサーチの推計によれば、2015年時点で173.2百万人の米国労働力人口は2035年には183.2百万人に達すると見込まれています。しかし、この米国労働力人口の増加は移民や移民の両親の下に生まれた米国生まれの労働力人口を含めた数字であり、米国のベビーブーマーの加齢に従って、グレーの米国生まれの下に生まれた米国生まれの労働力人口は2015年くらいを境に減少に転ずると予想されています。また、グラフは引用しませんが、この後には、2035年時点で米国労働力人口は移民を含めるかどうかで17.6百万人の差が出ると試算した結果をプロットしたグラフを置いています。ということで、リポートの最後のパラの最初のセンテンスで、"Immigrants also play a large role in future U.S. population growth." と結論しています。
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2017年03月23日 (木) 21:26:00

東洋経済オンラインによる「非正社員の多い」トップ500社やいかに?

やや旧聞に属する話題かもしれませんが、東洋経済オンラインにて先週木曜日の3月16日付けで、「非正社員の多い」トップ500社が明らかにされています。トップはダントツぶっちぎりでイオンとなっています。以下、50位までのランキングのテーブルを東洋経済オンラインのサイトから引用すると以下の通りです。

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大手の自動車や電機メーカーのように、比率は高くないものの従業員数が多いので、非正社員も多いというパターンが散見されますが、やっぱり、大雑把な印象では世間一般でいわれているように、メーカーよりは小売り・外食・介護などが多いような印象です。なお、どうでもいいことながら、17番目のファーストリテイリングはユニクロなどの持ち株会社だと思うんですが、意外と非正社員比率が高くないように私は受け止めています。雇用に関する本を読み進んでいるので、少し関心が高まって取り上げてみました。
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2017年03月22日 (水) 20:43:00

貿易統計は世界経済の回復とともに我が国輸出の増拡大基調を確認!

本日、財務省から2月の貿易統計が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、輸出額は前年同月比+11.3%増の6兆3465億円、輸入額は+1.2%増の5兆5331億円、差引き貿易収支は8134億円の黒字を計上しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

2月の貿易収支、2カ月ぶり黒字 10年3月以来の水準
財務省が22日発表した2月の貿易統計(速報、通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は8133億8900万円の黒字だった。貿易黒字は2カ月ぶりで、2010年3月以来の水準。QUICKがまとめた市場予想の中央値は8591億円の黒字だった。中国の旧正月(春節)休暇が前年より早く1月中に始まった影響で輸入需要の一部が前倒しになった半面、輸出には反動増が発生し対中国貿易が60カ月ぶりの黒字となった。
輸出額は前年同月比11.3%増の6兆3465億円と3カ月連続で増加。2月の為替レート(税関長公示レートの平均値)は113.40円と前年同月に比べ3.4%の円高だったが、輸出数量全体の伸びや対中国輸出の好調が寄与し、増加幅は15年1月(16.9%)以来の大きさとなった。
中国向けギアボックスなどの自動車部品や香港向けICといった半導体など電子部品の伸びが目立った。地域別では中国向けが28.2%増、米国向けが0.4%増となった。欧州連合(EU)向けも3.3%増と5カ月ぶりに増加した。
輸入額は1.2%増の5兆5331億1100万円となった。資源価格の回復に伴いアラブ首長国連邦(UAE)からの原粗油、オーストラリアからの石炭などが伸びた。ただ、中国からの衣類やアイルランドからの医薬品の輸入が減り、増加幅は限られた。


いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

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貿易黒字の幅については、引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば+8591億円の黒字でしたので、ほぼジャストミートした感じです。ただし、これも引用した記事にある通り、中華圏の春節が昨年から1か月ズレて1月に始まった影響によるものであり、要するに、輸出拡大が貿易黒字に寄与しているわけです。昨年2月はうるう年でしたので、その1日多いうるう年効果を上回る春節効果は偉大であると改めて感じました。どうでもいいことかもしれませんが、季節調整済みの系列でも主節効果で歪みが生じている気がします。なお、今後も貿易収支の黒字基調は大きな変化ないと多くのエコノミストは予想しているものの、その黒字幅は縮小する可能性が強いと私は考えています。

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>輸出をいくつかの角度から見たのが上のグラフです。上のパネルは季節調整していない原系列の輸出額の前年同期比伸び率を数量指数と価格指数で寄与度分解しており、まん中のパネルはその輸出数量指数の前年同期比とOECD先行指数の前年同月比を並べてプロットしていて、一番下のパネルはOECD先行指数のうちの中国の国別指数の前年同月比と我が国から中国への輸出の数量指数の前年同月比を並べています。ただし、まん中と一番下のパネルのOECD先行指数はともに1か月のリードを取っており、また、左右のスケールが異なる点は注意が必要です。2月の輸出については、中華圏の春節効果である点は前のパラに記した通りですが、上のグラフの真ん中のパネルや一番下のパネルに見られる通り、先進国はもとより、中国をはじめとする新興国でも景気は底入れして回復に向かっており、世界経済の拡大とともに我が国の輸出への需要が高まりを見せ始めています。ただし、米国の通商政策及び為替政策のリスクは依然として私には不明です。
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2017年03月21日 (火) 21:26:00

マンションサプリ調査による東京メトロで最も資産性が高い沿線やいかに?

とても旧聞に属する話題ながら、3月7日付けでマンションサプリから「東京メトロで最も資産性が高い沿線」に関する調査結果が明らかにされています。関連データは相場情報サイト「マンションマーケット」のデータを用いているようです。

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結果は上のテーブルの通りです。間隔10年間ということで、2007年と直近の2017年を比較しています。東京メトロ9路線のすべてにおいて、この10年間で平均m²あたりのマンション価格は下落しているんですが、最も下落率が小さかったのが千代田線沿線で、逆に大きく下落したのが銀座線、ということになっています。大雑把に見て、格差がhす苦笑yし収束が進んでいるように見えなくもありません。それにしても、東京メトロ沿線ではマンション1m²あたりで100万円近くするんですね。改めて驚いてしまいました。
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2017年03月17日 (金) 21:34:00

東京商工リサーチ「長時間労働」に関するアンケート調査の結果やいかに?

広く報じられている通り、今週になって、労使間で協議してきた残業時間の上限規制を巡る協議が決着し、月45時間を超える残業時間の特例は年6カ月までとし、年720時間の枠内でか月100時間と2-6か月平均80時間の上限を設けることとなりました。こういった中、東京商工リサーチから3月10日付けで「長時間労働」に関するアンケート調査の結果が明らかにされています。いくつかグラフを引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、上のグラフは東京商工リサーチのサイトから残業があると回答した企業に対して 労働時間が短縮する場合に予想される影響 を問うた結果です。実は、この前に、グラフは省略しますが、残業の有無について、恒常的にあるが7,095社(57.3%)、時々あるが4,504社(36.4%)、「ない」と「させない」が764社(6.1%)との結果が示され、その残業の理由として、取引先への納期や発注量に対応が6,170社(37.6%)、また、人手や時間の不足との結果が示されています。ということで、回答のトップは仕事の積み残しが5,659(28.9%)で2位以下を引き離しています。続いて、受注量(売上高)の減少、従業員の賃金低下となっていますが、影響はないという回答も無視できない割合であります。なら、どうして残業があるのかは理解できませんが、まあ、そうなっているわけです。

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次に、上のグラフは東京商工リサーチのサイトから残業減少の努力をしていると回答した企業に対して 残業削減に取り組んでいる施策 を問うた結果です。回答のトップは仕事の効率向上のための指導が7,123社(37.8%)、次いで、仕事の実態に合わせた人員配置の見直しが5,621社(29.8%)、ノー残業デーの設定が2,981社(15.8%)などとなっています。ひとつの特徴は、ノー残業デーの設定を別にすれば、資本金1億円で境界をつけている規模別に大きな差が見られる点です。人手不足で余裕の乏しい中小企業等では残業削減にも限界があるのかもしれませんし、グラフは省略しますが、この後に残業削減に取り組んでいない理由を問う設問があり、回答のトップは必要な残業しかしていないの901社(51.0%)となっています。

残業削減のための新規採用や設備増強というのは、経営者の頭にはなかったりするんでしょうか?
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2017年03月16日 (木) 21:42:00

PwC による The World in 2050 やいかに?

先月半ばだったと思うんですが、PwC から The World in 2050 と題するリポートが明らかにされています。もちろん、pdfの全文リポートもアップされています。まず、PwC のサイトから Key findings を6点引用すると以下の通りです。

Key findings
  • The world economy could more than double in size by 2050, far outstripping population growth, due to continued technology-driven productivity improvements
  • Emerging markets (E7) could grow around twice as fast as advanced economies (G7) on average
  • As a result, six of the seven largest economies in the world are projected to be emerging economies in 2050 led by China (1st), India (2nd) and Indonesia (4th)
  • The US could be down to third place in the global GDP rankings while the EU27’s share of world GDP could fall below 10% by 2050
  • UK could be down to 10th place by 2050, France out of the top 10 and Italy out of the top 20 as they are overtaken by faster growing emerging economies like Mexico, Turkey and Vietnam respectively
  • But emerging economies need to enhance their institutions and their infrastructure significantly if they are to realise their long-term growth potential.


もうほとんど、私のブログくらいのレベルではこれで十分だという気がしますので、後はいくつか図表を引用して簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、上のテーブルは PwC のサイトから、2016年と2050年の購買力平価で換算したGDP規模のランキングのテーブルを引用しています。中国がトップであることは変わりありませんが、米国は2050年時点では中国に次ぐ2位の座をインドに明け渡して世界3位に後退すると予想されています。我が日本は2016年の4位から後退するとはいえ、2050年時点でもまだGDP規模で世界第8位の実力を誇っています。

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次に、上のテーブルは PwC のサイトから、2050年時点でまだトップ10に入らないまでも、2016年から順位を大きく上げるであろう国をピックアップしています。すなわち、アジアからベトナムとフィリピン、アフリカからナイジェリアです。それぞれ、順位を上げて抜き去る国の数と2016-50年の平均成長率が示されています。

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最後に、上のテーブルは PwC のサイトから、2016年と2050年における中国・インドと米国・欧州のそれぞれの購買力平価換算のGDPの世界におけるシェアを比較しています。当然ながら、新興国代表たる中国とインドはシェアを上昇させ、先進国代表の米国と欧州はシェアを下げています

まあ、方向としては、言われるまでもない事実なんでしょうが、2050年という超長期の先行き見通しに関して具体的な数字をもって示したのが値打ちあるかもしれません。繰り返しになりますが、今世紀半ばの時点においても我が日本はまだまだ世界トップテンに入るGDP規模を持ち続ける、という事実も忘れるべきではありません。
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2017年03月15日 (水) 20:41:00

東洋経済オンラインによる「就職に力を入れている大学」ランキング100やいかに?

先週金曜日の3月10日に東大の前期試験の合格発表が終わり、ほぼ今年の受験シーズンが終了したような気がしますが、その3月10日付けの東洋経済オンラインでは「就職に力を入れている大学」ランキング100が明らかにされています。取り急ぎ、1位の明治大学から同率55位までのランキングの画像を東洋経済オンラインのサイトから引用すると以下の通りです。

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諸般の事情により、簡単に済ませておきたいと思います。
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2017年03月13日 (月) 19:44:00

前月比でマイナスとなった機械受注とプラスに転じた企業物価(PPI)上昇率から何が読み取れるか?

本日、内閣府から1月の機械受注が、また、日銀から2月の企業物価 (PPI)が、それぞれ公表されています。変動の激しい船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注の季節調整済みの系列で見て、前月比▲3.2%減の8379億円を、企業物価(PPI)のうちのヘッドラインとなる国内物価の前年同月比上昇率は+1.0%を、それぞれ記録しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

1月の機械受注3.2%減 製造業で反動減
内閣府が13日発表した1月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標とされる「船舶・電力を除く民需」の受注額(季節調整値)は前月比3.2%減の8379億円だった。減少は2カ月ぶり。QUICKが事前にまとめた民間予測の中央値(0.5%減)を下回った。製造業が前月に大型案件があった反動で2ケタ減となった。非製造業は微増だったが補えなかった。判断は「持ち直しの動きに足踏みがみられる」に据え置いた。
製造業の受注額は10.8%減の3309億円と4カ月ぶりに減った。需要者の業種別では、化学工業(27.9%減)や「窯業・土石製品」(61.4%減)、「非鉄金属」(84.5%減)などで前の月の反動減が出た。
非製造業の受注額は0.7%増の5076億円と2カ月連続で増えた。需要者の業種別では、「金融業・保険業」(57.3%増)や「情報サービス業」(11.3%増)で電子計算機が伸びた。「不動産業」では運搬機械などが伸び、85.4%増だった。
前年同月比での「船舶・電力を除く民需」受注額(原数値)は8.2%減だった。
内閣府は今回の公表に併せて、季節調整系列の遡及改訂を実施。1-3月期の船舶・電力を除いた民需の受注額を3.3%増から1.5%増見通しへと下方修正した。うち製造業は11.6%増から9.7%増に、非製造業は2.3%減から3.3%減にそれぞれ引き下げた。2016年10-12月期実績は0.2%減から0.3%増に引き上げ、2四半期連続で増加だったとした。
2月の企業物価、前年比1.0%上昇
日銀が13日に発表した2月の国内企業物価指数(2015年平均=100)は97.9で、前年同月比で1.0%上昇した。前年比での上昇は2カ月連続で上昇率は前月(0.5%)から拡大した。消費増税の影響を除くと14年8月以来(1.1%)の大きさとなった。国際商品市況の改善や原材料価格の上昇を製品価格に転嫁する動きが続いている。
前月比では0.2%の上昇だった。合成ゴムなどの化学製品価格が上昇した。原油や液化天然ガス(LNG)といった国際商品価格の上昇による電力価格の上昇も寄与した。中国のインフラ投資期待から鉄鉱石が値上がりし、鉄鋼製品の価格も上昇した。
円ベースの輸出物価は前年比で2.5%上昇したが、前月比では0.5%下げた。輸入物価も前年比で10.1%上昇する一方、前月比では0.7%の上昇にとどまった。前月比での小幅な円高・ドル安の進行が響いた。
企業物価指数は企業同士で売買するモノの価格動向を示す。公表している746品目のうち前年比で下落したのは399品目、上昇は271品目だった。下落と上昇の品目差は128品目で、1月の確報値(151品目)から縮小した。
日銀の調査統計局は「国内の需給要因で上昇している品目数は多くない。人手不足の影響が今後の企業物価にどう出てくるかに注目している」との見解を示した。


とても長くなったものの、よく取りまとめられた記事だという気がします。次に、機械受注のグラフは以下の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は、その次の企業物価とも共通して、景気後退期を示しています。

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船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注は、季節調整済みの前月比で▲3.2%減の8379億円を記録しています。生産や輸出などを含めて、今年2017年の1月の統計の、特に、季節調整済みの系列については、中華圏の春節が昨年の2月から今年は1月末にやや前倒し気味でしたので、1月の季節調整値が下振れ要因となっている場合が少なくないと私は感じていましたが、少なくとも、この機械受注に関する限り、引用した記事にもある通り、原系列の前年同月比でも大きなマイナスですので、製造業における反動減、特に、昨年2016年11月に前月比で+8.1%を記録した大きなプラスからの反動減という側面が強いのだろうと受け止めています。昨年2016年1-2月はこれも中華圏の春節による大きなスイングがあり、いずれも季節調整罪の系列の前月比で、1月が+28.5%増の後、2月が▲24.0%減を示しています。もともと、変動の激しい指標ですので、コア指標を設定したりしているわけですが、これくらいの変動はあるのかもしれません。引用した記事にある通り、製造業の産業別では、化学工業や窯業・土石製品、非鉄金属などの減少が大きくなっています。他方、船舶と電力を除く非製造業は底堅く、1月統計でも+0.7%増を記録しています。人手不足の影響によりいわゆる省力化投資が進んでいる印象です。先行きについては、機械受注やその先の設備投資ともに、輸出に牽引された製造業と人手不足や東京オリンピックに伴うインフラ投資による非製造業といった産業別の要因に違いはあるものの、緩やかな増加基調を続けるものと私は考えています。

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続いて、企業物価(PPI)上昇率のグラフは上の通りです。上のパネから順に、国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率、需要段階別の上昇率を、それぞれプロットしています。影をつけた部分は、景気後退期を示しています。ということで、1月の国内物価前年同月比上昇率が久し振りにプラスに転じて+0.5%を記録したと思ったら、2月は早くも+1.0%に達しています。何とも、エネルギー価格の大きな影響力の前に、旧来派の日銀理論家とは違う観点から、金融政策の無力さを感じてしまうのは私だけでしょうか。国内物価の品目別に見ると、石油・石炭製品をはじめ、非鉄金属、鉄鋼などの素材も大きな上昇率を示しています。しかし、電気機器や情報通信機器や輸送用機器といった我が国の主要輸出産業の製品群はまだ前年比で下落を続けており、国際商品市況における石油価格の上昇の波及はこの先も続くんだろうと私は考えています。もちろん、この先も物価上昇率がさらに加速するというわけでもなく、せいぜい年央くらいまでの賞味期限ではないかと予想しています。
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2017年03月11日 (土) 10:24:00

非農業部門で235千人の増加を記録した米国雇用統計は利上げを支持するか?

日本時間の昨夜、米国労働省から2月の米国雇用統計が公表されています。非農業雇用者数の増加幅は+235千人増と、市場の事前コンセンサスの+190千人増を大きく上回りました。加えて、失業率も前月から0.1%ポイント下がって4.7%を記録しています。いずれも季節調整済みの系列です。まず、Los Angeles Times のサイトから最初の3パラだけ記事を引用すると以下の通りです。


Warm weather and rising business optimism helped the U.S. economy to create another burst of job growth last month, giving President Trump an early confidence boost and all but assuring that the Federal Reserve will nudge up interest rates next week.
Employers added 235,000 jobs in February, about as many as in January and well above analysts' expectations and the average monthly payroll growth for all of last year, the Labor Department said Friday,
Friday's report was the first major employment gauge capturing an entire month with Trump as president, and administration officials were so eager to link the unexpectedly strong showing to Trump that White House Press Secretary Sean Spicer broke an obscure federal rule by publicly touting the news within the first hour of the report's release.


この後、さらに政府の報道官の発言やエコノミストへのインタビューなどが続きますが、長くなりますので割愛しました。包括的によく取りまとめられている印象です。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは下の通りです。上のパネルは非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門、下のパネルは失業率です。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。全体の雇用者増減とそのうちの民間部門は、2010年のセンサスの際にかなり乖離したものの、その後は大きな差は生じていません。

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1月の米国雇用統計でアッとびっくりしましたので、2月の非農業雇用者数増加の+235千人増には驚きませんでしたが、もはや、secular stagnation は米国経済には当てはまらないんではないかというくらいの堅調な米国雇用統計でした。雇用者の増加幅はひとつの目安とされる200千人を今年2017年に入って1月2月と2か月連続で上回っていますし、直近3か月でみても増加幅は月平均+209千人と力強さを保っています、しかも、トランプ大統領の重視するメインストリームの製造業雇用も、昨年2016年12月+18千人増、今年2017年1月+11千人増、2月+28千人増と着実に3か月連続で増加を示しています。加えて、失業率も前月から低下を示していますし、こういった好調な雇用情勢を受けて、米連国邦準備理事会(FED)は次回の連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げに踏み切るんでいはないかと、大方のエコノミストは考えています。私もそうです。イエレン議長は3月3日の講演会で雇用統計の目安として「月75千から125千人の就業増」を上げており、2月の米国雇用統計の結果は文句なしでこれを上回っていますので、米国労働市場がほぼ完全雇用に達した中で、まだインフレが高まる局面には達していないものの、米国の利上げの確度はとても高いと考えるべきです。

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ということで、時間当たり賃金の前年同月比上昇率は上のグラフの通りです。ならして見て、ほぼ横ばい状態が続いている印象ですが、それでも、12月の前年比上昇率は+2.9%を記録し、2009年6月以来7年半振りの高い伸びを示しています。2月の+2.6%も底堅い気がしますし、一時の日本や欧州のように底割れしてデフレに陥ることはほぼなくなったと考えるべきです。
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2017年03月10日 (金) 21:14:00

本日公表の法人企業景気予想調査に見る企業マインドやいかに?

本日、財務省から1-3月期の法人企業景気予測調査が公表されています。ヘッドラインとなる大企業全産業の景況感判断指数(BSI)は10-12月期の+3.0からやや下降して1-3月期は+1.3を記録し、先行きについては、4-6月期は▲1.1に落ちた後、7-9月期は+5.4に上昇すると見通されています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

大企業1-3月景況感、3四半期連続のプラス
財務省と内閣府が10日発表した1-3月期の法人企業景気予測調査によると、大企業の景況感を示す景況判断指数(BSI)は1.3のプラスだった。プラスは3四半期連続。電子部品や自動車向けの工作機械の販売が好調に推移した。3カ月前の前回調査時点より円安・株高が進んだことも、企業の景気に対する見方を改善させたとみられる。
指数は自社の景況が前期に比べ「上昇」したとの回答割合から「下降」の割合を引いた値。調査基準日は2月15日で、資本金1千万円以上の企業1万2765社から回答を得た。財務省は1-3月期の結果を踏まえた判断を「緩やかな回復基調が続いている」として前回調査から据え置いた。
調査時点の為替レートは1ドル=114円48銭で、前回調査時点より6円35銭円安が進んだ。
大企業のうち製造業、非製造業とも3期連続のプラスだった。製造業全体ではプラス1.1。足元の円安で半導体製造装置や自動車向けの工作機械などが好調だった。逆に食料品製造業は円安による原材料価格の上昇でマイナス12.7だった。
非製造業はプラス1.5。特に良かったのは建設業だ。マンションなどの需要が好調でプラス19.8だった。日銀のマイナス金利政策に伴う収益悪化を懸念し、金融業、保険業はマイナス5.2だった。
調査では2期先までの先行きを聞いている。2017年4-6月期はマイナス1.1、7-9月期にはプラス5.4に転じる見通し。世界情勢の不透明さから企業が先行きの見通しを立てるのが難しくなっているとみられ、財務省は「今後の動きを注視する」としている。


いつもながら、よく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、下のグラフは法人企業景気予測調査のうち大企業の景況判断BSIをプロットしています。重なって少し見にくいかもしれませんが、赤と水色の折れ線の色分けは凡例の通り、濃い赤のラインが実績で、水色のラインが先行き予測です。影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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ということで、企業マインドは必ずしもよくないわけですが、少なくとも足元の1-3月期については前期よりBSIが低下しつつもプラスを維持しています。評価の難しいところです。売上高予想が2016年度については減収見込みで、来年度2018年度が増収見通しとなっているものの、足元での売上の伸び悩みが企業マインドに影を落としている可能性があると私は受け止めています。加えて、今年度来年度ともに経常利益が減益見通しとなっているのも影響があるんではないかと考えています。
個別項目では、雇用に引き続き不足感が広がっています。特に人材確保が難しい中堅・中小企業が大企業に比較して人手不足感が大きいとの結果で、産業別では機械で代替できない部分の大きな非製造業の不足感が製造業よりも高くなっています。設備投資計画は全規模全産業で見て、今年度2016年度は前回調査の+2.5%増から+2.0%増にやや下方修正されたものの、底堅い動きを示し、来年度はこの時期にはまだ計画が固まらずに、▲4.6%減と見通されていますが、産業別では製造業ではプラス、非製造業ではマイナスの内訳となっています。

4月3日に公表予定の日銀短観の予想が、今日の法人企業景気予測調査の結果などを受けて、早ければ来週あたりから明らかにされ始めるんではないかと私は考えていますが、そのうちに日を改めて取り上げたいと思います。
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2017年03月09日 (木) 21:02:00

本日公表の毎月勤労統計に見られる賃金動向やいかに?

本日、厚生労働省から1月の毎月勤労統計が公表されています。景気動向に敏感な製造業の所定外労働時間指数は季節調整済みの系列で前月から横ばいを示し、他方で、現金給与指数は季節調整していない原系列の前年同月比で+0.5%の伸び、特に、そのうち所定内給与は+0.8%増となっています。ただし、消費者物価がすでにプラスの上昇を示しており、物価上昇を差し引いた実質賃金は横ばいとなっています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

実質賃金1月横ばい 物価上昇で押し下げ
厚生労働省が9日発表した1月の毎月勤労統計調査(速報値、従業員5人以上)によると、物価変動の影響を除いた実質賃金は前年同月と比べて横ばいだった。名目賃金にあたる現金給与総額は27万274円で前年同月比で0.5%増加した。物価の上昇が実質賃金を名目より押し下げた。実質賃金の力強い回復がなければ、消費の拡大にはつながりにくい。
名目賃金の内訳をみると、基本給を示す所定内給与は前年同月比0.8%増の23万8737円で、00年3月以来16年10カ月ぶりの大幅増となった。ただ雇用形態別にみるとフルタイム労働者の所定内給与は0.4%増で、16年平均の0.6%増を下回る。厚労省はフルタイム労働者比率の増加が賃金を押し上げていると分析する。
企業は将来の人手不足をみこして長く雇える正社員の求人を増やしている。そのためパートタイム労働者比率は前年と比べ0.33ポイント低下した。マイナスに転じるのは08年10月以来8年3カ月ぶりだ。パートと比べて賃金が高いフルタイム労働者が増え、賃金全体を押し上げた格好だ。
消費者物価指数(持ち家の帰属家賃を除く総合)は円安や原油相場の持ち直しで前年同月比0.6%上昇した。


いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、毎月勤労統計のグラフは以下の通りです。上から順に、1番上のパネルは製造業の所定外労働時間指数の季節調整済み系列を、次の2番目のパネルは調査産業計の賃金、すなわち、現金給与総額と所定内給与のそれぞれの季節調整していない原系列の前年同月比を、1番下の3番目のパネルはいわゆるフルタイムの一般労働者とパートタイム労働者の就業形態別の原系列の雇用の前年同月比の伸び率の推移を、それぞれプロットしています。いずれも、影をつけた期間は景気後退期です。

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まず、景気動向に敏感な所定外労働時間については、中華圏の1月春節効果などにより生産が低下した影響で残業も伸びを鈍化させ横ばいとなっています。先行き、景気が緩やかに回復するとともに、残業を示す所定外労働時間も増加に向かう可能性が高いと私は考えていますが、政府のはたらき方改革やワーク・ライフ・バランスの重視などにより、従来のような景気と残業の連動性は崩れる可能性があるんではないかとも言われており、先行きは景気に従って増加一辺倒ではない可能性もあります。賃金については、特に所定内賃金が前年から大きく伸びました。ただし、消費者物価が昨年10-12月期からヘッドライン指数の上昇率はすでにプラスに転じており、生鮮食品を除くコア指数の上昇率も今年に入ってプラスに転じていますので、さらに大きな名目賃金の伸びがなければ消費を活性化させるには力不足の可能性があります。ただ、上のグラフのうちでも一番下のパネルに示された通り、フルタイムの一般労働者の増加率がパート労働者の伸びを上回り始めました。現在、かなり完全雇用に近いものの、決して完全雇用に到達していない労働市場の状況を考えると、賃金よりも先に正規雇用の増加という形で雇用の質の向上がもたらされるのかもしれません。完全雇用に伴う賃金上昇はさらに時間がかかるのかもしれませんが、よし悪しは別として、少なくともフルタイムの一般職員の方が給与水準が高いですから、引用した記事でも示唆されているシンプソン効果により、パートタイムよりもフルタイム職員が増加するのはそれだけでマクロの所得増につながると考えるべきです。

最後に、サイド・インフォメーションながら、今日の公表から毎月勤労統計の指数が2010年基準から2015年基準に基準改定されています。厚生労働省のお知らせメモにある通り、指数は遡及改定されたものの、増減率は旧基準指数に基づくものから遡及改定されないため、新基準指数で計算している私のブログの増減率と厚生労働省の公式な増減率がビミョーに異なっている可能性があります。悪しからず。
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2017年03月08日 (水) 19:33:00

年率成長率+1.2%に上方修正された10-12月期GDP統計2次QEをどう見るか?

本日、内閣府から昨年2016年10-12月期のGDP統計2次QEが公表されています。季節調整済みの前期比成長率は+0.2%を記録しました。外需中心ながら、なかなかの高成長といえます。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

GDP年率1.2%増に上方修正 16年10-12月改定値
内閣府が8日発表した2016年10-12月期の国内総生産(GDP)改定値の伸び率は物価変動を除いた実質で前期比0.3%増、年率換算では1.2%増だった。設備投資が大きく上振れし、速報値(前期比0.2%増、年率1.0%増)から上方修正した。ただ、QUICKが7日時点でまとめた民間予測の中央値(前期比0.4%増、年率1.6%増)を下回った。
実質GDPの伸び率を需要項目別にみると、設備投資は前期比0.9%増から2.0%増に上方修正した。不動産、建設や食品を中心に設備投資が伸びた。個人消費も0.0%減から0.0%増へと若干改善した。自動車販売が好調だったほか、不振の衣服もやや持ち直した。
民間住宅は0.2%増から0.1%増に引き下げた。不動産仲介手数料が減少した。民間在庫の寄与度は速報値のマイナス0.1ポイントからマイナス0.2ポイントに下振れした。基礎化学や自動車向けの仕掛かり品在庫で下方改定した。公共投資は12月の建築総合統計の結果を受け、1.8%減から2.5%減に下方修正した。
実質GDPの増減への寄与度をみると、内需がプラス0.1ポイント(速報値はマイナス0.0ポイント)となった。輸出から輸入を差し引いた外需はプラス0.2ポイントと横ばいだった。
生活実感に近い名目GDPは前期比0.4%増(0.3%増)、年率では1.6%増(1.2%増)だった。総合的な物価の動きを示すGDPデフレーターは、前年同期と比べてマイナス0.1%となった。


ということで、いつもの通り、とても適確にいろんなことが取りまとめられた記事なんですが、次に、GDPコンポーネントごとの成長率や寄与度を表示したテーブルは以下の通りです。基本は、雇用者報酬を含めて季節調整済み実質系列の前期比をパーセント表示したものですが、表示の通り、名目GDPは実質ではなく名目ですし、GDPデフレータと内需デフレータだけは季節調整済み系列の前期比ではなく、伝統に従って季節調整していない原系列の前年同期比となっています。また、項目にアスタリスクを付して、数字がカッコに入っている民間在庫と内需寄与度・外需寄与度は前期比成長率に対する寄与度表示となっています。もちろん、計数には正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、データの完全性は無保証です。正確な計数は自己責任で最初にお示しした内閣府のリンク先からお願いします。

需要項目2015/10-122016/1-32016/4-62016/7-92016/10-12
1次QE2次QE
国内総生産 (GDP)▲0.2+0.5+0.5+0.3+0.2+0.3
民間消費▲0.6+0.4+0.2+0.3▲0.0+0.0
民間住宅▲1.0+1.5+3.3+2.4+0.2+0.1
民間設備+0.1▲0.2+1.4▲0.1+0.9+2.0
民間在庫 *(+0.0)(▲0.3)(+0.3)(▲0.3)(▲0.1)(▲0.2)
公的需要+0.3+0.9▲0.7+0.0▲0.0▲0.3
内需寄与度 *(▲0.3)(+0.1)(+0.6)(▲0.1)(▲0.0)(+0.1)
外需寄与度 *(+0.0)(+0.3)(▲0.0)(+0.4)(+0.2)(+0.2)
輸出▲0.8+0.9▲1.2+2.1+0.5+0.5
輸入▲0.8▲1.1▲1.0▲0.3▲0.2▲0.2
国内総所得 (GDI)▲0.1+1.0+0.7+0.2+0.1+0.1
国民総所得 (GNI)▲0.0+0.6+0.4+0.1+0.0+0.1
名目GDP▲0.2+0.7+0.4+0.1+0.3+0.4
雇用者報酬+0.6+1.1+0.3+0.7+0.0+0.2
GDPデフレータ+1.5+0.9+0.4▲0.1▲0.1▲0.1
内需デフレータ▲0.0▲0.3▲0.7▲0.8▲0.3▲0.3


上のテーブルに加えて、いつもの需要項目別の寄与度を示したグラフは以下の通りです。青い折れ線でプロットした季節調整済みの前期比成長率に対して積上げ棒グラフが需要項目別の寄与を示しており、左軸の単位はパーセントです。グラフの色分けは凡例の通りとなっていますが、本日発表された2016年10-12月期2次QEの最新データでは、前期比成長率がプラスを示し、特に、水色の設備投資と黒い外需がプラス寄与している一方で、灰色の民間在庫がマイナス寄与していて在庫調整が進んでいるのが見て取れます。

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ということで、引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、前期比+0.4%、前期比年率+1.6%の成長率が見込まれていましたので、本日公表された実績成長率はこれをやや下回ったものの、少なくとも上方修正という点では一致していました。1次QEでは内需の寄与度がゼロで、外需に依存した成長という印象でしたが、2次QEでは外需の寄与度+0.2%は変わらなかった一方で、設備投資の上振れなどから内需の寄与度が+0.1%に上方修正され、他方、内需寄与度の内数ながら在庫寄与度が1次QEの▲0.1%から▲0.2%に下方修正され、在庫調整の進展をうかがわせる内容となっていて、内外需そろってのより好ましい成長の姿を垣間見ることが出来ます。ただ、消費の伸びがとても低くなっており、法人企業統計などのほかの統計も併せて見た企業部門の収益やGDP統計の設備投資などを考え合わせると、家計部門の苦しさが浮き彫りになっているのも確かです。消費者物価はヘッドライン上昇率は昨年2016年10-12月期からすでに前年比でプラスに転じており、春闘を含めて今年の賃上げで物価を考慮した実質賃金がプラスにならなければ消費の回復が見込めない可能性は残ります。企業サイドでは他の企業が賃上げしてくれて自社が賃上げしないというのが、あるいは、ベストの状況かもしれませんが、マクロ経済の合成の誤謬などから囚人のジレンマ的な状況に陥って、結局、賃上げがまったく実現しない可能性もあります。政府の何らかの所得政策が必要な局面かもしれないと思わないでもありません。この消費の低迷を別にすれば、以下でOECDの「中間経済見通し」Global Interim Economic Outlook, March 2017 を取り上げますが、基本的に我が国経済の先行きについても着実な回復が継続する可能性が高い、と私は考えています。

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また、昨夜、経済協力開発機構(OECD)から「中間経済見通し」Global Interim Economic Outlook, March 2017 が公表されています。上のテーブルはリポートから成長率見通しの総括表 OECD Interim Economic Outlook real GDP growth projections を引用しています。
世界経済は財政政策による景気浮揚策 "boosted by fiscal initiatives" もあって、緩やかな成長を続けると予想されており、日本の成長率も今年2017年+1.2%、来年2018年+0.8%と潜在成長率近傍ないしやや上回る成長と見込まれています。これは円安による生産と輸出の回復に基づいている一方で、引き続き、消費は伸び悩んでおり "consumption spending remains subdued"、我が国の成長見通しは賃上げ次第である "growth prospects will depend on the extent to which wage growth picks up from its current low rate" と結論しています。また、世界経済には石油価格の上昇や金利の上昇といったリスクが残されている、と評価しており、このため、可能な場合は財政による短期的な需要創出に加え、包括的な成長 "inclusive growth" を目指す長期的な構造改革の政策対応の必要性を指摘しています。こらの政策には、労働者のスキルを高め、競争と貿易の障害を取り除き、所得の増加を目指した労働市場政策を組み合わせるべき "These should combine policies to develop skills, remove barriers to competition and trade, and improve labour market policies in a way that raises overall incomes and shares the gains widely." と主張しています。

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最後に、他の国内経済指標に目を向けると、本日、内閣府から1月の景気動向指数と2月の景気ウォッチャーが、また、財務省から1月の経常収支が同じく公表されています。いつものグラフだけ、上の通り示しておきます。
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2017年03月07日 (火) 19:31:00

明日公表の10-12月期GDP統計2次QEの予想やいかに?

先週公表の法人企業統計を始めとして、ほぼ必要な統計が明らかになり、明日3月8日に昨年2016年10-12月期GDP速報2次QEが内閣府より公表される予定です。シンクタンクや金融機関などから2次QE予想が出そろっています。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、web 上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下の表の通りです。ヘッドラインの欄は私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しています。可能な範囲で、足元の今年1-3月期以降を重視して拾おうとしています。しかしながら、明示的に取り上げているシンクタンクはみずほ総研だけであり、とても長めに先行き予想をリポートから引用しています。ほかは伊藤忠経済研がチラリと触れているだけで、大多数の機関では誠にアッサリとヘッドラインの成長率だけの引用です。2次QEですので、法人企業統計のリポートのついでに取り上げられているものもあります。いずれにせよ、より詳細な情報にご興味ある向きは左側の機関名にリンクを張ってありますから、リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、ダウンロード出来たりすると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちにAcrobat Reader がインストールしてあって、別タブが開いてリポートが読めるかもしれません。

機関名実質GDP成長率
(前期比年率)
ヘッドライン
内閣府1次QE+0.2%
(+1.0%)
n.a.
日本総研+0.3%
(+1.1%)
10-12月期の実質GDP(2次QE)は、設備投資が上方修正される一方、公共投資、在庫変動は下方修正となる見込み。
大和総研+0.4%
(+1.7%)
10-12月期GDP二次速報(3月8日公表予定)では、実質GDP成長率が前期比年率+1.7%(一次速報: 同+1.0%)と、一次速報から上方修正されると予想する。
みずほ総研+0.3%
(+1.3%)
2017年の日本経済について展望すると、輸出・設備投資を中心に、景気回復が続くと見込まれる。
今週発表された鉱工業生産(前月比▲0.8%)は市場の事前コンセンサス(同+0.4%)を下回るなど、やや低調な結果だった。もっとも、これは2016年後半の生産が、熊本地震からの挽回生産などのために押し上げられていた反動が表れたものと考えられる。したがって、1-3月期は景気回復に一服感が生じる可能性があるものの、その後の景気は、ITサイクルの改善や中国・鉱工業セクターの持ち直しといった外部環境の改善を背景に、回復が続くとの見方を維持している。設備投資については、国内で五輪関連や都市再開発関連の案件が進捗することなども、押し上げ要因になるだろう。
ただし、個人消費の回復については、引き続き精彩を欠くと予想している。耐久消費財が持ち直していること、株高などを背景に消費者マインドが改善していることがプラスに働くものの、年半ばにかけて見込まれるエネルギー価格の上昇が個人消費の下押し要因となるだろう。
ニッセイ基礎研+0.4%
(+1.6%)
16年10-12月期GDP2次速報では、実質GDPが前期比0.4%(前期比年率1.6%)となり、1次速報の前期比0.2%(前期比年率1.0%)から上方修正されると予測する。
第一生命経済研+0.4%
(+1.7%)
1次速報の段階で既に景気が回復基調にあることは確認されていたが、2次速報ではそうした動きがより明確化する形になる。
伊藤忠経済研+0.3%
(+1.2%)
1-3月期は今年度第2次補正予算で具体化された景気対策の執行が本格化し公共投資が成長を支えるとみられるが、輸出の動向が懸念される中で、景気の持続的な回復には国内民間需要の復調が待たれるところである。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券景気循環研究所+0.4%
(+1.7%)
実質GDP成長率が1次速報の前期比年率1.0%から同1.7%に上方修正されるものと予想する。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング+0.6%
(+2.4%)
2016年10-12月期の実質GDP成長率(2次速報値)は、前期比+0.6%(年率換算+2.4%)と1次速報値の同+0.2%(同+1.0%)から上方修正される見込みである。
三菱総研+0.5%
(+1.9%)
2016年10-12月期の実質GDP成長率は、季調済前期比+0.5%(年率+1.9%)と、1次速報値(同+0.2%(年率+1.0%))から上方修正を予測する。


法人企業統計を取り上げた先週のブログでも軽く言及しましたが、1次QEから少し上方改定されるというのが直観的な私の理解です。現在の日本の潜在成長率から見て、かなりな高成長だと私は考えるんですが、メディアなどでは「もっと、もっと」という意見が主流を占めるのかもしれません。まあ、リフレ派エコノミストが一定の比重を占める現在の内閣で重視している物価上昇率が高まらないわけですから判らないでもないんですが、仕上がりの成長率としては十分ではないんでしょうか。下のグラフはみずほ総研のリポートから引用しています。

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2017年03月06日 (月) 21:28:00

トレンド Express による春節期間中の中国人観光客の動向やいかに?

やや旧聞に属する話題かもしれませんが、2月28日付けでトレンド Express から今年の春節期間における中国人観光客の動向について、SNS 上のクチコミを分析した結果が明らかにされています。インバウンド消費はこの先さらに伸びる可能性は必ずしも大きくありませんが、地域によっては貴重な売上に結びついている場合も少なくありません。トレンド Express のサイトからテーブルを引用しつつ、簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、行った先のランキングは上のテーブルの通りです。昨年の春節時期と同じでトップは沖縄でした。まあ、プレコードの統計調査表に記入してもらっているわけではなく、あくまで、春節の時期にSNS上に出現した地名を拾っているだけですから、場所の統一性はありません。すなわち、トップ5で見ても、清水寺や心斎橋・道頓堀などのピンポイントの建物や狭い範囲の地名があるかと思うと、都市名で札幌が入っていますし、沖縄は県名と解釈するのが妥当なんでしょう。清水寺、表参道、USJが昨年からジャンプアップしてトップ10に入っています。逆に、昨年4位だったラオックスは20位圏外になったようです。観光のコト消費と、買い物のモノ消費のバランスがビミョーに取れているような気がします。また、テーブルは引用しませんが、36位に阿蘇火山博物館が、また、37位に岡崎といった地方がランクインしており、地方分散化が進んでいるといえそうです。

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次に、モノ消費について、商品カテゴリで分類したテーブルが上の通りです。ドラッグストアや家電量販店などで売っている商品が多くランクインしているような気がします。トップ5は昨年から順位が入れ替わっただけで、中身の変更はありません。ジャンプアップしたのは医療器具であり、血圧計、体温」、鼻洗浄などのキーワードが見受けられるようです。背景には健康管理への関心の高まりや日本製の医療器具への注目がありそうな気がします。

かつての「爆買い」と称された中国人観光客のインバウンド消費の勢いはかなり下火になりましたが、まだもう少し中国人観光客のお買い物熱は続きそうな気もしないでもありません。
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2017年03月03日 (金) 22:51:00

本日公表された雇用統計と消費者物価(CPI)と消費者態度指数から何が読み取れるか?

本日、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が、また、総務省統計局から消費者物価指数(CPI)が、さらに、内閣府から消費者態度指数が、それぞれ公表されています。雇用統計とCPIは1月の統計であり、消費者態度指数は2月の統計です。いずれも季節調整済みの系列で、失業率は3.0%と前月から▲0.1%ポイント低下し、有効求人倍率は前月から横ばいで1.43を記録し、生鮮食品を除くコアCPIの前年同月比上昇率は+0.1%と久々にプラスに転じ、消費者態度指数は前月比▲0.1ポイント上昇の43.1となりました。まず、統計のヘッドラインを報じる記事を日経新聞のサイトから引用すると以下の通りです。

1月失業率、3.0%に改善 求人倍率は1.43倍
総務省が3日発表した1月の完全失業率(季節調整値)は3.0%と前月から0.1ポイント改善した。改善は横ばいをはさんで4カ月ぶりとなる。厚生労働省が同日発表した有効求人倍率(同)は1.43倍と前月と同じだった。雇用情勢は1990年代半ば並みの水準で、サービス業を中心に人手不足が深刻だ。
完全失業率は働く意欲がある人のうち、職がなく求職活動をしている人の割合を示す。2016年6月以降8カ月間は、3.0~3.1%で推移しており、95年並みの水準だ。
男性は3.1%と前月から0.3ポイント改善した。95年9月以来21年4カ月ぶりの低水準となった。女性は2.7%と前月と同じだった。解雇による離職の減少が失業率の改善につながった。失業者(原数値)は197万人で前年同月に比べ14万人減っている。
企業は人手を囲いこむ狙いから、待遇の良い正社員の採用を増やしている。正社員は前年同月に比べ65万人増えたのに対し、非正規は3万人の増加にとどまった。この結果、非正規比率は0.5ポイント低下の37.5%となった。これまでは非正規の採用が中心だった女性や高齢者で、正社員の雇用が増えている。
企業からの求人は高止まりしている。ハローワークに提出された仕事の数を示す有効求人数(季節調整値)は前月に比べ、0.6%増えた。
新規求人数(原数値)を産業別にみると運輸・郵便業(4.8%増)や社会福祉・介護事業(6.5%増)などで増えている。
求人を出しても人手が確保できず、サービスを見直す企業が出ている。ヤマト運輸が宅配便サービスの見直しを検討したり、外食産業が深夜営業をやめたりしている。製造業でも人手不足は深刻で、新規求人は前年同月比7.7%増加した。
当面、人手不足は解消しそうにない。雇用の先行指標とされる新規求人倍率(季節調整値)は2.13倍で、前月を0.06ポイント下回った。下落は7カ月ぶりだが、2倍を超える高い水準で推移している。少子高齢化の進行で生産年齢人口が減少しているという構造問題も人手不足の背景にある。
1月の全国消費者物価、1年1カ月ぶりプラス エネルギー価格上昇で
総務省が3日発表した1月の全国消費者物価指数(CPI、2015年=100)は値動きの大きな生鮮食品を除く総合指数が99.6と前年同月と比べ0.1%上昇した。プラスは1年1カ月ぶり。QUICKが事前にまとめた市場予想の中央値と同じだった。前年同月と比べて原油などエネルギー価格が大幅に上昇したことが寄与した。
生鮮食品を除く総合では全体の56.4%にあたる295品目が上昇し、170品目が下落した。横ばいは56品目だった。
生鮮食品を含む総合は100.0と0.4%上昇した。エネルギー価格の上昇に加え、キャベツが69.1%上昇するなど一部の生鮮野菜で価格高騰が続いており、指数を押し上げた。今回から新たに公表した生鮮食品とエネルギーを除く総合は100.3と0.2%上昇した。プラスは40カ月連続。
東京都区部の2月のCPI(中旬速報値、15年=100)は生鮮食品を除く総合が99.2と、前年同月比0.3%下落した。下落は12カ月連続だった。エネルギー価格は上昇基調にあるものの、自動車利用の割合が地方に比べて低く、指数への寄与が限られた。中国の旧正月にあたる春節が前年より早い1月に始まったことで、宿泊料などに影響が出た。
2月の消費者態度指数、0.1ポイント低下 3カ月ぶり、先行き不透明感
内閣府が3日発表した2月の消費動向調査によると、消費者心理を示す一般世帯の消費者態度指数(季節調整値)は前月比0.1ポイント低下の43.1だった。低下は3カ月ぶり。エネルギー価格の上昇や米トランプ政権の誕生など先行きに不透明感を持つ消費者がやや増えた。ただ3カ月移動平均は上昇傾向にあり、消費者心理の基調判断を「持ち直しの動きがみられる」に据え置いた。
指数を構成する4つの指標のうち、「暮らし向き」「収入の増え方」「耐久消費財の買い時判断」の3つが悪化した。1年後の物価見通しは「上昇する」と答えた比率(原数値)は前月より1.2ポイント低い73.7%だった。
調査基準日は2月15日。全国8400世帯が対象で、有効回答数は5610世帯、回答率は66.8%だった。


いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。でも、統計をいくつも取り上げると、かなり長くなってしまいました。続いて、雇用統計のグラフは以下の通りです。いずれも季節調整済みの系列で、上から順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。影をつけた期間はいずれも景気後退期です。

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ということで、雇用指標のうちで遅行指標ながら失業率が低下したので、さらに完全雇用と人手不足の印象が強まりましたが、私は賃金が上昇しないという意味で、まだ完全雇用に達しているわけではないと受け止めています。その傍証ながら、月曜日にはリクルートジョブズ調査による「2017年1月度 派遣スタッフ募集時平均時給調査」などを見つつ、派遣スタッフの募集時平均時給が関東と関西で低下して来ている結果を示した通りです。加えて、昨夜の記事でも、人手不足は受注や売上の伸びとの見合いで人手不足なのか、それとも、賃上げが出来ないくらい利益や売上げが伸びないので採用が出来ない結果の人手不足なのか、との疑問を提示しましたが、派遣スタッフの時給の低下は後者の可能性が示唆されているのかもしれないと考えないでもありません。ただし、引用した記事にも見られる通り、賃上げという質的な待遇改善よりも正規職員採用という質的改善を志向する企業も少なくないようで、それはそれで、完全雇用に近づいているのかもしれません。もっとも、やはり賃上げから消費の喚起が景気や成長の観点から望ましいのはいうまでもなく、例えば、法人企業統計でも利益剰余金だけは大きく積み上がっていますが、個別の企業が景気変動に対する耐性を強めるべく内部留保の確保に走れば、逆に、合成の誤謬を生じて景気回復の力強さを削ぐ可能性もあります。その防止のためには、税制なのか、所得政策なのか、現状では私も結論を得ていませんが、国民生活の安定と成長強化のために何らかの政策が必要なのかもしれません。

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次に、いつもの消費者物価上昇率のグラフは上の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く全国のコアCPI上昇率と食料とエネルギーを除く全国コアコアCPIのそれぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフは全国のコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。エネルギーと食料とサービスとコア財の4分割です。なお、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1位の指数を基に私の方で算出しています。丸めない指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。加えて、酒類の扱いがビミョーに私の試算と総務省統計局で異なっており、私の寄与度試算ではメンドウなので、酒類(全国のウェイト1.2%弱)は通常の食料には入らずコア財に含めています。念のため。ということで、とても久し振り、正確には以来のコアCPIのプラスです。ただし、日銀のリフレ策が功を奏した結果、というよりも、国際商品市況における石油価格の上昇の方が影響力が強かったような気がします。いずれにせよ、円安と油価の上昇で今年の年末にかけてコアCPI上昇率は+1%前後まで達するとの見方がエコノミストの間では支配的なように見受けられます。

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最後に、消費者態度指数のグラフは上の通りで、ピンクで示したやや薄い折れ線は訪問調査で実施され、最近時点のより濃い赤の折れ線は郵送調査で実施されています。また、影をつけた部分は雇用統計と同じで景気後退期を示しています。ということで、消費者態度指数を構成するコンポーネントについて前月差でみると、収入の増え方が▲0.2ポイント低下、暮らし向きも▲0.1ポイント低下、耐久消費財の買い時判断もやはり▲0.1ポイント、他方、雇用環境だけは+0.2ポイント上昇となっています。先月と同じように雇用が消費者マインドを牽引する形です。賃上げ動向と併せて私の気にかかっている収入の増え方については、昨年2016年10月以降で見て、ボーナス効果があったのか唯一12月を除いて、5か月のうちの4か月で前月差マイナスと落ち込んでいます。収入が増えた実感がなく、マインドも上向きませんから、これでは、消費が冴えないわけです。ただ、収入を得る大きな手段のひとつ、というか、おそらく最大の手段である雇用環境については、昨年12月から3か月連続で前月差はプラスです。解釈は容易ではありませんが、株価はそこそこ上がっているようですし、雇用から得られる所得以外の収入が伸び悩んでいるとも思えません。ややです。まあ、±0.1ポイントの上げ下げは誤差範囲かもしれません。統計作成官庁の内閣府でも、基調判断は据え置かれています。
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2017年03月02日 (木) 21:27:00

帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査」結果やいかに?

かなり旧聞に属する話題ですが、2月21日に帝国データバンクから2017年1月の「人手不足に対する企業の動向調査」の結果が明らかにされています。まず、帝国データバンクのサイトから調査結果のポイントを2点引用すると以下の通りです。

調査結果
  1. 企業の43.9%で正社員が不足していると回答、半年前の2016年7月調査から6.0ポイント増加した。正社員の人手不足は、過去10年で最高に達した。業種別では「放送」の73.3%でトップとなった。さらに、「情報サービス」や「メンテナンス・警備・検査」「人材派遣・紹介」「建設」が6割以上となった。また、規模別では、規模の大きい企業ほど不足感が強く、「大企業」では51.1%と半数を超えている。大企業における人手不足が中小企業の人材確保にも影響を与えている可能性がある
  2. 非正社員では企業の29.5%が不足していると感じており、半年前から4.6ポイント増加した。業種別では「飲食店」「娯楽サービス」「飲食料品小売」などで高い。上位10業種中8業種が小売や個人向けサービスとなり、個人消費関連業種で人手不足が高くなっている。規模別では、規模の大きい企業ほど不足感は強い。他方、正社員と非正社員の両方で上位にあがったのは「メンテナンス・警備・検査」と「人材派遣・紹介」の2業種にとどまり、雇用形態による不足業種が大きく異なる結果となった


ということで、リポートからいくつかグラフを引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、上のグラフはリポートから最近の期間で半年おきに3回の調査における従業員の過不足感を問うた結果のグラフを引用しています。正社員・非正社員ともに不足感がもっとも大きく、逆に、過剰感はもっとも小さくなっています。特徴的な点は、過剰感は正社員の方が非正社員よりも大きいにもかかわらず、不足感は正社員の方が非正社員よりグンと大きいという結果になっています。また、自由回答から企業の声がいくつか取り上げられており、量的に人手不足で受注機会を逃しているという声だけでなく、質的に技術者のスキル(能力)不足も課題となっている様子がうかがえます。さすがに大企業では人繰りは何とかならないでもない一方で、特に、従業員数の少ない小規模企業では人手のやりくりが苦しくなっている企業もあるようです。

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次に、上のグラフはリポートから業種別・規模別の人手不足の現状を表すグラフを引用しています。正社員の不足については、放送でもっとも高く、以下、情報サービス、メンテナンス・警備・検査、人材派遣・紹介、建設のトップ5では60%を超える企業で不足感が広がっています。非正社員の不足では、飲食店が最高で、次いで、娯楽サービスも60%を超えています。以下、飲食料品小売、繊維・繊維製品・
服飾品小売、医薬品・日用雑貨品小売がトップ5であり、トップ10のうち8業種が小売・個人向けサービスといった個人消費関連で不足感が強くなっています。しかし、私の目から見て、受注や売上げが伸びたので企業活動とのとの見合いで人手不足なのか、それとも、賃上げが出来ないくらい利益や売上げが伸びないので人手不足なのか、どちらかが気にかかるところです。
最後に下のグラフはリポートから時系列で見た正社員・非正社員の「不足」割合のグラフを引用しています。正社員・非正社員とも最近10年で不足との回答割合がもっとも高くなっているのが読み取れます。ただ、前のパラの疑問の繰り返しなんですが、受注や売上げが伸びたので企業活動とのとの見合いで人手不足なのか、それとも、賃上げが出来ないくらい利益や売上げが伸びないので人手不足なのか、どちらかが気にかかるところです。

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2017年03月01日 (水) 20:31:00

本日公表の法人企業統計調査は企業部門の良好な業績を確認! でも家計部門は?

本日、財務省から10-12月期の法人企業統計が公表されています。季節調整していない原系列の統計で、売上高は5四半期振りの増収を示し、経常利益は2四半期連続の増益で、しかも、四半期ベースで過去最高を記録しています。すなわち、売上高は前年同期比+2.0%増の338兆3486億円、経常利益も+16.9%増の20兆7579億円でした。また、設備投資は前年同期比+3.8%増の10兆9350億円と、2四半期振りのプラスに転じています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

法人企業統計、設備投資3.8%増 10-12月期 経常利益は最高
財務省が1日発表した2016年10-12月期の法人企業統計によると、金融業・保険業を除く全産業の設備投資は前年同期比3.8%増の10兆9350億円だった。プラスは2四半期ぶり。製造業と非製造業ともに増加した。経常利益は16.9%増の20兆7579億円となり、四半期ベースで過去最高を記録した。
設備投資を産業別にみると、製造業が7.4%増と2四半期ぶりに伸びた。化学や輸送用機械で生産能力の増強などを目的とした投資が増えた。非製造業は1.9%増と3四半期ぶりのプラス。情報通信業で通信設備装置の高速化に対応する投資が増えた。不動産業で商業施設やオフィスビルなども伸びた。
国内総生産(GDP)改定値を算出する基礎となる「ソフトウエアを除く全産業」の設備投資額は季節調整済みの前期比で3.5%増加した。製造業が7.4%増加し、非製造業は1.3%増だった。
経常利益は前年同期比16.9%増の20兆7579億円。増益は2四半期連続。製造業が25.4%増と6四半期ぶりに増加。情報通信機械が不採算事業の売却で利益率が改善。化学では医薬品の販売好調が寄与した。非製造業は12.5%増と2四半期連続でプラス。持ち株会社の子会社からの配当金が増えた。
全産業の売上高は2.0%増の338兆3486億円だった。5四半期ぶりに増収となった。非製造業は2.8%増と5四半期ぶりにプラス。飲食・宿泊業で売り上げが伸びた。資源価格上昇で卸売業も増収となった。製造業は0.1%減と6四半期連続でマイナス。円高で情報通信機械などの売り上げが減少した。
同統計は資本金1000万円以上の企業収益や収益動向を集計。今回の16年10-12月期の結果は、内閣府が8日発表する同期間のGDP改定値に反映される。


やや長いものの、いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、法人企業統計のヘッドラインに当たる売上げと経常利益と設備投資をプロットしたのが下のグラフです。色分けは凡例の通りです。ただし、グラフは季節調整済みの系列をプロットしています。季節調整していない原系列で記述された引用記事と少し印象が異なるかもしれません。影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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法人企業統計を見る限り、2015年最終四半期ころから円高に従って企業部門の経済活動には陰りが見え始めたんですが、昨年2016年年央ころに企業活動が底を打ち、2016年10-12月期には企業業績がかなり上向いていることが確認されたと、私は受け止めています。上のグラフの上のパネルにも見える通り、また、引用した記事にもある通り、四半期ベースでは経常利益は過去最高を記録しています。また、グラフの下のパネルでは設備投資が増加の兆しを見せていますが、この法人企業統計の信頼性を考え合わせると、もう少し別の指標を見たり、あるいは、この法人企業統計ももう少し長めに見たい気もします。しかしながら、2014年の消費増税から消費が低迷を続けている現状にあって、指標としては消費に代表される家計部門の停滞と企業部門の業績を突き合わせて見ると、やはり、所得面では企業部門から家計部門へのなんらかの移転が必要としか考えられません。現状の人手不足を考えると、さらに雇用者を増加させるというよりは、基本的には賃上げなが必要んでしょうが、何ともバランスの悪い経済になっている気がします。その上で、現状の財政赤字を考えると財政調整が必要とはいえ、法人税を減税しながら消費税を増税する方向を志向するのは、私の目には疑問が大きいとしか映りません。何らかの所得政策、特に格差を是正し貧困層を底上げするような所得政策、ベーシック・インカムなどの議論を開始すべき時期に差しかかっている気がします。

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続いて、上のグラフは私の方で擬似的に試算した労働分配率及び設備投資とキャッシュフローの比率、さらに、利益剰余金をプロットしています。労働分配率は分子が人件費、分母は経常利益と人件費と減価償却費の和です。特別損益は無視しています。また、キャッシュフローは実効税率を50%と仮置きして経常利益の半分と減価償却費の和でキャッシュフローを算出しています。このキャッシュフローを分母に、分子はいうまでもなく設備投資そのものです。この2つについては、季節変動をならすために後方4四半期の移動平均を合わせて示しています。利益剰余金は統計からそのまま取っています。上の2つのパネルでは、太線の移動平均のトレンドで見て、労働分配率はグラフにある1980年代半ば以降で歴史的に経験したことのない水準まで低下しましたし、キャッシュフローとの比率で見た設備投資は50%台後半で停滞が続いており、これまた、法人企業統計のデータが利用可能な期間ではほぼ最低の水準です。他方、いわゆる内部留保に当たる利益剰余金だけはグングンと積み上がりを見せています。労働分配率と設備投資の対キャッシュフロー比率も、いずれも、やや上昇する兆しを見せたんですが、元に戻ってしまったような気がします。これらのグラフに示された財務状況から考えれば、まだまだ雇用の質的な改善のひとつである賃上げ、もちろん、設備投資も大いに可能な企業の財務内容ではないか、と私は期待しています。

本日公表された法人企業統計などを盛り込んで、昨年2016年10-12月期のGDP統計2次QEが来週3月8日に内閣府から公表される予定となっています。設備投資が上方修正され、成長率もわずかながら上方修正されるんではないかと私は予想していますが、改定幅は小さいと思われます。また、日を改めて2次QE予想として取りまとめたいと思います。
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2017年02月28日 (火) 20:42:00

本日公表の鉱工業生産指数(IIP)と商業販売統計から何が読み取れるか?

本日、経済産業省から1月の鉱工業生産指数(IIP)商業販売統計が公表されています。鉱工業生産は季節調整済みの系列で前月比▲0.8%の減産、小売業販売額は季節調整していない原系列の統計で前年同月比+1.0%増の11兆5820億円と、まずまずの結果を示しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

鉱工業生産、1月0.8%低下 2月予測は3.5%上昇
経済産業省が28日発表した1月の鉱工業生産指数(2010年=100、季節調整済み)速報値は前月比0.8%低下の99.8だった。生産の基調判断は「持ち直しの動き」に据え置いた。
QUICKがまとめた民間予測の中央値は前月比0.4%上昇だった。
出荷指数は0.4%低下の98.5で、在庫指数は0.0%上昇の107.5。在庫率指数は1.7%上昇の111.4だった。
同時に発表した製造工業生産予測調査では2月が3.5%上昇、3月は5.0%低下を見込んでいる。
1月の小売販売額、前年比1.0%増
経済産業省が28日発表した1月の商業動態統計(速報)によると、小売販売額は前年同月比1.0%増の11兆5820億円だった。季節調整済みの前月比は0.5%増だった。大型小売店の販売額は百貨店とスーパーの合計で1.0%減の1兆6739億円となった。既存店ベースの販売額は1.1%減だった。
コンビニエンスストアの販売額は3.2%増の9136億円だった。


いつもながら、コンパクトによく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは以下の通りです。上のパネルは2010年=100となる鉱工業生産指数そのもの、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は、次の商業販売統計とも共通して、景気後退期です。

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引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは前月比で+0.4%の増産でしたから、▲0.8%の減産という実績はややネガティブなサプライズと考えられなくもありません。減産の原因のひとつとして、モデルチェンジに伴う自動車生産の増産が一巡した点が上げられていて、その点は確かに気がかりといえます。しかし、大きく悲観する必要がないと私が考えるのは、やはり、中華圏の春節の影響です。引用した以外の別の日経の記事によれば、記者会見で経産省から「中国向け製品の生産が減るなどの影響は表れていない」との説明があったらしいんですが、昨年までの1月春節による季節調整の歪みの可能性は十分あります。また、足元での出荷の大幅な低下あるいは在庫の増加などは見られず、先行き3月には減算する可能性は残されているものの、目先の確度の高い2月の増産が見込まれている点などを考慮すると、基調判断を下方修正するほどの懸念はなさそうな気もします。何度かの繰り返しになりますが、家電エコポイントによる白物家電などの耐久消費財の買い替えサイクルを迎えつつある点や、3年前の2014年の消費増税に伴う駆け込み需要の反動の剥落も進んでおり、家計セクターの消費も緩やかながら増加の要因が調い、企業セクターの人手不足に伴う設備投資も今後期待できますので、生産の回復傾向は継続すると見込まれる一方で、もしも、大きなショックが生じるとすれば、米国の通商政策に起因する可能性なんですが、コチラは皆目見通せません。

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続いて、商業販売統計のグラフは上の通りです。上のパネルは季節調整していない小売販売額の前年同月比増減率を、下のパネルは季節調整指数をそのまま、それぞれプロットしています。消費にリンクする小売販売額は季節調整していない原系列では前年同月比+1.0%増、また、季節調整済みの系列の前月比でも+0.5%と増加しています。しかし、生産における中華圏の春節の影響の真逆が商業販売統計のインバウンド消費で生じている可能性があります。すなわち、昨年までの2月春節に比べて、今年の1月春節でインバウンド消費が1月にズレ込んだため、1月の消費が大きめに見えている可能性が排除できません。特に、鉱工業生産指数(IIP)のグラフでも耐久消費財の出荷はまだ底ばっているようにも見えます。しかし、今後は、これも繰り返しになりますが、白物家電の買い替えサイクルや消費増税による駆け込み需要の反動の剥落が進み、耐久消費財も含めて、消費も緩やかな回復に向かうものと期待しています。
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2017年02月27日 (月) 21:24:00

リクルートジョブズ調査による派遣スタッフとアルバイト・パートの時給の推移やいかに?

今週金曜日に総務省統計局から失業率が、また、厚生労働省から有効求人倍率などがそれぞれ公表される予定になっており、世間一般では労働市場はほぼ完全雇用に近いんではないか、との見方が支配的になっている一方で、私なんぞは賃金が上がらないからまだ完全雇用ではない、と主張しているところ、政府統計で賃金の推移を見る毎月勤労統計の評判が必ずしも芳しくなく、今夜はリクルートジョブズの調査から、それぞれ今年1月の「派遣スタッフ募集時平均時給調査」と「アルバイト・パート募集時平均時給調査」のデータをグラフにして簡単に取り上げておきたいと思います。

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上のグラフはリクルートジョブズ調査による三大都市圏における派遣スタッフ及びアルバイト・パートのそれぞれの募集時平均時給の推移を実額と前年同月比伸び率でプロットしています。それぞれ凡例の通りです。下のパネルのアルバイト・パートについては、まだ前年同月比で+2%程度の伸びを示していますが、上のパネルの派遣スタッフについては昨年2016年9月に▲0.7%減を示してから10月こそ+0.1%増となったものの、11月▲0.1%減、12月▲0.4%減と続き、とうとう今年2017年1月には▲0.9%減を記録しました。
1月の派遣スタッフの平均時給の伸びを三大都市圏の地域別に見ると、東海ではまだプラス圏内で推移しているものの、関西と関東ではマイナスを記録しています。職種別ではデザイナーやweb関連などのクリエイティブ系が特に大きなマイナスを記録しています。リクルートジョブズの調査では、職種はオフィスワーク系、営業・販売・サービス系、IT・技術系、クリエイティブ系、医療介護・教育系の5系統に分割されているんですが、地域別・職種別に3x5の15のマトリックスのうち、直近の2017年1月調査で前年同月比伸び率がマイナスを記録しているのは、関東のクリエイティブ系と関西の医療介護・教育系だけですが、これが全体を大きく下押しして派遣スタッフの時給の平均を押し下げています。特に医療介護・教育系では看護師・准看護師の時給の下落が大きくなっています。私も何が起こっているのか、正確な情報は持ち合わせませんが、人手不足で非正規雇用のアルバイト・パートや派遣スタッフでも時給が上昇を続ける、という意味での完全雇用に達しているわけではない、という認識が成り立とうかと考えています。春闘をはじめとする賃金の先行き動向も不透明ですし、「人手不足で完全雇用」という状況にはまだ達していないという見方が正確なんだろうと私は受け止めています。
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2017年02月24日 (金) 21:42:00

世銀リポート Trade Developments in 2016 に見る不確実性と貿易と生産性の関係やいかに?

今週2月21日付けで、世銀から Trade Developments in 2016: Policy Uncertainty Weighs on World Trade と題するリポートが公表されています。もちろん、pdfの全文リポートもアップされています。どうやら、ワーキングペーパーの扱いなんですが、要するに、最近の世界の政治経済情勢が不確実性を増していて、その不確実性が貿易の伸びを鈍化させ、ひいては、生産性の向上を阻害する要因になりかねない、という趣旨のようです。まず、世銀のサイトからリポートのハイライトを3点引用すると以下の通りです。

STORY HIGHLIGHTS
  • 2016 is the fifth consecutive year of slow trade growth and the year with the weakest performance in trade since the Global Financial Crisis.
  • Weak trade growth seen in 2016 was characteristic to both high-income and developing economies.
  • Trade developments in 2016 reflected a number of factors including slow global growth and low commodity prices, as well as increased policy uncertainty and maturing global value chains.


やや、海外報道を読んだ私の印象と異なるような気もするんですが、必ずしも国内のメディアから注目されていない国際機関のリポートなどを取り上げるのは、私のこのブログのひとつの特徴でもありますので、リポートからグラフをいくつか引用しつつ簡単に見ておきたいと思います。

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まず、上のグラフはリポート p.10 から Figure 6: World import growth and policy uncertainty, from mid-2012 to 2016 を引用しています。2013年を底にして経済政策の不確実性が増して来ており、特に、2015年の欧州難民危機から2016年の英国のBREXITを決めた国民投票、トランプ大統領を選出した米国大統領選挙で大きくジャンプしているのが見て取れます。そして、その経済政策の不透明性に逆相関する形で貿易数量の伸び率が低下しています。なお、ここでは輸入数量をもって貿易の代理変数としているようですが、その後の議論の進みを見れば、需要や成長に結びつく輸出ではなく、国内におけるGVCの起点となる輸入に焦点を当てているのは意味のあるところです。

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次に、上のグラフはリポート p.10 から Figure 7: Goods and services import volume growth and policy uncertainty, by country and year を引用しています。輸入で代理された貿易と経済政策の不確実性の相関を見ています。ハッキリ言って、ほとんど無相関に近いんですが、それでも、1985年から2015年までの18か国における長期系列を取ると、最初のグラフの結論の繰り返しになるものの、政策の不確実性と貿易の伸びの間には逆相関が観察されます。なお、縦軸は輸入数量の対数階差なんですが、計算すればわかるように、時系列変数の対数階差はほぼ伸び率に近似します。

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最後に、上のグラフはリポート p.15 から Figure 11: Manufacturing industries: vertical specialization and labor productivity, 1995-2009 を引用しています。輸入が増加すれば、それを起点とした垂直的な特化が進み、その特化に従って生産性が向上する、という見立てです。やや苦しい立論かもしれませんが、無視できない見方です。ですから、経済政策の不確実が増すと輸入の伸びが鈍化し、輸入の伸びが鈍化すると垂直的な特化が進まず労働生産性の伸びが停滞する、という見事な三段論法になっているわけです。そして、その経済政策の不確実性のソースとして、BREXITを決めた英国の国民投票とトランプ大統領を選出した米国大統領選挙を示唆しています。個別国の主権を有する国民の投票結果にケチをつけているようにも読め、その限りでは、やや不埒なリポートのように感じなくもないんですが、まあ、エコノミストの見方としてはこんなもんかもしれないという気もします。

最後の最後に、3枚引用したグラフのうちの2枚目と3枚目については相関を見た散布図ですので、縦軸と横軸は本来はどちらがどちらでもいいようにも考えられますが、あくまで、伝統的に関数形は y=f(x) であって、横軸のx軸の変数が縦のy軸の変数を決めるという因果関係を暗黙の裡に前提しており、その因果の流れに従ったグラフを作図しているような気がします。
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2017年02月23日 (木) 20:28:00

企業向けサービス物価(SPPI)上昇率は着実にプラス圏内を続ける!

本日、日銀から1月の企業向けサービス物価指数(SPPI)が公表されています。前年同月比上昇率で見て、ヘッドラインSPPIは+0.5%、国際運輸を除くコアSPPIも+0.4%と、徐々に上昇幅が拡大しています。でも、誤差範囲かもしれません。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

企業向けサービス価格、1月は前年比0.5%上昇 貨物輸送が上昇
日銀が23日発表した1月の企業向けサービス価格指数(2010年平均=100)は103.0で、前年同月比で0.5%上昇した。43カ月連続で前年同月を上回り、プラス幅は昨年12月の確報値(0.5%)から横ばいだった。外航貨物輸送が前年比8.2%上昇となるなど、原油価格の上昇を受けた貨物運賃の持ち直しが寄与した。前月比では広告などが低下し、0.5%下落した。
対象の147品目のうち、価格が上昇したのは53、下落した品目は49だった。上昇品目数が下落を上回るのは16年9月以来。
テレビ広告は0.9%下落した。昨年にスポーツ特番などが寄与した反動が出た。ホテルなどの宿泊サービスは2.5%上昇となった。
日銀は企業向けサービス価格の先行きについて「価格改定期の4月がどう出るのかがポイント」(調査統計局)と説明した。


いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、SPPI上昇率のグラフは以下の通りです。サービス物価(SPPI)と国際運輸を除くコアSPPIの上昇率とともに、企業物価(PPI)上昇率もプロットしてあります。SPPIとPPIの上昇率の目盛りが左右に分かれていますので注意が必要です。なお、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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何分、粘着性が強い物価ですから、企業向けサービス物価(SPPI)についても前年同月比で見て+0.5%近辺で膠着しているように見えます。でも、ここ半年ほどで中身はかなり違って来ています。一例ですが、昨年はオリンピック開催年ということもあり、広告の上昇率が高かった一方で、今年に入って広告料金は失速し始め、1月にはとうとう前年同月比でマイナスに転じています。逆に、国際商品市況の石油価格の低下が燃料費に波及して長らくマイナスを続けてきた運輸・郵便が1月に入ってプラスに転じています。広告などの需要面からのプル要因がやや鈍化を見せ始めている一方で、石油価格などの供給面からのプッシュ要因が出始めているわけです。ただし、総じて人手不足ながら賃金がそれほど上昇しておらず、人件費の比率高いサービス物価の上昇も鈍っていることは確かです。日銀当局の指摘にある通り、4月からの価格改定に注目すべきなんでしょうか?
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2017年02月22日 (水) 23:28:00

東洋経済オンライン「海外勤務者が多い」トップ200社ランキングやいかに?

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先週2月17日付けで、東洋経済オンラインから「海外勤務者が多い」トップ200社ランキングが明らかにされています。私自身も南米はチリでの大使館勤務とインドネシアの首都ジャカルタでの国際協力機構の専門家としての勤務と、それぞれ3年間の海外勤務を経験していますので、少し興味を持って見ています。でも、諸般の事情により、簡単に1位から50位までのテーブルの画像を引用してお仕舞いにしたいと思います。なお、上の画像の通り、1位はトヨタ自動車です。いわずと知れた世界首位級の自動車メーカーで、海外30カ国約80事業体で約2450人の海外勤務者が働いているそうです。もちろん、三菱商事、三井物産、住友商事、丸紅などの総合商社も軒並みトップ10に入っていて、人数はともかく、従業員との海外勤務者比率では海運、プラントなどとともに高くなっています。ただ、海外勤務者比率がトップなのは日本貿易振興機構(JETRO)となっており、40%を超えています。同じく独立行政法人である国際協力機構(JICA)もかなり高率で20%を超えていて、総合商社並みのようです。就活生には参考になったかな?
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2017年02月21日 (火) 21:38:00

発足1か月のトランプ政権に対する米国民の評価やいかに?

1月20日の就任式以来ほぼ1か月を経過し、米国のトランプ大統領に関する世論調査結果が2月16日付けでピュー・リサーチ・センターから In First Month, Views of Trump Are Already Strongly Felt, Deeply Polarized と題して明らかにされています。もちろん、pdfの全文リポートもアップされています。サマリーを別にして以下の4部構成ですが、今夜の記事では最初のサマリーからグラフを引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。

  1. Early public attitudes about Donald Trump
  2. Views of Trump's executive order on travel restrictions
  3. Views of Islam and extremism in the U.S. and abroad
  4. Attitudes toward increasing diversity in the U.S.


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まず、上のグラフはピュー・リサーチのサイトから Trump has robust GOP backing, almost no crossover support を引用しています。レーガン米国大統領以降の数代に渡る米国大統領のこの時期の支持率は過半を超えているのが通常のような気もしますが、現在のトランプ大統領だけはわずかに支持率39%に低迷しています。大統領就任しょっぱなから支持率39%なわけです。特に2点指摘しておきたいのが、直前のオバマ前大統領の支持率から比べて、大きく低迷している点と、民主党と共和党の両党の党員・支持者間で極めて深刻な開きがあり、大統領野党の民主党からの支持がほとんどない点です。

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次に、上のグラフはピュー・リサーチのサイトから Disapproval of Trump's refugee policy, broad criticism of how it was executed を引用しています。大きな注目を集めている難民政策とイスラム圏7か国からの入国停止に関する大統領令の支持率の調査結果です。入国停止に関しては、連邦控訴裁判所で効力を停止されていることは広く報じられているところです。民主党と共和党のそれぞれの支持率で特に大きな開きが出ています。グラフからは読み取れませんが、特に女性からの不支持が高いようです。

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最後に、上のグラフはピュー・リサーチのサイトから Early impressions: Fewer view Trump as trustworthy, well-informed compared with Obama, Bush or Clinton を引用しています。実行力 (ability to get things done) だけはそこそこのスコアを示しているものの、信頼性 (Trustworthy) をはじめとして、直前のオバマ前大統領とはほぼダブルスコアの差をつけられ、直前4代のクリントン元大統領以降では実行力も含めて最低のスコアを記録しています。

ただし、グラフは引用しませんが、経済状況については改善が見られるとの評価が出始めています。何といっても、"It's the economy, stupid!" を大統領選挙のスローガンにして当選したクリントン元大統領のような例もありますから、経済が上向けばトランプ大統領に対する支持も上がる可能性はあるんではないか、と私は予想しています。
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2017年02月20日 (月) 21:12:00

5か月振りの赤字を計上した貿易収支の先行きやいかに?

本日、財務省から1月の貿易統計が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、輸出額は前年同月比+1.3%増の5兆4219億円、輸入額も+8.5%増の6兆5088億円、差引き貿易収支は▲1兆869億円の赤字を計上しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

1月の貿易収支、5カ月ぶり赤字 1兆869億円、輸入25カ月ぶり増加
財務省が20日発表した1月の貿易統計(速報、通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は1兆869億円の赤字だった。貿易赤字は5カ月ぶり。QUICKがまとめた市場予想の中央値は6293億円の赤字だった。資源価格の上昇などを背景に輸入額が2014年12月以来25カ月ぶりに増加に転じた。中国の春節(旧正月)をはじめとする季節要因で輸出が滞ったことも影響した。
輸出額は前年同月比1.3%増の5兆4219億円と2カ月連続で増加。1月の為替レート(税関長公示レートの平均値)は1ドル=116.48円と前年同月から2.6%の円高だったほか、春節が1月28日と前年より早かったことから中国向けの輸出が伸び悩むなどし増加幅は限られた。
中国向けの重油や自動車部品などの輸出が増えた。地域別では米国向けが6.6%減、欧州連合(EU)が5.6%減となった。中国を含むアジアは6.0%増だった。
輸入額は8.5%増の6兆5088億円となった。サウジアラビアからの原粗油、オーストラリアからの石炭などの伸びが顕著だった。原粗油の輸入は数量ベースでは前年同月から減少したが、資源価格の上昇に伴い金額が35.6%増と膨らんだ。米国からはシェールガス由来の液化天然ガス(LNG)の輸入を初めて計上した。
財務省は同日、5月22日に公表する4月の貿易統計から資料の記載項目を一部変えると発表した。「主要地域(国)別商品別輸出(輸入)」からアジア新興工業経済群(NIES)を削除し韓国を追加するなどの変更を行う。


いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

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季節調整していない原系列の統計で見て、5か月振りの貿易赤字とはいえ、上のグラフでも明らかな通り、トレンドに沿った季節調整済みの系列で見ると、一昨年2015年11月から直近1月まで黒字が続いています。もちろん、直近1月の黒字幅はわずかに+1555億円と大きく縮小していますが、明らかに、輸入面では石油価格の上昇、輸出面では中華圏の春節の影響が大きいと考えるべきです。国際商品市況における石油価格については何ともいえませんが、中国の春節が昨年の2月から今年は1月にずれ込んだ点については、イレギュラー要因としかいいようがありません。でも、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでも、▲6000億円余りの赤字を予想していたわけですから、▲1兆円を超えたとはいえ、貿易赤字の予想という点に関しては大きなサプライズはなかった気がします。従って、1月の貿易統計については、中国の春節効果を考慮すると、1-2月でならして見る必要があるものと考えられます。いずれにせよ、我が国の貿易は輸出入とも拡大局面に入ったと私は受け止めており、背景には我が国と世界経済の緩やかな回復・拡大があるわけですから、それはそれで評価すべきと私は考えています。

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輸出をいくつかの角度から見たのが上のグラフです。上のパネルは季節調整していない原系列の輸出額の前年同期比伸び率を数量指数と価格指数で寄与度分解しており、まん中のパネルはその輸出数量指数の前年同期比とOECD先行指数の前年同月比を並べてプロットしていて、一番下のパネルはOECD先行指数のうちの中国の国別指数の前年同月比と我が国から中国への輸出の数量指数の前年同月比を並べています。ただし、まん中と一番下のパネルのOECD先行指数はともに1か月のリードを取っており、また、左右のスケールが異なる点は注意が必要です。1月の中国向けの輸出については、明らかに、中華圏の春節によるイレギュラー要因の影響が出ています。春節効果を別にすれば、我が国の輸出は緩やかに拡大する方向にあると私は考えており、その理由は為替の円安化に伴う価格効果と中国や米国をはじめとする世界経済の回復による所得効果です。引用した記事にもある通り、1月の税関長公示レートこそ、前年同月に比べて円高でしたが、トランプ米国大統領当選後の為替相場は昨年11月半ばから円安傾向で推移しています。また、上のグラフに見る通り、OECD先行指数に見る先進国や中国の景気は回復を見せています。いずれも、我が国の輸出に追い風となっていると私は受け止めています。

ただし、最後に、輸出の先行きリスクについては、漠然とした影響ながら、米国のトランプ新政権による保護主義的な通商政策はリスクになり得ると考えられます。TPPについては、まだ発効すらしていませんし、NAFTAの再交渉も我が国は含まれていませんから、我が国の貿易に大きなダメージを及ぼすとはとても考えていませんが、むしろ、先行きの何らかの米国との二国間交渉があり得る可能性は排除できません。でも、1990年代のクリントン政権時の包括協議に巻き込まれた経験から、私自身がやや被害妄想になっている可能性はあります。
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2017年02月17日 (金) 21:32:00

東京商工リサーチによる「2016年 全国社長の年齢調査」やいかに?

とても旧聞に属する話題ですが、2月3日付けで東京商工リサーチから「2016年 全国社長の年齢調査」の結果が明らかにされています。300万社近い企業データベースから代表者の年齢データを抽出しているそうです。我が国全体の高齢化に従って、社長さんも高齢化しているようです。週末前の軽い話題としてグラフをとともに簡単に取り上げておきます。

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まず、上のグラフは東京商工リサーチのサイトから 社長の平均年齢推移 を引用しています。5年間で1歳あまりジワジワと高齢化が進んでいるのが見て取れます。我が国全体でそうなんですから、社長さんもそうなんだろうという気がします。10歳刻みの年齢分布で見ると、60代の構成比が33.99%でもっとも高く、それでも、70代以上も24.12%を占めています。また、都道府県別では、社長の平均年齢のトップは高知県の63.21歳、次いで、岩手県の63.02歳、秋田県の62.97歳の順となっており、年齢の上位の県は総務省統計局の人口推計における「都道府県別人口増減率」の減少率上位とほぼ同じ顔ぶれだそうです。まあ、判る気がします。

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続いて、上のグラフは東京商工リサーチのサイトから 産業別 社長の平均年齢 を引用しています。情報通信業の社長さんが際立って平均年齢が若いとの結果が示されています。これも判る気がします。なお、ほかに、社長さんの年齢と企業業績、すなわち、売り上げや利益、あるいは、黒字赤字などがデータとして示されていますが、ほとんど言いがかりに近いような気がしますので割愛します。
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2017年02月16日 (木) 21:39:00

労務行政研究所による「2017年賃上げの見通し」アンケート調査結果やいかに?

とても旧聞に属する話題ですが、2月1日付けで労務行政研究所から「2017年賃上げの見通し」アンケート調査結果が明らかにされています。興味深いのは、東証第1部および2部上場企業の労働組合委員長などの労働側、同じく東証第1部および2部上場企業の人事・労務担当部長の経営側、そして、主要報道機関の論説委員・解説委員、大学教授、労働経済関係の専門家、コンサルタントなどの労働経済分野の専門家の三者に対する調査を実施している点です。リポートから図表を引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。

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東証第1部・2部上場クラスの主要企業を目安とした世間相場の観点からの回答を求めているので、中小企業を含む全国平均からはかなり上振れている可能性はありますが、今年2017年の賃上げ見通しは、労働側6235円1.98%、経営側6286円1.99%、専門家6510円2.06%との結果でした。特徴的なのは労働側の弱気姿勢で、上のグラフはリポートから、ここ10年ほどの【図表2】実際の賃上げ見通しに見る労使の差の推移 を引用していますが、今年の賃上げ予想は労使で逆転しています。繰り返しになりますが、あくまで、東証第1部・2部上場クラスの主要企業における今年2017年の賃上げがどうなるかについて世間相場の観点からの回答ですから、自社の経営業績や人手不足などの状況とは関係薄いとはいうものの、どうかという気もします。

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加えて、上のグラフはリポートから、これも労使別の【図表4】ベア実施意向の推移 を引用しています。コチラのグラフではベアについては、労働側の方が経営側を上回っているんですが、それでも、2017年は昨年から労働側のベア「実施すべき」比率が急減しています。現在の労働市場を考えると、失業率がかなり低い水準にあり、有効求人倍率もまだ低下を続けていて、もちろん、地域別や産業別などで差はあり得るんでしょうが、何度も繰り返しますが、東証第1部・2部上場クラスの主要企業を念頭に置けば、賃上げはかなり高い確度で実施されるべきであり、少なくとも、各企業の内部留保を賃上げに回すことは可能であろうと私は考えるんですが、そうなっておらず、要求水準ではないものの、労働側の見通しが低いのはとても不思議です。

月曜日にGDP統計の1次QEが公表された際に、+1%成長であれば潜在成長率と照らし合わせても十分高成長であると、このブログにも書きましたが、まだまだ「景気悪い」キャンペーンが労働側の賃上げ見通し感覚に影響を及ぼしている可能性があるのかもしれません。
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2017年02月15日 (水) 19:26:00

ESPフォーキャストに見るトランプ政権の経済政策の評価やいかに?

やや旧聞に属する話題かもしれませんが、日本経済研究センターで実施しているESPフォーキャスター調査の2月調査結果が2月9日に明らかにされており、11月調査に続いて「トランプ大統領の経済政策と米国の成長率」と題する特別調査結果が明らかにされています。

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上のグラフは、日本経済研究センターのサイトから引用しています。見れば判ると思いますが、トランプ大統領の経済政策により米国の成長率が高まるかどうかを問うた結果とその理由です。11月の当選直後の回答では、「高まる」20に対して「低くなる」9のダブルスコアだったんですが、2月調査では15-16とほぼ同数となり、慎重派が増えている印象です。その理由についても、「高まる」とする理由ではインフラ投資と法人税引き下げのいずれも回答者が減っている一方で、「低くなる」とする理由の保護貿易と長期金利上昇がともに回答者を増加させています。低くなるのほかの理由として、クローニー・キャピタリズムが上げられています。まるで途上国のようなファミリー・ビジネスが頭に浮かぶんですが、娘であるイバンカのブランドの洋服の宣伝なんかはそうなのかもしれません。
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2017年02月13日 (月) 20:51:00

10-12月期GDP統計1次QEに見る日本経済は外需依存の物足りない成長なのか?

本日、内閣府から昨年2016年10-12月期のGDP統計1次QEが公表されています。季節調整済みの前期比成長率は+0.2%を記録しました。外需中心ながら、なかなかの高成長といえます。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

10-12月の実質GDP、年率1.0%増 外需に伸び
内閣府が13日発表した2016年10-12月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除く実質で前期比0.2%増、年率換算では1.0%増だった。プラスは4四半期連続。輸出主導で外需が伸びた。個人消費は振るわなかったが補った。
QUICKが集計した民間予測の中央値は前期比0.3%増で、年率では1.0%増だった。
生活実感に近い名目GDP成長率は前期比0.3%増、年率では1.2%増だった。名目も4四半期連続でプラスになった。
実質GDPの内訳は、内需が0.0%分の押し下げ効果、外需の寄与度は0.2%分のプラスだった。項目別にみると、個人消費が0.0%減と、4四半期ぶりにマイナスだった。生鮮野菜の高騰が家計支出を抑制した。
輸出は2.6%増、輸入は1.3%増だった。アジア向けや北米向けに需要が回復し輸出が拡大した。国内需要が伸び、輸入量が増加した。設備投資は0.9%増と、2四半期ぶりにプラスだった。輸出増などを受けて生産活動が回復し、設備投資需要が高まった。住宅投資は0.2%増。公共投資は1.8%減。民間在庫の寄与度は0.1%のマイナスだった。
総合的な物価の動きを示すGDPデフレーターは前年同期と比べてマイナス0.1%だった。輸入品目の動きを除いた国内需要デフレーターは0.3%のマイナスだった。
同時に発表した16年暦年のGDPは実質で前年比1.0%増、生活実感に近い名目で1.3%増となった。


ということで、いつもの通り、とても適確にいろんなことが取りまとめられた記事なんですが、次に、GDPコンポーネントごとの成長率や寄与度を表示したテーブルは以下の通りです。基本は、雇用者報酬を含めて季節調整済み実質系列の前期比をパーセント表示したものですが、表示の通り、名目GDPは実質ではなく名目ですし、GDPデフレータと内需デフレータだけは季節調整済み系列の前期比ではなく、伝統に従って季節調整していない原系列の前年同期比となっています。また、項目にアスタリスクを付して、数字がカッコに入っている民間在庫と内需寄与度・外需寄与度は前期比成長率に対する寄与度表示となっています。もちろん、計数には正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、データの完全性は無保証です。正確な計数は自己責任で最初にお示しした内閣府のリンク先からお願いします。

需要項目2015/10-122016/1-32016/4-62016/7-92016/10-12
国内総生産GDP▲0.3+0.6+0.4+0.3+0.2
民間消費▲0.6+0.4+0.2+0.3▲0.0
民間住宅▲1.0+1.4+3.3+2.4+0.2
民間設備+0.5▲0.3+1.3▲0.3+0.9
民間在庫 *(▲0.1)(▲0.2)(+0.2)(▲0.3)(▲0.1)
公的需要+0.3+0.9▲0.7+0.0▲0.0
内需寄与度 *(▲0.3)(+0.2)(+0.5)(▲0.1)(▲0.0)
外需寄与度 *(+0.0)(+0.3)(▲0.0)(+0.4)(+0.2)
輸出▲0.8+0.9▲1.2+2.1+2.6
輸入▲0.8▲1.1▲1.0▲0.2+1.3
国内総所得 (GDI)▲0.2+1.1+0.6+0.2+0.1
国民総所得 (GNI)▲0.1+0.7+0.3+0.1+0.0
名目GDP▲0.3+0.8+0.3+0.2+0.3
雇用者報酬 (実質)+0.7+1.1+0.3+0.6+0.0
GDPデフレータ+1.5+0.9+0.4▲0.1▲0.1
内需デフレータ▲0.0▲0.3▲0.7▲0.8▲0.3


上のテーブルに加えて、いつもの需要項目別の寄与度を示したグラフは以下の通りです。青い折れ線でプロットした季節調整済みの前期比成長率に対して積上げ棒グラフが需要項目別の寄与を示しており、左軸の単位はパーセントです。グラフの色分けは凡例の通りとなっていますが、本日発表された2016年10-12月期の最新データでは、前期比成長率がプラスを示し、特に、黒い外需が大きくプラス寄与している一方で、灰色の民間在庫がマイナス寄与しているのが見て取れます。

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ということで、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、前期比+0.3%、前期比年率+1.0%の成長率が見込まれていましたので、ほぼジャストミートしました。直近の市場変動要因である日米首脳会談もほぼほぼ無風で終りましたので、今日の東証の日経平均は少しだけ上昇、で終っています。GDP統計に表れた成長率については、内需が寄与度ゼロで外需のみによる成長との批判もあり得ましょうが、内需のうちの在庫の寄与度が▲0.1%ですので、在庫調整が進んでおり、むしろ、在庫調整の進展が計算上は内需の下押し要因になっている点は忘れるべきではありません。同時に、仕上がりの数字として、10-12月期の四半期で見ても、2016年暦年で見ても、年率+1.0%というのは+1%にやや満たないと目されている潜在成長率をやや上回る水準であり、少子化による人口減少や高齢化が進んだ現在の日本の成長率としては決して悪くないと受け止めています。上のグラフを見て、2016年1-3月期から10-12月期にかけて、ジワジワと前期比成長率が低下しているように見えなくもないんですが、一昨年2015年10-12月期のマイナス成長からのリバウンドを考慮すると、こんなもんという気がします。

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上のグラフは雇用者報酬とインバウンド消費の推移をプロットしています。季節調整済みの系列の実額です。今日公表されたGDP統計の需要項目別の数字を見て、設備投資がマイナスを示した7-9月期から10-12月期にはようやくプラスに転じた一方で、消費がほぼ横ばいながらマイナスに転じた点が懸念されています。昨年秋口の天候要因で野菜などの食品価格が高騰したイレギュラーな要因もありましたが、やっぱり、所得の増加が伴っていないのが大きな要因のひとつと考えられます。ただし、サイクル的な要因として、リーマン・ショック以降に政策効果を発揮してきたエコカー減税・家電エコポイント制度による耐久消費財の買い替えサイクルがそろそろ到来すると言われており、加えて、2014年4月の消費増税前の駆け込みによる需要先食いの悪影響がようやく緩和しつつあると考えられますので、現在の人手不足に伴って、春闘などである程度の賃上げが実現されることを織り込めば、自律的な消費の動きとしては緩やかな回復・拡大に向かうものと期待してよさそうです。外需についても、価格要因の大きな部分を占める為替動向は不透明な部分が残されているものの、米国はもとより欧州や中国も含めて世界経済が底を脱して回復・拡大するという所得要因から輸出がさらに期待できますから、今年2017年は内外需ともに増加する可能性が高いと考えるべきです。

最後に、繰り返しになりますが、私は今日公表されたGDP成長率は決して物足りないものではなく、そこそこの高成長と考えているんですが、海外論調をいくつか見ておきたいと思います。ウォールストリート・ジャーナルは低成長と見ているようですが、ファイナンシャル・タイムズは潜在成長率から見て十分な高成長と私と同じような評価であり、ニューヨーク・タイムズもまずまずよいんではなかろうか、という評価のようです。順不同にご参考まで。
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2017年02月10日 (金) 21:14:00

22か月ぶりにプラスを記録した企業物価指数(PPI)の動向やいかに?

本日、日銀から1月の企業物価 (PPI)が公表されています。ヘッドラインの国内物価上昇率は前年同月比で+0.5%の上昇を示しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

1月の企業物価指数、前年比0.5%上昇 上昇は15年3月以来
日銀が10日発表した1月の国内企業物価指数(2015年平均=100)は前年同月比で0.5%上昇の97.7となった。前年比で上昇となるのは15年3月以来、22カ月ぶり。市場予想は前年比0.0%と横ばいだった。原油など国際商品価格の上昇や円安進行が寄与した。
前月比では0.6%上昇となった。前月比では石油・石炭関連や化学製品のほか、鉄鋼、非鉄金属などが上昇した。米国や中国のインフラ投資への期待感から銅の国際市況が回復したことも寄与した。
公表している746品目のうち前年同月比で上昇したのは273品目、下落は401品目だった。上昇と下落の品目差は128品目で、16年12月(186品目)から縮小した。縮小は3カ月連続。
日銀調査統計局は「国内需要の状況は徐々に強まっているが、企業物価への影響はあまりみられない。上昇の主因は国際商品市況の回復や円安の進行」と説明している。


いつもながら、よく取りまとめられた記事だという気がします。次に、企業物価(PPI)上昇率のグラフは上の通りです。上のパネから順に、国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率、需要段階別の上昇率を、それぞれプロットしています。上の2つのパネルで影をつけた部分は、景気後退期を示しています。ということで、

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まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスではヘッドラインの国内物価の前年同月比上昇率は保ち合いと予想されていたんですが、ほぼ2年振りにヘッドラインの国内物価の前年同期比でプラス領域に達しました。基本的には、国際商品市況における石油価格の反発と円安による物価上昇であり、少なくとも前者は日銀金融政策の成果にはカウントされないんだろうと受け止めています。例えば、国内物価のうち石油・石炭製品は1月の前年同月比が+22.3%の大幅な上昇となっています。また、農林水産物も+4.7%の上昇と秋口からの天候不順による価格上昇がまだ続いていえる印象です。また、国内物価以外でも、前年同月比上昇率で見て、輸出物価上昇率も昨年2016年12月の▲1.8%から今年1月には+0.8%に、輸入物価も12月の▲2.6%から+4.5%に、それぞれ、1月からプラスに転じています。物価の先行きについては、小国になってしまった我が国の経済動向もさることながら、国際商品市況の方向性に強く影響を受けそうな気もしますが、基本的に、新興国も含めて世界経済が緩やかに回復を示すとともに、我が国景気も持ち直しを続けており、国内の需給や人手不足を背景に一般物価は緩やかな上昇を続けるものと私は考えています。

なお、ご参考まで、この1月指数から企業物価指数(PPI)は2015年基準になっています。消費者物価指数(CPI)の基準改定と異なり、世間的に注目されないものですから、データを拾っている間に先月統計までとかなり違っていて、少し面食らいました。ただ、企業向けサービス物価はまだ2010年基準のようです。指数をそのままプロットすることは余りない指標ですし、上昇率で見ると大きな違いはないのかもしれません。
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2017年02月09日 (木) 22:42:00

設備投資と機械受注はいよいよ本格的な回復に向かうか?

本日、内閣府から昨年2016年12月の機械受注が公表されています。変動の激しい船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注の季節調整済みの系列で見て、前月比+6.7%増の8898億円を記録しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

12月の機械受注6.7%増 1-3月は3.3%増見通し
10-12月は0.2%減、2四半期ぶりマイナス機械受注

内閣府が9日発表した12月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標とされる「船舶・電力を除く民需」の受注額(季節調整値)は前月比6.7%増の8898億円だった。増加は2カ月ぶり。QUICKが事前にまとめた民間予測の中央値(3.1%増)を大幅に上回った。製造業と非製造業がともに増加した。判断は「持ち直しの動きに足踏みがみられる」に据え置いた。
製造業の受注額は1.0%増の3670億円と2カ月連続で増加した。需要者の業種別では、化学機械や電子計算機が伸びた「化学工業」が71.8%増と急増した。原子力原動機や重電機が増えた「非鉄金属」も53.2%増えた。
非製造業の受注額は3.5%増の5002億円と2カ月ぶりに増えた。需要者の業種別では、鉄道車両で大型案件があった「運輸業・郵便業」が60.9%増と伸びが目立った。建設機械や電子計算機が増えた「建設業」は16.9%増だった。
前年同月比での「船舶・電力を除く民需」受注額(原数値)は6.7%増だった。
併せて公表した2016年10-12月期の船舶・電力を除いた民需の受注額は2兆6018億円と前期比0.2%減だった。電子通信機や産業機械の受注が予想以上に伸び、内閣府が昨年11月に示した16年10-12月期見通し(5.9%減)より減少幅は小さかった。
16年通年の船舶・電力を除いた民需の受注額は10兆2600億円と、前の年に比べ1.7%増えた。増加は4年連続。製造業は1.6%減の4兆3010億円と4年ぶりに減った。非製造業は4.1%増の5兆9854億円と2年連続で増えた。
1-3月期の船舶・電力を除いた民需の受注額は3.3%増の見通し。内閣府は「原動機や航空機の需要が好調に推移する」とみている。製造業は前期比11.6%増え、非製造業は2.3%減にとどまるとしている。


いつもながら、よく取りまとめられた記事だという気がします。次に、機械受注のグラフは以下の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は、その次の企業物価とも共通して、景気後退期を示しています。

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まず、引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスではコア機械受注で見て前月比+3.1%増が予想されていたんですが、大幅にこれを超えた増加を示しています。しかしながら、先月11月の▲5.1%減もあり、10-12月期を通しては▲0.2%減を記録しています。このため、統計作成官庁である内閣府では基調判断を「持ち直しの動きに足踏みがみられる」に据え置いたようですが、先月の段階では10-12月期は▲5.9%減を予想していただけに、マイナス幅もかなり小幅でとどまったと私なんぞは受け止めています。しかも、今年2017年1-3月期の予想は前期比で+3.3%の増加を見込んでおり、海外経済情勢や経済外要因などの不透明さは払拭し切れないものの、基本的には設備投資や機械受注は本格的な回復に向かう可能性が高まったと考えるべきです。ただ、「本格回復」といっても、増加率や増加幅などを照らし合わせると、まあ、人によっては表現上の違いながら、緩やかな回復の範囲にとどまるのかもしれません。しかも、下振れリスクは基本的に海外要因ですが、足元の為替相場を見ると円高方向に向かう可能性は否定できませんし、米国のトランプ政権の通商政策や英国のBREXITの行方、大陸欧州のいくつかの国政選挙など、経済の自律的な動きを反映するものではない経済外要因もどのような方向に向かうか、現時点では不透明です。いくぶんなりとも雇用もそうですが、投資は中長期的な経済の見通しに基づいて実行するものだけに、こういった先行きの不透明さは下押し要因になる恐れがあると考えるべきです。もちろん、自律的な経済要因としては、企業部門の利益水準がかなり高い点や人手不足に伴う合理化や省力化のための投資が見込まれ、米国はもとより欧州や中国などの海外経済の回復に伴う外需も上向きの方向にあり、2020年東京オリンピック・パラリンピックのためのインフラ整備も視野に入って来ており、そろそろ、設備投資や機械受注が本格的に回復してもいい時期であることも確かです。最後に、12月データが利用可能になりましたので、いつもでしたら四半期ベースの達成率のグラフを書くんですが、今夜は遅くなったためグラフは割愛します。ただ、2016年いっぱいは、1-3月期103.2%、4-6月期99.1%、7-9月期98.8%、10-12月期104.4%と、景気転換点としてエコノミストの経験則である90%ラインより上に達成率が位置していたことだけ確認しています。
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2017年02月08日 (水) 19:44:00

大きく低下し基調判断が下方修正された景気ウォッチャーと黒字の続く経常収支!

本日、内閣府から1月の景気ウォッチャーが、また、財務省から昨年2016年12月の経常収支が、それぞれ公表されています。、景気ウォッチャーは季節調整済みの系列で見て、現状判断DIは前月比▲1.6ポイント低下の49.8を、また、先行き判断DIは前月比▲1.5ポイント低下の49.4を、それぞれ記録し、経常収支は季節調整していない原系列の統計で1兆1122億円の黒字を計上しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

1月の街角景気、現状判断7カ月ぶり悪化 判断11カ月ぶり下げ
内閣府が8日発表した1月の景気ウオッチャー調査によると、街角の景気実感を示す現状判断指数(季節調整値)は前の月に比べ1.6ポイント低下の49.8だった。悪化は7カ月ぶり。内閣府は基調判断を「着実に持ち直している」から「持ち直しが続いているものの、一服感がみられる」に下方修正した。判断を引き下げたのは2016年2月以来11カ月ぶり。
部門別にみると、企業動向と家計動向、雇用の3部門がそろって低下した。企業動向では、製造業と非製造業ともに低下。家計動向も小売り関連を除き悪化した。
街角では企業動向に関して「為替が円安で推移していること、国内の景気がいまひとつ伸びていないことで材料仕入れ価格が上昇する一方で、国内販売価格はそれに伴う値上げを据え置きせざるを得ない状況になっており、収益上苦しい状況が続いている」(中国・スポーツ用品製造)との声があった。家計動向では「大雪の影響があり来客数が減少している」(東海・スーパー)という。
2-3カ月後の先行きを聞いた先行き判断指数(季節調整値)は、前の月から1.5ポイント低下し49.4だった。悪化は2カ月連続。家計動向と企業動向、雇用がそれぞれ低下した。
街角では家計について「税制改正により、エコカー減税の軽減率が下がるため、該当する車種の販売量の落ち込みを懸念している」(東北・乗用車販売店)との声が聞かれた。家計では「労働契約法や改正労働者派遣法の影響で、徐々に直接雇用への切り替えが進む可能性も高い。継続的な派遣活用が見通せなくなると企業からの派遣求人依頼数が減少し、採用時から直接雇用化を望む企業が増加してくる」(九州・人材派遣会社)との見方もあった。
経常黒字9年ぶり高水準 昨年、旅行収支は最大
財務省が8日発表した2016年の国際収支状況(速報)によると、海外との総合的な取引状況を示す経常収支は20兆6496億円の黒字だった。原油安で貿易収支が大幅に黒字転換したことが寄与し、前年同月から4兆2370億円黒字幅を拡大した。経常収支の黒字額は07年(24兆9490億円)以来9年ぶりの高水準で、通年ベースで過去2番目の大きさだった。訪日外国人の増加を背景に旅行収支は過去最大となった。
貿易収支は5兆5793億円の黒字と前年同月(6288億円の赤字)から黒字に転換した。原粗油や液化天然ガス(LNG)など燃料価格の下落で輸入額が16.6%減少。鉄鋼や自動車の低迷で輸出も8.5%減少したが、輸入の落ち込みが上回った。
サービス収支は9748億円の赤字(前年同月は1兆6784億円の赤字)だった。赤字額は1985年以降で過去最少。旅行収支が1兆3391億円の黒字と、比較可能な1996年以降で過去最大となったことが寄与した。
第1次所得収支は18兆1360億円の黒字と前年同期(20兆6526億円)に比べて黒字幅を縮小した。円高で企業が海外事業への投資で受け取る配当金や証券投資からの収益が目減りした。
併せて発表した16年12月の経常収支は1兆1122億円の黒字だった。経常黒字は30カ月連続。12月としては2010年(1兆3529億円の黒字)以来6年ぶりの高水準だった。貿易収支が8068億円の黒字と前年同月から6125億円黒字幅を拡大。輸出が6.6%増と16カ月ぶりに増加し、輸入は原油安の影響で3.3%減少した。サービス収支は2866億円の赤字、第1次所得収支は6759億円の黒字だった。


いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。でも、2つの統計を並べるとどうしても長くなってしまいがちです。さらに、経常収支は年統計がほとんどで、12月の月次統計は最後のパラだけでした。続いて、景気ウォッチャーのグラフは下の通りです。現状判断DIと先行き判断DIをプロットしています。いずれも季節調整済みの系列です。色分けは凡例の通りです。また、影をつけた部分はいずれも景気後退期です。

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景気ウォッチャーは現状判断DIも、先行き判断DIも、ともに大きく低下し、統計作成官庁である内閣府では基調判断を半ノッチ引き下げて「着実に持ち直している」から「持ち直しが続いているものの、一服感がみられる」に修正しています。しかし、私の方では判断に少し迷いがあります。というのは、大きく低下した雇用動向を別にして、現状判断DIでは前月からの変化幅が全体の▲1.6ポイント低下に対して、家計動向関連で▲0.7ポイント、企業動向関連で▲2.7ポイントと、家計部門の足元の判断の方が弱く、特に、家計動向関連のうちの飲食関連が▲2.1と最大の低下を示し、企業部門では製造業の方が非製造業よりも前月差で大きな低下を示している一方で、先行き判断DIでは、この真逆になっています。すなわち、家計動向関連が前月差▲1.1ポイントの低下を示し、企業動向関連は▲0.7ポイント低下ですし、家計の中では飲食関連が逆に+2.4ポイントの上昇を示し、企業部門の中では製造業が▲0.3ポイントの低下で済んでいるにもかかわらず、非製造業では▲1.1ポイントの低下となっています。要するに、モメンタム的な足元で下がったセクターは先行きでももっと下がる、というのではなく、足元で下がったセクターは先行きは反発する、という逆方向への動きを感じているマインドが示された、と私は受け止めています。ですから、1月のマインド低下は、この先もドンドン低下して行くドロ沼ではなく一時的な調整であって、先行きは何らかの要因で反転する可能性も秘めている、との割合と堅調なマインドではなかろうかという気がします。それにしても、トランプ米国大統領の通商政策や欧州の国政選挙などが、不透明な海外要因の印象を強めているのは確かなところです。これらの経済外要因については、私も不安を感じないでもありません。

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次に、経常収支のグラフは上の通りです。青い折れ線グラフが経常収支の推移を示し、その内訳が積上げ棒グラフとなっています。色分けは凡例の通りです。上のグラフは季節調整済みの系列をプロットしている一方で、引用した記事は季節調整していない原系列の統計に基づいているため、少し印象が異なるかもしれませんが、経常収支についてもほぼ震災前の水準に戻った、と私は受け止めています。なお、12月統計をもう少し詳しく見ると、財務省のサイトから季節調整していない原系列に基づく情報によれば、為替相場はドル・円で米ドル当たり115.95円と、前年同月の121.84円の水準から4.8%の円高に振れていますが、他方で、原油価格はドルベースではバレル当たり46.67米ドルと、前年同月比+7.2%の上昇でしたが、円ベースではキロリットル当たり33,184円と、▲1.2%の下落でした。昨年2016年の地域別経常収支を見ると、やっぱり、国際商品市況における石油価格の低下が我が国の貿易を黒字にし、それがひいては経常収支の黒字幅の拡大をもたらした、と考えることが出来ようかと思います。他方、+20.6兆円の黒字のうちで国別で判明しているのが+16.4兆円に上り、うち、米国から+13.4兆円の黒字を計上しています。国別で判明していない分を含めても経常黒字の6割以上を米国から計上していることになります。近く予定されている日米首脳会談でアジェンダに上ったりするんでしょうか?
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2017年02月07日 (火) 20:44:00

本日公表の景気動向指数に見る企業部門と家計部門の景気動向やいかに?

本日、内閣府から昨年2016年12月の景気動向指数が公表されています。CI一致指数は前月比+0.1ポイント上昇の115.2を示した一方で、CI先行指数は+2.6ポイント上昇の105.2を記録しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

12月の景気一致指数、2年9カ月ぶり高水準
内閣府が7日発表した2016年12月の景気動向指数(CI、10年=100)速報値は、景気の現状を示す一致指数が前月比0.1ポイント上昇し115.2だった。4カ月連続で上昇し、14年3月の117.8以来2年9カ月ぶりの高水準になった。電子部品デバイスや化学などが上昇し、鉱工業用生産財出荷指数や鉱工業生産指数が伸びた。内閣府は「高水準で堅調に推移している」との見方を示した。
内閣府は一致指数の動きから機械的に求める景気の基調判断を「改善を示している」に据え置いた。前月から比較可能な8指標のうち鉱工業用生産財出荷指数、有効求人倍率、鉱工業生産指数、中小企業出荷指数(製造業)の4つがプラスに寄与した。一方、投資財出荷指数(除く輸送機械)と、冬物の衣料販売が不振で商業販売額(小売業)はマイナスだった。
数カ月先の景気を示す先行指数は2.6ポイント上昇の105.2だった。上昇は3カ月連続。消費者態度指数や新規求人数(除学卒)などが寄与した。
内閣府は3月に開示する1月の景気一致指数から、中小企業出荷指数(製造業)を除くと発表した。同統計が昨年12月分を最後に公表を休止するため。景気一致指数は1つ少ない9指標で算出する。


いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だいう気がします。続いて、下のグラフは景気動向指数です。上のパネルはCI一致指数と先行指数を、下のパネルはDI一致指数をそれぞれプロットしています。影をつけた期間は景気後退期を示しています。

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実は、このブログでは先月の景気動向指数についてはやや懐疑的で、商業販売統計が伸びている背景は、国際商品市況における石油価格の動向から名目値で伸びているだけではないか、との懸念を示しておいたんですが、懸念は懸念だったものの、今日の公表指数から見て、明らかに景気は改善を示していることが裏付けられた気がします。寄与度の絶対値で比較的大きな項目を見ると、一致指数へのプラス寄与については、鉱工業用生産財出荷指数と有効求人倍率(除学卒)が上げられ、マイナス寄与では、投資財出荷指数(除輸送機械)と商業販売額(小売業)(前年同月比)と商業販売額(卸売業)(前年同月比)があります。また、先行指数へのプラス寄与では、消費者態度指数と新規求人数(除学卒)と日経商品指数(42種総合)などがあり、マイナス寄与では、最終需要財在庫率指数と新設住宅着工床面積といったところです。マインド指標の消費者態度指数だけが例外ですが、先月に続いて、ハードデータの範囲では弱い家計部門と強い企業部門がクッキリと分かれている気がします。あえてキツめの表現をすれば、内部留保を溜めまくっている企業部門と、そのあおりを受けて賃上げがかなわずに消費が伸び悩んでいる家計部門ということになろうかという気がします。家計部門も消費者態度指数や景気ウォッチャーなどのマインド指標は改善を示しているものの、賃上げに基づく所得の増加がなければ消費が回復してもサステイナビリティに疑問が生じます。米国新政権の通商政策の不透明性などはものともせずに、人手不足を背景にした賃金引上げを望みたいと思います。
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2017年02月06日 (月) 19:21:00

本日公表の毎月勤労統計の賃金動向をどのように見るか?

本日、厚生労働省から昨年2016年12月の毎月勤労統計が公表されています。景気動向に敏感な製造業の所定外労働時間指数は季節調整済みの系列で前月から横ばいを示し、他方で、現金給与指数のうちの所定内給与は季節調整していない原系列の前年同月比で+0.1%の伸びとなっています。ただし、ヘッドラインの消費者物価がこの秋の天候不順で野菜の高騰を受けて12月は上昇していますので、物価上昇を差し引いた実質賃金に転じています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

16年の実質賃金、5年ぶり増、16年12月は1年ぶり減少 毎勤統計
厚生労働省が6日発表した2016年の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)によると、物価変動の影響を除いた実質賃金は0.7%増となり5年ぶりに上昇した。企業の賃上げ効果で名目賃金にあたる現金給与総額が前年を上回って伸び、ボーナスなどの特別給与も増えた。一方で消費者物価指数(CPI)は原油安などで4年ぶりのマイナスとなった。
基本給や残業代など現金給与総額(月平均)は前年比0.5%増の31万5372円と3年連続のプラスとなった。特別給与は夏季のボーナス増などが寄与し2.0%増の5万5637円だった。パートタイム労働者の時給は1085円と過去最高を更新し、調査を開始した1993年以降で最高の水準となった。外食などで人手不足が続き時給の上昇が続いている。
同時に発表した16年12月の実質賃金は前年同月比0.4%減となり15年12月以来1年ぶりに減少した。雇用所得環境の改善で名目賃金の上昇基調は続いたものの、12月は生鮮食品の価格上昇などで消費者物価の上昇が賃金の伸びを上回った。厚労省は前月に続き賃金動向について「基調としては緩やかに増加している」との見方を据え置いた。
現金給与総額は0.1%増の54万4823円だった。内訳をみると、基本給にあたる所定内給与は24万487円と0.5%増えた。一方、残業代など所定外給与は1.9%減の2万9円、特別給与は0.1%減の28万4327円だった。


年データが利用可能となったので、それに着目した部分が前半を占めていますが、いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、毎月勤労統計のグラフは以下の通りです。上から順に、1番上のパネルは製造業の所定外労働時間指数の季節調整済み系列を、次の2番目のパネルは調査産業計の賃金、すなわち、現金給与総額と所定内給与のそれぞれの季節調整していない原系列の前年同月比を、1番下の3番目のパネルはいわゆるフルタイムの一般労働者とパートタイム労働者の就業形態別の原系列の雇用の前年同月比の伸び率の推移を、それぞれプロットしています。いずれも、影をつけた期間は景気後退期です。

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12月の生産の伸びがかなり小さかったことから、生産の派生需要である労働へのインパクトも小さく、製造業の所定ぎあい労働時間は季節調整済みの系列で見て前月から横ばいでした。また、賃金については上のグラフで示した通り、基本的に私は名目で見ているんですが、いわゆる恒常所得部分の所定内賃金については、ほぼ安定的に前年比でプラスを記録するようになったと受け止めています。ただし、引用した記事にある通り、ヘッドラインの消費者物価上昇率でデフレートした実質賃金は、天候不順に起因する野菜価格の高騰などから、最近時点で急ブレーキがかかっているのも事実です。11月統計では速報時点でマイナスを記録した後、確報で修正されてゼロとなりましたが、直近統計の12月速報ではとうとう前年から伸びがマイナスになってしまいました。このあたりは消費者マインドの低迷にもつながりかねないとと私は考えています。ただ、上のグラフのうちでも一番下のパネルに示された通り、フルタイムの一般労働者の増加率がパート労働者の伸びを上回り始めました。現在、かなり完全雇用に近いものの、決して完全雇用に到達していない労働市場の状況を考えると、賃金よりも先に正規雇用の増加という形で雇用の質の向上がもたらされるのかもしれません。完全雇用に伴う賃金上昇はさらに時間がかかるのかもしれませんが、よし悪しは別として、少なくともフルタイムの一般職員の方が給与水準が高いですから、パートタイムよりもフルタイム職員が増加するのはそれだけでマクロの所得増につながると考えるべきです。12月はボーナス月ですので差が大きくなっていますが、2016年12月ではフルタイムの一般労働者の現金給与総額が740,533円であるのに対して、パート労働者はわずかに107,963円にしか過ぎません。ボーナスの影響がより小さい例ということで、昨年2016年11月の先月統計を見てもフルタイムの一般労働者355,672円に対して、パートタイムは96,117円と4倍近い差があります。

賃金に限って先行きを考えると、目先は春闘の動向が大きな比重を占めます。春闘については、米国トランプ政権の通商政策の不透明さが何らかの悪影響を及ぼす可能性を否定できません。加えて、春闘とは別要因ながら、政府の働き方改革により残業が減少すれば、基本給で手当てできない限り、所得が減少することにもなりかねません。それでも、繰り返しになりますが、完全雇用による労働単価としての賃金上昇に先立って、雇用者増とともにフルタイム労働者の増加によるマクロの所得増加が生じる効果は無視すべきではありません。
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2017年02月05日 (日) 18:26:00

今週の読書はかなり大量に読んで計9冊!

今週もかなり大量に読みました。特に、『ナショナリズムの昭和』が中身はかなり疑問だらけで大したことないながら、何と、700ページの大作でしたので読み切るのに時間がかかりました。でも、この週末に借りた本の中には800ページを超える本もあったりしました。今週もいっぱい読みそうな予感です。

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まず、日本経済研究センター[編]『激論 マイナス金利政策』(日本経済新聞出版) です。例えは悪いんですが、2014年11月22日付けの読書感想文で取り上げた『徹底分析 アベノミクス』と同じように、マイナス金利政策について効果ありとする論者と効果を疑問視する論者を並べて編集してありますが、元々は日本経済研究センターにおける講演会の議事録を起こしたもののようです。ということで、本書では日銀の理事や政策委員をはじめ、日銀OBや日本を代表するエコノミストら15人の識者が、マイナス金利政策の効果を中心に金融政策をめぐって熱い議論を繰り広げています。その陣容は上の表紙画像に並べてあります。議論は、(1)異次元緩和政策・マイナス金利政策の成否、(2)インフレ期待の引き上げに関する政策の論理の一貫性、(3)財政危機と隣り合わせの出口問題、(4)マイナス金利政策に特有な直接的な政策コスト・副作用の問題、(5)市中銀行のストックが尽きかねない国債購入、マイナス金利の深掘りなど金融政策技術上の限界、(6)異次元金融緩和政策の代替案、そして、マイナス金利政策以上に過激とみられるヘリコプターマネー政策へと及びます。私が読んだ限りでは、いずれもマイナス金利に効果ありとする意見の持ち主ですが、伊藤教授と日銀政策委員の原田さんのチャプターが理解しやすく、私の感覚とも合致していたような気がします。もっとも、私はその昔に原田さんとの共著論文を書いているくらいですから、経済に対する見方が似通っているのは当然です。まあ、私の直観的な理解では、旧来の日銀理論に立脚してマイナス金利の効果に疑問を持っている論者は、そもそも、金利レジームであろうと、量的なレジームであろうと、イールドカーブを対象にするレジームであろうと、かつての速水総裁を思い出しますが、ともかく円高と引き締めが好きで、何がどうあっても金融緩和に反対、という意見を持ち、ひたすら企業や国民に痛みを伴うカギカッコ付きの「構造改革」がお好きなんではなかろうか、と思わせる下りがいくつかありました。

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次に、井上智洋『ヘリコプターマネー』(日本経済新聞出版) です。この著者の主張は先日1月5日付けの読書感想文で文春新書の『人工知能と経済の未来』を取り上げたところです。その際も同じことを書いたんですが、本書も非常に正統的なマクロ経済学に基づいていると私は受け止めています。ですから、生産性の伸びに応じた貨幣を供給して需要不足を金融政策で創出する必要性なども共通しています。そして、冒頭(p.21)から「金融政策や財政支出拡大に積極的であるアベノミクスは左派的な経済政策」であり、「反対に、今の自民党より財政支出削減や増税に積極的で、金融緩和に否定的な民進党は、経済的には右派的である」と指摘し、まったく私も同感です。本書の著者の考えでは、貨幣の創造により需要は創出できるということであり、そして、長期にも価格の粘着性を仮定すれば、需要の不足が生じることがあり得る、というものです。昔々の大昔に私が経済学を習い始めたころ、経済に何かショックが生じる際、短期とは価格が固定的で数量で調整する世界であり、長期とは価格がすべてを調整する世界であり、しかも、我々はみんな死んでいる世界である、ということでしたので、長期でも価格が粘着的であれば需要不足は生じる可能性はあります。でも、私の知る大昔の経済学では長期とは価格が伸縮的であって粘着的ではなかったので、少し違和感はありました。それはともかく、その上で、長期のフィリップス曲線は正常なインフレ率の下では垂直かもしれないが、極めて低いインフレ率のデフレ経済の下ではマイナスの傾きを持っているとし、長期デフレ不況の理論的基礎としています。そして、ここからが著者の本領発揮なんですが、財政政策としては、ヘリコプター・マネーにより財源を調達した上で、ベーシック・インカムを実施することとし、他方、金融政策としては、銀行には100%準備を課し、すなわち、信用乗数をゼロにして貸し出しを禁止し、企業部門の資金調達は直接金融で社債などの発行で家計から借り入れる、というものです。いくつか疑問があるのは、ヘリコプター・マネーを実施した時点で中央銀行の独立性は完全に失われると私は考えており、財政政策と金融政策は一体化するんではないかと思います。そして、議論の本筋ではありませんが、本書で著者は量的緩和とゼロ金利を混同しているように見受けられます。中央銀行がマネーストックを増加させられず、単なる当預の「ブタ積み」になっているのはゼロ金利政策だからではなく、金融政策が金利ターゲットからレジーム・チェンジして当預をターゲットにした量的緩和に移行したからです。本書の論旨には大きな影響はありませんが、ゼロ金利と量的緩和のレジームを区別することはそれなりに重要かという気がします。いずれにせよ、本書では、ヘリコプター・マネーの議論に一石を投じるとても正統的ながら、おそらく旧日銀理論を信奉するエコノミストにはとても「奇っ怪」に見える議論を展開しています。ヘリコプター・マネーの議論を実りあるものとするため、多くのエコノミストが本書を読むよう、私は願っています。

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次に、モハメド・エラリアン『世界経済危険な明日』(日本経済新聞出版) です。著者は、たぶんエジプト人だったと記憶しているんですが、国際通貨基金(IMF)に勤務した後、投資会社PIMCOのCEOなども務めています。米国のオバマ政権でも公職についていたようです。英語の原題は The Only Game in Town であり、2016年の出版です。英語の原題はその昔のカーペンダーズの「ソリテア」にあった言い回しではないかと思うんですが、まあ、決してベストとは思えないけれど他の選択肢がない、くらいの意味ではないかと受け止めています。私の英語力ではそれ以上のことは判りません。といことで、リーマン・ショックなどの金融危機に続く Great Recession 大不況の後で、米国連邦準備制度理事会(FED)、欧州中央銀行(ECB)、イングランド銀行(BOE)、日銀などの中央銀行が世界経済にとって「最後の頼みの綱」となったわけですが、実は、中央銀行のとてつもない金融緩和それ自体が経済や金融を歪めかねない事態に陥っていて、金融緩和頼みではもはや経済が回らず、むしろ、その金融緩和政策がリスクを高め、所得・資産の格差を広げるなど問題を生み出していると指摘し、このままでは世界は重大なT字路の分岐点に直面すると警告しています。そして、どうすればいいかについて、急にお話しのレベルが違ってくる気がしましたが、先行き不確実な経済の中で多様性を重視した判断や組織、さらに、いくつかに分岐しかねないシナリオ分析が重要になり、投資においては流動性を重視すべきである、ということを指摘しているように私は受け止めました。指摘している経済問題は私のような官庁エコノミストが解決すべき課題だと思うんですが、解決方法が民間投資銀行の運営方針ではないのか、という気もします。問題の指摘はその通りなんですが、解決策や政策対応にやや不満が残りました。手短かに、サッサと店仕舞いにしておきます。

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次に、ハーマン・サイモン『価格の掟』(中央経済) です。著者は研究者の経験もありますが、基本的には、プライシングなどを専門とする経営コンサルタントのようです。英語の原題は Confession of the Pricing Man であり、2015年の出版です。企業活動を含む経済活動を評価す場合は、例えば、一昨日の金曜日に取り上げた成長率のように実質値で評価する場合が多く、すなわち、価格の変動を除去して数量ベースで評価するわけです。しかし、実際に企業活動で追い求められるべきは利潤の最大化というのが伝統的な経済学の立場であり、利潤とは売上げからコストを差し引いたものであり、売上げとは数量に平均価格を乗じた値として求められるのは当然です。ですから、経済活動、中でも企業活動を数量ベースで評価するのは片手落ちであり、価格付けの観点からも考えるべきである、というのが本書の立場であり、至極もっともな主張です。例えば、企業価値のひとつの尺度である株価なども企業業績に正の相関を持つと考えられているわけですから、価格動向は重要です。しかも、伝統的な経済学では市場における価格決定を需要曲線と供給曲線の交点から求められるとし、実は、市場で観測できるのは交点のデータだけであって、供給曲線はまだしも需要曲線は極めて観測が難しいと私なんぞは考えています。そして、現実の経済には古典派の考えるような完全競争市場などが存在するハズもなく、何らかの価格決定力を企業サイドが持っていることは明らかです。その点から、本書の極めて実践的なアプローチはとても興味深いものでした。特に、第3章のプライシングの心理学はカーネマン-ツベルスキー流のプロスペクト理論や価格のアンカリングなど、エコノミストにもなじみ深い分野であり、私の理解もはかどった気がします。そして、改めての感想ですが、行動経済学についてはエコノミストの観点ではなく、経営コンサルタントの目から分析した方が効率的な気がします。最後に、いくつか気づいた点ですが、私のプライシングに関する最大の関心のひとつは為替の変動と輸出価格付けの対応だったんですが、本書ではそれはありませんでした。その昔は、例えば、円安になれば外貨建ての価格を引き下げて数量を稼ぐ、という企業行動だったのが、最近時点では、円安になっても外貨建ての価格を変更せず、従って数量の増加を求めるのではなく円建ての売上げを伸ばす、という方向に企業行動が変化しているのではないか、と言われています。そのあたりの評価、というか、どう見るかを知りたかった気がしますが、本書の見方を私なりに敷衍すると、最近時点での外貨建ての価格を変更して数量を求めるのではなく円建ての売上げを伸ばす、という方向を評価するような気がします。企業にとって、右下がりの需要曲線から生じる消費者余剰をセグメント化された価格付けによって、いかにして企業サイドに取り込むか、の観点が重要という事実も理解できます。

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次に、保阪正康『ナショナリズムの昭和』(幻戯書房) です。著者はよく判らないながら、日本近代史に関するノンフィクション作家ということのようで、研究者ではないと本書にも記されてあります。本書は文藝春秋の『諸君!』に連載されていた論考を取りまとめて加筆修正して単行本にしています。700ページほどありますが、それほど中身が充実しているわけでもありません。重複している部分も少なくないですし、ダラダラと文章が続いている印象もあります。本書で著者は独特の視点を披露し、ナショナリズムの上部構造として政府や軍部を措定し、国益・国権・国威を置き、その下部構造として自然との共存、家族、共同体などを置いています。この時点で、「国益」を無批判的に用いていて、たぶん、判ってないんだろうなと私は予想してしまいました。その通りでした。国権はまだ西洋的な枠組ながら国際法の観点から理解できなくもないですが、国益については国内の階層構造や利益関係の中で、どのようにでも定義できますし、外からも見て取ることができます。ここに名ションリズムの本質のひとつがあるのであり、どうとでも取れるカギカッコ付きの「国益」を自己の属する集団などに有利なように解釈して、この作者のいうところの下部構造から支持を引き出し、ナショナルな国益に関する民主主義的な国民からの合意ないままに暴走したのが戦前日本の姿だったという分析は出てきません。逆に、本書では、ファナティックな戦前日本の軍国主義をナショナリズムではないと見ているようです。昭和史についてはそれなりに史料の調べがついているように感じ取れましたが、ナショナリズムに関しては基礎的な文献も目を通していないような印象を持ちました。一部の右派的な人々にはそれなりに受け入れられる論考かもしれませんが、著者本人が研究者ではないと自ら自任する通り、国際的な学界からの評価は得られそうもありません。ボリュームの割には失望感が大きかった気がします。

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次に、西森秀稔・大関真之『量子コンピュータが人工知能を加速する』(日経BP) です。著者は東京工業大学と東北大学の研究者です。早くても今世紀後半といわれてきた量子コンピュータが、カナダのベンチャー企業であるD-Wave社で、実験機や学術用途ではなく、いきなり商用機が開発され、しかも、世間の耳目を集めるにはもってこいというか、NASAやグーグルがそれに乗っかったものですから、ものすごい注目を集めた新技術です。それは、従来から開発途上にあった量子ゲート・コンピュータではなく、量子アニーリング・コンピュータであり、組み合わせの最適解を求めるのに特化した量子コンピュータだそうです。200ページ足らずで割合とガサッとした印刷で文字数も少なく、手軽に読めそうなので借りてしまいましたが、やっぱり、というか、何というか、先週のループ宇宙論と同じでサッパリ理解できませんでした。物理学については高校レベルの古典的なニュートン物理学でも私の理解は怪しいのに、20世紀的なアインシュタインのその先の量子物理学を基にした量子コンピュータなんですから、私が理解できるはずもなかったのかもしれません。取りあえず、最新技術に触れたかもしれない、という誤解に基づく充実した感じを持って読み終えることが出来ました。まあ、それはそれなりにいいもんです。なお、著者のうちの西森教授は量子アニーリングを発案したご本人だそうです。ですから、キチンと本書を読んで理解できれば、どのようにして量子力学で計算するのか、また、どのようにして人工知能、特に機械学習やディープラーニングに量子コンピュータが応用できるのか、そして、どうすれば日本の研究が世界をリードできるか、などなど、画期的な量子コンピュータの計算原理をはじめとして、ひょとしたら理解できるようになる本かもしれません。誠に残念ながら、私にはムリでした。

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次に、柚月裕子『慈雨』(集英社) です。この著者の作品では初期の検事の本懐の佐方シリーズが私は好きで、最近では、この作品の前の1月5日の今年最初の読書感想文で取り上げた短編集『あしたの君へ』もイイセン行っていたように思います。それから比べると、主人公の年齢が行ってしまったのもあるんですが、少し私の興味は後退した気がします。ということで、この作品の主人公は定年退官したばかりの群馬県警の警察官、もちろん、刑事だった警察官です。3月末で退官して6月から四国のお遍路さんを回り始めています。小学1年生の幼女に対する暴行殺人事件、それも、定年退官した後に発生した on-going の事件と、16年前のもう裁判すら終了して犯人と目された人物が服役している事件を結びつけて、後者が冤罪ではないかという可能性が生じ、娘の恋人、というか、ほとんど婚約者直前の元部下の刑事を通じて、夫婦で四国のお遍路さんを続けながらも、現在進行形の方の事件を解決に導く、というストーリーです。警察官として、だけでなく、家庭の夫として、娘の父親として、そして、何よりも善良で正直で正義感強いひとりの人間として、何が正しくて、でも、警察という組織の犠牲にすべきかどうか、を考え抜いた上での決断の過程を描き出しています。でも、ややストーリーのつながりや謎解きなんかも平板で、佐方シリーズや直近の『あしたの君へ』のような深みには欠ける気がします。でも、真っ正直で清々しい人生であることは確かです。そのような、というか、やや青臭いところもあるような正直で真面目な人生をよしとする人向けかもしれません。逆に、腹黒い人には向きません。

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次に、岡本隆司『中国の論理』(中公新書) です。著者は京都大学出身の東洋史学の研究者です。世間的には嫌中一色で、本書あとがきで著者も「中国・中国人が好きか、嫌いか、と聞かれれば、嫌いだ、と答えるだろう。」と書いています。日本とは尖閣諸島で、フィリピンやベトナムとも領土問題をかかえ、日本でも「爆買い」で潤っているごく一部の人を除けば、本書の著者のように「嫌い」と答える人が少なくないかもしれません。他方、地理的条件からどうしようもなくも隣国なわけであり、それなりのおつきあいが求められることも事実です。その嫌われかねない中国の論理を歴史的に明らかにしようと試みたのが本書であり、あらゆる場面に顔を出す二分法=ディコトミにその原因を求めているように見受けられます。すなわち、国内においては士と庶、あるいは、官と民であり、国外においては華と夷なわけで、いわゆる中華思想に基づき、日本のような夷は中国の風下にあるべき、との近代以降の世界ではとても通用しそうもない「中国の論理」を振りかざしているわけです。しかも、著者によれば、その昔の君主独裁制から立憲共和制へ、三民主義からマルクス主義へ、計画経済から市場経済へと変化しても、底流では脈々と続いているということで、歴史的に中国人に深く刻み込まれた思考回路なのかもしれません。それでも、少し前までは成金国家として、かつての日本と同じように勝手な振る舞いが部分的には許容されていましたし、現在でも我が国では「爆買い」を有り難がる人は少なくないような気がしますが、今や、中進国の罠にとらわれて成長率も大きく鈍化し、我が国でも「爆買い」の伸びがストップするのも間近かと見なされています。民主主義体制が整っていない現状では先進国とも見なし難く、かといって、核戦力をはじめとする軍事力では周辺諸国から見て無視しがたい実力があるともいえます。いずれにせよ、引っ越しのできないお隣さんですから、日本としては被害を最小限にくい止めつつ、それなりのおつきあいを願う、ということになるんだろうと思います。

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最後に、ピエール・ルメートル『傷だらけのカミーユ』(文春文庫) です。パリ警視庁のカミーユ・ヴェルーヴェン警部を主人公とするシリーズ3部作の最終編です。私も『その女アレックス』、『悲しみのイレーヌ』と読み継いで来てこの作者の3冊目です。ただし、原書と邦訳では出版順が違っており、原書では『悲しみのイレーヌ』が先で、『その女アレックス』が後の出版なんですが、邦訳は当然ながら意図的に1-2冊めの順を入れ替えています。でも、この『傷だらけのカミーユ』が3部作の締めくくりであることは違いがありません。ということで、とても出来のいいミステリです。『悲しみのイレーヌ』で妻を失ってから5年後という設定で、当然パリのど真ん中を舞台にします。ヴェルーヴェン警部の恋人が強盗事件に巻き込まれ瀕死の重傷を負い、しかも強盗犯人の顔を見たためなのか、命を付け狙われてしまいます。彼女を守るためヴェルーヴェン警部は警察の上司や判事にもハッタリをかませつつ、かなり独断で犯人を追います。その過程で、次々と新たな事実が浮かび上がっていく、というストーリでーで、とても大仕掛けなどんでん返しが待っています。
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2017年02月04日 (土) 08:11:00

米国雇用統計の雇用者増はアッとびっくりの+227千人増で利上げをサポートか?

日本時間の昨夜、米国労働省から1月の米国雇用統計が公表されています。非農業雇用者数の増加幅は+227千人増と、前月の+157千人増や市場の事前コンセンサスの+175千人増を大きく上回りました。ただ、失業率はさすがに前月から0.1%ポイント上がって4.8%を記録しています。いずれも季節調整済みの系列です。まず、Los Angeles Times のサイトから最初の7パラだけ記事を引用すると以下の通りです。

U.S. economy creates robust 227,000 jobs in January; unemployment rate remains low at 4.8%
The labor market started the year strong, adding a robust 227,000 net new jobs last month while more people began looking for work, the Labor Department said Friday.
Although the January job growth figure exceeded expectations - and was the best since September - that was somewhat offset by a downward revision of job growth the previous two months by 39,000.
Those changes meant job growth averaged 187,000 for 2016 and that President Trump is inheriting a solid labor market.
The unemployment rate last month inched up a tenth of a percentage point to 4.8%, but that wasn’t bad news.
The uptick was caused by 76,000 more people looking for work. The percentage of working-age Americans in the force increased to 62.9%. That was the best level since September, though still near a 40-year low.
But wage growth remained a concern. Average hourly earnings were up 3 cents to $26 last month, down from December’s strong 6-cent increase. For the 12 months ended Jan. 31, wages increased 2.5%.
The slowdown in wage growth came even though worker pay got a boost last month because minimum wage increases kicked in on Jan. 1 in 19 states, either through automatic cost-of-living bumps or scheduled changes passed by voters or lawmakers.


この後、さらにカリフォルニア州の雇用情勢や産業別の分析などなどが続きますが、長くなりますので割愛しました。包括的によく取りまとめられている印象です。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは下の通りです。上のパネルは非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門、下のパネルは失業率です。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。全体の雇用者増減とそのうちの民間部門は、2010年のセンサスの際にかなり乖離したものの、その後は大きな差は生じていません。

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繰り返しになりますが、雇用者増が前月差で+200千人を超えたのは4か月ぶりで、改定後の昨年2016年12月が+157千人増、そして、市場の事前コンセンサスも+200千人増には届かない、というふうに私は聞いていましたので、ちょっとびっくりの大幅増でした。トランプ大統領の重視するメインストリームの製造業も、12月の+11千人増に続いて、わずかながら1月も+5千人増を記録しています。小売り業も+45.9千人増と堅調な個人消費を反映しているようですし、引き続き、ヘルスケアも+32.1千人増を示しています。米国連邦準備制度理事会(FED)の公開市場委員会(FOMC)は今週半ばの1月31日から2月1日にかけて開催されていて、年初の利上げは見送られていますが、ちょうど1か月後の3月3日に公表される米国雇用統計を見た上で、3月14-15日に開催される次回FOMCで利上げが議論される可能性も出てきたと私は受け止めています。ただ、引用した記事の最後のパラで触れられている通り、FEDのイエレン議長は下のグラフの賃金の伸びも重視していると報じられており、今後の動向が気にかかるところです。

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ということで、時間当たり賃金の前年同月比上昇率は上のグラフの通りです。ならして見て、ほぼ底ばい状態が続いている印象ですが、それでも、12月の前年比上昇率は+2.9%を記録し、2009年6月以来7年半振りの高い伸びを示しています。1月の+2.5%も底堅い気がしますし、一時の日本や欧州のように底割れしてデフレに陥ることはほぼなくなり、逆に、トランプ政権の経済政策次第では上昇率が加速する可能性もなしとしません。
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2017年02月03日 (金) 19:38:00

2月13日に公表予定の10-12月期1次QE予想やいかに?

今週に入ってほぼ必要な統計が出そろい、さ来週月曜日の2月13日に昨年2016年10-12月期GDP速報1次QEが内閣府より公表される予定です。シンクタンクや金融機関などから1次QE予想が出そろっています。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、web 上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下の表の通りです。ヘッドラインの欄は私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しています。可能な範囲で、足元の今年1-3月期以降を重視して拾おうとしています。しかしながら、明示的に取り上げているシンクタンクは、日本総研、大和総研、みずほ総研、ニッセイ基礎研、第一生命経済研であり、この5機関については、やや長めに先行き予想をリポートから引用しています。ほかはアッサリとヘッドラインの成長率だけの引用です。より詳細な情報にご興味ある向きは左側の機関名にリンクを張ってありますから、リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、ダウンロード出来たりすると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちにAcrobat Reader がインストールしてあって、別タブが開いてリポートが読めるかもしれません。

機関名実質GDP成長率
(前期比年率)
ヘッドライン
日本総研+0.4%
(+1.6%)
2017年1-3月期を展望すると、①在庫調整の進展を受けた製造業の生産活動の持ち直しや、②株価の上昇などを背景とした消費者マインドの改善が、景気下支えに作用。昨年11月に成立した2016年度第2次補正予算の執行に伴い、公共投資も増加に転じるとみられることから、景気回復基調が持続する見込み。もっとも、トランプ米新大統領が打ち出す政策や、英国のEU離脱、欧州大陸諸国の選挙など、海外の政治動向は不透明感が強く、マーケットの変動などが景気を下押しするリスクには注意が必要。
大和総研+0.1%
(+0.6%)
先行きの日本経済は、基調として足下の緩やかな拡大が継続するとみている。ただし、先行きも内需が力強さを欠くことが見込まれる中、長期的には外需の動向にこれまで以上に警戒しておく必要があるだろう。
米国では、Fedが2016年12月に利上げを実施し、2017年に入ってからも引き続き利上げが実施される可能性がある。加えて、米トランプ大統領がTPPからの撤退、NAFTAの再交渉・脱退を宣言するなど、米国が保護貿易主義に転換しつつある点は周知のとおりだ。後述するように、世界経済は緩やかな成長を続けると見ているが、米国の通商政策の転換を機に、世界経済の先行き不透明感が強まることとなれば、外需主導で成長する日本経済を下押しするリスク要因となるだろう。
みずほ総研+0.2%
(+1.0%)
2017年の日本経済について展望すると、輸出・設備投資を中心に、景気回復が続くと見込まれる。
上述した海外経済の回復(ITサイクルの改善や中国・鉱工業セクターの持ち直し、資源国経済の底入れ)が、引き続き輸出や設備投資の回復につながるだろう。五輪関連や都市再開発関連の案件が進捗すること、人手不足の深刻化を背景に省力化・効率化投資の積み増しが見込まれることも、設備投資の押し上げ要因になるとみられる。他方、個人消費については、耐久消費財が持ち直していること、株高などを背景に消費者マインドが改善していることがプラスに働くものの、年半ばにかけて見込まれるエネルギー価格の上昇が下押し要因となるだろう。
日本の景気回復に水を差しかねない要因として、海外の政治・経済情勢を巡る不透明性が上げられる。最大のリスクは、トランプ政権の保護主義姿勢の行方であろう。特に、為替の円安批判を強める可能性や、「国境税」が導入された場合のグローバル・サプライチェーンを通じた日本の生産への波及が懸念される。また、欧州の政治情勢や中国の共産党大会後の経済運営を巡っても、不確実性は高い。2017年は、メインシナリオとしては景気回復が見込まれるものの、こうした下振れリスクが顕在化した場合の影響は大きいため、世界の政治情勢に注意が必要だ。
ニッセイ基礎研+0.4%
(+1.6%)
2016年10-12月期は7-9月期に続き外需主導のプラス成長となったが、国内需要は横ばい圏の動きが続いている。2017年1-3月期は円安、海外経済回復の追い風を受けて輸出は増加を続けるものの、輸入の伸びも高まることから外需による成長率の押し上げ幅は縮小するだろう。
一方、国内需要は2016年度第2次補正予算の顕在化から公的固定資本形成が増加に転じるが、住宅投資が減少に転じることに加え、エネルギーを中心とした物価上昇に伴う実質所得の低下が消費を下押しすることなどから、国内需要は低い伸びにとどまること見込まれる。現時点では、17年1-3月期の実質GDPはプラス成長と確保するものの、10-12月期に比べれば伸びは鈍化すると予想している。
第一生命経済研+0.4%
(+1.5%)
先行きについても、輸出の増加が続く可能性が高いことに加え、企業収益の持ち直しを受けた設備投資の回復、景気対策効果の顕在化といった押し上げが期待されるところだ。10-12月期の個人消費を下押しした生鮮食品の値上がりについても、足元では落ち着きをみせている。トランプ大統領の政策への不透明感は強いものの、メインシナリオとしては日本経済の着実な景気回復を見込んでおいて良いだろう。
伊藤忠経済研+0.4%
(+1.4%)
国内民間需要は個人消費が緩やかな拡大、設備投資は概ね横ばいにとどまる中で住宅投資の落ち込みにより前期比でマイナスが続き、専ら輸出の拡大が成長を支える姿は変わらず、日本経済は持ち直しつつあるも回復力は未だ弱いという評価になる。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券景気循環研究所+0.7%
(+2.9%)
10-12月期の実質GDP成長率を前期比年率2.9%と予想する。16年1-3月期以降、4四半期連続のプラス成長となり、かつ成長ペースは7-9月期の年率1.3%から大幅に加速する見通しである。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング+0.3%
(+1.1%)
2月13日に内閣府から公表される2016年10-12月期の実質GDP成長率は、前期比+0.3%(年率換算+1.1%)と4四半期連続でプラスとなったと見込まれる。景気が持ち直していることを確認する結果となろう。
三菱総研+0.1%
(+0.4%)
実質GDP成長率は、4四半期連続のプラス成長となるが、10-12月期は内需の減少が足を引っ張り、前期に比べ成長率は鈍化する見込み。


ほぼ、どのシンクタンクでもプラス成長を予想しており、2016年は4四半期連続でプラス成長の可能性が示唆されています。また、足元の1-3月期についても、緩やかな回復が継続しているとの認識がほぼほぼ全機関のリポートで示されており、景気の回復は緩やかながら続いている可能性が高いと受け止めています。ただし、いくつかのヘッドラインで引用しておきましたが、トランプ米国大統領の閉鎖的な通帳政策や為替政策、あるいは、英国のEU離脱=BREXITや大陸欧州の国政選挙における政治情勢など、経済の自律的な動向ではなく海外発の経済外要因でのリスクの懸念が何とも不気味です。昨年2016年10-12月期については、特に、外需の寄与が大きいと見込まれているだけに、国内需要のさらなる回復を前に海外需要が先に腰折れするようなことになる可能性が心配です。エコノミストには何やら見通しがたい要因だけに、逆に、不透明感が高まりかねないところです。なお、先日のブログで商業販売統計を取り上げた際に、消費はゼロ近傍と結論しましたが、上の表で取り上げた範囲では、日本総研と大和総研と三菱総研がマイナス、みずほ総研とニッセイ基礎研と伊藤忠経済研と三菱UFJリサーチ&コンサルティングがプラス、第一生命経済研と三菱UFJモルガン・スタンレー証券景気循環研究所がゼロ、と見方が分かれてしまいました。何とも言い難い結果です。
最後に、下のグラフはニッセイ基礎研のリポートから引用しています。

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2017年02月02日 (木) 20:11:00

基調判断が半ノッチ引き上げられた消費者態度指数やいかに?

本日、内閣府から1月の消費者態度指数が公表されています。前月比+2.2ポイント上昇の43.1を記録しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

1月の消費者態度指数、4カ月ぶり判断上げ 「持ち直しの動きがみられる」
内閣府が2日発表した1月の消費動向調査によると、消費者心理を示す一般世帯の消費者態度指数(季節調整値)は前月比0.1ポイント上昇の43.2だった。大幅上昇した昨年12月に続き、東京五輪開催が決まった2013年9月(45.4)以来3年4カ月ぶりの高水準。雇用環境の改善が続いていることが寄与した。前月を上回ったのは2カ月連続で、内閣府は消費者心理の基調判断を「持ち直しのテンポが緩やかになっている」から「持ち直しの動きがみられる」に引き上げた。上方修正は4カ月ぶり。
指数を構成する4つの指標のうち、「雇用環境」が改善した。高い有効求人倍率や低い失業率の好影響が出た。「耐久消費財の買い時判断」と「暮らし向き」は横ばいだったが高水準を保った。「収入の増え方」は悪化した。1年後の物価見通しは「上昇する」と答えた比率(原数値)は前月より0.7ポイント高い74.9%だった。
調査基準日はトランプ米大統領が就任する前にあたる1月15日、内閣府は「あまり影響が出てこない時期の調査だった」とみている。全国8400世帯が対象で、有効回答数は5633世帯、回答率は67.1%だった。


いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、消費者態度指数のグラフは以下の通りです。ピンクで示したやや薄い折れ線は訪問調査で実施され、最近時点のより濃い赤の折れ線は郵送調査で実施されています。また、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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上のグラフからも明らかな通り、昨年2016年11月に秋口の天候不順で野菜価格が高騰したり、米国大統領選挙でトランプ大統領が当選したりと、いろいろなショックがあって落ち込んだ一時期を除けば、ここ2年余りはトレンドとしては消費者マインドは改善を示して来たように感じます。すなわち、2014年4月の消費増税からその年の12月の39.2と翌2015年1月の39.3あたりを底にして、直近統計の2017年1月の43.2まで、緩やかに消費者態度指数が改善を続けて来たのが上のグラフから読み取れるかと思います。特に、1月統計については、引用した記事にもある通り、雇用環境の改善が寄与しています。消費者態度指数の4つのコンポーネントのうち、暮らし向きと耐久消費財の買い時判断については前月から横ばいを示し、収入の増え方については前月差でマイナスだったんですが、雇用環境のプラスが大きく、消費者態度指数全体として前月から上昇という結果になっています。これも引用した記事にある通り、これらを総合して、統計作成官庁である内閣府では基調判断を半ノッチ引き上げて、「持ち直しのテンポが緩やか」から「持ち直し」に修正しています。先月のこの統計公表時には、トランプ効果であればサステイナブルではなく一過性の可能性を指摘しましたが、私の杞憂だったかもしれません。

今日発表の消費者態度指数が需要サイドのマインドの代表とすれば、来週は供給サイドのマインドの代表である景気ウォッチャーの結果が明らかにされます。景気ウォッチャーも昨年2016年7月以降の年後半でかなり改善を示しており、足元の景気の回復とともに、需給どちらのマインドも持ち直しています。今日の夕刊を見ると、経団連の榊原会長と連合の神津会長が都内で会談し今年の春季労使交渉が本格的に始まった旨の報道がありました。マインドの回復とともに、賃金の上昇により消費の活性化が待たれる段階に達したようです。
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2017年01月31日 (火) 19:32:00

増産が続く鉱工業生産指数と完全雇用に近い雇用統計と日銀の「展望リポート」を考える!

本日、経済産業省から12月の鉱工業生産指数(IIP)が、また、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が、それぞれ公表されています。鉱工業生産は季節調整済みの系列で前月比+0.5%の増産、失業率は3.1%と前月と変わらず、有効求人倍率は前月からさらに0.02ポイント上昇して1.43を記録しています。生産は増産を続け、雇用はかなり完全雇用に近い状態にあります。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

鉱工業生産、12月は0.5%上昇 10-12月は2.0%上昇
経済産業省が31日発表した12月の鉱工業生産指数(2010年=100、季節調整済み)速報値は前月比0.5%上昇の100.4となり2カ月連続で上昇した。QUICKが事前にまとめた民間予測の中央値(0.3%)より伸び率は大きかった。軽自動車や小型車など乗用車が新型車の投入もあり好調だった。化粧品なども春向けの新商品の生産が伸びた。経産省は生産の基調判断を2カ月連続で「持ち直しの動き」に据え置いた。10-12月は前期比2.0%上昇の99.6だった。
12月の生産指数は15業種のうち12業種が前月から上昇し、2業種が低下した。横ばいは1業種だった。輸送機械工業が2.0%上昇。化学工業も1.8%上昇した。一方で情報通信機械工業が10.7%の低下、はん用・生産用・業務用機械工業も0.4%低下した。
出荷指数は前月比0.3%低下の99.0だった。在庫指数は0.2%上昇の107.1、在庫率指数は0.9%上昇の108.8だった。
1月の製造工業生産予測指数は前月比3.0%の上昇となった。中国などアジアでスマートフォン向け部品や大型液晶などが好調で電子部品・デバイス工業が堅調に推移する。はん用・生産用・業務用機械工業なども伸びる見通しだ。予測指数は計画値での集計であるため実際より上振れしやすいため、経産省では実際の上昇率は0.5%程度になると予想している。
16年の求人倍率1.36倍、25年ぶり高水準
失業率は3.1%に改善

厚生労働省が31日発表した2016年の有効求人倍率は1.36倍と前年比0.16ポイント上昇し、1991年(1.40倍)以来25年ぶりの高水準となった。総務省が発表した16年の完全失業率は3.1%と0.3ポイント改善し、94年(2.9%)以来22年ぶりの低さ。バブル末期並みの雇用情勢だが、景気の緩やかな回復に加え、少子高齢化で人手不足感が強まっている面がある。
有効求人倍率の改善は7年連続。雇用の先行指標とされる新規求人倍率も2.04倍と91年以来の高水準となった。業種別の新規求人数をみると、教育・学習支援業(8.9%増)や医療・福祉業(7.1%増)などが目立った。
完全失業者数は208万人と14万人減少した。就業者数は6440万人と、前年に比べ64万人増加した。15-64歳の人口に占める就業者の割合は16年平均で74.3%で、比較可能な68年以降過去最高の水準だ。
内訳をみると男性が17万人増だったのに対し、女性は47万人増加した。年齢別にみると15-64歳の27万人増に対し、65歳以上は37万人増えた。15-64歳の生産年齢人口は16年は7633万人で、10年前と比べると771万人減った。今まで働いていなかった高齢者や女性が働き始めたことが雇用情勢の改善につながっている。
同時に発表した16年12月の有効求人倍率(季節調整値)は前月比0.02ポイント上昇の1.43倍だった。91年7月以来25年5カ月ぶりの高水準だった。正社員の有効求人倍率は0.92倍と過去最高で、就業地別の有効求人倍率は9カ月連続で全都道府県で1倍を上回った。12月の失業率(同)は3.1%と前月と同じだった。第一生命経済研究所の新家義貴主席エコノミストは「年内にも2%台に突入する可能性が高い」と指摘する。


いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。でも、かなり長くなってしまいました。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは以下の通りです。上のパネルは2010年=100となる鉱工業生産指数そのもの、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は、次の雇用統計とも共通して、景気後退期です。

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生産については、引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは前月比で+0.3%増でしたから、やや上振れたとはいうものの、ほぼジャストミートした気がします。ただし、季節調整済みの系列の前月比で見て、出荷が減少し在庫が増加する結果となっていますが、ならしてみれば、生産と出荷が増加基調、在庫水準も低下基調と私は受け止めています。加えて、製造工業生産予測調査でも1-2月の増産が見込まれていますから、先行きも緩やかな増産を私は予想しています。12月統計については、自動車本体や部品の生産が好調だったほか、アジアで組み立てるスマートフォン向けなどの電子部品の生産も伸びており、我が国が比較優位ある製品の生産が増加しており、イレギュラーな受注が入ったのではなく、本来のいい形の増産と考えるべきです。また、先行きについても、米国のトランプ政権の見通しがたい通商政策を別にすれば、ようやく、というか、何というか、2014年4月の消費増税直前の駆け込み需要の反動が3年を経過してそろそろ剥落する部分が出始める時期を迎えるとともに、2011年3月まで続いた家電エコポイント制度により購入された白物家電などが買い替えサイクルを迎えつつあるとの見方もあり、耐久消費財の先行きに期待を持って注目しています。

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四半期データが利用可能になりましたので、上のように在庫循環図を書いてみました。ピンク矢印の2013年1-3月期から始まって、黄緑矢印の直近の2016年10-12月期までです。2002年12月の月例経済報告の参考資料である「鉱工業の在庫循環図と概念図」に従えば、45度線を下から上に切りましたので、機械的に見ると、景気は谷を過ぎて上昇局面に入ったことになります。出荷が増加して在庫調整が進んでいる段階です。

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引用した記事では、ついついメディアの報道のクセとして、雇用統計については年統計を重視していたりしますが、月次の景気動向として上のグラフを見て、遅行指標の失業率は横ばいながら、景気一致指標の有効求人倍率はさらに上昇し、先行指標の新規求人も増加を続けています。かなり完全雇用に近い印象を受けるんですが、それでも賃金が上がりません。それどころか、リクルートジョブズの調査による「2016年12月度派遣スタッフ募集時平均時給調査」では、派遣職員の時給が下がり始めていたりします。ということは、かなり完全雇用に近いながら完全雇用ではないんだろうと、私は考えを改めるに至りました。最近読んだ日経センターの『激論 マイナス金利政策』の影響もあります。そして、賃金が上がらないのは、引用した記事にもある通り、最近時点で労働市場に参入したのが中年女性と高齢男性であり、ともに非正規職員として賃金が低い職種への参入が多いんではないかと想像しています。その意味で、雇用の改善のすそ野が広がって、正規職員というか、安定した高収入の職、ILO のいうところの decent job が増加しているのかどうかは、まだ疑わしいのかもしれません。私の知り合いのエコノミストの中には、今年中に失業率は3%を割り込んで2%台に入るとの主張を持つ人もいますし、現状の労働需給はかなりタイトであるとはいえ、決して完全雇用に達したという意味ではないことを確認しておきたいと思います。

  実質GDP消費者物価指数
(除く生鮮食品)
 2016年度+1.2~+1.5
<+1.4>
▲0.2~▲0.1
<▲0.2>
 10月時点の見通し+0.8~+1.0
<+1.0>
▲0.3~▲0.1
<▲0.1>
 2017年度+1.3~+1.6
<+1.5>
+0.8~+1.6
<+1.5>
 10月時点の見通し+1.0~+1.5
<+1.3>
+0.6~+1.6
<+1.5>
 2018年度+1.0~+1.2
<+1.1>
+0.9~+1.9
<+1.7>
 10月時点の見通し+0.8~+1.0
<+0.9>
+0.9~+1.9
<+1.7>


最後に、昨日から開催されていた日銀金融政策決定会合ですが、金融政策は現状維持、というか、追加緩和なしで終了しました。上のテーブルは「展望リポート」の基本的見解から2016-2018年度の政策委員の大勢見通しを引用しています。昨年10月時点からはかなり上方修正されたんですが、インフレ目標である+2%の達成は、引き続き、「見通し期間の終盤(2018年度頃)」とされています。なお、計数には正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、データの完全性は無保証です。正確な計数は自己責任で、引用元である日銀の「展望リポート」からお願いします。
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2017年01月30日 (月) 19:39:00

天候要因で季節商品に売れ行き不振あるものの商業販売統計に見る消費は回復のモメンタム!

本日、経済産業省から12月の商業販売統計が公表されています。ヘッドラインとなる小売業販売額は季節調整していない原系列の統計で前年同月比+0.6%増の13兆4330億円と、引き続き、景気回復の兆しがうかがえます。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

16年の小売販売額、0.6%減 2年連続で減少 12月は0.6%増
経済産業省が30日発表した2016年の商業動態統計(速報)によると、小売業販売額は0.6%減の139兆8550億円だった。前年割れは2年連続。原油安による石油製品の価格下落で、燃料小売業の販売額が減少した。百貨店の衣料品販売の低迷も響いた。百貨店は3.3%減、スーパーは1.1%増、コンビニエンスストアは4.1%増だった。
16年12月の小売業販売額は前年同月比0.6%増の13兆4330億円と2カ月連続で前年実績を上回った。季節調整済みの前月比では1.7%減だった。経産省は小売業の基調判断を「持ち直しの動きがみられる」で据え置いた。
業種別では新車販売が好調な自動車小売業が5.9%増加した。原油価格の持ち直しで燃料小売業は1.0%増となり、14年9月以来27カ月ぶりにプラスに転じた。
大型小売店の販売額は、百貨店とスーパーの合計で1.2%減の2兆675億円だった。気温上昇で冬物衣料品の販売が振るわず百貨店は2.6%減、スーパーは0.4%減だった。コンビニエンスストアの販売額は3.7%増の1兆75億円だった。


いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、商業販売統計のグラフは上の通りです。上のパネルは季節調整していない小売販売額の前年同月比増減率を、下のパネルは季節調整指数をそのまま、それぞれプロットしています。影を付けた部分は、景気後退期です。

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季節調整済みの統計の前月比で見て、自動車小売業は11月の▲2.2%減から12月は+0.6%増に転じたものの、天候がかなり高温を記録したため、一部の業種で季節商品の売れ行き不振が見られました。すなわち、織物・衣服・身の回り品小売業が11月+1.3%増から、気温が高かったため冬物衣料の販売不振で12月は▲5.2%減となったほか、機械器具小売業も暖房機器の販売不振などにより11月の+5.4%増から、12月は▲4.3%減を記録しています。これらの業種別の前月比や上のグラフの下のパネルを見ても理解できる通り、12月の小売業販売額は季節調整済みの系列の前月比で、▲1.7%の減少を示しましたが、経済産業省による小売業販売額の基調判断の資料によれば、後方3か月移動平均で前月比は+0.3%の増加を記録しており、まだモメンタムは増加の方向にあるとして、基調判断は「持ち直し」で据え置かれています。天候要因も含めて、四半期ベースで小売業販売額をならして見ると、季節調整済みの系列の前期比では、7-9月期の+1.0%増に続いて、10-12月期も+1.9%増と着実な回復を見せています。

経済産業省による商業販売統計は物価の上昇を考慮しない名目統計なんですが、実質の家計支出も統計として公表される総務省統計局の家計調査が12月統計は明日の公表となっています。日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは季節調整していない原系列の実質支出の前年同月比で▲0.6%減となっていますし、10-11月の家計調査の実績を見る限り、かなりのマイナスを記録しており、なかなか消費の傾向を見るのが難しくなっているんですが、2月13日に内閣府から公表予定の10-12月期GDP統計では、実質消費は前期比でゼロ近傍ではないかと私は見込んでいます。明日の鉱工業生産指数や雇用統計、家計調査などが公表されると、10-12月期のGDP統計1次QEの予想がいっせいに明らかになると考えられますので、日を改めて取り上げたいと思います。
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2017年01月27日 (金) 21:31:00

消費者物価指数(CPI)はそろそろゼロからプラス領域に達するか?

本日、総務省統計局から昨年2016年12月の消費者物価指数(CPI)が公表されています。生鮮食品を除くコアCPIの前年同月比上昇率は▲0.2%と10か月連続でマイナスに落ち込んでいます。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

16年消費者物価、4年ぶりマイナス 原油安響く
総務省が27日発表した2016年の全国消費者物価指数(CPI、15年=100)は値動きの大きな生鮮食品を除く総合指数が99.7と前の年と比べ0.3%下落した。下落は4年ぶり。原油安による電気代やガソリン価格の低下が響いた。同時に公表した16年12月は99.8と前年同月比0.2%の下落だった。
食料・エネルギーを除く「コアコア」の指数は100.3と前の年に比べ0.3%上昇した。宿泊料が2.3%、外国パック旅行費も4.9%それぞれ上がり、教養娯楽の指数が上昇した。衣料1.6%上がったことなども寄与した。生鮮食品を含む総合は99.9と0.1%下落した。生鮮食品を除く総合では全体の64.8%にあたる339品目が上昇、138品目が下落した。横ばいは46品目だった。
16年12月の生鮮食品を除く総合は10カ月連続で下落した。電気代が6.5%低下したことや携帯電話機の下落から通信が2.9%のマイナスになったことが下押しした。生鮮食品を含む総合は3カ月連続でプラスになった。トマトが61.9%上昇するなど生鮮野菜の高騰が続いていることが影響した。ガソリン指数が2年1カ月ぶりに前年同月を上回るなど価格上昇も後押しした。
東京都区部の1月のCPI(中旬速報値、15年=100)は生鮮食品を除く総合が99.1と、前年同月比で0.3%下落した。下落は11カ月連続。都市ガス代の低下などが響いた。生鮮食品を含む総合は99.5と前月に比べ0.1%上昇した。前年同月に価格が低下していたたまごやパン、めんつゆなど生鮮食品を除く食料が寄与した。
総務省は併せて17年1月分から新指数「生鮮食品及びエネルギーを除く総合」を公表することを明らかにした。


いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、いつもの消費者物価上昇率のグラフは下の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く全国のコアCPI上昇率と食料とエネルギーを除く全国コアコアCPIのそれぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフは全国のコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。エネルギーと食料とサービスとコア財の4分割です。なお、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1位の指数を基に私の方で算出しています。丸めない指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。なお、最近になって発見したんですが、酒類の扱いがビミョーに私の試算と総務省統計局で異なっており、私の寄与度試算ではメンドウなので、酒類(全国のウェイト1.2%弱)は通常の食料には入らずコア財に含めています。念のため。

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日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスではコアCPIで見て前年同月比▲0.3%の下落でしたが、統計の実績では▲0.2%でしたし、春ころにはゼロないしプラスに転ずると見込むエコノミストが多そうな気がします。しかし、私はそう単純ではなかろうと受け止めています。というのも、石油価格下落の直接の影響はかなりの程度に剥落したんですが、他方で、その波及が間接的に現れている可能性がアチコチに見受けられるからです。例えば、直接の影響を見るとして、全国のコアCPI前年同月比上昇率に対する寄与度ベースで、エネルギーはもっともマイナスが大きかったという意味で直近のボトムは2016年3月の▲1.13%から、最新統計の12月には▲0.34%まで、ほぼ+0.8%ポイントの押し上げ要因となっていますが、逆に、コア財寄与度は2016年2月の+0.29%から12月には▲0.08%まで、▲0.4%ポイント近くの押し下げ要因となっており、エネルギー価格の下落率縮小の半分くらいを相殺してしまっています。同時に、食料は2016年2-3月の+0.42%から12月には+0.12%まで寄与度が縮小しており、これも▲0.3%ポイント押し下げ要因となっています。エネルギーの物価押上げ寄与度をコア財と食料でかなりの程度に相殺してしまっているわけですから、上のグラフに見られる通り、青い折れ線グラフのコアCPI上昇率のマイナス幅が縮小している一方で、食料とエネルギーを除くコアコアCPIの上昇率のプラス幅も大きく縮小し、上昇率がゼロに近づいているのが見て取れます。基本的には、年央までにコアCPI上昇率はゼロないしプラス領域に達する可能性が高いと私も考えていますが、国際商品市況における石油価格下落の影響の剥落が、エネルギー価格の下落をストップさせる一方で、ラグを伴ったエネルギー価格低下の波及効果がコア財に現れ始めており、石油価格にシンクロした物価上昇につながるという単純な構図ではないことは留意しておくべきでしょう。

最後に、3月3日公表の2017年1月の全国CPIから、「生鮮食品及びエネルギーを除く総合」指数の公表を開始すると、総務省統計局のサイトで明らかにされています。世間一般では、生鮮食品を除く総合をコアCPIと称して、広く参照されているところですが、新たな指標の公表に伴い、世間一般がどのように対応するかを見極めつつ、私のこのブログでも考えたいと思います。要するに、まあ、世間一般に従おうかと考えているわけです。
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2017年01月26日 (木) 21:22:00

3年連続でプラスの上昇を続ける企業向けサービス価格指数(SPPI)をどう見るか!

本日、日銀から昨年2016年12月の企業向けサービス物価指数(SPPI)が公表されています。前年同月比上昇率で見て、ヘッドラインSPPIは+0.4%、国際運輸を除くコアSPPIも+0.4%と、小幅ながら前月統計から上昇率が拡大しています。でも、誤差範囲かもしれません。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

企業向けサービス価格指数の上昇率、12月は0.4% 16年は0.3%に縮小
日銀が26日発表した2016年12月の企業向けサービス価格指数(2010年=100)速報値は103.4で、前年同月比0.4%上昇した。42カ月連続で前年を上回り、上昇率は11月確報値の0.3%から拡大した。前月比でも0.1%上昇した。燃料価格の上昇や為替の円安を受けて運輸関連の料金が上がったことなどが寄与した。
運輸関連では燃料費の上昇分が転嫁された。外貨建てで料金契約する外航貨物では、円安で円ベースの価格が上昇した。道路貨物・旅客ではバス運転手不足による人件費の上昇も料金を押し上げている。企業活動の活発化で東京など大都市圏のオフィス賃料も上昇しているという。
対象の147品目のうち、価格が上昇したのは52、下落した品目は55だった。上昇と下落の品目数の差は下落が13品目多かった11月から縮小した。日銀の調査統計局によると「人手や設備が不足する中でサービス価格も緩やかな上昇基調が続いている」としている。
同時に発表した16年通年の指数(2010年=100、速報値)は103.0で15年から0.3%上昇した。上昇は3年連続だが、伸び率は15年(1.1%上昇)から縮小した。世界的な荷動きの停滞や燃料価格の低迷による運輸関連の料金低迷で全体の上昇率が抑えられた。
一方、あらゆるモノがネットにつながる「IoT」や金融とIT(情報技術)を融合した「フィンテック」などの関連ソフトの受託開発や訪日外国人の増加に伴う宿泊サービスなどが全体を下支えした。


いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、SPPI上昇率のグラフは以下の通りです。サービス物価(SPPI)と国際運輸を除くコアSPPIの上昇率とともに、企業物価(PPI)上昇率もプロットしてあります。SPPIとPPIの上昇率の目盛りが左右に分かれていますので注意が必要です。なお、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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引用した記事にもある通り、前年同月比の上昇プラスが続いていますが、極めて小幅なレンジでの変動であり、もともと物価は粘着性が強いわけで、どこまで統計的に有意な差で変動しているのかどうかは不明です。言い換えれば、測定誤差の可能性も否定できませんし、統計的な有意性のレンジを広げれば、ひょっとすれば実はマイナス、という可能性も、いちユーザである私のレベルでは否定できかねます。
かなり強い膠着状態にあった企業向けサービス物価ながら、前年同月比の11月から12月への前月差を見ると、ひとつには、国際商品市況における石油価格の上昇や円安を受けた運輸関係価格の上昇、というか、下落幅の縮小が寄与しています。もうひとつは、リースと不動産です。こちらは企業活動が活発な方向に向かう中での価格上昇と考えられます。ただ、広告については、新聞や雑誌などの媒体の広告が前年同月比マイナスを続けているのに対して、テレビとインターネットはプラスとなっており、媒体で少し差が出ています。もう少し長い目で見れば、サービス価格の構成比で人件費は無視できませんので、人手不足に伴う価格上昇が下支えする構図は変わらないと考えています。
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2017年01月25日 (水) 19:29:00

堅調に伸びる輸出を背景に黒字を続ける我が国貿易の先行きリスクやいかに?

本日、財務省から昨年2016年12月の貿易統計が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、輸出額は前年同月比+5.4%増の6兆6790億円、輸入額は▲2.6%減の6兆375億円、差引き貿易収支は+6414億円の黒字を計上しています。なお、2016年通年の貿易収支は4兆741億円の黒字で、貿易黒字は6年振りです。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

16年の貿易黒字、4兆741億円 原油安で6年ぶり黒字
財務省が25日発表した2016年の貿易収支は4兆741億円の黒字(前年は2兆7916億円の赤字)だった。6年ぶりに黒字に転じた。原油や液化天然ガス(LNG)の価格下落で輸入額が前年を大幅に下回った。
16年通年の輸出額は前年比7.4%減の70兆392億円だった。輸出為替レート(税関長公示レートの平均値)は1ドル=108円95銭と前の年と比べ10.0%の円高となり、円建ての輸出額を押し下げた。品目別では韓国や台湾向けの鉄鋼などが減少した。輸入額は15.9%減の65兆9651億円だった。原粗油は32.4%減、LNGは40.4%減だった。
併せて発表した16年12月の貿易統計速報(通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は6414億円の黒字(前年同月は1389億円の黒字)だった。貿易黒字は4カ月連続。QUICKがまとめた民間予測の中央値は2900億円の黒字だった。
16年12月の輸出額は前年同月比5.4%増の6兆6790億円だった。米国向けの自動車部品などが伸びた。自動車部品やスマートフォン(スマホ)用に電気回路などの機器が増加し中国への輸出額は単月として過去最大の1兆3013億円となった。輸入額は2.6%減の6兆375億円だった。


いつもの通り、年統計に重点が置かれているものの、まずまず包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

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グラフから明らかに読み取れる通り、輸出入とも2016年年央に反転上昇局面に入っており、その中で2016年を通じて貿易は輸出が輸入を上回って黒字を計上しています。もちろん、報道で指摘されている通り、基本的には国際商品市況における石油価格の低迷に伴う輸入の減少が大きな要因であり、同時に輸出も停滞しているわけですから、パッと見では縮小均衡のように見えるのも確かです。ただし、我が国の輸出について、少なくとも最近時点では、後に詳しく見る通り、数量ベースで拡大を示しているのも事実です。季節調整済みの系列で見て、輸出額の直近のボトムは昨年2016年7月の5.66兆円であり、今日公表の12月統計では6.17兆円まで回復を示している一方で、輸入額のボトムは昨年2016年8月の5.33兆円と輸出額とは1か月ズレるものの、ほぼ昨年年央をボトムに、12月統計では5.81兆円まで増加しています。また、貿易収支も季節調整済みの系列では一昨年2015年11月から14か月連続で黒字を計上しており、最近数か月ではほぼ+3000-4000億円レベルの黒字を記録しています。かつて、サブプライム・バブル崩壊前のように月次で1兆円を超えるような貿易黒字を記録する勢いで輸出が増加する局面ではないと考えていますが、米国をはじめとして世界経済の緩やかな回復とともに、所得要因から我が国の輸出が伸びて貿易黒字を記録している、というのが私の印象です。ところが、先週就任したばかりのトランプ米国大統領は私とは異なる印象を持っているようで、我が国の貿易が黒字を計上している点をもって、何らかの貿易摩擦の火種を見つけ出そうとする可能性も否定できません。私は1990年代半ばのクリントン政権期に日米包括協議の交渉に引っ張り出されて、ある意味では、とても貴重な体験をしましたが、報道などを見る限り、またまた、貿易や通商に関して日米交渉が再開される可能性も報じられているところ、昨日の東証では自動車会社が軒並み株価を下げましたし、我が国貿易の先行きはやや不透明感が漂っている気がします。

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輸出をいくつかの角度から見たのが上のグラフです。上のパネルは季節調整していない原系列の輸出額の前年同期比伸び率を数量指数と価格指数で寄与度分解しており、まん中のパネルはその輸出数量指数の前年同期比とOECD先行指数の前年同月比を並べてプロットしていて、一番下のパネルはOECD先行指数のうちの中国の国別指数の前年同月比と我が国から中国への輸出の数量指数の前年同月比を並べています。ただし、まん中と一番下のパネルのOECD先行指数はともに1か月のリードを取っており、また、左右のスケールが異なる点は注意が必要です。我が国の輸出額についてはここ数か月で数量が主導して急速な回復を示しているのが見て取れます。下の2枚のパネルから、OECD加盟の先進国向けの輸出数量は回復が緩やかなものの、中国向けについて季節調整していない原系列の輸出指数の前年同月比で見て、2016年11月+16.0%増の後、12月には+20.6%と急速な増加を示しています。この大きな伸びがどこまで持続可能なものかは不透明ながら、どうも、世界経済の回復・拡大に伴って我が国の輸出も伸びを高める局面に潮目が変わりつつあるのが見て取れるんではないかと思います。ただし、中期的には米国の通商政策の制約を受ける可能性は否定できません。

貿易をはじめとして、我が国経済の先行きのリスク要因としてもっとも大きいのは為替である、とこのブログなどを通じて私は指摘し続けて来ましたが、米国の通商政策という新たな制約条件が加わる中で、世界経済の回復・拡大とともに我が国の輸出も短期的には増加の方向にあると考えられるものの、逆に、好調に貿易黒字を計上すれば米国の通商政策による制約条件も強まる可能性も残されており、目先はともかく、中期的な先行き不透明感はまだ払拭されていないのかもしれません。例えば、引用した記事にもある通り、2016年の対世界全体の我が国の貿易黒字は+4.07兆である一方で、実は、対米黒字は+6.83兆に上っており、米国以外では▲3兆円近い赤字、例えば、対中国では▲4.65兆円の赤字を計上しながら、それを上回る対米黒字で補っている勘定ですから、この対米貿易黒字はトランプ新政権から見れば米国内の雇用を奪っているように見えかねない危険はあります。
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2017年01月24日 (火) 21:22:00

トランプ政権下で米国における影響力を増す人々はどういったグループと見られているのか?

トランプ米国大統領が先週金曜日に就任式を終えたばかりですが、その就任式前の調査ながら、ピュー・リサーチ・センターから1月18日付けで、トランプ政権下でどういったグループが影響力を増すか、などにつき、Public Sees Wealthy People, Corporations Gaining Influence in Trump Era と題する世論調査結果が明らかにされています。もちろん、pdfの全文リポートもアップされています。まず、ピュー・リサーチのサイトからリポートのサマリーの役目を果たしているように見える最初の3パラを引用すると以下の通りです。

As President-elect Donald Trump prepares to take office, the public has starkly different expectations about which groups in society will gain influence - and those that will lose influence - under his administration.
Nearly two-thirds of Americans (64%) say wealthy people will gain influence in Washington when Trump takes office. Just 8% say they will lose influence, while 27% expect the wealthy will not be affected.
In addition, about half of the public thinks whites (51%), men (51%) and conservative Christians (52%) will gain influence. Relatively small shares (no more than 15%) think any of these groups will lose clout in a Trump administration.


経済的な話題ではないかもしれませんが、新しい米国大統領の就任はエコノミストとしても注目されるところであり、いくつかグラフを引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、上のグラフはピュー・リサーチのサイトから Majorities expect the wealthy to gain influence - and the poor to lose influence - with Trump as president を引用しています。影響力を増しそうに考えられているのは、富裕層(64%)、保守的なキリスト教徒(52%)、白人と男性(ともに51%)、などであり、逆に、ヒスパニック(56%)や貧困層(55%)、あるいは、同性愛者(54%)は影響力を減じると見られています。面白いのは、あなたのような国民(People like yourself)は影響力を増す(27%)よりも減じる(40%)可能性の方が高いと考えられている点です。

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次に、上のグラフはピュー・リサーチのサイトから Most Americans think corporations and the military will increase influence with Trump in the White House を引用しています。主として、組織や団体を見ているわけです。企業(74%)や軍(64%)が影響力を増す一方で、環境保護団体(60%)や労働組合(54%)が影響力を減じると見られています。まあ、これも妥当な気がします。前のグラフと結合させてしまった方がよかったかもしれません。

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最後に、上のグラフはピュー・リサーチのサイトから Views about which groups will increase influence are similar for Trump as for Bush, but fewer expect children, older people, blacks to gain under Trump を引用しています。クリントン政権以降の歴代の大統領の傾向を見ているわけです。民主党の大統領と共和党の大統領が交互に並んでいるので一目瞭然なんですが、特に直近で前のオバマ前大統領と現在のトランプ大統領を比較すると、企業や軍が影響力を増す一方で、若年層と貧困層と黒人、あるいは、環境保護団体などがトランプ政権下では影響力を低下させると見られているのが明らかです。もちろん、こういった傾向は同じ共和党のブッシュ元大統領との比較でも同様なんですが、国民の目から見て、トランプ大統領の政権下ではさらにこういった共和党的な影響力のスウィングの度合いが大きい、と見られていることも確かです。
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2017年01月23日 (月) 21:26:00

今週末から始まる春節における訪日中国人消費動向予測やいかに?

今週末の1月28日から中華圏の春節が始まり、通例であれば、1月27日から2月2日までの7日間がお休みらしいんですが、個の春節を前に1月18日付けで、トレンドExpressから訪日予定の中国人によるSNS上のクチコミをもとに、春節の時期における訪日中国人の消費動向予測が明らかにされています。一時の「爆買い」はかなり下火になったものの、春節の季節の中国人観光客の消費動向はまだまだ興味あるところ、図表を引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、上のグラフは、トレンドExpressのサイトから 2017年春節「行きたい」書き込み集計ランキング を引用しています。上位5位までは定番の都道府県がランクインする一方で、昨年の国慶節に比べ6位に広島県が、9位に福井県が食い込み、行き先の多様化が見られています。引き続き、関西圏の人気が高い一方で、東京都が順位を伸ばしているのは、初訪日の中国人観光客が増加している可能性があると分析しています。なお、広島県についての具体的な投稿を見ると、海・山などの自然、厳島神社の世界遺産などの観光資源やカキやお好み焼きなどのグルメに加え、アイドルコンサートや歴史に関する言及など多岐に渡り関心を集めていますし、福井県については寿司や越前蟹などについての書き込みが多く、グルメに注目が集まっていると指摘しています。

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次に、上のグラフは、トレンドExpressのサイトから 2017年春節に日本でしたいことランキング を引用しています。何といっても、買い物がトップでしたが、2位の雪や5位のスキーなどの季節要因も無視できません。なお、アクティビティのスキーよりも鑑賞の雪を見るが上位だったことから、SNSに写真を投稿することが好きな中国人の嗜好が指摘されています。買い物については図表はありませんが、1位化粧品、2位ベビー用品、3位健康食品・サプリメント、4位医薬品、5位生活用品など、引き続きドラッグストアが繁盛しそうなランキングです。ただし、9位の餅つきが初ランクインしていますが、中国では餅は蒸して成型し作るため、杵と臼を用いた餅つきは日本独自の文化と見なされているようですし、さらに最近の傾向として、いわゆるモノ消費ではないコト消費として、日本文化の体験が人気を集めており、10位以下にも民宿とかカプセルホテルに泊まりたい、あるいは、利き酒をしたい、日本料理を作りたいなどが上げられている、と指摘しています。

いわゆるビッグデータの分析の一種と見えなくもないんですが、この週末から始まる春節における訪日中国人観光客の動向をどこまで捉えられているのか、とても興味深いものがありました。
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2017年01月20日 (金) 22:06:00

トランプ効果でエコノミスト誌のビッグマック指数はどう動いたか?

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最新号のエコノミスト誌で為替の購買力平価の一種であるビッグマック指数が明らかにされています。エコノミスト誌のサイトから引用した画像は上の通り、昨年来のトランプ次期米国大統領への政策期待から生じているドル高を反映しているようです。下のフラッシュもエコノミスト誌のサイトに直リンしていたりします。



諸般の事情により、これだけです。週末前の軽い経済の話題でした。
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2017年01月19日 (木) 21:37:00

Oxfamによる格差に関する2017年版報告書「99%のための経済」やいかに?

やや旧聞に属する話題ですが、今週月曜日の1月16日に、世界経済フォーラムのダボス会議に先がけて、Oxfamから格差問題に関する最新の報告書「99%のための経済」An Economy for the 99% が明らかにされています。もちろん、pdfのリポートもアップされています。いくつかのメディアでは、Oxfamのプレスリリース「たった8人のトップ富裕者が世界の下位半分36億人と同じ資産を保有している」Just 8 men own same wealth as half the world をキャリーしているのを私も見かけました。まず、リポートの表紙から概要を引用すると以下の通りです。

An Economy for the 99%
New estimates show that just eight men own the same wealth as the poorest half of the world. As growth benefits the richest, the rest of society - especially the poorest - suffers. The very design of our economies and the principles of our economics have taken us to this extreme, unsustainable and unjust point. Our economy must stop excessively rewarding those at the top and start working for all people. Accountable and visionary governments, businesses that work in the interests of workers and producers, a valued environment, women's rights and a strong system of fair taxation, are central to this more human economy.


このパラグラフを見て、格差是正のために雇用の確保、環境の保護、女性の権利の尊重、公平な税制などのいくつかの主張も理解できるんですが、私の興味の範囲ながら、リポートからいくつか図表を引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。

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上のテーブルは、リポート p.11 にある Box 1: Oxfam's wealth inequality calculations から Table 1: Share of wealth across the poorest 50% of the global population を引用しています。このブログの昨年2016年11月28日付けのエントリーで取り上げたところですが、クレディ・スイス証券から明らかにされている世界の富裕層の資産保有に関するリポート The Global Wealth Report 2016 などから試算を行っており、2014年1月時点ではトップ富裕者85人が世界の下位半分と同じ額の資産を保有しているとしていたところ、2015年10月時点では世界の富裕層1%とそうでない99%の資産額がほぼ等しいとの試算結果を得て、その時点では下位半分の資産が占める割合は0.7%だったものが、2016年データではさらに格差が広がり、世界の下位半分の資産はわずかに0.2%にしかならず、世界の富裕者上位8人とほぼ同額となったとの試算結果を明らかにしています。

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次に、上のグラフは、リポート p.16 から Figure 2: Apple minimizes material and labour costs to maximize its profits (Apple iPhone 2010) を引用しています。最新ではないんですが、2010年の iPhone 4 のコスト構造について、"Capturing Value in Global Networks: Apple's iPad and iPhone" と題する米国の研究者の学術論文から引用・再構成しています。労働者に支払われるのはわずがに5%余りに過ぎない一方で、Appleの利益は60%近くに達しています。賃金が上がらない反面、企業が内部留保を溜め込んで、配当や株価に反映して株主の利益となったり、ストック・オプションで経営者の懐を潤わしたりしているのが読み取れるデータです。日本企業も少なからず、同じような企業行動を取っていると私は考えています。

ここ数年で日本のみならず世界経済における格差や不平等は急速に拡大を見せています。Oxfamに指摘されるまでもなく、政府が取り組むべき優先順位の高い経済課題といえます。
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2017年01月18日 (水) 19:34:00

ダボス会議が始まり、世界経済フォーラム Grobal Risks Report 2017 やいかに?

遅ればせながら、なんですが、世界経済フォーラムの主宰するダボス会議が昨日1月17日から始まっており、その前段階で1月11日に Grobal Risks Report 2017 が明らかにされています。景気回復のペースが歴史的に鈍化していることを指摘しつつ、いくつかのリスクについて分析います。図表を引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、Grobal Risks Report 2017 からヘッドラインともいうべき The Global Risks Landscape 2017 のグラフを引用すると上の通りです。例年と同じように、横軸が発生の蓋然性、縦軸がダメージですから、右上に位置するほぼ一般的に「危ない」ということになり、左下はそれほどでもない、というように解釈できようかと思います。ですから、異常気象や自然災害が発生の蓋然性が高く、しかもインパクト大きいリスクとして認識されています。マーカが緑色なのは環境問題のカテゴリです。ほかに、社会問題のカテゴリを表す赤いマーカの難民問題、地政学のカテゴリのオレンジ色のマーカのテロリストの攻撃、技術問題のカテゴリを示す紫色のマーカのサイバー攻撃などが目立っています。他方、経済問題のカテゴリである青いマーカでは雇用問題や金融危機などが見受けられますが、先ほどのいくつかのリスクに比べてやや後景に退いているような印象です。

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次に、というか、最後に、同じく Grobal Risks Report 2017 p.44 から Figure 3.1.1: Perceived Benefits and Negative Consequences of 12 Emerging Technologies を引用すると上の通りです。技術進歩の光と影、と言いましょうか、横軸が利益、縦軸が否定的な結果をもたらす確率となっており、このグラフで言えば、右下に位置するほど利益が大きく否定的な影響が少ない、ということになり、逆は左上に位置すれば利益が少ない割にはリスクが大きく、また、右上に位置すれば「諸刃の剣」的に利益も大きいがリスクも大きく、まあ、少し言葉は違うかもしれませんが、ハイリスク・ハイリターン型の技術と考えてよさそうです。そして、最初のカテゴリ、すなわち、利益が大きくリスクが小さい典型はエネルギの採掘・保存・輸送となっています。シェール革命などが念頭にあるのかもしれません。そして、左上の利益が少ない割には危ない技術の典型がジオエンジニアリング、地球工学と称されることもありますが、私は専門外ながら、降雨をもたらしたりする技術ではないかと思います。よく知りません。そして、「諸刃の剣」型の危ないが利益も大きそうな技術の典型が人工知能(AI)とロボットであろうと示唆されています。まあ、そうなんでしょうね。うまく使えれば大きな利益が見込める一方で、雇用が奪われるだけでなく、もっと、何と言うか、現時点では予想もつかないタイプの不都合が生ずる可能性もあります。

ダボス会議は1月20日までの予定だそうです。
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2017年01月17日 (火) 19:26:00

国際通貨基金(IMF)による「世界経済見通し改定」World Economic Outlook Update やいかに?

昨日1月16日、国際通貨基金(IMF)から「世界経済見通し改定」World Economic Outlook Update が公表されています。ヘッドラインとなる世界の経済成長率見通しは、前回の昨年2016年10月時点から変更なく今年2017年+3.4%、来年2018年+3.6%と見込まれています。そのうちの日本経済の成長率は、2017年は前回から+0.2%ポイント上方改定され+0.8%と、来年2018年は+0.5%と見通されています。まず、IMFのリポートから最初のページのポイントを4点引用すると以下の通りです。

A Shifting Global Economic Landscape
  • After a lackluster outturn in 2016, economic activity is projected to pick up pace in 2017 and 2018, especially in emerging market and developing economies. However, there is a wide dispersion of possible outcomes around the projections, given uncertainty surrounding the policy stance of the incoming U.S. administration and its global ramifications. The assumptions underpinning the forecast should be more specific by the time of the April 2017 World Economic Outlook, as more clarity emerges on U.S. policies and their implications for the global economy.
  • With these caveats, aggregate growth estimates and projections for 2016-18 remain unchanged relative to the October 2016 World Economic Outlook. The outlook for advanced economies has improved for 2017-18, reflecting somewhat stronger activity in the second half of 2016 as well as a projected fiscal stimulus in the United States. Growth prospects have marginally worsened for emerging market and developing economies, where financial conditions have generally tightened. Near-term growth prospects were revised up for China, due to expected policy stimulus, but were revised down for a number of other large economies-most notably India, Brazil, and Mexico.
  • This forecast is based on the assumption of a changing policy mix under a new administration in the United States and its global spillovers. Staff now project some near-term fiscal stimulus and a less gradual normalization of monetary policy. This projection is consistent with the steepening U.S. yield curve, the rise in equity prices, and the sizable appreciation of the U.S. dollar since the November 8 election. This WEO forecast also incorporates a firming of oil prices following the agreement among OPEC members and several other major producers to limit supply.
  • While the balance of risks is viewed as being to the downside, there are also upside risks to near-term growth. Specifically, global activity could accelerate more strongly if policy stimulus turns out to be larger than currently projected in the United States or China. Notable negative risks to activity include a possible shift toward inward-looking policy platforms and protectionism, a sharper than expected tightening in global financial conditions that could interact with balance sheet weaknesses in parts of the euro area and in some emerging market economies, increased geopolitical tensions, and a more severe slowdown in China.


1ページ丸ごと引用しましたので、とても長くなりましたが、次に、IMFのブログから成長率見通しの総括表を引用すると以下の通りです。やや愛想なしですので、いつもの通り、画像をクリックするとpdfのリポートのうちの最後の7ページ目の Table 1. Overview of the World Economic Outlook Projections のページだけを抜き出したpdfファイルが別タブで開くようになっています。

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ということで、新興国や途上国を含めて、世界経済は2016年の成長率3.1%に比較して2017年は3.4%、さらに2018年には3.6%と成長率が年を追って緩やかに加速すると見込まれています。特に、米国では景気刺激策の採用により成長率が加速し、米国からの波及効果も見込めるんですが、現時点ではトランプ次期米国政権の政策動向がまだ不確定なので、詳細は4月の次回見通しで示す予定と表明されています。ただ、米国新政権の政策動向を勘案して、ラテンアメリカのメキシコとブラジルでは成長率は昨年10月時点の見通しから下方修正されており、特に、自動車産業の工場移転の取り止めなどからメキシコ経済への下押し圧力が強まっていることを織り込んでいます。我が国については、2008SNAの導入と国民経済計算の基準改定によって過去の成長率が上振れしたことや足元の経済の動向が好調であることなどから、今年2017年の成長率をわずかながら上方改定しています。
先行きリスクとしては、全体として下方リスクの方が大きいものの、米中の景気刺激策に伴う上方リスクも考えられるとしつつ、その下方リスクは、何といっても、米国新政権の内向き政策や保護主義の高まりなどが上げられており、米国の金利上昇が世界経済、特に、ユーロ圏と新興国の金融市場にバランスシートの脆弱性をもたらす可能性があると懸念を明らかにしており、中国の景気減速の深まりもリスクとして上げられています。従って、経済政策としては、引き続き、緩和的な金融政策とともに、財政余力ある場合は財政政策による弱者保護と中長期的な成長期待引上げのための支援が上げられると指摘しています。もちろん、貿易の保護仕儀に対する懸念もにじませています。

次に、目を国内経済に転じると、同じ1月16日に日銀から「地域経済報告」、いわゆる「さくらリポート」が明らかにされています。地域ごとの景気判断を見ると、全国9ブロックのうち、東北、関東甲信越、東海の3ブロックで引き上げられ、残る6ブロックは据え置かれています。以下のテーブルの通りです。

 2016年10月判断前回との比較2017年1月判断
北海道緩やかに回復している緩やかに回復している
東北生産面に新興国経済の減速に伴う影響などがみられるものの、基調としては緩やかな回復を続けている緩やかな回復を続けている
北陸一部に鈍さがみられるものの、回復を続けている回復を続けている
関東甲信越輸出・生産面に新興国経済の減速に伴う影響などがみられるものの、緩やかな回復を続けている緩やかな回復を続けている
東海幾分ペースを鈍化させつつも緩やかに拡大している緩やかに拡大している
近畿緩やかに回復している緩やかに回復している
中国緩やかに回復している緩やかに回復している
四国緩やかな回復を続けている緩やかな回復を続けている
九州・沖縄熊本地震の影響が和らぐもとで、緩やかに回復している緩やかに回復している


地域ごとに景気判断が全体としてやや上向きに修正されていますから、景気拡大が地方にも広がっていることが実感されます。なお、前回の2016年10月リポートではトピックとしてインバウンド観光が取り上げられていましたが、今回のリポートでは住宅投資の動向と関連企業等の対応状況に焦点が当てられています。それから、どうでもいいことながら、政府で毎月出している「月例経済報告」というのがあり、いわゆる「月例文学」と称されるビミョーな言い回しが見られるんですが、日銀が出すリポートもご同様な気がします。景気回復に付される「緩やか」という形容詞ないし副詞は判らないでもないんですが、私も「緩やかに回復している」と「緩やかな回復を続けている」の違いは理解不能です。
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2017年01月16日 (月) 21:21:00

大きく減少した機械受注とマイナス幅が着実に縮小する企業物価(PPI)!

本日、内閣府から11月の機械受注が、また、日銀から12月の企業物価 (PPI)が、それぞれ公表されています。機械受注は変動の激しい船舶と電力を除くコア機械受注の季節調整済みの系列で見て、前月比▲5.1%減の8337億円を記録し、企業物価はヘッドラインの国内物価上昇率は前年同月比で▲1.2%の下落を示しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

機械受注、11月5.1%減 非製造業が落ち込む
内閣府が16日発表した11月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標とされる「船舶・電力を除く民需」の受注額(季節調整値)は、前月比5.1%減の8337億円だった。2カ月ぶりに減った。QUICKが事前にまとめた民間予測の中央値(2.0%減)を下回った。先月に大きく伸びた非製造業が落ち込んだ。製造業は増加したものの補えなかった。
機械受注の基調判断は、過去3カ月の動向を踏まえ「持ち直しの動きに足踏みがみられる」に据え置いた。
製造業からの受注額は9.8%増の3635億円と4カ月ぶりに増加した。半導体製造装置や電子計算機が伸びた電気機械が68.0%増えた。原子力原動機などが好調だった非鉄金属は4.4倍になった。
非製造業からの受注額は9.4%減の4834億円と2カ月ぶりに減った。その他非製造業は前月の反動減が出て16.1%減少。鉄道車両や通信機が落ち込んだ運輸業・郵便業も12.5%減と振るわなかった。
前年同月比での「船舶・電力を除く民需」の受注額(原数値)は前年同月比10.4%増だった。内閣府は10-12月期見通しを前期比5.9%減としている。10-11月の実績を踏まえると、12月実績が前月比11.0%減で達成できる。内閣府は「四半期見通しを上回りそう」との見方を示した。
12月の企業物価指数 前年比1.2%下落 下落幅は7カ月連続縮小
日銀が16日に発表した2016年12月の国内企業物価指数(2010年平均=100、速報値)は99.7で、前年同月比で1.2%下落した。前年同月比の下落は21カ月連続だが、下げ幅は7カ月連続で縮小した。円安進行や原油など国際商品価格の上昇で、企業物価には下げ止まり感が強まっている。
前月比では0.6%上昇した。石油輸出国機構(OPEC)の減産合意による原油需給の引き締まり観測や米国と中国の財政拡大期待を背景に、原油や銅地金などの非鉄金属の国際相場が上昇したことが影響した。
円ベースの輸出物価は前年同月比で1.8%下落、前月比で5.3%上昇した。輸入物価は前年同月比で2.8%下落、前月比で4.9%上昇した。
企業物価指数は企業同士で売買するモノの価格動向を示す。公表している814品目のうち前年同月比で下落したのは478品目、上昇は250品目だった。下落と上昇の品目差は228品目で、11月の確報値(264品目)から縮小した。
日銀調査統計局は「トランプ次期政権の財政政策や中国の環境規制の行方に不透明感が強く、国際商品市況や為替相場の先行きが商品価格に与える影響を慎重に見極めないといけない」としている。
同時に発表した16年平均の国内企業物価指数(2010年平均=100、速報値)は99.2で前年比は3.4%下落した。中国などの新興国の経済減速を背景にした国際商品価格の低迷が響いた。市場予想よりも米国の利上げペースが鈍化し、為替相場が円高・ドル安基調だったことも輸入品の価格下落を通じた企業物価の押し下げ要因となった。16年の平均円相場は1ドル=108.84円と15年比で12円21銭の円高・ドル安だった。


いつもながら、よく取りまとめられた記事だという気がします。次に、機械受注のグラフは以下の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は、その次の企業物価とも共通して、景気後退期を示しています。

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機械受注については、引用した記事にもある通り、コア機械受注が日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスの前月比▲2%減よりさらに減少幅が大きく出ています。もともと、10月統計で+4.1%とジャンプした反動が表れることは容易に想像されていたんですが、円安や株高が現れる前のトランプ次期米国大統領当選の初期ショック、すなわち、貿易制限的な政策に対する反応なのかもしれない、と考えてみたところ、どうも違う気がします。というのは、製造業で伸びて非製造業で減少を示しているからです。ですから、11月統計の機械受注は外的ショックとは大きな関係なく、自律的な動向を示している可能性も十分ありますし、私はそう見ています。結果として、10月に増加し11月に減少したわけで、もともと変動の激しい統計ですから、上のグラフのように移動平均で見るようにすべきであり、そのグラフではまだ太線の移動平均ラインは増勢を保っているように見えます。ただし、コア機械受注の外数ながら、外需と官公需は大きな増加を示しています。為替動向と経済政策動向に基づく増加であり、外需はコア機械受注の先行指標と見なされていることからも、機械受注の先行きを占う上で、決して悲観視する必要はないものと受け止めています。すなわち、11月統計については、減少幅を見れば悲観的な見方も出る可能性はありますが、それ相応に底堅い動きであると私は見ています。ですから、基本的なラインとしては、横ばいに近いながらも機械受注は増勢を保持する可能性が高いと考えています。

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次に、企業物価(PPI)上昇率のグラフは上の通りです。上のパネから順に、国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率、需要段階別の上昇率を、それぞれプロットしています。上の2つのパネルで影をつけた部分は、景気後退期を示しています。ということで、企業物価(PPI)上昇率はここ数か月でかなりマイナス幅を縮小させています。すなわち、ヘッドラインの国内物価の前年同月比上昇率で見て、2016年5月が直近のボトムで▲4.4%の下落を示した後、7月までは▲4%台だったんですが、8-9月は▲3%台に下落幅を縮小させ、10-11月は▲2%台、そして、12月はとうとう▲1.2%を記録して、11月統計から一気に1%ポイントも下落幅を縮小させました。国際商品市況の石油価格と為替動向が大きな要因であり、ここ数か月で画期的に需給バランスが改善したと考えるエコノミストは少ない気がしますが、デフレ脱却に向けた動きは着実に進んでいると私は受け止めています。従って、企業物価(PPI)でも、消費者物価(CPI)でも、今年中にはマイナスを脱却する可能性が高いと私は予想しているんですが、日銀のインフレ目標である2%に達するためには、単に国際商品市況とか為替だけでなく、需給ギャップの改善も併せて、景気回復の動きを強める必要がありそうな気がします。
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2017年01月12日 (木) 20:41:00

やや停滞を示す景気ウォッチャーと順調に黒字を続ける経常収支!

本日、内閣府から12月の景気ウォッチャーが、また、財務省から11月の経常収支が、それぞれ公表されています。季節調整済みの系列で見て、景気ウォッチャーの現状判断DIは前月比横ばいの51.4を、また、先行き判断DIは前月比▲0.4ポイント低下の50.9を、それぞれ記録し、経常収支は季節調整していない原系列の統計で1兆4155億円の黒字を計上しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

12月の街角景気、現状判断指数横ばい 先行きは6カ月ぶり悪化
内閣府が12日発表した2016年12月の景気ウオッチャー調査によると、街角の景気実感を示す現状判断指数(季節調整値)は51.4と前月比横ばいだった。内閣府は基調判断を「着実に持ち直している」で据え置いた。
部門別にみると、企業動向と雇用が上昇した半面、家計動向が低下した。企業動向では、製造業と非製造業ともに上昇した。街角では「自動車メーカーの生産が堅調で、取引先の部品メーカーの受注も安定してきている」(東海・金融)との声があった。一方、家計動向では小売りと住宅が低下。「相変わらず低調な状態は続いている」(九州・一般小売店)という。
2-3カ月後の先行きを聞いた先行き判断指数(季節調整値)は、前月から0.4ポイント低下の50.9だった。悪化は6カ月ぶり。家計動向と企業動向が低下した。企業では「鋼材の値上がりが予想され、価格転嫁が遅れる分だけ収益が落ち込む」(近畿・金属製品製造業)との声が聞かれた。家計では「1月に就任する米国の次期大統領の言動が気にかかる」(東北・スーパー)との見方もあった。
11月の経常収支、1兆4155億円の黒字 07年以来9年ぶり高水準
財務省が12日発表した2016年11月の国際収支状況(速報)によると、海外との総合的な取引状況を示す経常収支は1兆4155億円の黒字だった。前年同月に比べて3095億円黒字幅を拡大した。黒字は29カ月連続。11月としては2007年(1兆6678億円の黒字)以来9年ぶりの黒字額となった。原油安と円高を背景に貿易収支が黒字転換したことなどが寄与した。
貿易収支は3134億円の黒字(前年同期は3041億円の赤字)だった。原油や液化天然ガス(LNG)など燃料価格の下落で輸入額が5兆5770億円と10.7%減少。円高で外貨建ての円換算の輸入額も目減りした。自動車や鉄鋼の低迷で輸出額も5兆8904億円と0.8%減少したが、輸入の落ち込みが上回った。
サービス収支は738億円の黒字(前年同期は603億円の黒字)だった。「その他業務サービス」で大口の受け取りがあった。旅行収支は訪日外国人の1人あたりの消費額減少で黒字幅を縮小した。
第1次所得収支は1兆2032億円の黒字だった。円高で企業が海外事業への投資で受け取る配当金や証券投資からの収益が目減りし、前年同月(1兆5338億円の黒字)から黒字幅を縮小した。


いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。でも、2つの統計を並べるとどうしても長くなってしまいがちです。続いて、景気ウォッチャーのグラフは下の通りです。現状判断DIと先行き判断DIをプロットしています。いずれも季節調整済みの系列です。色分けは凡例の通りです。また、影をつけた部分はいずれも景気後退期です。

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景気ウォッチャーの現状判断DIは家計動向関連で下がった一方で、企業動向関連では製造業・非製造業ともに上昇を示しています。ただ、家計動向関連でも、小売関連が低下した一方で、飲食関連とサービス関連は上昇しています。また、企業動向関連の中でも、ともに上昇ながら、製造業よりも非製造業の方が上昇幅が大きくなっています。なかなかに複雑な動きを示しており、年末12月ですから仕方ないところではありますが、極めて大雑把に考えると、家計についても企業についても、モノの物販よりもサービスの方に重点があったのかもしれません。ただ、前月比マイナスの家計動向関連ながら、雇用関連は引き続きプラスですし、全体のDIの水準もこの統計にしてはめずらしく50を2か月連続で超えるという高い水準にあります。ですから、私としては大きな懸念は持っていません。先行き動向DIは家計動向関連だけでなく、企業動向関連も前月比マイナスとなったため、全体でも前月から低下を示しましたが、先行きでも雇用関連はかなり強含みで推移しています。現状判断DIが停滞を示し、先行き判断DIが低下したのは、国際商品市況における石油価格などの上昇に連動して、国内でも燃油価格などコストの上昇が目に見える形で発生し始めた影響ではないかと私は想像しています。石油価格は上がっても下がっても、日本経済にいろんな影響を及ぼすようです。

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次に、経常収支のグラフは上の通りです。青い折れ線グラフが経常収支の推移を示し、その内訳が積上げ棒グラフとなっています。色分けは凡例の通りです。上のグラフは季節調整済みの系列をプロットしている一方で、引用した記事は季節調整していない原系列の統計に基づいているため、少し印象が異なるかもしれませんが、経常収支についてもほぼ震災前の水準に戻った、と私は受け止めています。なお、為替相場はトランプ効果でかなり円安が進んだように感じられますが、財務省のサイトによれば、インターバンクのドル・円相場は1ドル当たり108.18円と、前年同月の122.54円から11.7%の円高となっています。また、原油価格もドルベースでは1バレル当たり49.08ドルで前年同月比で見て+3.3%の上昇なんですが、円高で相殺されて円ベースではキロリットル当たり32,412円と▲10.5%の下落だったりします。ただ、上のグラフの黒い棒に見られるように、こういった為替相場や原油価格の動向ながら、貿易収支は急速に黒字化の方向に向かっているように見受けられます。
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