2015年02月28日 (土) 13:32:00

今週の読書はウィリアム・パウンドストーン『科学で勝負の先を読む』ほか

今週の読書は、先週末にいっぱい借りに走り回ったので、そこそこ読みました。ウィリアム・パウンドストーン『科学で勝負の先を読む』ほか、翻訳書の教養書を中心に小説も含めて6冊、以下の通りです。今週の読書感想文はやや短めに論評しておきたいと思います。

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まず、ウィリアム・パウンドストーン『科学で勝負の先を読む』(青土社) です。著者はサイエンス・ライターで、これまでの著書を見ている限り、サイエンスの中でも数学に造詣が深いようです。この本はタイトルの通りなんですが、決してランダム・ウォークや偶然の確率に挑むわけではありません。機械的な確率を当てようとするのではなくて、何らかの人間的なバイアスを読み切ろうとするものです。私は詳しくないんですが、ロトのように購入者自身が数字を選ぶ宝くじの場合、当選番号はランダムとしても、投票番号で少ない数字を選ぶことは出来るわけで、ソチラの方面を極めようとしています。ベンフォードの法則から外れた数字の現れ方をする会計操作なども取り上げ、また、バスケットボールなどの「ホットハンド」という絶好調の波に乗って成功しまくる状態に疑問を投げたりしています。ただし、エコノメにも理解あるエコノミストたる私から言わせれば、例えば、米国の株式市場の場合はモメンタムが優勢で、順張りが必勝戦略である一方で、日本では逆にリターン・リバーサルが優勢で、逆張りが必勝戦略となっています。これはエコノメで実証的に広く確認されている事実です。繰返しになりますが、本書はランダムや偶然に挑戦するものではなく、人間が選択するバイアスを読もうとする試みです。なお、最後にいつもの宣伝ですが、私は大学に出向していた時にランダム・ウォークの性質や検定方法について "An Essay on Random Walk Process: Features and Testing" と題する学術論文を書いています。ご参考まで。

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次に、ホッド・リプソン/メルバ・カーマン『2040年の新世界』(東洋経済新報) です。上の表紙の画像に見られる通り、副題は「3Dプリンタの衝撃」とされています。要するに、2040年において3Dプリンタが製造現場や国民生活の場などで大いに活用されていて、経済社会が大きく変化している可能性があることを明らかにしています。私なんぞの門外漢が知る限り、3Dプリンタというのはインクの代わりに黄色いポリマーを原料に整形して立体的な造形を作る機械なんですが、本書では、フードプリンタとしてパンやクッキーやチョコレートを作ったりもします。季節はバレンタインデーを終えたところでしたから、チョコを材料にハート形を造形するなんてのは理解しやすいんではないでしょうか。でも、生体インクを材料にバイオプリンティングして移植用の臓器をプリントする、となれば大いに次元の異なるお話だという気がします。本書では、単に3Dプリンタで何かをプリントする、というか、作り出すだけでなく、デザイン・ファイルに関する著作権のあり方や、武器や薬物などのご禁制品まで出来てしまう3Dプリンタに関する規制のあり方など、幅広く3Dプリンタのトピックを網羅しています。私はその昔の25-30年くらい前に、当時の主流だったメインフレームのコンピュータからパーソナルな「1人1台」のPCの時代になるとか、インターネットの黎明期に情報化を考える書物とかで、もっぱら家庭における生活の変化ばかりを取り上げていたため、工場やオフィスなどの生産の場における製造工程の変化や仕事の流れの革新について、余りに無視されていると感じたことがありましたが、本書では家庭の生活だけでなく、学校における教育や工場における製造過程など、幅広く目配りがなされており、とても安心感があります。専門外の私でもそれなりに興味深く読めたのも事実です。

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次に、ロバート D. カプラン『地政学の逆襲』(朝日新聞出版社) です。輸送手段の高速化や情報の高度化により地理的な位置関係は重要ではなくなったかのように主張されることがありますが、本書では地理の重要性について大いに強調しています。ただし、ややタイトルには疑問を感じざるを得ません。すなわち、上の表紙の画像に見られる通り、原題は The Revenge of Geography であって、Geopolitics ではなく Geography ですから、直訳すると「地理学の逆襲」です。やや誤解を生じかねないタイトルとしているような気がします。どうあっても動きようのない地理的な位置関係というのが重要であることは、ある意味で私も当然と受け止めていますが、私の直感としては地理は地理でも位置関係というよりも、むしろ気候や気象条件の違いに起因する結果もあるんではないかと考えています。ジャカルタに3年間暮らして政府開発援助に関わったエコノミストとして、「緯度の経済学」はそれなりに実在すると考えますが、それは気候に起因する南北の差ではないかとも見えます。本書でも世界的な覇権の移り変わりが注目されていますが、地理的な位置関係が移り変わりしない一方で、覇権はその昔のローマから近代の英国を経て今では米国に移っているわけですから、地理的な位置関係だけではない何らかの要因を考慮しないと覇権の移り変わりは理解できないことになります。でも、地理学に基づくハートランドとか、リムランドとかいうのは、専門外の私ですら耳にしたことのあるキーワードですから、それなりの基礎的な教養となるような気もします。

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次に、多田井喜生『昭和の迷走』(筑摩選書) です。著者は大学などのアカデミックな世界ではなく、ビジネスの世界に身を置いた歴史家です。多くの軍人が後悔した「満州で止めておけば」とか、「長城を越えなければ」など、満州事変から「満州国の建国」で止まらずに中国全体と泥沼の戦争に陥って、さらに、米国や英国と戦線が果てしなく拡大した原因について解明しようと試みています。その題材になるのは大蔵大臣も務めた勝田主計の残した長期に渡る「ポケット・ダイアリ」です。また、昭和の大陸経営について、例えば満州においては金券の朝鮮銀行券か銀券の台湾銀行券か、といった視点も目新しく、今までにない切り口で昭和の暗黒史の解明を試みています。最初の方で戦争とは外交と軍事と財政が重要、と指摘されていながら、ほとんど外交が本書では現れず、財政の視点が目新しいとはいうものの、やっぱり、軍事の視点がかなりクローズアップされているような印象を私は受けました。それも、ほぼ陸軍一辺倒で、海軍についてはほとんど何の言及もありません。新たな史料に基づき新たな視点も提供されているとはいえ、少し物足りない気がします。

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次に、飯田洋介『ビスマルク』(中公新書) です。著者はビスマルク研究を専門とし、早稲田大学出身で現在は岡山大学に在籍する研究者です。ビスマルクといえば、1815年生まれで、今年で生誕200年となります。ナポレオン後の欧州において、ドイツ宰相として外交と内政に辣腕を振るった、という大雑把な印象は誰でも持っているんではないでしょうか。内政では社会保険制度や年金などがビスマルクの功績として思い浮かびますが、本書では外交における圧倒的な役割を重視しています。鉄血宰相と称される軍事と外交でハプスブルク家を外してプロイセンを中心とするドイツの国家としての統一を成し遂げた政治家であるとの位置づけです。ただ、私の歴史観とも関係するんですが、本書の視点のように、ビスマルクの功績によりドイツがプロイセン中心に統一された、ということになるんではなく、何らかの歴史的な流れの中でプロイセン中心のドイツ統一が客観的な条件として高まったがゆえに、その舞台回しとしての役割を引き受ける人物が必要で、それがビスマルクだった、と私は考えています。すなわち、何らかの強烈なパーソナリティが大いなるリーダーシップをもって歴史を形作るんではなく、歴史が何らかの必然の流れの中で進むうちに、その流れの必要な人物を舞台に上げる、という考えを私は持っています。かなり、マルクス的・唯物論的な歴史観に近いと思いますが、ビスマルクも何らかの歴史の要請によりドイツ宰相として腕を揮ったんではないかと私は考えています。ちょっと、本書の著者のようなビスマルク研究者とは視点が違うと思いますが、ご参考まで。

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ここまで教養書や専門書が並びましたが、最後だけ小説で、月村了衛『土漠の花』(幻冬舎) です。アフリカで活動していた自衛隊にソマリアのスルタンの娘が難を逃れて来て、敵対氏族やテロ集団からの攻撃にさらされて多数の死傷者を出しつつ、自衛隊の本部まで国境を越えて命からがら逃げ帰る、というストーリーです。私には何も訴えかけるものがありませんでした。どうして本書が売れているのか、サッパリ私には理解できません。出先の自衛隊員がどのような判断に基づいて戦闘行動を取るべきなのかは大いに考えさせられる要素のひとつではありますが、内戦状態のアフリカにおいて、どの氏族を味方と考え、どの氏族と戦闘行為を行うのか、勝手に武官が判断すべきかどうか疑問の残るストーリーであり、戦闘行為の描写も私は何の感慨も湧きませんでした。何の美点も見出せない小説ですし、誰にもオススメする自信がありません。
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2015年02月27日 (金) 19:33:00

いっせいに発表された政府統計の経済指標から何が読み取れるか?

今日は、そうでなくても短い2月の営業最終日の閣議日ですから、政府統計の経済指標がいっせいに発表されています。すなわち、経済産業省から鉱工業生産指数商業販売統計が、また、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が、また、総務省統計局の消費者物価指数が、それぞれ公表されています。消費者物価の東京都区部を除いて、いずれも1月の統計です。まず、とても長くなりますが、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

1月の鉱工業生産指数、前月比4.0%上昇 2カ月連続で上昇
経済産業省が27日発表した1月の鉱工業生産指数(2010年=100、季節調節済み)速報値は、前月比4.0%上昇の102.6だった。上昇は2カ月連続。QUICKがまとめた民間予測の中央値は3.0%上昇で、市場予想を上回った。伸び率は2011年6月(4.2%上昇)以来の高さ。設備投資向けの一般機械や、自動車を含む輸送機械などの増産が寄与した。経産省は生産の基調判断を前月の「緩やかな持ち直しの動きがみられる」で据え置いた。
生産指数は15業種のうち13業種が前月比で上昇し、2業種が低下した。上昇業種では「はん用・生産用・業務用機械」が9.4%上昇した。半導体製造装置や化学プラント用設備などの増産が目立った。自動車を含む「輸送機械」は4.5%上昇し、3カ月連続の前月比プラスとなった。「情報通信機械」は通信基地局向けに使われる設備が増え、5.8%上昇。「電子部品・デバイス」はスマートフォン(スマホ)向け部品が堅調で1.5%上昇と、7カ月連続プラスとなった。
出荷指数は前月比5.8%上昇の103.9と、2カ月連続のプラス。一方、在庫指数は0.6%低下の111.0。出荷に対する在庫の割合を示す在庫率指数は3.5%低下の108.1と、いずれも2カ月連続で低下した。
同時に発表した製造工業生産予測調査によると、2月が0.2%上昇、3月は3.2%低下を見込んでいる。
1月の小売販売額、前年比2.0%減 7カ月ぶり減少、駆け込み反動で
経済産業省が27日発表した1月の商業動態統計(速報)によると、小売業の販売額は前年同月に比べ2.0%減った。前年を下回るのは、2014年6月以来7カ月ぶり。減少率は消費税率引き上げ直後の14年4月(4.3%)以来の大きさとなった。
増税前の駆け込み需要で前年に消費が盛り上がった反動が出たことに加え、原油安による石油製品価格の下落が影響した。
小売業の内訳をみると、燃料が15.6%減、自動車が4.4%減だった。一方、飲食料品は2.7%増えた。
大型小売店は0.6%増の1兆7227億円。土曜日が前年より1日多かったこともあり、底堅く推移した。既存店ベースは0.0%増。このうち百貨店は0.4%減、スーパーは0.3%増だった。
コンビニエンスストアは6.2%増の8437億円。ファストフード及び日配食品などが伸びた。既存店ベースでは1.6%増えた。
同時に発表した専門量販店販売統計(速報)によると、1月の販売額は家電大型専門店は前年同月比11.6%減の3621億円、ドラッグストアが2.9%増の3878億円、ホームセンターが5.9%減の2323億円となった。
求人倍率、1月1.14倍で横ばい 失業率は3.6%に上昇
厚生労働省が27日まとめた1月の有効求人倍率(季節調整値)は1.14倍と、前月と同じだった。22年9カ月ぶりの高い水準を保った。企業の求人は伸びており、人手不足が続いている。総務省が同日まとめた完全失業率は3.6%と前月より0.2ポイント上がった。新たに働きに出たり、より良い条件の仕事への転職を目指したりする人が増えたためだ。
有効求人倍率は全国のハローワークで職を探す人1人に対して、企業から何件の求人があるかを示す。数字が高いほど、働く人が仕事を見つけやすい一方、企業にとっては採用が難しくなる。
1月に受け付けた新規求人数(原数値)は前年同月より3%増えた。伸びたのは主要11業種のうち6業種。医療・福祉(11.3%増)、理美容など生活関連サービス(8%増)、卸売・小売業(3.9%増)が大きく増えた。
一方、建設業は4.2%減、運輸・郵便業は3.1%減でともに6カ月連続で前年の水準を下回った。新たに職を探す人は6.7%減り、少ない求職者を多くの企業が奪い合う構図が続いている。正社員の有効求人倍率(季節調整値)は0.70倍と前月より0.01ポイント下がった。
完全失業率は働ける人のうち、仕事につかずに職探しをしている完全失業者の割合を示す。1月の実績は4カ月ぶりに悪化した。完全失業者が7万人増えたためだ。
完全失業者が増えたのは「自発的に仕事を辞める人が増えるなど、労働市場への参入が増えたため」(総務省)といい、7万人の増加のうち、より良い条件の仕事を探して自己都合で退職した人が3万人、新たに職を探す人が3万人を占めた。解雇など意に沿わない失業は1万人増にとどまった。
就業者(原数値)は6309万人と前年同月から47万人増えた。就業率は57%と前年同月から0.5ポイント上がった。女性が29万人増えたほか、男性も19万人伸びた。
年齢別にみると65歳以上(74万人増)のほか、45-54歳(28万人増)が大きく伸びた。業種別にみると製造業が12万人増えたほか、農林業(9万人増)、情報通信業(6万人増)の伸びが目立った。一方、運輸・郵便業と生活関連サービス業は、ともに6万人減った。
雇用者に占める非正規雇用の割合は37.8%と同0.2ポイント伸びた。パート・アルバイトで働く人が増えているため。就労が進んでいる高齢者や女性にはフルタイムではなく、短時間で働くことを望む人が多いためだ。
1月全国消費者物価、上昇率の縮小続く 市場予想も小幅に下回る
総務省が27日朝発表した1月の全国の消費者物価指数(CPI、2010年=100)は、生鮮食品を除く総合が前年同月比2.2%上昇の102.6と20カ月連続で上昇した。電気代の上昇率が拡大する一方、原油安を背景に石油製品が物価の上昇を抑えた。QUICKが発表前にまとめた市場予想の中央値(2.3%上昇)を小幅に下回った。昨年4月の消費増税の押し上げ効果(2%)を除いて1%を割る状態が昨年10月から続いている。
CPIの上昇率は前月の2.5%から縮小した。伸びが縮まるのは6カ月連続。原油相場の下落を受けてガソリンや灯油の下落率が一段と広がった。エアコンも「値上がりにつながる新製品の出回りが鈍くなっている」(総務省)といい、価格が下落に転じた。
同時に発表した2月の東京都区部のCPI(中旬の速報値、10年=100)は、生鮮食品を除く総合が101.3で、前月と同じく2.2%の上昇となった。ガソリンや灯油は一段と下げたが、電気代や都市ガス代の伸びが拡大したほか、テレビが下落から上昇に転じた。


いずれも網羅的によく取りまとめられた記事だという気がします。しかし、これだけの記事を並べるとそれなりのボリュームになります。これだけでお腹いっぱいかもしれません。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは以下の通りです。上のパネルは2010年=100となる鉱工業生産指数そのもの、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は景気後退期です。景気後退期のシャドーについては商業販売統計や雇用統計も同様です。

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まず、鉱工業生産指数については、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスの中央値が+2.8%の増産でしたから、前月比+4.0%はかなり上振れた結果が示されたことになります。ただし、引用した鉱工業生産の記事の最後のパラにもある通り、製造工業生産予測調査足元の2月が+0.2%増とほぼ横ばいにとどまっており、目先は慎重な生産計画であることから、統計作成官庁である経済産業省では基調判断を前月の「緩やかな持ち直しの動き」で据え置いています。上のグラフのうちの上のパネルでも1月の増産はかなり急上昇の印象ですが、2月がほぼ横ばいだとならして見てそれほどでもないのかもしれません。引用した記事にもある通り、業種別に詳しく見ると、輸出向けや設備投資向けの業種で増産となっているのが目につきます。上のグラフの下のパネルでも、資本財や耐久消費財の出荷が持ちま押しつつある印象を受けます。春先から企業業績のいっそうの回復や賃上げに伴う消費の活性化が実現されると仮定すれば、消費や投資が盛り上がって景気回復が本格化することが期待されます。

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生産動向とは対照的に、商業販売統計はややもたついた印象です。上のグラフは商業販売統計のうち小売販売について、上のパネルは季節調整していない原系列の販売額の前年同月比を、下のパネルは季節調整済みの指数をそのまま、それぞれプロットしています。昨年2014年10月以降はやや弱めの動きを示しているのが読み取れます。基本は、消費増税による実質購買力の低下が原因だと私は考えていますが、年末あたりから原油価格の低下が実質購買力に寄与し始めていますから、それほど悲観視はしていません。特に、春先以降に現在の人手不足に対応した賃上げに伴う所得の増加が実現されれば消費は緩やかに回復していくものと予想しています。

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失業率が上昇し、有効求人倍率は横ばいだったんですが、雇用統計の中身は決して悪くないと私は受け止めています。確かに、雇用者も就業者も減少を示していますが、労働力人口が増加しています。すなわち、正しい指標の解釈としては、より有利な職を求めての転職、あるいは、労働市場への新規ないし再参入の動きが活発化した結果であろうと私は考えています。また、新規求人は雇用指標の中でも景気に先行する傾向があるんですが、昨年2014年10月までのもたつきを脱して、先月1月統計まで一段と伸びを高めているのが見て取れます。"Goodbye, secular stagnation: This is not the picture of an economy with lots of slack" と題したマンキュー教授のブログで米国雇用統計のうちの job opening 新規求人が示されていますが、我が国でも人手不足から新規求人は堅調です。

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消費者物価は消費増税の影響を除くベースで、いよいよ2月統計か3月統計あたりから前年同月比でマイナスに突入する可能性が高まりました。国際商品市況における原油価格の下落が原因ですので、ほぼ、1月の底を打ったとみられることから、一定のタイムラグを伴って、春先から年央に原油価格下落の影響が最も大きくなると私は見ていますので、その後は景気回復に伴う需給ギャップの改善に伴って緩やかに上昇率が引き上げられる可能性が高いと受け止めていますが、しばらくは、日銀のインフレ目標との関係で、追加緩和が実施されるかどうかの議論があり得ると考えています。
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2015年02月26日 (木) 19:26:00

帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査」に見る人手不足の現状やいかに?

今週月曜日2月23日に帝国データバンクから「人手不足に対する企業の動向調査」と題するリポートが公表されています。我が国は少子高齢化とともに中長期的に労働力の供給不足に陥る可能性が高いということは長らく認識されてきましたが、現在の景気回復の下でも地域や産業によっては人手不足が顕在化しつつある部分もあるようです。まず、帝国データバンクのサイトから調査結果について引用すると以下の2点です。

調査結果
  1. 企業の37.8%で正社員が不足していると回答。「情報サービス」が6割近くに達しているほか、「建設」や「医薬品・日用雑貨品小売」など専門知識・スキルを必要とする業種で人手不足が深刻となっている。とりわけ、「金融」「旅館・ホテル」「メンテナンス・警備・検査」など、金融緩和による円安の好影響やオフィスビル需要の拡大を受けた分野で不足感が急拡大している
  2. 非正社員では企業の24.1%が不足していると感じており、特に「飲食店」「旅館・ホテル」「飲食料品小売」などで高い。訪日海外旅行客数の増加とともに、消費者と接する機会の多い業種で不足感が高まっている


調査結果の要旨とは言いつつも、ほぼ言い尽くされているような気もするんですが、今夜のエントリーではpdfの全文リポートから図表を引用しつつ、簡単に紹介したいと思います。

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まず、上のグラフは正社員と非正社員に分けて従業員の過不足感を現したDIです。2013年12月時点から直近の2015年1月までのおおよそ1年余りで、きわめてわずかな差ながら、正社員に関しては不足感が高まり、非正社員では過剰感が高まった、という結果が示されています。私なんぞの人事に関するシロートが不思議に思うに、正社員に関して適正感を持つ企業が半数に満たないのに、過剰感ある企業や産業から不足感ある企業や業種に、もっと活発な労働力の移動が生じないのが日本企業というものなのでしょうか。労働の流動化がどこまで必要かは議論が残るものの、やや不思議に思ったりします。

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マクロの不足感・過剰感もさることながら、興味深い結果を示しているのが業種別の従業員の不足感です。これも正社員と非正社員に分かれて上の表の通りです。一昨日に企業向けサービス価格指数を取り上げた際に、日銀筋から「システムエンジニア(SE)の需給逼迫への懸念は根強い」との説明がなされているような報道を見かけましたが、上のテーブルで確認されているようです。左側の正社員の不足感で情報サービスがトップとなっています。また、詳しい情報で興味ありそうなのが、非正社員の不足感でトップスリーを占めている飲食店、旅館・ホテル、飲食料品小売なんですが、景気がよくて人をもっと雇いたいんでしょうか、それとも、非正社員のなり手が足りていないんでしょうか、旅館・ホテルだけは正社員の不足感の強い業種にも見えますが、飲食店と飲食料品小売は非正社員の不足感では上位にあるものの、正社員の不足感ではトップテンに現れません。

このブログで何度も主張しましたが、現在の日本経済の好循環を継続するためには、企業部門に滞留しているキャッシュを家計部門に均霑させることです。そのためには、雇用の拡大という量的な雇用の増加とともに賃上げや非正社員の正社員化などの質的な待遇改善も重要なポイントとなります。
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2015年02月25日 (水) 19:31:00

国公立大学で2次試験の前期日程が開始される!

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今日から国公立大学2次試験の前期日程の入試が始まりました。数年前までは私が試験監督を務めていたりしましたが、今年は上の倅が入試に臨んでいます。まだ、すべての受験生が希望の大学に入れる全入までは至りませんから、すべての受験生が希望通りの結果を出せるわけではありませんので、せめて悔いのないように全力を出し切ることを願っています。
なお、上の画像は国公立大の一般入試の流れだそうで、パスナビのサイトから引用しています。

我が家の上の倅をはじめとして、
がんばれ大学受験生!
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2015年02月24日 (火) 19:29:00

企業向けサービス物価上昇率は原油安でも堅調にプラスを続ける!

本日、日銀から1月の企業向けサービス価格指数 (SPPI) が公表されています。ヘッドラインの前年同月比上昇率は+3.4%、国際運輸を除くコアSPPIの上昇率で見ても+3.6%と堅調にプラスを続けています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

1月の企業サービス価格、前年比3.4%上昇 原油安で伸び鈍化
日銀が24日発表した1月の企業向けサービス価格指数(2010年=100)は102.3と前年同月に比べて3.4%上昇した。伸び率は前月の3.5%から縮小した。消費税率引き上げの影響を除く伸び率は0.7%と前月の0.8%から鈍化した。原油安を背景にした運輸・郵便の価格下落が押し下げ要因になった。
運輸・郵便のうち、外航貨物輸送では専用船価格が大幅に下落し、内航貨物輸送や国際航空貨物輸送では四半期ごとに見直される燃油特別付加運賃(燃油サーチャージ)が引き下げられた。
一方、広告価格は堅調で、新聞、インターネット、テレビ広告のいずれも前年比で上昇した。
一部に価格下落の動きがあるが、日銀調査統計局は「好調な業績を背景に企業のサービス需要は底堅い」とみている。
企業向けサービス価格指数は運輸や通信、広告など、企業間で取引される価格水準を表す。調査対象の147品目のうち、上昇は81品目だったのに対し下落は32品目だった。


いつもながら、よく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、企業向けサービス物価上昇率のグラフは以下の通りです。上のパネルはサービス物価 (SPPI) と国際運輸を除くコアSPPIの上昇率とともに、企業物価 (PPI) 上昇率もプロットしています。SPPIとPPIの上昇率の目盛りが左右に分かれていますので注意が必要です。なお、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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企業向けサービス物価の前年同月比上昇率を先月と今月で並べると、ヘッドライン上昇率が12月+3.5%から1月には+3.4%とやや上昇幅を縮小させたものの、国際運輸を除くコアSPPIでは逆に、12月+3.5%から1月には+3.6%に上昇幅がやや加速しています。消費税に影響を除くベースでも同様ですが、せいぜいが±0.1%ポイントの範囲ですので、押しなべて上昇率としてほぼ横ばいの動きと受け止めています。上のグラフからも明らかな通り、財を構成要素とする企業向け物価の国内物価上昇率は国際商品市況における原油価格の値下がりから大きく上昇率を鈍化させ、消費税率引上げの影響を除くベースではすでに前年同月比でマイナスに落ち込んでいるんですが、サービス物価はヘッドラインも国際運輸を除くコアSPPIも上昇率で見て横ばいを続けており、消費税の影響を除くベースでも+1%をやや下回るとはいえプラスの上昇率をキープしています。原油価格の下落の財価格への影響と人手不足による人件費上昇サービス価格への影響のコントラストと私は考えています。
企業向けサービス価格指数を品目別に少し詳しく見ると、ソフトウェア開発などの情報通信及び原油価格下落の影響を受けた運輸・郵便などがマイナス寄与を示した一方で、新聞やインターネットなどへの広告及び機械修理や土木建築サービスなどの諸サービスが景気に敏感にプラス寄与していたりします。サービス物価であっても原油価格下落とは無縁ではあり得ずに、マイナスを示す品目もあります。運輸・郵便では原油価格下落により燃油サーチャージの引下げが発生しています。他方、情報通信はマイナスを記録しているんですが、マイナンバー制度開始などを控えて情報通信分野における「システムエンジニア(SE)の需給逼迫への懸念は根強い」と日銀の担当部局が説明しているとの日経新聞の記事も見かけました。

いずれにせよ、消費増税の物価への影響は3月までしか継続せず、4月からはいっせいに剥落します。日銀の物価目標の期間とされる2年に達しつつあるタイミングで、日銀は何らかの追加緩和策を取るのか、あるいは、原油価格下落にともなう物価への影響は無視するのか、注目のポイントかもしれません。
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2015年02月23日 (月) 19:26:00

JCBによる「クレジットカードに関する総合調査」の結果やいかに?

先週金曜日の2月20日にJCBから「クレジットカードに関する総合調査」の結果が公表されています。私もクレジットカードは何枚か保有していて、電気・ガス・電話などの可能な範囲の公共料金はクレジットカードで支払ったりしています。ということで、まず、【2014年度版調査結果の概要】をJCBのサイトから3点だけ引用すると以下の通りです。

【2014年度版調査結果の概要】
  1. ポイント・マイルごとに使い分け? 最も多いのはクレジットカード「3枚持ち」。
  2. 生活費に占めるクレジットカードの利用割合が30%を超過。
  3. 電子マネーの保有率が80%近くに。


今夜のエントリーでは、pdfの全文リポートからいくつか図表を引用しつつ、簡単に紹介したいと思います。

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まず、上のグラフはクレジットカード保有率と平均保有枚数の推移です。実は、リポートでは2枚の別のグラフなんですが、私が無理やりにつなぎ合わせてみました。上のパネルの棒グラフがカードの保有割合で、下のパネルの棒グラフのうち青が保有枚数、ピンクが携行枚数を示しています。2014年は下げ止まったのかもしれませんが、カード保有率も保有・携行枚数も、ここ数年でやや下降傾向を示しているような気がしないでもありません。なお、私は当然何枚かカードを持っていて、保有枚数も携行枚数も5枚です。家に置いてあって携行していないカードはありません。なお、グラフは引用しませんが、カードの主な利用理由は、「ポイントやマイルが貯めやすいから」、「入会金・年会費が他社と比較して安いから」などとなっています。

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次に、上のグラフは「1番多く使う」クレジットカードの月平均利用金額の推移です。リポートには「2番目に多く使う」カードの月平均利用金額のグラフもあり、2014年は16.3千円だったりします。私の場合も、電気・ガス・電話などの公共料金をすべて可能な範囲でカード払いにしていますので、1番使うカードは月平均で5万円くらいなんだという気がします。なお、私の1番多く使うカードは、何と、京都大学経済学部の卒業生を対象としたクレジットカードだったりします。昨年から、京都大学カードというのが出来たらしく、私のところにもお知らせが来たりしたんですが、私はもう20年近くも前から経済学部卒業生向けのカードを持っていたりします。当然ながら、同じ会社が発行しています。なお、巷の噂では京都大学カードは「京都大学をご支援くださるすべての皆様にご愛用いただける」ので、卒業生でなくてもOKだと聞き及びました。

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やや見にくいんですが、青い棒グラフが3か月以内に利用したもの、ピンクの棒グラフが3か月以内にクレジットカードで支払いしたもの、青の折れ線グラフがクレジットカードの利用割合となっています。カード比率70%超と高いのは、オンラインショッピング、航空券、ゴルフ場、旅館・ホテル、高速道路料金となっており、最後の高速料金はETCカードなんだろうと想像されます。プロバイダや携帯電話はそれなりにカード比率が高い一方で、病院と新聞が意外と低い気がします。

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最後に、世帯あたり月平均生活費とカード利用額の推移のグラフが上の通りです。青い棒グラフが生活費、ピンクがカード払いの金額、オレンジの折れ線グラフがカードの比率となっています。生活費が年々低下しているのが悲しいんですが、カード利用額はここ2年では増加しており、当然ながらカード利用割合も2011年以降で上昇しており、2014年には30%超を記録しています。また、グラフは引用しませんが、電子マネーの保有率は2012年70.4%、2013年72.3%、2014年79.3%と早晩クレジットカードを追い越しそうな勢いです。ひょっとしたら、クレジットカードと電子マネーの関係は、固定電話と携帯電話の関係に似通っているのかもしれません。
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2015年02月22日 (日) 17:57:00

日本気象協会による花粉飛散予測やいかに?

やや旧聞に属する話題かもしれませんが、2月17日付けで日本気象協会から「2015年春の花粉飛散予測 (第4報)」が公表されています。事前の予想では、今年の東京は例年よりはやや少ないながら昨年よりは倍増、と私は聞き及んでいますが、それが裏付けられています。簡単に画像を引用して紹介します。

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まず、日本気象協会のサイトには花粉前線の画像があるんですが、北日本の方には誠に申し訳ないながら、東京はすでに通過していますのでパスします。ということで、上は2015年春のスギ・ヒノキ花粉ピーク予測です。東京では3月の上中旬がスギ花粉の、4月中旬がヒノキ花粉のそれぞれピークと予想されています。私は今日までにすでにかなり苦しめられているんですが、これから先さらに花粉飛散のピークが待っているのかと思うと、とても気が重くなったりします。

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次に、日本気象協会のサイトから例年と比べた2015年春の花粉飛散数予測を引用すると上の通りです。これも、東京・埼玉では例年よりもやや少ない、という予測となっています。なお、私は政府職員ですので都心のオフィスに勤務していますが、我が家は歩いて数分で埼玉との県境に達しますので、花粉情報については東京だけでなく埼玉も参照していたりします。

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最後に、日本気象協会のサイトから昨年と比べた2015年春の花粉飛散数予測を引用すると上の通りです。例年と比べると東京・埼玉ではやや少ないくらいなんですが、昨年2014年と比べると倍増という予測です。最初に書いた通りです。昨夏の気象が、降水量・日照時間こそ平年並みだったものの、気温が高くて、今春におけるそれなりの花粉飛散につながったようです。

東京ローカルでは昨年の花粉飛散がやや極端に少なく、いわゆる裏年だったもので、今年は平年よりも花粉飛散が少ないにもかかわらず昨年から倍増、という予測につながっているような気がします。これから、花粉が本格的に飛散する時期を迎えますので、さまざまな方策を用いて何とか乗り切りたいと考えています。
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2015年02月21日 (土) 18:54:00

映画「マエストロ!」を見に行く!

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近くのシネコンに映画「マエストロ!」を見に行きました。
私の大学時代に、京都市交響楽団というのが活動しており、今でもあるのかもしれませんが、出雲路橋の近くに練習場があって、何度か知り合いを訪ねた記憶があります。また、地方大学に単身赴任して勤務していたころ、同じ経済学部の学部長経験者のマーケティング担当の先生がアマチュア演奏家として地方オーケストラで活動されていて、何度かチケットを売りつけられた記憶もあります。でも、私の好きな音楽ジャンルはジャズなので、クラシックは少し疎遠だったりします。
この映画は解散したオーケストラの再結成と銘打ちつつも、他のオーケストラに再就職できなかった楽団員とアマチュアで再結成した楽団に無名の指揮者が乗り込んで来て、再結成コンサートを演ずるまでを描いています。そして、コンサートが2日連続で行われることに何の疑問も持っていなかったんですが、こういう仕掛けになっているとは想像もしませんでした。コンサート2日目の仕掛けは見てのお楽しみです。松坂桃李主演ということで期待していたんですが、まあ平均的な出来だという気がしました。
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2015年02月21日 (土) 13:33:00

今週の読書は『企業の経済学』ほか

今週の新刊書読書は、東大社会科学研究所と大阪大学経済学部が中心となって取りまとめた経済学の論文集である『企業の経済学』のほか、芥川賞作家である中村文則の話題の書『教団X』、さらに、この時期1-2月にまとめて読んでいるエラリー・クイーンの国名シリーズの新訳など、以下の通りです。

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まず、中林真幸・石黒真吾[編]『企業の経済学』(有斐閣) です。これは完全な学術書です。その名の通り、企業に関する経済学を取り上げています。ですから、読者層はそう広くは考慮していないんではないかと私は想像しています。パラパラと店頭ででも立読みして、ムリだと思えば挑戦しないほうが無難かもしれません。しかも、何人かの研究者がチャプターごとに研究成果を取りまとめていますのでさらに難易度が高いような気がします。というのも、先週紹介した寺西先生の『経済行動と宗教』とか、ピケティ教授の『21世紀の資本』なども典型となっている通り、単独もしくはせいぜい2-3人の共著者の場合は、それなりに論述で幅広く議論を展開する場合も少なくないんですが、本書のように何人かの研究者がチャプターごとに論文を立てている場合、学術誌の特集号のような様相を呈して、中には、とても私クラスのエコノミストでは理解できない論文にぶち当たったりします。ということで、前置きが長くなりましたが、4章ずつの3部12章から成る本書のうち、ゲーム論でもっぱら数式を展開している章や実証なしに数学的に表現したモデルの分析に終始している論文の中は私には手が出ないものもあったりします。第1章、第2章や第9章、第10章、第11章の一部などがこれに相当します。でも、第3章の会社法制に関して、企業を法制度として代表するのが株主であるとする合理性の考察などは参考になりました。企業=会社を代表する可能性があるのは株主以外に、取締役や従業員の過半数代表、あるいは、労働組合も考えられるんですが、株主利益は会社の利益とおおむね一致するという積極的理由以外にも、株主以外の会社関係者の利害は一致しないという消極的な理由もあって、なるほどと思わせるものがありました。また、第4章で炭鉱会社が輸送向けの鉄道会社を内部化するか外部化するかについての考察も興味深く、さらに、第6章の紡績会社の合併後に総支配人自らがコスト削減方策を工場長に伝達するなど、いわば「上からのコスト削減」が海外技術の導入初期に見られた一方で、これは本書の範囲外ですが、戦後には現場労働者のQCサークルのような「下からのコスト削減」が一般化する経験も合わせて考えると企業の製造現場の奥深さが感じられます。もちろん、私はゲーム論は苦手なんですが、数学的に表現されたモデルの分析についてはそれなりの理解力があるつもりで、第9章で研究開発と競争の関係とか、第11章で貿易と労働者の熟練の関係とか、とても説得的な議論が展開されています。なお、どうでもいいことながら、私自身も延々とグラフと数式を展開して数学的に開発経済学のモデル分析をしたペーパー、"A Note on a Theoretical Model for Economic Development: Mathematical Representation of Lewis Model" というのを書いたことがあり、しかも、しかもなんですが、中国の研究者の論文に引用されたことがあったりします。一応、自慢話ながらご参考まで。

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次に、中村文則『教団X』(集英社) です。私はこの作者の作品は、芥川賞を授賞された「土の中の子供」から始まって、最近の『掏摸 <スリ>』、『王国』、『去年の冬、きみと別れ』、直近作の『A』まで、主として河出書房新社から発行された単行本を中心に何冊か読んでいるんですが、本書『教団X』は、この作者の作品の中でも長編としてかなり長くて、少なくとも書籍としての厚さではトップクラスではないかと思います。楢橋という男性を主人公のように据え、松尾という老人が率いる善男善女の教団と沢渡が教祖となっている悪の教団Xを対比させつつ、しかも、両方の集団に入り組んだ人間関係があり、さらにさらにで、教団Xは武器を調達してテロを企図し公安警察が追っている、という極めて大がかりな小説に仕上げています。宗教団体がテーマですから、個人の独白として長々と世界観、というか、歴史観について語る部分があり、太古の昔から歴史は決まっていたような、すなわち、アカシック・レコードが存在するような歴史観が語られます。実は、私もこの歴史観にかなり賛同するところがあり、歴史は一定の確率的な微分方程式に従って進んでおり、初期値は当然ながらすでに「歴史的に」与えられている、と考えています。ただし、本書でも繰返し指摘される通り、量子力学的というか、「シュレディンガーの猫」と同じで確率的な微分法的式ですから、すべての未来が確定しているわけではありません。ただ、本書では、「我々は、完全に定められた人生というショウをを見せられている観客である。」(p.141) と見なしているようです。そして、このあたりで止めておけばよかったような気がするんですが、本書では、やや私の専門分野にもかかわる途上国の経済発展や開発に関して、第2部の初めの方の第10章 p.341 あたりから途上国における鉱物資源を基にした「オランダ病」の話とか、ODA政府開発援助に絡むスキャンダルなどが個人の独白として語られた上で、テレビ局を占拠した教団Xの信徒が右翼的なテレビのコメンテータと論争して、極めてリベラルな戦争論を展開したりと、未来が決まっているにしては、とても陰謀論的な歴史の展開を示唆したりします。やり過ぎのきらいがあると私は考えます。『掏摸 <スリ>』や『王国』などで展開されたばかりながら、この作者の魅力あるノワール感覚がかなり壊れた気がします。中には、天下国家に関する小説の好きな読者もいそうな気もしますが、これまでの作品で展開された「大きな物語」ではないノワール感覚がこの作者の持ち味だと思っていた私はガッカリです。この作品はあまり評価しません。

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次に、福永文夫『日本占領史 1945-1952』(中公新書) です。著者は政治学者・歴史学者であり、獨協大学教授です。また、副題は「東京・ワシントン・沖縄」の3つの地名を並べており、東京とワシントンの日米両国の首都はさておき、沖縄の視点が入った占領史はめずらしい、というか、私は初めて読んだような気がします。ですから、現在は沖縄の地銀になっている琉球銀行が発券銀行だったとか、本土における政府を介した占領軍の間接統治に対して沖縄では直接的な軍政が敷かれていたとか、不勉強な私はよく知りもしませんでした。ただ、沖縄の視点以外はとりわけ目新しい観点もなく、占領軍のGHQ内部の必ずしも一枚岩ではない占領政策とか、日本現地の占領軍とワシントンの国務省との対立とか、とてもよく知られた内容が中心です。占領軍の意図として、日本を軍事的に無力化し、再軍備や戦争遂行を放棄する憲法草案を示しておきながら、東西対立の冷戦下でいわゆる「逆コース」をたどって、日本を「共産主義の防波堤」とする政策に転換したといったあたりは通説と何ら変わりありません。しかし、与党ひとり勝ち政権下で憲法改正を目指す動きがある現時点で、憲法をはじめとする戦後の原点を振り返っておくことは、それなりの重要性を持っているんではないかと思います。もっとも、本書がベストかどうかは議論があり得ます。特に、新書というボリュームの制約もあるんでしょうが、我が国の占領史を我が国だけで捉えようとする傾向もあり、世界的な東西対立の冷戦の構図は p.255 からの第5章の冒頭で軽く触れられるにとどまります。加えて、労働組合のナショナルセンターだった総評が左傾化した原因について「総評内部にどのような転換があったかは定かでなない」(p.311) とするにとどまっていて抜けも少なくありません。やや物足りないと思う人もいそうな気がします。

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最後に、エラリー・クイーン『アメリカ銃の秘密』、『シャム双子の秘密』、『チャイナ蜜柑の秘密』(角川文庫) です。昨年は2014年1月12日付けのエントリーで、このクイーンの国名シリーズの『ローマ帽子の秘密』、『フランス白粉の秘密』、『オランダ靴の秘密』、『ギリシャ棺の秘密』、『エジプト十字架の秘密』の5冊を一気にレビューしていたりします。が、今日の読書感想文のブログは上の3冊『アメリカ銃の秘密』、『シャム双子の秘密』、『チャイナ蜜柑の秘密』です。最後の『チャイナ蜜柑の秘密』は先月2015年1月に発行されたばかりの新刊です。近くの区立図書館に未所蔵書としてリクエストしておいたものです。あとは、クイーンの国名シリーズでは『スペイン岬』と『ニッポン樫鳥』を残すばかりとなりました。今年中には出るんではないかと期待しています。それにしても、旧訳が参考にできるとはいえ、ものすごい翻訳のスピードであると感心していたりします。語学力の差としか言いようがありませんが、私ではまったく不可能なスピードです。

今週末は図書館の予約本の順番がかなりたくさん回って来ました。来週の読書感想文のブログは経済書や専門書がいっぱい並ぶかもしれません。
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2015年02月20日 (金) 19:28:00

帝国データバンク「2015年度の賃金動向に関する企業の意識調査」の結果やいかに?

1月22日付けのこのブログのエントリーで第一生命経済研究所のリポート「春闘賃上げ率の見通し」を取り上げて、今年の春闘賃上げ率について+2.40%とのリポートの予測結果を示しましたが、今週月曜日の2月16日に帝国データバンクから「2015年度の賃金動向に関する企業の意識調査」の結果が明らかにされています。まず、帝国データバンクのサイトから調査結果の概要を4点引用すると以下の通りです。

調査結果
  1. 2015年度の賃金改善を「ある」と見込む企業は48.3%。前年度見込みを1.9ポイント上回り、2006年1月の調査開始以降で最高の見通しとなった。また、2014年度に賃金改善を実施した企業は6割を超える
  2. 賃金改善の具体的内容は、ベア36.7%(前年度比2.7ポイント増)、賞与(一時金)27.4%(同0.4ポイント減)。賃金改善をベアで実施する企業が広がっている
  3. 賃金を改善する理由は「労働力の定着・確保」が大幅増加、7割に迫る。人手不足が続くなかで「同業他社の賃金動向」を挙げる企業が過去最高となり、他社の動向をより意識する傾向が強まる。改善しない理由は、「自社の業績低迷」が最多となる一方、消費税率引き上げの影響は薄れてきている
  4. 2015年度の総人件費は平均2.50%増加する見込み。従業員の給与や賞与は総額で約3.2兆円増加と試算される


今夜のエントリーでは、この調査結果の全文リポートから図表を引用しつつ、今年の賃上げ動向に関する企業の意識について簡単に紹介しておきたいと思います。

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まず、グラフの引用はしませんが、賃金改善を見込む企業は2014年度について2014年1月時点の見込みで46.4%だったのが、それぞれ1年後の2015年1月時点で2015年度の見込みは少しだけ増加して48.3%となっています。ただし、2014年度は1月時点の見込み46.4%から実績では63.4%を記録していますから、2015年度についても賃金改善の比率がさらなる積増しを記録する可能性は十分あると予想されます。また、上のグラフはリポートから賃金改善の具体的内容を引用していますが、昨年度と比べた賃金改善の質も高くなりつつあり、賞与(一時金)の割合が減って、ベースアップの割合がジワジワと増加を示しています。

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また、上のグラフはリポートから賃金を改善する理由を引用していますが、「労働力の定着・確保」とする回答割合が昨年と比べて大きく増加しています。我が国は人口動態から見て中長期的に労働供給が減少する方向にあると考えられますが、足元でも人手不足が顕在化しつつある業種や地域もあり、賃金アップや非正規の正社員化などを含む待遇改善により労働力の定着や確保を図ろうとする企業が増加しているようです。逆に、グラフは引用しませんが、賃金改善をしない理由としては「自社の業績低迷」を回答している企業の割合がもっとも高くなっています。ない袖は振れないのは古今東西で共通かもしれません。

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最後に、リポートから業界別の2015年度の総人件費の増加見通しのグラフを引用すると上の通りです。短期には、労働集約的な業界やミスマッチのある産業における人手不足を反映しているのかもしれませんが、押しなべて人件費の増加を回答する企業が多い印象です。なお、総人件費の増加は+2.5%、3.2兆円と見込まれています。大雑把に半分が消費に回るとすれば、GDP成長率を+0.3%ポイントくらい押し上げる効果がありそうと私は見込んでいます。

人件費は企業から見ればコスト以外の何ものでもないのかもしれませんが、雇用者からすれば所得であり、マクロ経済で考えると消費の源泉でもあります。日本経済の好循環のためには、企業部門がキャッシュを溜め込むばかりではなく、賃金アップで所得の増加に寄与したり、非正規雇用の正社員化などの待遇改善で将来見通しのマインド向上を図ったりと、企業部門のいっそうの貢献が必要であろうと私は考えています。
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2015年02月19日 (木) 21:58:00

1月貿易統計で輸出数量増と輸入価格低下で貿易赤字は大幅に縮小!

本日、財務省から1月の貿易統計が発表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、ヘッドラインとなる輸出額は前年同月比+17.0%増の6兆1447億円、輸入額は▲9.0%減の7兆3222億円、差引き貿易収支は▲1兆1775億円の赤字を記録しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

1月の貿易赤字1兆1775億円、前年比57%減 輸出額17%増
財務省が19日発表した1月の貿易統計速報(通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は1兆1775億円の赤字で、赤字額は2兆7950億円だった前年同月に比べ57.9%減少した。貿易赤字は31カ月連続。QUICKが18日までにまとめた民間予測の中央値は1兆6813億円の赤字だった。原油価格の低下で輸入額が押し下げられたほか、輸出回復が寄与し、貿易赤字は市場予想を大きく超す縮小幅となった。
輸出額は前年同月比17.0%増の6兆1447億円で、5カ月連続で前年同月を上回った。品目別では自動車、半導体等電子部品、船舶などの輸出増が寄与した。地域別では対米国が自動車などの輸出増が寄与し16.5%増の1兆1927億円。対アジアは22.7%増の3兆3141億円、うち対中国は20.8%増の1兆419億円。アジア、中国からの輸出額はいずれも比較可能な1979年以降で1月としては過去最大となった。対欧州連合(EU)は7.4%増の6563億円で、英国向けの自動車、船舶の伸びが寄与した。輸出全体の数量指数は前年同月比11.2%増加した。
一方、輸入額は前年同月比9.0%減の7兆3222億円で、2カ月ぶりに前年同月を下回った。原油価格の低下を反映して原粗油の輸入額は前年同月比40.5%減少し、6カ月連続で前年同月を下回った。このほか、ナフサなどの石油製品、液化石油ガス(LPG)などの減少も目立った。地域別では対米国が1.4%減の6473億円。対アジアは3.0%減の3兆5630億円で、うち対中国は6.9%減の1兆7783億円。アジア、中国からの輸入はいずれも5カ月ぶりに減少した。輸入全体の数量指数は前年同月比6.3%減り、4カ月連続で前年同月を下回った。
為替レート(税関長公示レートの平均値)は1ドル=119円27銭で、前年同月比14.1%の円安だった。


いつもの通り、とてもよく取りまとめられている記事だという気がします。次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

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単純にグラフを見て、特に、季節調整済みの系列をプロットした下のパネルから明らかなように、最近数か月で輸入額が減少を続ける一方で、輸出額が上向きになっているのが読み取れます。輸入額の減少は明らかに、国際商品市況における原油価格の下落が大きく影響しています。例えば、半年前の2014年7月統計と本日発表の2015年1月統計における原油及び粗油の輸入を見比べると、半年前は1638万klで1兆1701億円に上っていましたが、直近では暖房需要も含めて1752万klと数量は増加しているものの、輸入額では逆に8393億円に急減しています。輸出は次のグラフを見た後で詳細に検討するとしても、当然ながら、両者の差分たる貿易収支の赤字幅が縮小しています。私の知り合いのエコノミストの中には、来月発表の2月の貿易統計では貿易収支は黒字転換するとか、いや3月統計から黒字だとか、そういった見方が決して勇み足とも思えずに受け止められているような気がします。実は、日経センターが取りまとめている「ESPフォーキャスト」では、先日2月10日の公表資料ではまだ、貿易収支が「数年内に黒字転換しない」が過半のエコノミストの支持を受けていたんですが、来月かさ来月あたりから変化を見せるかもしれないと、私は楽しみにしていたりします。

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次に、輸出の動向は上のグラフの通りです。上のパネルは季節調整していない原系列の輸出額指数の前年同月比を数量指数と価格指数で寄与度分解したものであり、下のパネルは同じく原系列の輸出額の最近の前年同月比伸び率について、対世界輸出、対アジア輸出、対北米輸出、対EU輸出のそれぞれの伸びをプロットしています。引用した記事にもある通り、地域別に輸出はアジア向けやべ尾国向けなどで大きな増加を示しています。押しなべて、為替の円安効果が出始めたんではないかと受け止める向きが多いんですが、特にアジア向け輸出に関しては、春節効果も見逃せません。すなわち、昨日2月17日から24日まで中国は7連休と私は聞き及んでいますが、今年は2月に設定されている春節に入る前の段階の1月のうちに日本からの駆込み輸出が出たんではないか、という効果です。もしもそうなら、逆に、2月はこの反動でアジア向け、特に中国向けの輸出が伸び悩む可能性は否定できません。また、順番が逆になりましたが、上のパネルから輸出の伸びが為替要因の価格によるものではなく、少なくとも1月の輸出は数量に支えられていることが明らかに読み取れます。

実は、私は今日通勤の帰路にターミナル駅近くのデパートに立ち寄ったんですが、何と、季節外れの福袋が並んでいました。中国からの春節休みを利用した観光客を当て込んだものだという解説を聞いてしまいました。一昔前と違って、中国の春節が我が国経済に及ぼす影響がいろんなところに現れているような気がします。
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2015年02月18日 (水) 23:07:00

途上国・新興国において格差や政治はどのように見られているか?

ピケティ教授の『21世紀の資本』の出版あたりから、世界的に格差の議論が盛んになっていますが、私が時折参照しているピュー・リサーチ・センターから2月12日付けで、"Discontent with Politics Common in Many Emerging and Developing Nations" というタイトルで新興国や途上国を対象とするオピニオン・ポールの結果が公表されています。副題が "Widespread Belief That Wealthy Have Too Much Influence" とされていて、新興国・途上国では富裕層の影響力があまりに強大であると見なされているようです。ピュー・リサーチのサイトから図表を引用して簡単に紹介します。

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まず、上のグラフは "Political Dissatisfaction High in Middle East and Latin America" と題されていて、各国別の棒グラフの左側のオレンジ色で示された政治的な不満を持つ比率が、中東やラテン・アメリカのいくつかの国で高くなっていることが示されています。地域ごとのメディアンで見て不満が満足を上回っているのはこの2地域です。逆に、アジアでは地域別で見て満足度がもっとも高かったりします。



次に、"Negative Views about the Economy Linked to Political Dissatisfaction”と題するグラフを引用すると上の通りです。このグラフはフラッシュ・ファイルになっていて、カーソルをポイントすると国名と政治への不満及び経済状況が悪いと考える比率が現れます。いつも書いているところですが、ここでも横軸のx軸に取られた経済状況が悪いと回答した比率から縦のy軸に取られた政治的な不満への因果関係が想定されています。経済が政治を決めるという、ある種の唯物論的な因果関係です。当然ながら、左下にあるほど経済的にも政治的にも悪くなく、右上ほど経済状況が悪くて政治的にも不満が高い、ということになります。傾向線から離れて、経済が悪くないのに政治的な不満が高いのが右上からレバノン、カンボジア、チリ、逆に、経済はそれほどよくもないのに政治的な不満が小さいのが左下からマレーシア、ロシア、エジプトということで、これら6国については国名を特記しているんだろうと思います。なお、どうでもいいことかもしれませんが、ピュー・リサーチのサイトのフラッシュに直リンしていたりします。

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最後に、"Publics in Latin America, Africa Most Likely to Say Wealthy Are Too Powerful" と題するグラフを引用すると上の通りです。富裕層の影響力が大き過ぎると考える比率が高くなっており、特にラテン・アメリカとアフリカで顕著です。富裕層の影響力が大き過ぎるという事実について、やや否定的なニュアンスはあるにしても、それをどう考えるかの問いではありませんから、アジアでもその見方に賛同する比率が過半の60%近くを占めています。

時系列的に、最近時点でこういった格差や政治的な不満が高まっているのかどうかは、この調査だけからは明らかではありません。でも、ひとつの格差に関連する情報として大いに興味をそそられます。
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2015年02月17日 (火) 22:48:00

我が国の財政はサステイナブルか?

やや旧聞に属する話題ですが、去る2月12日の経済財政諮問会議に内閣府から「中長期の経済財政に関する試算」が提出され、2023年度までの国・地方の基礎的財政収支や国・地方の公債等残高のそれぞれの対GDP比などが明らかにされています。簡単に図表だけ引用して紹介しておきたいと思います。

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私が数年前に大学に出向していたころ、最初に書いた紀要論文が「財政の持続可能性に関する考察」というタイトルで、財政の持続可能性に関して、いくつかの時系列検定をサーベイしています。その中で、"The Behavior of U. S. Public Debt and Deficits" と題するカリフォルニア大学サンタ・バーバラ校のボーン教授のペーパーで示された財政のサステイナビリティに関する検定もリファレンスで取り上げており、おそらく私がサーベイした中でもっとも緩やかな検定なんですが、直感的に言って、基礎的財政収支がマイナスの赤字であっても、その赤字幅が減少しているのであれば、財政はサステイナブルであるとしています。その基準からすれば、上のグラフを見る限り、経済再生ケースでは我が国財政はサステイナブルであるかもしれないと受け止めています。
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2015年02月16日 (月) 19:24:00

1次QEに見るGDP伸び率はプラスに転じるも予想よりも低成長にとどまる!

本日、内閣府から昨年2014年10-12月期のGDP速報、いわゆる1次QEが公表されています。ヘッドラインとなる季節調整済み系列の前期比成長率は+0.6%、年率で見て+2.2%を記録しました。昨年2014年4月の消費増税直前の駆込み需要の反動から、4-6月期、7-9月期と2四半期連続でマイナス成長でしたから、3四半期振りのプラスということになります。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

10-12月期GDP、年率2.2%増 3四半期ぶり増も回復鈍く
内閣府が16日発表した2014年10-12月期の国内総生産(GDP)速報値は物価変動の影響を除いた実質の季節調整値で前期比0.6%増、年率換算で2.2%増だった。プラス成長は昨年4月の消費増税後では初めてで、3四半期ぶりとなるが、QUICKが13日時点で集計した民間予測の中央値である前期比0.9%増、年率3.8%増は下回った。内需の回復が市場の予想に比べて鈍く成長が抑制された。
実質成長率への寄与度で見ると、内需が0.3ポイント、輸出から輸入を差し引いた外需が0.2ポイントの押し上げ要因となった。
内需のうち全体に占める割合の大きい個人消費は0.3%増と2四半期連続のプラスとなった。所得や雇用環境の改善が続く中で携帯電話やパソコン、飲料などが増えた。しかし伸び率は7-9月期と同じで、市場からは持ち直しが非常に緩やかだとの声が聞かれる。
設備投資は0.1%増とかろうじて3四半期ぶりに増加した。パソコンをはじめとした電子通信機器の投資が増えたが、勢いに欠けるのは個人消費と変わらない。日本総合研究所の下田裕介副主任研究員は「企業の収益改善は進んでいるが、国内景気の持ち直しの鈍さから企業が投資に踏み切れないでいるのではないか」と分析する。
住宅投資は1.2%減と3四半期連続の減少。7-9月期の7.0%減からはマイナス幅が大きく縮小したが、「(14年4月の消費増税に伴う)駆け込み需要の反動の影響が続いている」(内閣府)という。
電子通信機器や石油製品の需要が伸びて、輸出は2.7%増だった。輸入の伸び(1.3%増)を上回り、成長率に対する外需寄与度は3四半期連続でプラスになった。
総合的な物価動向を示すGDPデフレーターは前年同期比プラス2.3%だった。国内の物価動向を表す国内需要デフレーターはプラス2.0%だった。
同時に発表した14年暦年のGDPは実質で前年比0.0%増、生活実感に近い名目で1.7%増となった。デフレの象徴とされる、名目成長率が実質を下回る「名実逆転」を1997年以来17年ぶりに解消した。


ということで、いつもの通り、とても適確にいろんなことが取りまとめられた記事なんですが、次 に、GDPコンポーネントごとの成長率や寄与度を表示したテーブルは以下の通りです。基本は、雇用者 報酬を含めて季節調整済み実質系列の前期比をパーセント表示したものですが、表示の通り、名目GDP は実質ではなく名目ですし、GDPデフレータと内需デフレータだけは季節調整済み系列の前期比ではな く、伝統に従って季節調整していない原系列の前年同期比となっています。また、項目にアスタリスク を付して、数字がカッコに入っている民間在庫と内需寄与度・外需寄与度は前期比成長率に対する寄与 度表示となっています。もちろん、計数には正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ます ので、データの完全性は無保証です。正確な計数は自己責任で最初にお示 しした内閣府のリンク先からお願いします。

需要項目2013/10-122014/1-32014/4-62014/7-92014/10-12
国内総生産GDP▲0.4+1.3▲1.7▲0.6+0.6
民間消費▲0.1+2.2▲5.1+0.3+0.3
民間住宅+2.6+2.4▲10.3▲7.0▲1.2
民間設備+1.2+5.9▲5.0▲0.1+0.1
民間在庫 *(▲0.1)(▲0.4)(+1.3)(▲0.7)(+0.2)
公的需要+0.4▲0.7+0.5+0.6+0.1
内需寄与度 *(+0.2)(+1.7)(▲2.7)(▲0.6)(+0.3)
外需寄与度 *(▲0.5)(▲0.3)(+1.1)(+0.1)(+0.2)
輸出▲0.2+6.5▲0.3+1.5+2.7
輸入+3.0+6.8▲5.3+1.0+1.3
国内総所得 (GDI)▲0.6+1.0▲1.4▲0.9+0.8
国民総所得 (GNI)▲0.7+0.8▲1.1▲0.4+1.7
名目GDP▲0.1+1.5+0.2▲0.9+1.1
雇用者報酬 (実質)▲0.2+0.2▲1.4+0.6+0.1
GDPデフレータ▲0.3+0.1+2.2+2.0+2.3
内需デフレータ+0.6+0.8+2.5+2.3+2.0


上のテーブルに加えて、いつもの需要項目別の寄与度を示したグラフは以下の通りです。青い折れ線でプロットした季節調整済みの前期比成長率に対して積上げ棒グラフが需要項目別の寄与を示しており、左軸の単位はパーセントです。グラフの色分けは凡例の通りとなっていますが、本日発表された2014年10-12月期の最新データでは、前期比成長率がプラスに転じ、赤の民間消費とグレーの民間在庫と黒の外需がそれぞれ小幅のプラス寄与を示しているのが見て取れます。

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日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは前期比年率で+3.8%成長でしたから、これに比べれば、やや物足りない数字といえます。昨年後半からここ数か月の間に、ジワジワと進んだ賃上げ、急激に進んだ原油安、日銀のハロウィン緩和とこれに伴う円安など、景気を上向かせる要因はいくつかありながら、前期比で+0.6%成長で、しかも、そのうち在庫増加の寄与度が+0.2%あるわけですから、3四半期ぶりのプラス成長とはいえ、決して手放しで安心できる材料ではないと私は受け止めています。ものすごく大雑把には、寄与度ベースで見て、消費+0.2%、在庫+0.2%で内需が+0.4%、外需が+0.2%という割振りで、在庫を除く内需は消費の+0.2%しか残りません。一言でいえば、univariate なトレンドだけの見方かもしれませんが、自律的な回復力が弱い、ということになります。消費増税前の駆込み需要からの消費の回復力が弱いのは消費増税による価格要因と賃上げがなかなか進まない所得要因ともに回復に水を差していますし、引用した記事にもある通り、設備投資は企業収益がこれだけ上向いているにもかかわらず、景気の弱さと設備投資の弱さが悪循環を来たしているかのようです。外需については、円安と米国を中心とする海外経済の拡大によって輸出が順調に増加を示しており、加えて、先行き、原油安によって大きく輸入が減少するので名目値で改善する可能性が高いと受け止めていますが、いずれにせよ、輸出による潤うのは企業部門であり、このブログで何度も主張している通り、輸出で潤って設備投資も賃上げもせずに企業部門に滞留している資金をいかにして家計部門に還元するかが、経済の好循環を実現するための大きな課題と考えるべきです。

誠に知恵がないながら、私には企業部門に滞留するキャッシュを家計部門に還元する方策は、少なくともパッとは思いつきません。でも、消費増税と企業法人減税の組合せが決してベストではないのであろうということは思い至るべきです。
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2015年02月15日 (日) 17:49:00

JX通信社による18歳選挙権に関する調査結果やいかに?

公選法の改正で18歳選挙権が実現し、早ければ、さ来年にでも国政選挙で20歳未満者が投票する可能性が出て来ましたが、JX通信社が「18歳選挙権」緊急オンライン調査を全国の18歳以上20歳未満を対象に実施しています。実は、我が家の上の倅が高校3年生ですから18歳ですし、私は従来からこのブログでも主張している通り、高齢者の投票行動に基づくシルバー・デモクラシーが我が国における異常なほどの高齢者優遇や世代間格差の大きな原因と考えていますので、この18歳選挙権についてはとても興味を持っていたりします。オンライン調査のバイアスは承知の上で、日曜日ながら正面から取り上げて、図表を引用しつつ簡単に紹介します。

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まず、上の円グラフの通り、政治や政策課題に興味あるが約65%、選挙に行くが70%近い比率を占めています。実は、昨年12月の総選挙はかなり投票率が低かったのは報道の通りで、総務省のサイトによれば、20歳代が37.89%、30歳代が50.10%となっています。ですから、この70%近い調査結果もそのまま信じるのは抵抗あるんですが、まずまず高い比率と受け止めておきます。

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次に、重視する政策課題は経済、年金、原発の順となっています、当然ながら、世代間格差もそれなりの比率を占めています。もう20年超も前の米国大統領選挙キャンペーンにおける当時のクリントン候補の "It's the economy, stupid." がいまだに有力なのかもしれません。

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最後に、支持する、あるいは、好感を持っている政治家の結果は上の通りです。何とも私には判断できません。それから、図表はありませんが、政党別の支持動向の調査では、支持政党なしと回答した人が49.1%に上り、次に自民党の22.6%、民主党の13.2%、維新の党の5.7%と続いているそうです。
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2015年02月14日 (土) 13:36:00

今週の読書は重厚な経済書『経済行動と宗教』と小説など

今週の新刊書の読書は一橋大学名誉教授の寺西先生による『経済行動と宗教』ほか、小説を含めて以下の3冊です。

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まず、寺西重郎『経済行動と宗教』(勁草書房) です。実に重厚なテーマを重厚な先生が重厚に扱っています。宗教と経済ということになれば、当然、エコノミストでなくてもウェーバーの『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』ということになります。本書もそうですが、キリスト教のプロテスタントのうちでもカルヴァン派の教義はキリスト教の経済活動に対する弱点だった利子の稼得を許容し、職業観からも勤勉を重視し、経済発展に大いに寄与したとされています。そして、その逆の因果の流れを想定するのがマルクス主義であり、下部構造の経済が上部構造の意識や宗教を規定するとし、特に、宗教は階級的な抑圧に対する「アヘン」の役割を果たすとして、ほとんど排斥されたりします。本書では、ある意味で特殊な資本主義が花開いた日本について、スミスやマルクスが典型的な資本主義として分析対象とした英国と対比させつつ論じています。すなわち、英国のピューリタン的な教義が神の判断に対する絶対性を尊重して世俗的な周囲の他人への無関心を生ぜしめ、他人と距離を置く個人主義が発生したことから、需要者のニーズにこだわらない供給主導の経済が成立した一方で、日本では仏教の易行化から求道主義が生じ、他者を強烈に意識する需要主導型経済の成立を見た、ということになります。ですから、日本では製造業に限らず「ものづくり」を重視し、あるいは、本書では触れられていないと思いますが、接客における「おもてなし」の精緻化などが進んだ、ととらえているようです。なお、これも直接触れられずにインプリシットに「におわせている」だけですが、英国に関しての仮説はピューリタンが建国した米国ではさらに強烈に成り立つ、と著者は考えているのではないかと私は想像しています。ということで、結論として、私は本書の立論が成立しているかどうかは、何とも判断がつきかねます。でも、50-50ではなく、やや否定的な立場に近いような気もします。万人にオススメできる書物ではありませんし、中には途中で投げ出す読書子もいるかもしれませんが、ご興味ある方に限って読めばいいんではないでしょうか。

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次に、柚月裕子『パレートの誤算』(祥伝社) です。正月ドラマでテレ朝の「最後の証人」を見て、このブログでも取り上げましたが、その原作者の最新刊の小説です。私はこの作者の作品は、『最後の証人』の佐方貞人シリーズで、短編集の『検事の本懐』と『検事の使命』も最近になって読んでいたりします。というjことで、この作品は瀬戸内海の片田舎の市役所における生活保護の不正受給に関するサスペンス小説です。反社会的な組織として暴力団もからんできます。ただ、かなり駄作です。プロットもありふれていますし、主人公や市役所の職員のキャラも実に適当に作られています。キャラがはっきりしているのは警察の刑事だけかもしれません。プロットとにいたっては謎らしい謎もなく、実に底が浅い小説です。最後に主人公が助かるかどうかだけがサスペンスフルな場面かもしれませんが、主人公の妙齢の女性が死ぬような結末になるとはだれも考えませんから、先が読めに読めてしまいます。検事にせよ、弁護士にせよ、佐方貞人シリーズのリーガル・サスペンスを期待する向きにはオススメできません。かなり水準は落ちます。

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最後に、東京大学史料編纂所[編]『日本史の森をゆく』(中公新書) です。歴然としていますが、日本史のトピックが集められています。副題は「史料が語るとっておきの42話」となっています。私のような地方出身で地方大学を卒業している者からすれば、東京大学史料編纂所の編集と聞くだけで有り難そうな気がしますし、中身についても、いわゆる通説を補強する見解から、通説と異なって別の見方を提供する論考まで、いろいろと取りそろえられています。42話もあるんですから当然ながら、興味ある分野もあれば、それほどでもない話題もあることは覚悟すべきです。通説と異なる見解ながら、私としては納得できる見方を示した小論としては、有田焼などの九州北部の焼き物は、豊臣秀吉の朝鮮遠征から連れ帰られた陶工が源流となっている、という通説に対し、陶工の交流は従来から盛んであって、むしろ、朝鮮遠征によって陶工が帰国できなくなって九州北部に定着した、という見解です。そうかもしれないと思わせる内容を含んでいるような気がします。また、京都の南禅寺は観光対象としては湯豆腐とともに有名ですが、実は、北禅寺と西禅寺が実在していたものの、なぜか、東禅寺はなかった、というのも、だからどうだということではなく、ちょっと職場の飲み会での話題にするのに適したお話だという気がしないでもありませんでした。なお、お寺に関して私が職場の飲み会で話題にして同僚に質問するのは、「京都で有名な清水寺は何宗のお寺か?」というものです。清水寺は知らない人はいないでしょうが、ネットで調べればすぐに正解にたどり着くものの、パッと聞かれて宗派を答えられる人は少ないような気がします。
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2015年02月13日 (金) 19:27:00

来週月曜日2月16日に公表される昨年10-12月期のGDP統計1次QEの予想やいかに?

来週月曜日の2月16日に昨年2014年10-12月期GDP速報1次QEが内閣府より公表される予定となっています。昨年2014年は4月の消費税率引上げ後、4-6月期、7-9月期と2四半期連続のマイナス成長を記録して、テクニカルな景気後退に入ったとの見方もあり、消費増税ショックの大きさが実感されたところです。その後、景気は持ち直しつつあると考えられていますが、必要な経済指標がほぼ明らかにされ、シンクタンクや金融機関などから1次QE予想が出そろいました。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、web 上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下の表の通りです。ヘッドラインの欄は私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しています。可能な範囲で、先行きの今年1-3月期以降を重視して拾っています。明示的に取り上げているのは、表の上から5つのシンクタンク、すなわち、日本総研、大和総研、みずほ総研、ニッセイ基礎研、第一生命経済研です。なお、より詳細な情報にご興味ある向きは左側の機関名にリンクを張ってありますから、リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、ダウンロード出来たりすると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちに Acrobat Reader がインストールしてあって、別タブが開いてリポートが読めるかもしれません。

機関名実質GDP成長率
(前期比年率)
ヘッドライン
日本総研+0.9%
(+3.7%)
2015年1-3月期を展望すると、消費増税後の反動減やそれに伴う在庫調整はほぼ一巡。こうしたなか、①企業の前向きな投資スタンスの堅持、②所得雇用環境の改善傾向持続、③原油価格下落に伴う企業のコスト軽減や家計の購買力上昇、などを背景に、わが国景気は底堅さをを増していく見込み。
大和総研+0.8%
(+3.3%)
先行きの日本経済は拡大が続く公算である。個人消費は2015年1-3月期には減速する可能性があるものの、4-6月期以降は増加傾向とみている。2014年10-12月期に新車販売が急増した影響で、2015年1-3月期は耐久財の伸び率が鈍化するとみられる。ただし、①ベースアップによる名目賃金の上昇、②原油安に伴う物価の下落を通じた実質賃金の増加などの要因が下支えとなり、個人消費は増加が続くとみている。
みずほ総研+1.0%
(+3.9%)
2015年1-3月期は、2014年10-12月期に比べると成長率は鈍化するものの、緩やかな回復が続く見通しである。個人消費は昨年末にかけてのマインド停滞の影響が下押し要因として残る一方、雇用・所得環境の改善が支えとなり、緩やかな回復を維持すると予想される。設備投資も持ち他方、直しの動きが続くだろう。他方、スマートフォンの新製品向けの部品供給の一巡などから輸出の伸びが鈍化することで、外需の寄与はゼロ近傍に縮小するとみられる。
ニッセイ基礎研+0.9%
(+3.7%)
先行きについては、原油安の恩恵が家計、企業に広がることが見込まれる。具体的にはエネルギー価格を中心に消費者物価上昇率が低下し家計の実質購買力を押し上げることが個人消費の回復を後押しし、原油安に伴う調達コストの軽減が企業収益を押し上げることが設備投資の増加に寄与するだろう。現時点では、2015年1-3月期は2014 年10-12月期と同様に個人消費、設備投資を中心に明確なプラス成長になると予想している。
第一生命経済研

最終版
+0.8%
(+3.1%)
2015年以降についても景気回復が続くとみている。原油価格下落によるプラス効果が顕在化することが景気を押し上げるだろう。個人消費は、原油価格下落による実質購買力の増加や雇用・賃金の持ち直しを背景に回復が明確化するとみられる。また、世界景気の回復を背景に輸出の増加が続くとみられることに加え、企業収益の回復等を背景に設備投資も増加ペースを速めるとみられる。公共投資は減少に転じるとみられるが、景気の回復基調は崩れないだろう。
伊藤忠経済研+0.6%
(+2.5%)
10-12月期の実質GDP成長率は 、前期比+0.6%(年率+2.5%)と3四半期ぶりのプラスになった模様。個人消費が持ち直しの動きを強めたことなどから国内民間需要が増加に転じたほか、公共投資の増加が続き、輸出の増勢が加速した。ただし、前年水準を上回るほどの勢いはなく、デフレ脱却に向けた道のりは遠い。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券+1.3%
(+5.2%)
14年4月の消費税率引き上げ後、2四半期連続のマイナス成長に陥った日本経済だが、10-12月期の年率5%を超える高成長が確認されることで、国内景気の底入れと急回復が強く印象付けられることになりそうだ。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング+0.9%
(+3.8%)
2月16日に公表予定の2014年10-12月期の実質GDP成長率は、前期比+0.9%(年率換算+3.8%)と3四半期ぶりにプラスに転じたと見込まれ、景気が持ち直しつつあることが示されそうだ。駆け込み需要の反動減の動きが一巡して内需がプラスに転じたことに加え、外需もプラス寄与が続いている。
三菱総研+0.5%
(+1.9%)
2014年10-12月期の実質GDPは、季節調整済前期比+0.5%(年率+1.9%)と3四半期ぶりのプラス成長を予測する。内需が持ち直しの動きをみせるなか、輸出増も追い風となり、景気は緩やかに回復している。


季節調整済みの前期比で+1%を少し下回るくらいで、年率+3%を超えるまずまずの高成長になるんではないかというのが大方の予想のように見受けられます。私は直感的には+3%を少し上回るくらいではないかと見込んでいます。特に根拠はありません。でも、足元の1-3月期以降も順調な景気回復過程をたどると予想されています。下の画像は日本総研のリポートから引用しています。

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それから、1次QE予想を離れて、話題のピケティ教授の格差論について、共同研究者の米国カリフォルニア大学バークレー校のサエズ教授が Wall Street Journal の取材に応じて、下のグラフの通り、日本は最近時点で格差が拡大するどころかむしろ縮小しており、日本経済には格差是正よりも成長が一義的に必要、との意見を述べています。以下の Japan May Be Exception to Piketty's Thesis と題する記事の通りです。画像と記事の最後の2パラを引用しています。なお、引用元にリンクを張ってありますが、何らかの登録を要求されるかもしれません。悪しからず。

Japan May Be Exception to Piketty's Thesis
"Abenomics, to the extent it works in boosting growth, will likely be good for top income shares," said Mr. Saez of UC Berkeley.
But, Mr. Saez added, that isn't necessarily bad for Japan's economy or its middle class. While Mr. Piketty argues that extreme inequality may undermine growth, Mr. Saez said Japan should worry more about restoring prosperity. "This inequality effect is second-order relative to the first-order issue of restoring economic growth," he said.


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2015年02月12日 (木) 22:13:00

機械受注は順調に増加し企業物価は原油価格下落により3か月連続で下落する!

本日、内閣府から12月の機械受注が、また、日銀から1月の企業物価が、それぞれ公表されています。それぞれの統計のヘッドラインとなる船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注は季節調整済みの前月比で+8.3%増の8536億円を記録し、国内物価の前年同月比上昇率は大きく縮小して+0.3%となり、消費増税の影響を除けば▲2.4%の下落となりました。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

12月機械受注8.3%増 10-12月期も増加 基調判断を上方修正
内閣府が12日発表した2014年12月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標とされる「船舶・電力除く民需」の受注額(季節調整値)は前月比8.3%増の8536億円だった。プラスは2カ月連続。製造業、非製造業ともに伸び、QUICKが10日時点でまとめた民間予測の中央値(2.4%増)を大きく上回った。
主な機械メーカー280社が製造業から受注した金額は24.1%増の3969億円と3カ月ぶりに増えた。伸び率は06年6月(27.8%増)以来の高水準。「その他製造業」向けのボイラーやコンピューター、「その他輸送用機械」向けの鉄道車両や工作機械が伸びた。
船舶・電力を除いた非製造業から受注した金額は7.2%増の4770億円と2カ月連続で増加した。金融・保険業からコンピューターや通信機、運輸・郵便業から鉄道車両などの受注が増えた。
14年10-12月期の「船舶・電力除く民需」の受注額(季節調整値)は前期比0.4%増の2兆4196億円と2四半期連続のプラスだった。非製造業が4四半期連続で減少した一方、製造業は2四半期連続で増えた。15年1-3月期は非製造業で持ち直しが見込まれ、1.5%増える見通し。
内閣府は14年10-12月期実績がプラスだったことや15年1-3月期も増加が見込まれることなどを踏まえ、機械受注の判断を前月の「持ち直しの動きに足踏みがみられる」から「緩やかな持ち直しの動きがみられる」へと4カ月ぶりに上方修正した。
同時に発表した14年の受注額は前年比4.0%増の9兆6920億円で2年連続で増加した。
企業物価3カ月連続下落 1月、増税影響除き2.4%低下
原油安で

日銀が12日発表した1月の国内企業物価指数(2010年平均=100)は103.3で、前年同月比0.3%上昇した。消費税率引き上げの影響を除くと前年同月比2.4%の下落となり、3カ月連続で下落。下げ幅は09年12月(3.8%下落)以来、約5年ぶりの大きさとなった。原油安の影響で石油関連の価格が下落したことが影響した。
前月比では1.3%の下落だった。原油価格の下落が要因で、石油・石炭製品や化学製品の価格が大きく下がったことが影響した。食料品などの値上げの動きが出ているものの、物価全体に与える影響は限定的だ。
足元では原油価格は下げ止まりの兆しを見せている。ただ、今後の企業物価の見通しについて日銀は「原油安の影響は時間差を伴って物価に影響するため、しばらくは前月比の物価の押し下げ要因となる」(調査統計局)と見ている。
企業物価指数は企業同士で売買するモノの価格動向を示す。公表している814品目のうち、前年同月比で上昇したのは356品目、下落は375品目となり、13年8月以来17カ月ぶりに下落品目が上昇品目を上回った。原油安に加えて、前年に活発だった円安による価格転嫁の動きが一巡していることや、国際的な需要の弱さから非鉄金属の価格が下落していることなどが影響した。


やや長くなってしまいましたが、いつもながら、よく取りまとめられた記事だという気がします。次に、機械受注のグラフは以下の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。影をつけた部分は、続く企業物価も含めて同様に、景気後退期を示しています。

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引用した記事にもある通り、QUICK取りまとめによる市場の事前コンセンサスはコア機械受注の前月比で+2.4%増で、予測レンジは▲4.7%から+8.3%増でしたから、実績の+8.3%増はまさにレンジの上限ということになります。さらに、1-3月期の見通しでも、製造業は減少するものの非製造業が下支えして、コア機械受注は前期比+1.5%増の2兆4,552億円と見込まれています。これらを総合して、統計作成官庁である内閣府では基調判断を前月の「持ち直しの動きに足踏み」から「緩やかな持ち直しの動き」に上方修正しています。上のグラフの上のパネルからも明らかな通り、コア機械受注はトレンドとして底を脱して上昇局面に入った可能性が高いと私も受け止めています。当然ながら、GDPベースの設備投資も機械受注から一定のタイムラグを伴って増加に転じ、我が国の景気を支えるものと見込まれます。一部の業種における石油価格の下落に伴う企業収益の改善を別にしても、おそらく、直感的には2つの要因があり、ひとつは設備投資がいよいよ更新投資の水準近くまで達して、ネットの資本ストックを確保するための設備投資の必要性が高まっている可能性があります。もちろん、国内ではなく海外への生産拠点のシフトは傾向的に増加していますが、為替水準との見合いで国内生産についても一定の水準を確保する動きはあり得ると私は考えています。さらに、中長期的な動向も含めた人手不足の要因も考えられます。労働と資本の代替は少なくとも短期にはそれほど高くないと考えられますが、ある程度まで先を見据えた計画的な設備投資が増加する素地は広がっていると考えています。

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12月のデータが出ましたので、コア機械受注の達成率のグラフを書いてみました。上の通りです。消費増税直前の昨年2014年1-3月期に大きく上昇した後、4-6月期に大きく落ち込みましたが、7-9月期と10-12月期はならしてほぼ100%の水準にあります。エコノミストの経験則である90%ラインは上回っています。

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次に、企業物価上昇率のグラフは上の通りです。上のパネルは国内物価と輸出入物価の上昇率を、下は需要段階別の上昇率を、それぞれプロットしています。ヘッドラインとなる国内物価が上昇幅を縮小させているのは、引用した記事にもある通り、国際商品市況での原油安が石油・石油製品の価格下落を通じて企業物価全体を押し下げた結果と受け止めています。消費増税による物価の押上げ効果を除けば3か月連続の前年比マイナスを記録しています。1月の国内物価の寄与度ベースでは、石油・石炭製品と化学製品のマイナス寄与度が特に大きくなっています。もちろん、原油価格の下落は我が国のような原油輸入国の場合は需給ギャップの改善を通じて物価を引き上げる方向で作用しなくもないんでしょうが、当然ながら、短期的かつ直接的には物価を引き下げます。インフレーション・ターゲティングを金融政策で達成しようとする場合、中央銀行がどこまで原油価格下落に対応した政策を取るかは、判断の難しいところかもしれません。
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2015年02月11日 (水) 17:36:00

今年のサクラの開花やいかに?

やや旧聞に属する情報なのかもしれませんが、ちょうど1週間前の2月4日に日本気象協会から第1回の「桜の開花予想」が公表されています。

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上の画像も日本気象協会のサイトから引用しています。今年のサクラ(ソメイヨシノ)は、各地とも平年並みの時期に開花する見込みで、桜前線は3月20日ころに高知をスタートし、四国や九州から中国・近畿・東海地方へと順調に北上した後、3月末には関東北部に到達し、4月末には津軽海峡を渡ると予想されています。東京の開花は3月26日ころだそうです。
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2015年02月10日 (火) 19:26:00

金融包括性 financial inclusion はアジア新興国・途上国の貧困と不平等にどのような影響を及ぼすか?

最近読んだ学術論文からの紹介です。今年1月にアジア開発銀行(ADB)から金融包括性 financial inclusion がアジア新興国・途上国の貧困や所得不平等にどのように関係しているかに関するワーキングペーパーが公表されています。このところ、エコノミストとしての私の専門分野のひとつである開発経済学が少しお留守になっていましたので勉強してみました。リファレンスは以下の通りです。



もちろん、pdfの全文ファイルもアップされています。「包括性」inclusion とか、「包括的」inclusive とかは、やや偏りのある私の見方では、アセモグル&ロビンソン『国家はなぜ衰退するのか』あたりからよく聞くようになった印象があります。今夜はグラフをいくつか引用しつつ、簡単にこの論文の概要について紹介します。

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まず、ペーパーでは金融包括性指数 Financial Inclusion Index を以下の5つの指標を基に世界176か国に適用して算出しています。その算出結果をペーパーの p.6 Table 1: Financial Inclusion Index から上位10国について引用すると上の表の通りです。トップがスペインで日本も6番目に入っています。当然ながら、先進国が上位を占めます。もっとも、アジア新興国・途上国の中ではこの次の12位に韓国がランクされています。

  • 大人10万人当りATM数
  • 大人10万人当たり商業銀行支店数
  • 大人1000人当り商業銀行からの借入者数
  • 大人1000人当り商業銀行預金者数
  • 国内信用のGDP比


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そして、アジア新興国・途上国だけを世界ランクから抜き出してグラフで示すと上の通りです。ペーパーの p.9 Figure 3: Financial Inclusion Indicator, Developing Asia を引用しています。アジア新興国・途上国の中であれば、韓国ではなくシンガポールや香港がトップではないかと予想していたんですが、そうでもないようです。意外と、中国(PRC)が上位にランクされていたりします。

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そして、金融包括性指数と各国の豊かさの代理変数である1人当りGDPをプロットした p.10 Figure 4: Per Capita Income and Financial Inclusion を引用すると上の通りです。傾向線が引かれていますが、金融包括性指数と1人当りGDPは正の相関を有しているようです。ただし、グラフをよく見れば理解できると思いますが、横軸に1人当りGDP、縦軸に金融包括性指数が取られています。高校のころの数学で、関数表現について y = f(x) というのを記憶している人も多いと思いますが、カーテシアン座標の2次元グラフでは、暗黙のうちに横軸のx軸から縦軸y軸への因果を想定しています。ここでは、豊かさが金融包括性を決める、という含意かと理解しておきます。

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次に、ペーパーのタイトルである貧困と不平等に入ります。上のグラフは p.12 Figure 8: Financial Inclusion and Poverty を引用しています。今度は、横軸に金融包括性指数、縦軸に貧困率が取られています。先ほどと逆で、金融包括性指数が貧困を決める、という因果が想定されていることがうかがえます。そして、このペーパーの筆者たちの意図通り、というか、何というか、かなり苦しいながら何とか金融包括性指数と貧困率の間に負の相関が浮かび上がっています。1人当り所得の豊かさと金融包括性が正の相関を有しているんですから、金融包括性が貧困と負の相関を有しているのは当然だとしか私には思えないんですが、それはともかく、ATMをたくさん設置して、銀行支店もいっぱい開設するなど、金融の包括性を高めると貧困削減につながる可能性を主張したいんだろうと受け止めています。

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最後に引用するグラフは金融包括性と不平等であり、p.13 Figure 9: Financial Inclusion and Income Inequality を引用しています。縦軸の所得の不平等はジニ係数を取っているんですが、誠に残念ながら、金融包括性指数と所得の不平等には相関が見られない、という結果になっています。金融は預金とか借入れとかはストックですから、フローの所得ではなく、ストックの資産の不平等のデータがあれば、ひょっとしたら、結果は違っていた可能性は否定できませんが、たぶん、データがそろわなかったんだろうと想像しています。この後、p.16 の Table 4 で回帰分析の結果が示されていますが、ダメ押しで、所得不平等に対して金融包括性指数はそれほど統計的な有意性が大きくなく、むしろインフレが不平等の原因である、という結果が示されていたりします。

日本では銀行口座を持っていて、その口座にお給料や年金を振り込んだり、あるいは逆に、公共料金やクレジットカードの利用代金を引き落としたりというのは当たり前になっているんですが、途上国では決してそうではありません。国にもよりますが、銀行口座を持っていて、金融取引を行っている人は富裕層に限られ、国民の決して大きな比率を占めているわけではない場合も少なくありません。今夜紹介したペーパーは、アジア新興国・途上国の金融の実情に迫りながら、最後の最後に所得不平等でコケた学術論文でした。
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2015年02月09日 (月) 19:28:00

本日発表の景気ウォッチャーと消費者態度指数と経常収支をどう見るか?

本日、内閣府から供給サイドと需要サイドの典型的なマインド指標である景気ウォッチャー消費者態度指数が、また、財務省から経常収支が、それぞれ公表されています。マインド指標は1月の、経常収支は12月の統計です。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

1月の街角景気、現状判断2カ月連続改善 原油安や求人数増で
内閣府が9日発表した1月の景気ウオッチャー調査(街角景気)によると、足元の景気実感を示す現状判断指数は前月比0.4ポイント上昇の45.6と2カ月連続で改善した。原油安を背景に輸送業など非製造業で回復の兆しがみられるほか、正社員の求人数が増加していることから指数の改善につながった。
足元では食料品などの値上がりが消費者心理の重荷となっている。「3カ月前より各種商品、特にラーメン、粉類商品が値上がりし、客の節約志向が強まっている」(東北のスーパー)との指摘があった。一方、原油安の恩恵も出始めており、「燃料価格が下がっているので物流部門の収支は徐々に改善されている」(九州の輸送業)といった声が上がった。
内閣府は街角景気の基調判断を前月の「このところ回復に弱さがみられる」に2カ月連続で据え置いた。先行きについては「物価上昇への懸念などがみられるものの、燃料価格低下への期待や賃上げへの期待などがみられる」との認識を示した。
2-3カ月後の景気を占う先行き判断指数は前月比3.3ポイント上昇の50.0と、2カ月連続で改善した。好況の目安である50以上になったのは2014年8月(50.4)以来5カ月ぶり。円安の影響による生産拠点の国内回帰や、今年の春季労使交渉での賃上げに期待する声が多かった。
「賃金のベースアップが実施されそう。実質所得の増加による消費へのプラスが期待でき、花見の頃には明るいムードが広がってくる」(近畿のスーパー)、「製造業の国内回帰の傾向が鮮明になりつつある。雇用の拡大など雰囲気的に良好な状態」(四国の食料品製造業)と前向きなコメントが出ていた。
調査は景気に敏感な小売業など2050人が対象で、有効回答率は90.6%。3カ月前と比べた現状や2-3カ月後の予想を「良い」から「悪い」まで5段階で評価して指数化する。
消費者態度指数、1月も改善 0.3ポイント上昇
内閣府が9日発表した1月の消費動向調査によると、消費者心理を示す一般世帯の消費者態度指数(季節調整値)は39.1と、前月比0.3ポイント上昇した。改善は2カ月連続。内閣府は消費者心理の基調判断を前月の「下げ止まりの動きがみられる」に据え置いた。
指数を構成する意識指標のうち、「雇用環境」と「耐久消費財の買い時判断」が2カ月連続で上昇した。一方、「暮らし向き」と「収入の増え方」の指数は前月を下回った。悪化はいずれも2カ月ぶり。
1年後の物価見通しについては「上昇する」と答えた割合(原数値)が前月比0.4ポイント増の87.4%と、2カ月ぶりに上昇した。
調査は全国8400世帯が対象。調査基準日は1月15日で、有効回答数は5452世帯(回答率64.9%)だった。
14年の経常黒字、18.8%減の2兆6266億円 過去最少
財務省が9日発表した2014年の国際収支状況(速報)によると、海外との総合的な取引状況を示す経常収支は2兆6266億円の黒字だった。黒字額は前年比18.8%減少し、現行基準で統計を遡ることができる1985年以降で最少となった。円安進行で企業の海外での投資収益を示す第1次所得収支の黒字が過去最大となった一方、貿易赤字が過去最大となり、経常黒字は低い水準にとどまった。
14年の貿易収支は、輸送の保険料や運賃を含まない国際収支ベースで10兆3637億円の赤字。赤字額は前年比18.1%増加し、比較可能な1996年以降で最大となった。貿易赤字は4年連続。輸入額は10.3%増の84兆4862億円で、過去最大だった。液化天然ガス(LNG)や半導体等電子部品などが増加し、5年連続で輸入額が前の年を上回った。一方、輸出額は9.3%増の74兆1225億円となった。自動車や科学光学機器などが増え、輸出額は2年連続で前の年を上回った。
サービス収支は3兆932億円の赤字。赤字額は13年の3兆4786億円から縮小した。項目別にみると、「知的財産権等使用料」が1兆6948億円の黒字と黒字額は比較可能な96年以降で最大。また訪日外国人観光客数の増加を背景に「旅行収支」が1251億円の赤字と赤字額は13年の6545億円を下回り過去最少となった。
第1次所得収支は18兆712億円の黒字。黒字額は前年比9.7%増加し、07年(16兆4818億円)を上回って比較可能な1985年以降で最大となった。円安進行により、企業が海外事業への投資で受け取る配当金や海外証券投資で得られる債券利子が増えた。
同時に発表した14年12月の経常収支は1872億円の黒字だった。経常黒字は6カ月連続。13年12月は6799億円の赤字だったが、黒字転換した。貿易赤字は3956億円で、赤字額は前年同月比63.1%減少した。第1次所得収支は1兆173億円の黒字で、黒字額は12月としては過去最大だった。


いずれも、よく取りまとめられた記事だという気がします。でも、さすがに3指標の記事を一気に並べるとかなり長くなってしまいました。次に、マインド指標のグラフは以下の通りです。上のパネルは景気ウォッチャーの現状判断DIと先行き判断DIを、下のパネルは消費者態度指数を、それぞれプロットしています。影をつけた部分はいずれも景気後退期です。

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景気ウォッチャーと消費者態度指数のいずれも2か月連続の改善を示しましたが、その改善幅は決して大きくもなく、明確に上昇や改善に転じたというよりは底ばいに近いと私は受け止めています、ですから、統計作成官庁である内閣府も基調判断は前月から据え置いています。中でも、消費者態度指数の基調判断である「下げ止まりの動き」というのが、マインドに対するなかなか適確な表現のような気がしています。もっとも、景気ウォッチャーの先行き判断DIが特に大きな改善を示していますから、春先以降のマインド改善が期待されます。すなわち、現時点では、引用した記事にもある通り、原油安の好影響が顕在化して、円安による原材料高を相殺している形ですが、春以降は年央にかけて賃上げや雇用の質的な改善が消費に結びつけば、底ばいを脱してマインドの本格的な改善に向かう可能性は十分あると私は考えています。引用した記事の最初のパラにある通り、正社員の求人増というのは雇用の質的な改善を象徴していると受け止めています。

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経常収支については、昨年2014年通年の経常黒字が統計史上最少の黒字幅に縮小した、という年データの動向が注目されています。ただし、足元の2-3か月では原油価格の下落もあって、貿易赤字が急速に縮小し、同時に円安に伴う1次所得収支の円建ての受取りの増加もあって、経常黒字幅が拡大しているのがグラフから見て取れます。形状収支の傾向だけを見た univariate な分析ですが、震災以降から昨年前半まで続いていた一気に経常黒字が縮小するトレンドとは違って来ているのは明らかです。国際商品市況での原油価格の動向は私には予測がつきませんが、この先、輸出はもう少し伸びるでしょうから、貿易収支や経常収支はそれなりに安定に向かうんではないかと期待しています。

本日の経常収支の発表で、GDP統計1次QEに必要な指標がほぼ出そろいました。消費増税後の4-6月期と7-9月期には2四半期連続でマイナス成長を記録しましたが、10-12月期には経済も持ち直してプラス成長に転じたんではないかと私は考えているところ、いずれにせよ、日を改めて、1次QE予想を取り上げたいと思います。
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2015年02月08日 (日) 17:41:00

先週の読書はアンガス・ディートン『大脱出』ほか

先週の読書は、途上国援助について同意しかねるアンガス・ディートン『大脱出』をはじめとして、あとは小説2冊の計3冊でした。

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まず、アンガス・ディートン『大脱出』(みすず書房) です。英国出身のエコノミストです。長期のデータベース作成の権威であり、私は論文作成で使ったことはありませんが、有益なデータを提供してくれています。ということで、トマ・ピケティ『21世紀の資本』もそうだったんですが、100年を超えるような長期のデータは、それだけで雄弁に経済史や国民生活の歴史を語りますし、学術論文を書く上でもとても重宝します。著者はその方面のエキスパートですから、18-19世紀くらいからの世界経済の脱出について興味深い議論を展開しています。ここでいう「脱出」esccape は経済学や経済史などでいうところの「自由」free の概念に近く、「脱出」 ≒ 「経済的な成功」 と大筋で捉えて差し支えないと私は感じています。でも、単に経済的なサクセス・ストーリーだけではなく、健康面、特に医学的というよりは公衆衛生も含めた市民の健康増進も寿命データに基づいて取り上げられています。おおむね賛同できる論調なんですが、最後の方の途上国向けの開発援助に対する著者の考えだけは、開発経済学をエコノミストとしての専門分野のひとつと考える私には受け入れられません。著者のディートン教授は『エコノミスト 南の貧困と闘う』のイースタリー教授と同じ意見であり、先進国からの開発援助は途上国の経済発展に役立っておらず、場合によっては逆効果を示しているプロジェクトもある、というものです。とても残念なことに、では途上国の「脱出」には何が必要かは本書では語られていません。おそらく、『エコノミスト 南の貧困と闘う』と同じように、インセンティブを適切に活用すれば、先進国からの開発援助なしに途上国の自律的な経済発展や自立が進む、という意見なのかもしれませんが、歴史的な事実として、それが出来ていないから開発援助も含めた多様な開発政策が実行されているという理解には至っていないようです。それに、昨年11月15日付けのエントリーで『その問題、経済学で解決できます。』を取り上げた際、「インセンティブに反応するマイクロな経済学がどこまで経済政策に有用かも疑問が残ります」と私としては極めて明確に書きましたし、『英エコノミスト誌のいまどき経済学』の p.218 では「経済関係のあらゆるバブルの中でも、経済学そのものの評判ほど華々しく弾けたものはめずらしい」との指摘がありますが、インセンティブに反応するマイクロな経済学の視点については「経済学バブル」の弾けた今となっては、もっとも疑わしい経済学のひとつと認識すべきではないんでしょうか。

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次に、川村元気『億男』(マガジンハウス) です。一昨年2013年3月19日付けのエントリーで取り上げた『世界から猫が消えたなら』の著者の2作目の小説ではないかと思います。実に深遠な「お金と幸福」について取り上げています。弟の借金を背負って家庭が崩壊し、でも、宝くじで3億円当選し、お金にまつわる両極端を経験した上で、それでも、大学時代の友人である九十九や九十九の起業仲間を追って世界を駆け巡り、結局のところ、「お金と幸福」の関係については確定的な回答は得られません。当たり前なんでしょう。この小説については本屋大賞にもノミネートされましたし、映像作家としての作者自身の話題性もあって、何となく図書館で借りて読みましたが、作家として小説を読んでお付き合いするのはここまでかという気もします。私の知り合いの中には、前作よりはマシだったと評価する読書子がいますが、私は前作の方が感じよく読めた気がします。何を訴えたいのかはとてもよく理解できるのですが、何のために小説という媒体なのかは作者ご本人も理解していないような気がします。チャプリンの言葉で「人生に必要なもの。それは勇気と想像力と、ほんの少しのお金さ。」というのが紹介されており、他方、人生でコントロール出来ないのは死と恋とお金、といった趣旨の表現も作品の中にあったような気がします。でも、「お金と幸福」という大きなテーマを消化するだけの見識も筆力も作者にはなく、何となく流れて漂ってしまった小説なんではないかという気もしないでもありません。

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最後に、柳広司『ラスト・ワルツ』(角川書店) です。『ジョーカー・ゲーム』から始まる昭和初期の陸軍スパイ組織D機関のシリーズ第4作です。私は全部読んでいると思います。シリーズを通じて短篇集という体裁であり、本作も短篇2篇と中編くらいの長さの作品を1編収録しています。実は、前作の『パラダイス・ロスト』に収録されていた最後の短篇で太平洋戦争が始まってしまいましたのでスパイの暗躍の場がなくなり、このシリーズはお終いかと私は思っていたんですが、ちゃんと続いているようです。本書の舞台は満州、ドイツ、日本です。相変わらず、「頭脳戦」を描き出したスパイ小説としても、スパイが取り組む不可解な事件の謎解きのミステリとしても上質の小説に仕上がっています。1週間前の1月31日に映画「ジョーカー・ゲーム」が封切られており、私はすでに前売り券を入手しているんですが、この小説のシリーズと少し趣向の異なるドンパチの007シリーズのようなスペクタクル巨編、機密文書「ブラックノート」をめぐるアクション映画に仕上がっているというウワサも聞きます。でも、好きな小説シリーズを原作にしていますし、女スパイを演じる深田恭子も気にかかるので、そのうちに見に行こうと考えています。
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2015年02月07日 (土) 08:11:00

米国雇用統計は失業率上昇も堅調な動きを示す!

日本時間の昨夜、米国労働省から1月の米国雇用統計が公表されています。ヘッドラインとなる非農業部門雇用者数は前月から+257千人増加し、失業率は0.1%ポイント上昇したものの、5.7%と依然として低い水準を維持しています。いずれも、季節調整済みの系列です。まず、やや長くなりますが、Los Angeles Times のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

U.S. added 257,000 new jobs in January with strong wage gains
The economy produced another robust month of job gains last month, adding 257,000 net new positions and a strong gain in wages, the Labor Department said Friday.
The unemployment rate ticked up to 5.7%, but that was because more people entered the labor force.
January's job growth was bolstered by an additional 147,000 net new jobs combined in November and December, the Labor Department said.
The upward revisions mean the U.S. economy added an average of 336,000 jobs for the three months ending Jan. 30, an acceleration of 2014's strong job growth.
Economists had forecast the January jobs report would show a gain of 230,000 and the unemployment rate would hold steady at 5.6%, the lowest since June 2008.
Wage gains were surprisingly strong in January, rebounding from a disappointing December.
Average hourly earnings rose by 12 cents last month to $24.75 after a disappointing drop of 5 cents the previous month.
Wage growth has been slow to recover from the Great Recession. But average hourly earnings were up 2.2% for the 12 months ended Jan. 31. The consumer price index rose 0.7% in 2014, largely because of falling oil prices, meaning wage growth easily outpaced inflation.
The jobs report came amid signs economic growth slowed in the fourth quarter after a blistering six-month stretch.
The Commerce Department said last week that the economy expanded at a 2.6% annual rate in the fourth quarter, below forecasts and down significantly from 5% in the previous quarter.
Job growth last year was the best since 1999, averaging 260,000 a month, but the brisk pace of hiring was paired with sluggish wage gains.


賃金も含めて、包括的によく取りまとめられている印象です。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは下の通りです。上のパネルは非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門、下のパネルは失業率です。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。全体の雇用者増減とそのうちの民間部門は、2010年のセンサスの際にかなり乖離したものの、その後は大きな差は生じていません。

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まったくもって堅調としか言いようのない米国雇用です。市場の事前コンセンサスでは220-230千人増と聞き及んでいましたが、わずかながら上回りました。それよりも、昨年2014年の11-12月統計が大きく上方改定されたのが目を引きます。すなわち、11月は353千人から423千人に、12月も252千人から329千人に、ほぼ7万人ずつ2か月で合せて15万人近く上方改定されました。1月の25万人余りは昨年11-12月から見ると増加幅が縮小したように見えなくもありませんが、米国雇用のひとつの目安とされる20万人増を大きく超えていますので、十分に堅調な数字と受け止めています。また、失業率も前月から0.1%ポイント上昇したものの、非労働力人口から職を求めて労働市場へ参入する人が増加した結果と考えられており、どこかの米国紙ではこの失業率上昇を "positive sign" と表現していました。その通りです。もはや、米国連邦準備制度理事会 (FED) が年内にゼロ金利を解除して金利引上げに踏み切るのは疑問の余地なく既定路線となったような気がします。

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また、日本の経験も踏まえて、もっとも避けるべきデフレとの関係で、私が注目している時間当たり賃金の前年同月比上昇率は上のグラフの通りです。ならして見て、ほぼ底ばい状態が続いている印象です。12月統計で少し上昇率が鈍化した可能性を指摘しましたが、1月にはリバウンドしたようです。サブプライム・バブル崩壊前の+3%超の水準には復帰しそうもないですが、まずまず、コンスタントに+2%のライン周辺で安定していると受け止めており、少なくとも、底割れしてかつての日本や現在の欧州ユーロ圏諸国のようにゼロやマイナスをつけてデフレに陥る可能性は小さそうに見えます。
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2015年02月06日 (金) 19:23:00

景気動向指数に見る景気の現状やいかに?

本日、内閣府から昨年2014年12月の景気動向指数が公表されています。ヘッドラインとなるCI一致指数は先月から+1.5ポイント上昇して110.7に、CI先行指数も同じく+1.5ポイント上昇して105.2を記録しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

景気一致指数、12月は上昇 基調判断を上方修正
内閣府が6日発表した2014年12月の景気動向指数(CI、2010年=100)速報値は、景気の現状を示す一致指数が前月比1.5ポイント上昇の110.7だった。上昇は2カ月ぶり。年末商戦が好調だった軽自動車や、新機種の発売があったスマートフォンを含む携帯電話といった耐久消費財の出荷が伸びたことなどが指数の改善につながった。
内閣府は、一致指数の動きから機械的に求める景気の基調判断を前月までの「下方への局面変化を示している」から、「改善を示している」に上方修正した。判断の引き上げは13年7月以来、1年5カ月ぶり。
数カ月先の景気を示す先行指数は1.5ポイント上昇の105.2で、3カ月ぶりに上昇した。在庫調整の進展や出荷増を受けて在庫率指数が低下したことや、消費者心理の改善、新規求人数の増加などがプラスに寄与した。景気に数カ月遅れる遅行指数は2.3ポイント低下の118.3だった。
指数を構成する経済指標のうち、3カ月前と比べて改善した指標が占める割合を示すDI(最高は100)は一致指数が55.6、先行指数が33.3だった。


いつもながら、簡潔によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、下のグラフは景気動向指数です。上のパネルはCI一致指数と先行指数を、下のパネルはDI一致指数をそれぞれプロットしています。影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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上のグラフからも明らかで、CI一致指数は下げ止まって反転上昇に転じたように見えます。ですから、引用した記事にもある通り、統計作成官庁である内閣府は基調判断を先月までの「下方への局面」から「改善」に上方修正しています。12月統計ではCI一致指数のコンポーネントのうち、耐久消費財出荷指数、中小企業出荷指数(製造業)、鉱工業生産財出荷指数、有効求人倍率などのプラス寄与が大きくなっている一方で、商業販売額(小売業)(前年同月比)はまだマイナス寄与だったりします。
景気動向については、先週金曜日の1月30日に鉱工業生産指数を、また、一昨日の2月4日に毎月勤労統計の所定外労働時間を、それぞれ取り上げた際に、いずれも昨年2014年1月をピークで、8月をトラフになっていると、このブログに書きましたが、CI一致指数を見る限り、2014年3月がピークで8月がトラフですから、この5か月の期間では景気後退期と判定するには短すぎるような気がします。私の直観ですが、景気循環の山谷をつけるには期間 duration が不足する上に、深さ depth もやや足りないように感じています。ですから、もちろん、景気動向指数のCI一致指数だけを根拠に景気日付を決めるわけではないんですが、私はこの期間を景気後退期と判定するのはネガティブと考えています。

さ来週月曜日の2月16日には昨年2014年10-12月期のGDP速報1次QEが公表される予定となっています。4-6月期、10-12月期と2四半期連続のマイナス成長でテクニカルなリセッションに入った日本経済なんですが、10-12月期にはそれなりのプラス成長を記録したと私は見込んでおり、今日発表の景気動向指数とともに、昨年末から現在の足元では景気は回復基調にあると考えています。1次QE予想については改めて取り上げる予定です。
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2015年02月05日 (木) 23:17:00

東京商工リサーチ「希望・早期退職者募集状況」調査に見る雇用情勢やいかに?

とても旧聞に属する話題ですが、1月13日に東京商工リサーチから2014年の「希望・早期退職者募集状況」調査の結果が公表されています。まず、調査結果の概要を東京商工リサーチのサイトから引用すると以下の通りです。

2014年「希望・早期退職者募集状況」調査
2014年に希望・早期退職者の募集実施を公表した上場企業数は、前年比4割減の31社だった。アベノミクスに伴う急速な円安進行から上場企業の業績が輸出企業を中心に改善し、人員削減に動いた企業は調査を開始した2000年以降で最少となった。


ということで、東京商工リサーチのサイトから2000年以降の主な上場企業の希望・早期退職者募集状況に関するグラフを引用すると以下の通りです。

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グラフを見れば一目瞭然なんですが、2008年のリーマン・ショック直後の2009年は雇用情勢が一気に悪化して、希望・早期退職の募集も増加しましたが、その後は順調に減少し、2012年のミニ・リセッションでやや増加を示したものの、2013-14年と希望・早期退職者募集実施の企業数も、募集人数も減少し、極めて落ち着いた動きを示しています。ただし、業種別に見ると、円安の進行にもかかわらず、電気機器、すなわち、ルネサスエレクトロニクス、ソニーなどの7社がもっとも多くなっています。かつては、「リストラ」と称する人員整理が社会的なトピックにすらなりましたが、総体的全体的に見て、昨夜のエントリーで厚生労働省の毎月勤労統計を取り上げた際にも書きました通り、私がエコノミストとしてもっとも重視している雇用について、量的な拡大から質的な改善に向かう局面に入りつつある可能性を指摘しておきたいと思います。
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2015年02月04日 (水) 22:38:00

毎月勤労統計は雇用の質の改善を示しているか?

本日、厚生労働省から12月の毎月勤労統計が発表されています。ヘッドラインとなる現金給与総額は季節調整していない原系列の前年同月比で+1.6%増の551,878円と大きく増加し、景気に敏感な所定外労働時間は製造業の季節調整済みの系列で前月比+0.3%と鉱工業生産に歩調を合わせるように緩やかな増加を記録しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

14年現金給与、4年ぶりプラスも実質賃金2.5%減
厚生労働省が4日発表した2014年の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)によると、従業員1人当たりの月平均の現金給与総額は前年比0.8%増の31万6694円だった。10年(0.5%増)以来4年ぶりにプラス転換し、伸び率は1997年(1.6%増)以来17年ぶりの高さとなった。ボーナスが比較可能な91年以降で2番目に高い伸び率だったほか、昨年の春季労使交渉で基本給を底上げするベースアップが広がり、9年ぶりに基本給にあたる所定内給与が下げ止まったことが寄与した。
一方、現金給与総額から物価上昇分を除いた実質賃金は2.5%減と3年連続で減少した。減少率は91年以降では米リーマン・ショック後の09年(2.6%減)に次ぐ2番目の大きさ。昨年4月の消費増税や日銀が掲げる2%のインフレ目標により、賃金の伸びが物価上昇に追いついていないことが改めて浮き彫りとなった。
調査は従業員5人以上の約3万3000事業所が対象。パートタイム労働者が増加傾向にあり、現金給与総額はピークだった97年の37万1670円を5万4976円下回った。現金給与総額を就業形態別でみると、正社員などフルタイムで働く一般労働者は1.3%増の40万9860円と2年連続で増え、パート労働者は0.4%増の9万6979円と2年ぶりに増加した。
所定内給与は前年比横ばいの24万1357円と、05年(0.2%増)以来9年ぶりに下げ止まった。ボーナスにあたる特別給与は3.5%増の5万5647円と2年連続のプラスで、91年(5.7%増)に次ぐ高い伸び率だった。残業代などの所定外給与は3.1%増の1万9690円。
併せて発表した14年12月の現金給与総額は前年同月比1.6%増の55万1878円と10カ月連続で増加した。所定内給与は0.3%増の24万1372円で2カ月ぶりのプラス。冬のボーナスなど特別給与は2.6%増の29万159円、所定外給与は0.5%増の2万347円だった。一方、実質賃金は1.4%減と18カ月連続で減少した。


年データが中心で12月の月次統計は最後のパラだけながら、いつもの通り、とてもよくまとまった記事だという気がします。次に、毎月勤労統計のグラフは以下の通りです。上のパネルは製造業の所定外労働時間指数の季節調整済み系列を、下のパネルは製造業に限らず調査産業計の賃金の季節調整していない原系列の前年同月比を、それぞれプロットしています。影をつけた期間は景気後退期です。

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先週の雇用統計はいずれも堅調な雇用動向を示しており、生産も緩やかながら回復に向かう姿が確認されました。今日発表の毎月勤労統計でも上のグラフの所定外労働時間、下の賃金動向とも堅調な雇用と人手不足からいずれも順調な推移を示していると受け止めています。ただし、12月の賃金がアップした大きな要因はボーナスなどの所定外給与であり、グラフに太線で示した所定内給与については、この毎月勤労統計のクセを考慮するとやや弱めの内容と考えられます。給与を上げた事業所は胸を張って速報に間に合うように調査票を提出する傾向があり、確報段階では給与指数は下方修正される統計としてのクセがあるからです。
順序が逆になりましたが、季節調整済みの所定外労働時間指数は昨年2014年1月がピークで、8月が底となっています。先週金曜日に鉱工業生産指数を取り上げた際に書いた通り、生産指数もまったく同じであり、1月を山とし、8月を谷としています。金曜日のエントリーでも指摘しましたが、景気循環日付の山谷を付けるかどうかはビミューなところですが、繰返しになるものの、私はややネガティブです。いずれにせよ、生産や雇用はすでに回復過程に回帰しているのは明らかだと考えるべきです。

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ということで、賃金とともに雇用の質として私が重視している就業形態別の雇用の推移は上のグラフの通りです。通常、正規雇用とは、第1に、パートタイムの短時間労働ではなくフルタイムであること、第2に、任期付きの雇用ではなく期限の定めのない雇用であること、第3に、派遣でなく直接雇用されていること、の3点をすべて満たす雇用と考えられています。この毎月勤労統計からは第1のパートタイムかフルタイムかの就業形態しか判明しませんが、それでも、最近時点では徐々にフルタイムの雇用が伸びてているのが観察され、12月統計ではフルタイムの伸び率がパートタイムにとうとう追いつきました。このフルタイムの伸び率がパートタイムを追い抜くと、フルタイム雇用のシェアが増加するわけですから、いよいよ、雇用は量的な拡大から質的な改善の局面に入る可能性が出て来たと私は大いに期待しています。
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2015年02月03日 (火) 21:17:00

「使い捨てマスクに関する6,900人アンケート」調査の結果やいかに?

先週1月30日にフィールドマーケティング支援サービスを提供するソフトブレーン・フィールドから「使い捨てマスクに関する6,900人アンケート」と題する調査結果が公表されています。2月に入って、そろそろ花粉症の季節を迎え、マスクを手放せない時期に突入していますので、毎年花粉症に苦しむ私としても調査結果には興味あるところです。回答者は明らかに女性が多く、インターネット調査特有のバイアスもあることと推測しますが、それなりに特徴もよく出ており、今夜のエントリーではグラフをいくつか引用しつつ、簡単に紹介したいと思います。

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まず、上のグラフはソフトブレーン・フィールドのサイトから使い捨てマスクを使用するシチュエーションに関する質問の回答結果を引用しています。私の場合、最近2-3年でインフルエンザはもちろん、それほど風邪にすら罹患していないんですが、それでも複数回答であれば、上から5つの選択肢はかなり確度高く丸をつけるような気がします。その次の無精髭を隠す目的も皆無ではなく何回か経験があることは確かです。ただし、どこまでマスクを信頼しているかにもよりますが、私はそれほどではないので、花粉症の季節の花粉のように大量に飛んでいる時はそれなりの効果を期待するものの、インフルエンザほかのウィルスなどについては効果は限定的ではないかと考えていたりします。むしろ、「寒さ対策」や「唇や顔の乾燥予防」が主眼だという気がしなくもありません。クールビズのノーネクタイというのもありますが、私はネクタイは防寒具ではないと理解している一方で、マスクは少なくともネクタイよりはずっと防寒の役に立っていると認識しています。

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次に、上のグラフはソフトブレーン・フィールドのサイトから使い捨てマスクの購入業態に関する質問の回答結果を引用しています。私の場合、10枚前後の小ロットなら100円ショップやディスカウントストアなどで買わないこともないんですが、50枚とか60枚の箱入りになれば、やっぱり、ドラッグストア・薬局あるいはインターネット通販で買うことが多いような気がします。直感的には、プリーツ型のマスクはドラッグストアで、立体型とか三次元型の場合はインターネット通販で、それぞれ買っているような気がします。もちろん、特価の売出しなどを受けて、例外はあります。それから、私はあまり感じないんですが、プリーツ型で息苦しく感じる場合は、立体型とか三次元型を使うようにしています。後者は口や鼻の前にスペースがあって、やや息苦しさが緩和されるように感じます。

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最後に、上のグラフはソフトブレーン・フィールドのサイトから使い捨てマスク購入時のポイントに関する質問の回答結果を引用しています。先ほども書きましたが、私の場合、ウィルスなどのカット効果はそれほど期待していないので、上のグラフと同じで価格を最重要視して選んでいます。極めて大雑把に、1枚10円をメドにしているような気がしますが、ポイントが付くかどうかとか、普段の定価からどれくらい安いかなども参考にしています。後者の見方は、普段の価格が参照点となっていて、当然に、カーネマン=トベルスキーのプロスペクト理論通りだったりします。

グラフは割愛しましたが、マスクを使用する季節については、当然ながら、冬がもっとも高くて、夏が低い、という結果が出ています。冬に続くのが花粉症の季節である春となっています。でも、通年で使用する人が男性で12.8%、女性では17.5%もいたりします。
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2015年02月02日 (月) 19:33:00

チリのカトリック教徒はフランシスコ法王をどのように見ているか?

私は1990年代前半に南米チリの首都サンティアゴにて3年間の独身生活を日本大使館勤務の経済アタッシェとして過ごし、さらに、2000年から3年間家族4人でジャカルタに赴任しています。宗教的なマジョリティでいえば、チリはカトリック教国でインドネシアはイスラム教国です。ということで、2年ほど前の2013年3月14日付けのエントリーでは、カトリックの法王に南米アルゼンティン出身フランシスコ1世が就任したことを取り上げましたが、クリスマスからこの年末年始にかけて海外の友人と旧交を温めていたところ、フランシスコ1世は必ずしもチリで評判が高くない、と聞き及んでしまいました。知り合いが証拠として示すに、このブログでも時折取り上げているピュー・リサーチ・センターによるフランシスコ法王のイメージ調査の結果 Pope Francis' Image Positive in Much of World を知りました。昨年12月11日付けで発表された古い情報ですが、なかなか興味深い内容を含んでいますので、簡単に取り上げたいと思います。

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まず、上のグラフはピュー・リサーチのサイトから引用していますが、フランシスコ法王は世界から概して好意的に受け止められているようです。もちろん、好意にも濃淡はあり、カトリックに限らずクリスチャンが多い欧米からはより好意的な見方が示される一方で、中東では見方が拮抗しています。宗教的な人口構成が違うんですから、この程度の差は当然に生じ得ると考えるべきです。

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次に、上のグラフはピュー・リサーチのサイトから引用していますが、今度の結果は地域別ではなく国別にカトリック教徒と非カトリック教徒に分けて結果が示されています。当然ながら、どの国でもカトリック教徒からはより好意的に、非カトリック教徒からはそれほど好意的ではなく見られている法王ですが、その差が大きい順にソートしてあります。私が着目したのは、一番左の列で、カトリック教徒の間でのフランシスコ法王の見方であり、好意比率が80%を下回っているのはチリとガーナだけだったりします。法王の出身国であるチリの隣国アルゼンティンではこの表の中で最高スコアの98%をたたき出しているんですが、その隣国のチリではガーナに次いで低い比率を示しています。長らくチリに外交官として暮らした経験から、もちろん、長大な国境線を有する両国では国境紛争も絶えませんし、チリ人の隣国アルゼンティンに対する何らかのコンプレックスというか、必ずしも友好的でない感情が、ここに出てしまっているのではないか、と感じずにはいられません。

島国の日本ではなかなか想像しがたく、長い国境をもって接する大国でしか見られないとは思いますが、とても興味深い近隣国への感情だという気がします。
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2015年02月01日 (日) 19:44:00

少し前倒しして節分前に恵方巻きをいただく!

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節分まではまだもう少しあるんですが、どうしても平日の夕食に家族全員が集まれない時もありますので、我が家では少し前倒しして今夜の夕食に恵方巻きをいただきました。今年の恵方は西南西だそうです。
今年は上の倅が大学受験です。センター試験はすでに終わりました。入試なんて結果がすべてですので、いい結果が得られますよう願っています。
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2015年02月01日 (日) 08:13:00

球春到来、今日からプロ野球がキャンプイン!

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いよいよ、球春
今日からプロ野球のキャンプが始まります。我が阪神タイガースは沖縄は宜野座村営野球場でキャンプインです。昨年は、まさかまさかで、セリーグのクライマックス・シリーズを勝ち抜いて、日本シリーズに出場しながら、1勝4敗に終わりました。日本シリーズで敗退して日本一を逃すのは2003年と2005年に続いて、今世紀に入って3回目でした。今シーズンこその意気込みで、私も応援に力を入れたいと思います。なお、上のキャンプ地の地図は面白トレンディーニュースのサイトから、また、下の阪神の球団創設80周年記念シンボルマークとチームスローガンの画像は阪神タイガースの公式サイトから、それぞれ引用しています。

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今年は日本一目指して、
がんばれタイガース!
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