2015年10月31日 (土) 10:16:00

今週の読書は経済書も含めて6冊ほど!

今週は、何とか経済書を含めることができました。以下の6冊です。

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まず、ダイアン・コイル『GDP』(みすず書房) です。著者は英国出身のエコノミストですが、ジャーナリストの経験もあるようです。「GDPとはなにか」ということをテーマにして、経済をどのように捉えるかを考えるエッセイです。前世紀初頭のGDPや国民所得という概念がなかったころから話を説き起こし、大恐慌期のケインズによるマクロ経済分析の開始、第2時大戦後30年近くに及ぶブレトン・ウッズ体制下での経済の黄金時代、そして、1970年台の2度に及ぶ石油危機からの経済成長の屈折と米国のレーガン政権や英国のサッチャー政権などによる右派的な新自由主義に基づく経済運営、バブル崩壊後の日本を例外として1990年台から2000年代のリーマン・ショックまでくらいの大安定期とその後の金融危機によるさらなる成長の下方屈折、そして将来に及ぶ経済の把握のためのGDPのあり方、あるいは、経済や景気の把握のための指標について、経済学的な理論と歴史などをコンパクトに取りまとめています。本書でもGDPに代替する指標としての幸福度、特に主観的でない経済社会指標としての幸福度が言及されていますが、著者は幸福度をGDPに代替する政策目標とすることについては否定的な態度を取っていると感じられました。逆から見て、現時点では消去法によりGDPが政策目標としての経済変数として残っている、ということなのかもしれません。ただ、本書で著者はレベルとしてのGDP、あるいは1人当り所得とそれらの成長率は必ずしも厳密には区別していません。やや疑問を感じますが、いずれにせよ、エコノミストにとって、より望ましい経済指標の探求はまだ続くのかもしれません。

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次に、高橋琢磨『21世紀の格差』(WAVE出版) です。著者は野村総研の方なんでしょうか、出版社とともに私はよく知りませんでした。本書のタイトルはピケティ教授の『21世紀の資本』へのオマージュのようなタイトル付けをなされているような気がしないでもないんですが、中身の学術レベルはかなり違います。野村総研的な「創知・情報化社会」における産業創発ではアベノミクス的な対応は間違いだということをいいたいのか、なかなか興味深い議論を展開しています。アベノミクスについては基本的に第1の矢と第2の矢は量的な拡大路線であり、第3の矢についてはターゲティング・ポリシーでなければ質的な革新誘発の政策と私は考えています。でも、ケインズ政策への無理解などから量的な拡大路線は否定的に捉えられがちなことも事実で、見事に本書もその陥穽に陥っています。私はある経営者の発言を聞いて、為替によるコストダウンを否定し、血と汗を流すタイプのコストダウンを称揚する姿勢にびっくりした記憶がありますが、本書も同様の姿勢なのかもしれません。後、コンサル的な視点なのかもしれませんが、成功事例をすべてのケースに当てはめようとしている姿勢が垣間見えます。ですから、比較優位を無視しているというか、どの事例にも同じような金太郎飴的な対応策が適当と考えているのか、また、本書のテーマであるマクロの不平等に対する成功事例が世界的にも存在しない、という事実も本書の内容を充実させる上で障害になっている可能性も指摘しておきたいと思います。ただし、唯一私が共感したのは第1章終盤の第7節 若者を虐待する日本の雇用、第8節 悪化し続ける子どもの貧困、くらいかもしれません。やや壮大なタイトルに負けている内容かもしれません。

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次に、榎本憲男『エアー 2.0』(小学館) です。本作品と次はフィクションの小説です。著者は、私は知らなかったんですが、映画のプロデューサーや監督などをしていて、映画の世界の人のようです。小説の舞台は2020年東京オリンピックの準備の工事現場から始まります。いろいろあって、種銭を得た上で、経済学の理論に加えて人の感情をも計算して完璧な市場予測をはじき出す「エアー」というシステムを開発し、それを無料で日本政府に提供して15%のコミッションを取って、その資金をNPO法人まほろばから福島県内の帰還困難地区を特区に設定して企業誘致し、地域振興を図るというストーリーです。なお、政府からのエアーのコミッション15%のほかに、特区内では20%の消費税も財源とされています。それらの資金は円と等価の「カンロ」なる地域通貨で支払われ、途中でも、登場人物がつぶやくんですが、このNPO法人まほろばが、ほぼ特区地域の政府の役割を果たしてしまいます。当然、サステイナブルではないことは明らかで、どこかで終わりを迎えるんですが、ラストの迎え方が鮮やかです。エアーのシステムが極めて大きな電力を必要とし、例えるなら、地方都市、丸ごと1都市分くらいの電力を消費するという点がポイントになります。若手キャリア官僚のグループがまほろばを支えるというのが少し陳腐な気もしますが、とても面白い経済小説です。資本主義のリセット、特に信用乗数を発生させないという意味でバブルをもたらさないシステムとして設計されているものの、エアーのシステムそれ自体がバブルだという気もします。面白い上に、エコノミストの身としては、考えさせられる小説でもあります。

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次に、内館牧子『終わった人』(講談社) です。著者は売れっ子のシナリオ・ライターにして、最近は小説も何冊か出版していますので、私ごときが紹介する必要もないでしょう。少し前の小説『十二単を着た悪魔』は私も読んでいて、ほぼ3年前の2012年10月16日に読書感想文をアップしています。この『終わった人』は東大法学部卒でメガバンクに就職しながら、派閥争いに敗れて出世コースから外され、しがない子会社に転籍されて、結局、そのまま63歳の定年を迎えた男性の物語で、その定年の日から始まります。エリート・コースを走りながら50歳を前に窓際族となって、完全燃焼できずに定年を迎えるところが味噌です。そして、最後は思いっ切りのハッピーエンドですべてが丸く収まるようなストーリー展開なんですが、決してそうはなりません。ある意味で、リアルさを求める著者の小説進行上の工夫なのかもしれません。でも、この小説の主人公ほどのエリート・コースに乗っているわけではありませんが、私も京大を出たキャリアの公務員で定年も近いながら、やや体力的な不足があるとはいえ、ここまでやりがいや仕事や社会貢献に執着する気持ちはありません。その意味でリアルさは感じられず、東大卒のメガバンク出身者というだけで、何か特殊かつ一般的でない人物像を描く人も多いかもしれません。どうでもいいことながら、『十二単を着た悪魔』より簡単そうですので、この作品はドラマ化されたりするんでしょうか。

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次に、池上彰[編]『日本の大課題 子どもの貧困』(ちくま新書) です。編者については私がこのブログで紹介する必要もないほどの有名時であり、NHK出身のジャーナリストであることはいうまでもありません。本書は2部構成であり、児童保護施設の所長さんへの編者のインタビューが第1部、第2部は有識者によるリポートないしは学術論文に近いエッセイとなっています。私が何度もこのブログなどで主張している通り、そして、すぐ上の『終わった人』の読書感想文にもある通り、我が国は高齢者や引退世代には極めて優しい国であり、手厚い社会保障を敷いているんですが、どうしても財源の観点から子どもや家族などの世代には十分な財政リソースが行き渡っていない、という私の見方を裏付けるような本でした。第1部のインタビューでは、何度かキーワードとして児童施設の子どもを「良き納税者」に育てる重要性が指摘されています。私が以前の読書感想文のブログで指摘した通り、サバイバル問題を別にすれば、高齢者は10年たっても高齢者なんですが、児童は10年たてば「良き納税者」に育てられている可能性が十分あると実感させられる良書でした。何とか、シルバー・デモクラシーを乗り越えて、社会保障政策における世代間の平等が実現され、恵まれない子どもを「良き納税者」に育てることが可能な社会になるように私は強く願っています。

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最後に、清水真人『財務省と政治』(中公新書) です。著者は日経新聞のジャーナリストであり、今まで『官邸主導』や『消費税 政と官との「十年戦争」』などの著書があります。後者についてはこのブログでも取り上げており、2年前2013年9月16日付けのエントリーで朝日新聞のジャーナリストである伊藤裕香子『消費税日記 検証 増税786日の攻防』とともに論評を加えています。この著者のノンフィクション本を私が好きなのは、ジャーナリストの著作にありがちな事実を果てしなく羅列するという手法ではなく、観察された事実の背後にある科学的な法則性を導こうという姿勢があるからではなかろうかと感じています。すなわち、多くのジャーナリストのルポはニュートン的にいえば、いっぱいリンゴが落ちるのを書き下しているだけのような気がする一方で、この著者のルポはリンゴが落ちるのはなぜかを考えて万有引力の法則に迫っている気がします。ということで、本書は最強の官庁ある財務省について、そのパワーの源を通常指摘される予算編成権限ではなく、情報収集のインテリジェンスの能力に求めています。とても興味深い観点だという気がします。私が属する官庁ではインテリジェンスという感覚はまったくなく、経済合理性とか論理性を重んじるようなところがあり、それだけに本書でいう最強官とはやや違った存在ではなかろうかという気もします。それはともかく、予算編成という表の顔ではなく、インテリジェンスという裏の顔に着目するのであれば、個々の官僚の組織に対する忠誠心を引き出すためのインセンティブを考える必要があり、そのひとつとして天下りについても考察の対象とすべきではなかったか、と私は考えます。最近時点での財務省のパワーの減退の原因もそのあたりにありそうな気もしないでもありません。ホントはおそらく著者はそのあたりにも詳しいような気がするんですが、私の推測ながら、意図的に天下りのトピックを外したのはどうしてなのか、やや興味をひかれるポイントかもしれません。
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2015年10月30日 (金) 21:44:00

堅調な雇用統計と石油価格により下落し始めた消費者物価をどう見るか?

今日は月末最終日の閣議日で、いくつか重要な政府統計が公表されています。すなわち、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が、また、総務省統計局から消費者物価指数 (CPI)が、それぞれ公表されています。いずれも、9月の統計です。失業率は前月から横ばいで3.4%であった一方で、有効求人倍率は前月からさらに上昇して1.24倍を記録しました。雇用統計はいずれも季節調整済みの系列です。また、消費者物価上昇率は生鮮食品を除くコアCPIの前年同月比上昇率で見て、前月と同じ▲0.1%の下落となりました。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

求人倍率上昇1.24倍 9月、23年8カ月ぶり高水準
雇用情勢の改善傾向が続いている。厚生労働省が30日に発表した9月の有効求人倍率(季節調整値)は1.24倍と前月から0.01ポイント上がった。1992年1月以来、23年8カ月ぶりの高水準になる。総務省が同日発表した9月の完全失業率は前月から横ばいの3.4%だった。人手不足が続くなかで労働者の雇用環境が安定し、新たに職を探す人が減っている。
有効求人倍率は全国のハローワークで仕事を探す人1人に対し、企業からの求人が何件あるかを示す。倍率が高いほど仕事を見つけやすくなり、企業からみれば採用が難しくなる。
雇用の先行指標とされる新規求人数(原数値)は86万5949人と前年同月よりも0.9%増えた。業種別にみると、教育・学習支援(同9.8%増)、医療・福祉(同4.5%増)などで求人が大幅に増えた。
就業率は58.1%。このうち64歳までの就業率が73.9%と1968年1月以来、過去最高水準になった。女性を中心に高齢者以外の就業の伸びが目立っている。
男女別の完全失業率は男性が3.6%(前月比0.1ポイント上昇)、女性が3.1%(同0.1ポイント低下)だった。完全失業者数(季節調整値)は228万人と同4万人増加。より良い条件の仕事を求めて自発的に離職した人が3万人増えた。総務省は「雇用情勢は引き続き改善傾向にある」とみている。
全国消費者物価、9月は前年比0.1%下落 2カ月連続マイナス
総務省が30日に発表した9月の全国消費者物価指数(CPI、2010年=100)は、値動きの大きい生鮮食品を除く総合(コアCPI)が103.4となり、前年同月比で0.1%下落した。2年4カ月ぶりの下落に転じた8月(同0.1%下落)に続くマイナスとなった。原油価格の下落を受け、電気代やガス代、灯油やガソリンなどエネルギー品目の価格が総じて下がった。
ただ、QUICKが事前にまとめた市場予想の中央値(0.2%下落)よりマイナス幅は抑えられた。品目別では上昇が351、下落は124、横ばいが49だった。フライドチキンやチョコレート、ケーキといった食料(生鮮食品除く)を中心に価格が上昇。新製品の投入効果でテレビなどの耐久消費財も値上がりし、コアCPIを下支えした。
食料・エネルギーを除く「コアコアCPI」は101.6と、0.9%上昇した。8月(0.8%上昇)より上げ幅がやや大きく、プラス幅の拡大傾向が続いている。訪日客の増加による宿泊料の上昇などが背景。総務省は「エネルギー関連を除くと上昇傾向は変わらない」としている。生鮮食品を含む総合は前年比で横ばいとなり、13年5月以来の低水準となった。
先行指標となる10月の東京都区部のCPI(中旬速報値、10年=100)は、生鮮食品を除く総合が102.0と0.2%下がった。原油安で物価の下押し圧力が続き、4カ月連続でマイナスとなった。下落率は9月(0.2%)と同じだった。コアコアCPIは0.4%の上昇と、プラス幅は9月(0.6%)に比べ縮小した。


いずれも網羅的によく取りまとめられた記事だという気がします。しかし、2つの統計の記事を並べるとそれなりのボリュームになります。これだけでお腹いっぱいかもしれません。続いて、雇用については、以下のグラフの通りです。上のパネルから順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は景気後退期です。

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まず、雇用統計については、失業率こそ下げ止まった感もありますが、引用した記事にもある通り、よりよい職を求めて自発的に離職した失業者が増加した要因が大きく、景気の悪化などによる非自発的な離職は減少していますので、失業率はほぼ完全雇用水準にあると考えてよさそうです。私は過去の実績に従ったフィリップス曲線から考えると、2%のインフレ目標のためには3%水準を下回る失業率の低下が必要と考えていましたが、かなり労働市場の構造は変化してきているようです。さらに、バブル崩壊直後の水準まで上昇した有効求人倍率には人手不足が反映されていると考えるべきです。そして、これらの量的な雇用の改善が進んだ結果として、緩やかながら賃金の上昇や正規雇用の増加などの質的な雇用の改善が進む段階になりつつあると、私は考えています。その意味でも、とても緩やかなものにとどまっている現在の景気回復を本格的な回復基調に早く戻す必要があります。

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次に、いつもの消費者物価上昇率のグラフは上の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く全国のコアCPI上昇率と食料とエネルギーを除く全国コアコアCPIと東京都区部のコアCPIのそれぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフは全国のコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。東京都区部の統計だけが10月中旬値です。これまた、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1位の指数を基に私の方で算出しています。丸めない指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。ということで、エネルギーのマイナス寄与は私の計算で▲1.2%近くに達し、この国際商品市況における石油価格の下落により消費者物価上昇率は先月からマイナスに転じていると考えるべきです。しかも、労働市場がかなりひっ迫しているにもかかわらず、広範な賃金上昇がまだ観察されていませんから、物価上昇の観点からは今年後半の現時点がほぼ底に近いと私は感じています。確かに現状は日銀のインフレ目標には届かず、デフレ脱却からほど遠い状況となっていますが、国際経済環境から、先行き不透明ながら国際商品市況が中国経済の回復とともに底を打ち、国内景気動向としては、完全雇用と人手不足から賃上げの条件が整えば、これら内外の経済社会環境が物価上昇をもたらす可能性が決して低くない、と私は考えています。

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なお、現在の消費者物価は食品などの生活必需品の値上げによりもたらされており、国民生活を直撃しているとの指摘があり、内閣府の「マンスリー・トピックNo.44 必需品価格の上昇が消費に与える影響について」では、結論のひとつとして、「必需品価格の上昇が消費に与える影響は平均的家計ではほとんど見られない一方、低所得者層では最初の3か月間消費を押し下げる効果が確認できる。」と指摘していることから、私の方でも所得分位別のウェイトを用いた物価上昇率をプロットしてみました。上のグラフの通りです。所得分位は5分位であり、第I分位と第II分位の境界所得は年間430万円、さらに、第IV分位と第V分位の境界は919万円となっています。境界所得は、いずれも、総務省統計局のサイトにある消費者物価に関する資料の P.31 脚注16 に基づいています。でも、少なくともデータを見る限り、昨年の消費増税後から今年にかけて、足元までは第I分位の物価上昇率は第V分位をかなり下回っている、という現状が示されていると考えています。理論的には、物価上昇に伴う実質所得のディスカウントは低所得者ほどダメージが大きいのは事実なんでしょうが、現状の物価上昇がどういった所得階層により大きな負担をもたらしているかも重要ではないでしょうか。

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統計を離れて、日銀は本日の金融政策決定会合で追加緩和を見送りました。というか、金融政策の現状維持を決定しました。上の画像は「展望リポート」の p.10 から引用した政策委員の大勢見通しです。7月時点の見通しから、2015-16年度についてはやや下方修正されています。
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2015年10月29日 (木) 20:31:00

予想に反して増産となった鉱工業生産指数をどう評価するか?

本日、経済産業省から9月の鉱工業生産指数が公表されています。ヘッドラインとなる鉱工業生産の季節調整済みの前月比は+1.0%増と3か月振りの増産となり、基調判断が上方修正されています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

9月の鉱工業生産、1.0%上昇 基調判断「一進一退」に引き上げ
経済産業省が29日発表した9月の鉱工業生産指数(2010年=100、季節調整済み)速報値は前月比1.0%上昇の97.3だった。3カ月ぶりに前月を上回った。QUICKがまとめた民間予測の中央値は0.5%低下で、市場予想を大きく上回った。足元の販売が好調な化粧品やスマートフォン(スマホ)向け電子部品が指数を押し上げた。
経産省は生産の基調判断を「弱含んでいる」から「一進一退で推移している」に引き上げた。10月の予測指数は4.1%の上昇となり、今後は自動車での新車投入などにより回復を見込む。もっとも7-8月の落ち込みが響き、7-9月期は前期比1.3%の低下となった。2期連続の減産となった。
9月の生産指数は15業種のうち8業種が前月から上昇し、7業種が低下した。化粧品などの化学工業は5.4%上昇した。電子部品・デバイスもスマホ向けを中心に6.0%上昇した。その一方、はん用・生産用・業務用機械は4.8%低下した。
出荷指数は前月比1.3%上昇の96.7だった。在庫指数は0.4%低下の113.5、在庫率指数は2.9%低下の115.8だった。


いつもながら、網羅的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは以下の通りです。上のパネルは2010年=100となる鉱工業生産指数そのもの、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は景気後退期です。

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繰り返しになりますが、季節調整済みの系列の前月比で見て、生産が+1.0%増の増産である上に、出荷も+1.3%増、このため在庫調整が進んで在庫率指数は▲2.9%の低下、さらに、製造工業生産予測調査では10月の生産は+4.1%の増産、ただし、11月は▲0.3%の減産、と並べると、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスが▲0.5%の減産であっただけに、統計作成官庁である経済産業省の基調判断が「弱含み」から「一進一退」に上方修正されたのも是認できる内容のように見えますが、この基調判断を勝手に進めて、生産から見て日本経済が回復に向けた動きにあるかどうかはやや疑問だと私は考えています。というのは、ひとつには8月の生産指数が速報から確報で大きく下方修正された影響もありますし、製造工業生産予測調査の信頼性の問題もありますが、極めて単純に univariate に上のグラフの上のパネルを見て、一進一退に戻ったとも思えないから、という理由もあります。
基調判断をどれくらいの頻度で変更するかは統計作成官庁の判断次第なんでしょうが、引用した記事にもある通り、四半期ベースで2四半期連続の減産ですから、まだ生産の先行きに明るい展望を持つのは時期尚早だという気もします。特に、上のグラフの下のパネルを見ても、資本財と耐久消費財の出荷がともに単月では大きな振れを伴いつつ、資本財でやや回復基調が見られなくもないという程度なのに対して、耐久消費財はまだ下落基調を脱していない可能性が高い、と考えるべきです。賃金をはじめとする所得が必ずしも上向かず、政府が旗を振っても企業の投資は進まず、ということでは景気の本格的な回復までもう少し時間がかかりそうな気もします。もちろん、「一進一退」であって回復ではないのかもしれませんから、それはそれで正確であるとの主張も理解できますし、ほぼ横ばい状態が続いていて回復まで届かないという現状認識は同じなのかもしれません。
なお、ついでながら、久し振りの9月のシルバー・ウィークは、単純に、需要にはプラス、供給からはマイナス、と私は考えていて、生産統計のような供給サイドの指標には逆風と予想していたんですが、この結果を見る限り、需要面から生産にプラスの影響を及ぼしたのかもしれません。

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次に、7-9月期の四半期データが利用可能となりましたので、いつもの在庫循環図を書いてみました。上の通りです。縦軸は出荷の前年同月比を、横軸は在庫の前年同月比を、それぞれプロットしています。ただし、ややトリッキーなんですが、季節調整済みの指数の前年同月比です。昨年10-12月期から今年1-3月期、そして、直近の7-9月期まで4四半期連続で第4象限にあり、在庫調整局面を示しています。ただし、通常は時計回りを描くところが、この4四半期は反時計回りの動きを示しており、踊り場的な停滞局面を脱することができれば、もしそうならば、第1象限に戻るんではないかと私は予想しています。
ついでながら、7-9月期のGDP統計1次速報、いわゆる1次QEが11月16日に内閣府から公表される予定ですが、この生産統計を見る限り、4-6月に続いて2期連続のマイナス成長ながら、マイナス幅はかなり縮小されるんではないかという気もします。ただし、在庫調整の進み具合で在庫のマイナス寄与がどこまで大きいかにもよりますし、信頼性や正確性で必ずしも評判の高くない明日発表の家計調査の結果にも左右されます。

最後に、今週になって注目している金融政策なんですが、米国の連邦準備制度理事会(FED)は連邦公開市場委員会(FOMC)でゼロ金利政策の変更はしませんでした。果たして、明日の日銀金融政策決定会合やいかに?
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2015年10月28日 (水) 19:26:00

本日公表の商業販売統計をどう見るか?

本日、経済産業省から9月の商業販売統計が公表されています。商業販売統計のうち、ヘッドラインとなる小売業販売額は季節調整していない原系列の前年同月比で▲0.2%減の11兆2280億円と、増加を示した前月統計から減少に転じています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

9月の小売販売額0.2%減 6カ月ぶりマイナス スマホなど低調
経済産業省が28日に発表した9月の商業動態統計(速報)によると、小売業販売額は前年同月比0.2%減の11兆2280億円だった。マイナスは6カ月ぶり。原油安を受けて石油関連製品の価格が低下したほか、スマートフォンやパソコンの販売も低調だった。
もっとも気温の低下により秋物衣料は好調だったことなどで、季節調整済みの指数は前月比で0.7%上昇した。経産省は小売業の基調判断を「一部に弱さがみられるものの横ばい圏」に据え置いた。
百貨店とスーパーを含む大型小売店は2.6%増の1兆5114億円だった。既存店ベースの販売額は1.7%増だった。既存店のうち百貨店は1.9%増、スーパーは1.6%増だった。
コンビニエンスストアの販売額は5.1%増の9189億円だった。


いつもながら、コンパクトによく取りまとめられた記事だという気がします。次に、商業販売統計のグラフは下の通りです。上のパネルは季節調整していない小売販売額の前年同月比増減率を、下のパネルは季節調整指数をそのまま、それぞれプロットしています。影を付けた部分は景気後退期です。

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商業販売統計の見方がやや難しくなって来ているんですが、季節調整していない原系列の前年同月比ではここ数か月でプラス幅を縮小させて、とうとう9月統計では前年同月比マイナスに転じた一方で、季節調整済みの系列では今年2015年3月を底に、一時的な要因で下振れした6月を例外として、9月の最新統計まで半年ほど一貫して増加を示しています。まさに上のグラフの上下のパネルで示した通りです。ただし、消費者物価が下落に転じていますので、原系列の前年同月比マイナスをそのまま評価するべきではありません。例えば、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは今週金曜日に公表される予定の消費者物価指数(CPI)のうち、生鮮食品を除くコアCPIの前年同月比上昇率は▲0.2%と予想されており、もしもこの予想が正しいと仮定すれば、実質で見た小売業販売額は前年同月比でマイナスではなくゼロということになります。季節調整済みの系列では、緩やかながら徐々に上向き傾向が確認されており、9月の場合は上旬の天候要因とか、下旬のシルバー・ウィークの連休とか、いくつか一時的な要因も消費支出を左右した可能性が残るものの、基本的に消費は底堅いと私は見ています。
さて、10月30日に開催される日銀の金融政策決定会合を前に、このブログの昨日のエントリーではシンクタンクのリポートを紹介しましたが、今日からブラックアウト期間に入ることもあって、昨日今日とメディアで追加緩和に関する観測記事がいくつか見られますので、これも順不同でリンクだけ張っておきたいと思います。
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2015年10月27日 (火) 21:19:00

企業向けサービス価格指数(SPPI)は27か月連続で前年同月比プラスも上昇率は前月から縮小!

本日、日銀から9月の企業向けサービス価格指数(SPPI)が公表されています。ヘッドライン指数の前年同月比上昇率は+0.6%、国際運輸を除くコアSPPIも同じく+0.6%の上昇と、前月の+0.8%からやや減速した一方で、昨年4月の消費増税の影響が一巡してもプラスを維持しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

9月の企業向けサービス価格指数、前年比0.6%上昇 伸び率は縮小
日銀が27日発表した9月の企業向けサービス価格指数(2010年平均=100)は102.9で、前年同月比0.6%上昇した。前年比でプラスになるのは27カ月連続。宿泊サービスやソフトウエア開発などが値上がりした。前年比の伸び率は8月から0.2ポイント縮小した。前月比では0.1%下落した。
価格が上昇した品目は62、下落した品目は42だった。上昇と下落の品目数の差は20で、8月確報の23から縮小した。品目数で上昇が下落を上回るのは24カ月連続だった。
品目別に見ると、ホテル宿泊サービスや国内航空旅客輸送が上昇した。シルバーウィークがあったことで旅行者需要が伸びたことが影響した。
大きく下落したのは、外航貨物輸送の料金だった。中国経済の減速で、不定期船や外航タンカーの需要が減少した。日銀は「足元の価格上昇はそれほど強くない。来月以降の指数の動向は見通しにくい」とした。
企業向けサービス価格指数は運輸や通信、広告など企業間で取引されるサービスの価格水準を示す。


いつもながら、よく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、企業向けサービス物価上昇率のグラフは以下の通りです。上のパネルはサービス物価(SPPI)と国際運輸を除くコアSPPIの上昇率とともに、企業物価(PPI)上昇率もプロットしています。SPPIとPPIの上昇率の目盛りが左右に分かれていますので注意が必要です。なお、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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グラフを見れば明らかなんですが、青い折れ線で示した財貨の国内企業物価上昇率が国際商品市況における原油価格の下落とともに大きく上昇率を低下させている一方で、企業向けサービス物価(SPPI)とコアSPPIは底堅く推移しており、消費増税の影響が一巡した今年2015年4月以降も、ほぼ+0.5%から+1.0%近くのレンジ内でプラスの上昇率を示しています。何度か指摘した通り、原油価格に連動して物価が下落する財貨の国内企業物価と人手不足を反映した人件費アップに連動する割合の高いサービス物価の違いが現れていると考えるべきです。
ただし、SPPIの上昇率にしても+1%に達しないくらいですので、消費者物価(CPI)の上昇率で2%を目指すインフレ目標達成のためには追加緩和の必要性が高く、今月末の「展望リポート」の見直しに合わせて何らかの金融政策変更が決定されるものと私は予想しています。そして同時に、米欧の中央銀行の動きも見逃せません。報道に接する限り、米国連邦準備制度理事会(FED)は今日から明日にかけての連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げ決定を見送る雰囲気ですが、イエレン議長は年内利上げの旗を降していませんし、少なくとも、今後の金融政策は引締めの方向にあることが明らかな一方で、先週10月22日の欧州中央銀行(ECB)の政策理事会では次回会合の12月3日には追加緩和策を決定することが事実上予告されています。こういった先進国中央銀行の政策動向も併せて考えれば、私は今月中に日銀が追加緩和を決定・実施する可能性は決して低くないと予想しています。

最後に、何ら参考までに、シンクタンクの最近のリポートから、日銀の追加緩和に言及した2点のリンクを以下に示しておきます。いずれも昨日10月26日に明らかにされたもので、第一生命経済研のリポートでは、鉱工業生産が市場の事前コンセンサスよりも大きな減産だと日銀が追加緩和を実施する可能性が高まると、また、ニッセイ基礎研のリポートでは、追加緩和時の相場について1か月で日経平均株価は2,000円高、対米ドル為替相場は10円円安と、それぞれ分析、というよりも主張しています。繰り返しになりますが、何ら参考まで。
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2015年10月26日 (月) 21:38:00

映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2」のテクノロジーはどこまで実現したか?

先週10月21日は、いわゆる「バック・トゥ・ザ・フューチャー・デイ」でした。すなわち、1989年に公開された映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2」の中で主人公のマーティーとドクがタイム・トラベルをした未来の日付として登場したのが、先週の2015年10月21日水曜日であり、「バック・トゥ・ザ・フューチャー・デイ」と呼ばれているそうです。これにちなんで、アドビ社ではソーシャルな発言数を基に、映画の中で登場した2015年の技術がどれだけ実現されているかを分析し、Adobe Digital Index research のサイトで以下のインフォグラフィックに取りまとめて10月16日に発表しています。

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取りあえず、いくつか紹介すると、モノのインターネット Internet of Things、タブレット端末、平面画像のテレビ、指紋認証などの個人識別の4点についてはA評価が下されています。ただ、自動車の進化は映画ほど進まず、ホバーボードとともにB評価となっていたりして、シカゴ・カブスのワールド・シリーズ制覇は別枠で考えるとしても、総合評価 Average はB+と下されています。こんなもんかという気もします。権威ある大学教授などの科学者に評価を依頼するんではなく、SNSなどにおけるソーシャルな発言数で評価を下そうという試みに、私は少し驚かされました。やや無理やりですが、経済評論のブログに分類しておきます。
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2015年10月25日 (日) 17:49:00

ウェザーニューズによる「第2回紅葉見頃予想発表」やいかに?

とても旧聞に属する話題ですが、10月16日にウェザーニューズから「第2回紅葉見頃予想発表」が明らかにされています。この発表に従えば、北日本の平野部は平年並みに見ごろを迎えますが、東ないし西日本では平野部ほど平年より遅い見ごろとなる予想となっています。東日本の山沿いでは平年並みに見ごろを迎える見込みで、すでに紅葉狩りを楽しめるスポットが増えていますし、特に、今シーズンは朝晩の冷え込みや十分な日照によって、全国的に色づきが鮮やかな紅葉を期待できそうだということです。下の画像はウェザーニューズのサイトからもみじといちょうの見ごろ予想マップを引用しています。

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2015年10月24日 (土) 10:07:00

今週の読書は経済書がなく小説中心に7冊ほど!

今週の読書は、図書館の予約の巡り合せのため、とうとう経済書がナシになってしまいました。歴史認識に関する教養書・新書や海外ミステリをはじめとする小説など、以下の通りの7冊です。

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まず、細谷雄一『歴史認識とは何か』(新潮選書) です。タイトルでは歴史観のようなものの解説ではないのかという見方もできますが、日露戦争から第2次世界大戦の終了くらいまでの外交した政治史を取りまとめた著作であり、政治や外交などの歴史の見方ではなく歴史そのものの記述の方が多いような気がしないでもありません。もっとも著者は慶応大学教授なんですが、外交史の専門家として第2次安倍内閣の安保法制懇メンバーであり、安保法案推進派であるという事実を頭の片隅にでも置きつつ読み進むべきであることはいうまでもありません。ただし、もちろんのこと、ゴリゴリに右派の論理を展開しているわけではなく、一例としては、p.190 あたりでアジア太平洋戦争がアジア諸国にとって帝国主義列強からの独立を早めた可能性を指摘する既存論文を引用するなど、随所に垣間見える、といった程度のものです。著者としては、私が嫌うようないわゆる「歴史修正主義」のような史観を展開するわけではなく、むしろ、序章 p.29 では歴史認識というパンドラの箱を開けるべきかどうかを疑問視する、あるいは、議論の埒外に置くことも選択肢となり得るような姿勢も見せています。第1次世界大戦後にアジアを代表する列強の一国として、人種差別撤廃が国際社会社会に受け入れられず、幕末の攘夷にも通じかねない欧米諸国に対する嫌悪感と、その裏返しにも見える韓国や中国に対する蔑視などが相まって、さらに、著者の主張に沿えばかなり偶然の要素もあって、無謀なアジア太平洋戦争に突き進んだということになるんですが、私の目から見て余りに偶然の要素に支えられた歴史観ではないかという気がします。戦後に米軍を中心とする占領軍が将来における日本初の戦争回避のために、戦前からの我が国のシステムを大きく変更・修正することに努力した理由について、何ら思考や考慮の対象に入れない著者の見方には私は大きな疑問を感じます。何らかの偶然により戦争が生じるのか、あるいは、死にもの狂いとまではいわないまでも、平和を維持するためには何らかの犠牲と努力が必要なのか、前者に立場に立とうとするように読める本書にはどこまで信頼感を置いていいのか、私のような後者の立場で歴史を見る人間も少なくないことを忘れるべきではありません。

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次に、関幸彦『恋する武士 闘う貴族』(山川出版社) です。驚くべきことに、出版社の本書のサイトを見ると売切れだそうです。それはともかく、著者は日大教授を務める歴史学者であり、専門は日本中世史だそうです。タイトルが2つあって第1部が恋する武士に、第2部で闘う貴族に、それぞれスポットが当てられています。第1部も第2部も各々3章から成り、平安後期、鎌倉期、南北朝から室町期の時代構成となっています。一般に、武士・貴族ともに行政官というか、ある意味で官僚であるとともに、武士は職能として戦に従事するのに対して、貴族は職能ではないものの、和歌のやり取りなどの文化的な行為とともに恋愛事情は武士よりも詳しい、と考えられがちな通念を本書ではひっくり返そうとする知的なお遊びといえるかも知れません。しかしながら、私のような専門外のエコノミストにも容易に想像されるんですが、武士が恋するケースと貴族が闘うケースでは、前者の方が圧倒的に頻度が高そうな気がしますし、本書でもそういった印象を受けました。女性に恋して和歌を送った武士はいっぱいいるでしょうし、鎌倉初期の静御前、巴御前などは人口に膾炙しています。しかし、闘う貴族といっても、私が聞いたことがあるのは本書で取り上げられている範囲で、鎌倉初期の大江広元、南北朝期の北畠顕家くらいのものです。その意味で、本書の試み、というか、知的なお遊びがどこまで成功しているかは読者の判断ですが、お遊びにしても私はやや無理があったような気がしています。

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次に、ジェフリー・ディーヴァー『ゴースト・スナイパー』『スキン・コレクター』(文藝春秋)です。いずれも、ニュー・ヨークを舞台とするリンカーン・ライムのシリーズなんですが、最近、『スキン・コレクター』が出版されたとの新聞広告を見て図書館に未所蔵書のリクエストをかけたところ、『スキン・コレクター』はシリーズ第11作なので、数が合わないと考えて確認すると、昨年のうちに前作のシリーズ第10作『ゴースト・スナイパー』が刊行されていたと知って、大急ぎで2冊とも読んだ次第です。世間からかなり遅れていることは自覚しつつも、ややカッコ悪いと思わないでもなかったところです。といういことで、シリーズ第10作『ゴースト・スナイパー』は原題が Kill Room となっていて、NIOS = National Intelligence and Operation Office なる架空の米国諜報機関のオペレーションを殺人罪で起訴しようとするNY州検事局の捜査にライムが協力する、というストーリーで、シリーズ第11作『スキン・コレクター』は原題も同じ Skin Collector で、シリーズ第1作の『ボーン・コレクター』になぞらえた連続殺人犯をライムが追う、というストーリーです。でも、『ボーン・コレクター』よりも以前の作品という意味では『ウォッチメイカー』との関連の方が重要です。もちろん、ディーヴァーのライム・シリーズですから、というか、キャサリン・ダンスのシリーズでも同じなんですが、一筋縄ではストーリーは進まず、最後に大きなどんでん返し = twist があります。ただ、ジェフリー・ディーヴァーの「どんでん返し」もシリーズ第10作を超えるとややワンパターン化してしまった気がしないでもありません。このあたりで、どんでん返しなしでストレートで終わるミステリを書いたりすれば、とても新鮮味あふれる作品になるかもしれません。そんなストレートなディーヴァーの作品も私は読んでみたい気がします。

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次に、ピエール・ルメートル『悲しみのイレーヌ』(文春文庫) です。昨年刊行されて、このブログで今年2015年1月11日付けの読書感想文で取り上げた『その女アレックス』がパリ警視庁のカミーユ・ヴェルーヴェン警部シリーズの第2作と紹介しましたが、そのシリーズ第1作です。日本での出版順に読んだ私としては、まだ第3作を読んでいないながら、オリジナルの出版順に読みたかった気がします。出版社で順序を入れ替えた意図を知りたいところです。表題に登場するイレーヌはヴェルーヴェン警部の夫人で、「悲しみの」で形容されているので理解できる通り、『アメリカン・サイコ』などの過去のミステリの見立て殺人を実行しているかに見える本書の連続殺人犯に殺害されます。『その女アレックス』と同様に、日本のミステリでは少し想像しがたいような凄惨な殺人方法には驚愕します。それから、先週10月17日の読書感想文のブログで岩城けいの『Masato』を取り上げた際に、前作のデビュー作である『さようなら、オレンジ』のメタ構造について少しだけ論じましたが、本書はもっとものすごいメタ構造になっています。以下、ネタバレっぽいので自己責任でお願いしますが、実は、本書の冒頭から過半を占める第1部は殺人犯が書き下ろした小説をヴェルーヴェン警部ほかのパリ警視庁などの関係者が読んでいるという設定であり、必ずしも事実関係を客観的に記述しているわけではありません。このメタ構造は私の目から見て大成功なんですが、別の評価を下す評論家や読書子もいるかもしれません。

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次に、大島真寿美『空に牡丹』(小学館) です。表題や上の画像に見える表紙のデザインなどから明らかな通り、空に浮かぶ牡丹の花とは花火を指しています。この小説も少しメタ構造っぽくなっていて、幕末から明治期を生きた花火好きの静助という名の男性の主人公の子孫が、この静助の人生や歴史的背景などを調べて書いたような体裁を取っています。舞台は江戸=東京からさほど遠くないながら、それなりの田舎町の丹賀宇多村、という設定です。主人公の静助は村の大地主である庄屋の子ながら妾腹の生まれであり、頭もよくて性格も温厚な嫡男が東京で上級学校に通って、その後も家の商売の関係で東京暮らしの方が地元に戻るよりも割合が高く、実質的な地元の庄屋的な取りまとめなどは静助の役割になっている、という設定です。しかし、地道に村役的な仕事はこなしつつも、静助は何人かの花火職人を取り込んで花火作りにも精を出し、先祖伝来の田んぼや地所を次々に手放して行く、というストーリー展開です。いかにも明治維新から明治時代の時代の大きな変わり目に没落していく大家族の物語という風なんですが、それが実は、時代の変わり目に洋物屋の商売で大儲けしながら、その後に商売が傾き事業の清算を迫られながらも、結局、花火だけは捨てられなかった、しかも、明治期の人柄のよさそうなおじいさんを主人公とする、「里山資本主義」的な時計の針を逆回しにするようなストーリーですから、お侍は出てこないながら時代小説的なほのぼの系の小説です。世知辛い現代生活から読書で一時の清涼感が得られるんではないでしょうか。

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最後に、大沼保昭『「歴史認識」とは何か』(中公新書) です。著者は東京大学名誉教授であり、市民運動との関わりも深く、1995年の戦後50年の村山談話の構想者の1人でもあります。なお、ジャーナリストの江川紹子さんを聞き手とするインタビューを取りまとめたものです。最初の細谷教授の歴史観とやや対象的な歴史観であり、私としてはコチラに親近感を覚えますが、本書の最後に江川さんが書いているように、本書などでいう歴史認識とか歴史観とは自分たちがどういう人間でありたいか、あるいは、日本をどういう国にしたいかという主体的なあり方論のようなものを基本にした、周辺諸国等とのお付き合いのあり方ではないかという気がします。エコノミストである私の歴史観とは違います。そして、本書などで展開される歴史観という場合、必ず戦争が関係します。ですから、私が考えるの難しい点が3点あり、第1に、振り返っている現時点と歴史的な当時の社会的・国際的な通念や常識というものがかなり違います。第2に、平時と戦時の常識が大きく異なります。平時に拳銃で人を殺せば殺人罪ですが、戦時には敵国の兵隊を殺せば勲章をもらえるかもしれなかったりします。第3に、現時点から振り返っている人々、あるいは、国の民主主義の成熟度が我が国と周辺諸国では必ずしも同じではありません。ですから、歴史認識や歴史観というのはとても難しいんですが、同じ客観的な出来事を観察していても、私のような左派からは右派の歴史認識は歴史修正主義と見えたり、はなはだしい場合は皇国史観と見えたりしますし、逆に右派から左派を見れば東京裁判史観だったり、自虐史観だったりするのかもしれません。そして、おそらく、あくまでおそらくなんですが、漸近的に真実、正義、あるいは、場合によっては快適とか美的なども含めて、より望ましい価値観に近づくべき方向が正しい歴史観なんだろうと私はプラクティカルに考えています。そして、そういった主体的な自己のあり方を確立しつつ、極めて京都的ではありますが、カギカッコ付きながら、「穏便な大人の対応」とか、本音と建前の使い分けとか、いろいろな工夫でお互いの不快感を増幅しないような付き合いを模索する、ということなんだろうと思います。自分でも、よく分かったような分からないような結論だという気はします。
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2015年10月23日 (金) 20:38:00

博報堂「各種行事に対するアジア人の意識/行動調査」やいかに?

やや旧聞に属する話題かもしれませんが、去る10月15日に博報堂から東京+アセアン5都市の生活行動比較調査を Vol.2 として、「各種行事に対するアジア人の意識/行動調査」の結果が公表されています。どうでもいいことかもしれませんが、Vol.1は「行列にならぶアジア人の意識/行動調査」として9月17日に公表されています。それはともかく、「各種行事に対するアジア人の意識/行動調査」の方の【調査結果のポイント】を博報堂のサイトから3点引用すると以下の通りです。

【調査結果のポイント】
  • 日本人は欧米由来の行事イベントの参加率がアセアン5都市を上回る。
    「クリスマス(68.2%)」「ハロウィン(14.8%)」
  • 日本人の欧米由来の行事イベント参加は、女性(特に20代)が牽引。
    特にハロウィンは、20代女性の約4割が参加。
  • 日本人は「家族での集まり」よりも「ケーキやお菓子」「ギフト」といった物質的行動が優先される。一方、アセアンは、「家族」優先。


1週間ほど先にハロウィンを控えて、今夜のエントリーは週末前の軽い話題として、博報堂のリポートから図表を引用しつつ簡単に紹介しておきたいと思います。

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まず、上のテーブルは博報堂のリポートから Q. この1年間で家族や友人などとお祝いした、または参加した行事はありますか? の回答結果を引用しています。クリスマスで50%を超えているのは日本だけで、また、比率がグッと下がりますが、ハロウィンも日本がトップを示しています。新年はどこともに高い比率となっており、日本でも2/3に上っていますが、もっと高い比率の国も少なくなく、また、母の日、父の日、子どもの日といった家族の行事についてはシンガポール、マレーシア、タイといった国々が高くなっています。バレンタインは大きな差は見られないものの、日本がもっとも高い参加比率を示しています。ということで、このリポートでは「日本人は欧米由来の行事イベントの参加率がアセアン5都市を上回る」と取りまとめています。

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次に、上の棒グラフは博報堂のリポートから 日本の性年代別のハロウィン参加率 の回答結果を引用しています。このブログでは省略していますが、日本のクリスマス参加率の同様のブラフもあり、リポートでは「日本人の欧米由来の行事参加は、女性(特に20代)が牽引」と取りまとめています。上のハロウィンは明らかですし、わが家も子供が小さいうちは青山通り商店街のハロウィン・イベントに参加していましたが、小さい子供がアンケートの対象に入れば、ずいぶんと印象は違ってくると思います。また、図表の引用は省略しますが、最初に引用した【調査結果のポイント】にあるように、日本人は「家族での集まり」よりも「ケーキやお菓子」「ギフト」といった物質的行動が優先される一方で、アジア各国では「家族」優先という見方ができるのかもしれません。

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ということで、
Happy Halloween!
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2015年10月22日 (木) 20:53:00

プロ野球ドラフト会議2015における阪神の指名やいかに?

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本日、プロ野球のドラフト会議が開催され、阪神タイガースは1位に明治大学の高山俊外野手をヤクルトと競合しつつ交渉権を確保しました。東京6大学の安打記録を塗り替えた好打者だそうです。2位も明治大学から坂本誠志郎捕手を指名しています。大学日本代表では主将だったそうです。我が家の上の倅の方は、なぜか、私より6大学野球については詳しかったりします。
下のテーブルはNPBのサイトから引用しています。

順位氏名ポジション所属
1位高山 俊外野手明治大学
2位坂本 誠志郎捕手明治大学
3位竹安 大知投手熊本ゴールデンラークス
4位望月 惇志投手横浜創学館
5位青柳 晃洋投手帝京大学
6位板山 祐太郎外野手亜細亜大学


来シーズンこそ優勝目指して、
がんばれタイガース!
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2015年10月21日 (水) 19:27:00

貿易収支はこのまま赤字が続くのか?

本日、財務省から9月の貿易統計が公表されています。ヘッドラインとなる輸出額は季節調整していない原系列の統計で前年同月比+0.6%増の6兆4174億円、輸入額は▲11.1%減の6兆5318億円、差引き貿易赤字が▲1145億円を記録しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

貿易収支、9月赤字1145億円 市場予想に反し赤字、対中輸出低迷
財務省が21日発表した9月の貿易統計(速報、通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は1145億円の赤字だった。QUICKが事前にまとめた市場予想(1000億円の黒字)に反し、6カ月連続で赤字となった。原油安に伴う輸入減や円安を支えとした輸出額の増加などで赤字幅は前年同月(9619億円)から約9割縮小した。ただ景気が減速する中国向け輸出が低迷し、対世界の輸出数量は3.9%低下。財務省は輸出を巡り「中国の動向は注視していかなければならない」と指摘した。
輸出額は0.6%増の6兆4174億円と、13カ月連続のプラスを保った。米国向けに乗用車の輸出が増えた。もっとも、輸出額の増加は円安が支えとなった面が大きい。輸出額の増減率は14年8月(1.3%減)以来の低水準。数量指数の低下幅は対中で5.7%、対米でも4.7%だった。
輸入額は11.1%減の6兆5318億円と、9カ月連続でマイナスとなった。原油価格の下落を主因に、中東地域からの原粗油などの輸入が減った。9月の原粗油の輸入額は4割超減り、減少は14カ月連続だった。
併せて発表した4-9月期の貿易収支は1兆3086億円の赤字だった。貿易赤字は半期ベースで9期連続。赤字幅は上半期で過去最大だった前年同期(5兆4585億円の赤字)から約8割減った。輸出額は5.2%増の37兆7590億円と、円安をテコに増勢が続く一方、世界全体の数量指数は1.7%低下。同指数は対中で4.4%、対米で2.5%下がった。輸入額は5.5%減の39兆676億円だった。


なかなかコンパクトに取りまとめられた記事だという気がします。次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

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引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、貿易黒字=輸出超過額が+1000億円、レンジで見ても▲1500億から+3215億円との結果が示されていましたから、貿易赤字を記録した9月の貿易統計はやや意外感をもって受け止められているんですが、ほぼ収支均衡ということで大きな違いはないようにも考えられます。まあ、貿易収支が赤字か黒字かで神経質になる市場参加者の心理は理解できなくもないんですが、マクロ経済を見るエコノミストとしては大差ないと受け止めています。決して縮小均衡というわけでもないんですが、輸出が新興国経済の景気停滞により伸び悩む一方で、輸入は国際商品市況の低迷で原油価格などが下落した結果、輸出入ともに伸び悩みないし減少となった結果、貿易収支が均衡近傍で推移していると考えています。ひょっとしたら、新興国を含めて世界景気が本格的な回復軌道に戻れば、我が国の輸出が所得効果で伸びる一方で、国際商品市況も中国などの新興国経済が回復に向かえば上昇することから我が国の輸入額も増加するのかもしれません。ただ、国際商品市況の動向は不透明です。

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上のグラフはいつもの輸出の推移をプロットしています。上のパネルは季節調整していない原系列の輸出額の前年同期比伸び率を数量指数と価格指数で寄与度分解しており、まん中のパネルはその輸出数量指数の前年同期比とOECD先行指数の前年同期比を並べてプロットしていて、一番下のパネルは本邦初公開かもしれませんが、OECD先行指数のうちの中国の国別指数の前年同月比と我が国から中国への輸出の終了指数の前年同月比を並べています。ただし、まん中と一番下のパネルのOECD先行指数はともに1か月のリードを取っていますし、左右のスケールが異なる点は注意が必要です。ということで、新たなグラフもあってグラフのやや解説が長くなりましたが、我が国からの輸出については円安による価格効果が増加の方向で下支えしつつも、中国をはじめとする新興国を含む世界経済の低迷に伴う所得効果により伸び悩み、ないし、数量が減少を示していると私は受け止めています。今日発表の貿易統計に見る輸出の推移は、明らかに、世界経済の停滞ないしは海外需要の低迷を裏付ける結果となっていますが、倍国経済はハッキリと回復を示していますし、欧州経済も欧州中央銀行(ECB)の量的緩和政策などに支えられて最悪期を脱しており、中国経済についても預金準備率の引下げをはじめとする金融政策の発動により底打ちの兆しが見え始めていることなどから、我が国の輸出に対する所得効果も上向く可能性が出始めていることも確かです。もちろん、世界経済、特に新興国経済の持ち直しとともに国際商品市況は上昇する可能性が残るものの、ESPフォーキャストでまだ「数年内に黒字転換しない」が過半数を占めている貿易収支なんですが、当面は収支均衡の近傍で推移すると考えられるものの、需要からの所得効果だけを考慮すると、1-2年のうちに黒字基調に戻る可能性があるんではないかと私は予想しています。

いずれにせよ、我が国の貿易収支は急速に赤字幅を縮小し均衡に向かい、当面は棒s木収支均衡近傍で推移するとの見方がエコノミストの間でも多くなっているように感じています。貿易だけでなく経常収支を考える必要がありますが、4-6月期にマイナス寄与だった外需は7-9月期にはほぼゼロとなるんではないかと私は予想しています。
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2015年10月20日 (火) 21:51:00

帝国データバンク「中国の成長鈍化に対する企業の影響調査」の結果やいかに?

このブログでは9月以降に2回ほどチャイナリスクに関する情報を取り上げました。帝国データバンクのケース・スタディと東京商工リサーチのいくつかのデータを含むリポートでした。今夜は帝国データバンク「中国の成長鈍化に対する企業の影響調査」を取り上げたいと思います。企業向けのアンケート調査結果であり、10月15日に公表されています。まず、帝国データバンクのサイトから調査結果を4点引用すると以下の通りです。

調査結果
  1. 中国の成長鈍化により、企業の25.4%が自社の業績に悪影響を受けると見込む。特に、中国への進出が進む『製造』『卸売』のほか、物流を担う『運輸・倉庫』でも3割台となっている。
  2. 中国の成長鈍化で、企業全体の2割が売り上げの減少、1割で利益の減少に直面すると認識している。悪影響を受けると考える企業でみると、「売り上げが減少」が75.8%、「利益が減少」が42.9%。さらに、「中期的な経営計画の見直し」を考える企業も12.8%に上る。
  3. 中国と経済活動を行うときのリスク、「品質管理が困難」が51.0%でトップ。以下、「安全管理意識の低さ」「反日教育」「対日抗議行動」「不透明な政策運営」が続く。すでに、中国経済とのかかわりがある企業では、「賃金水準の上昇」を大きなリスクと捉えている。
  4. 中国との経済活動で日本企業は次の7つのリスクに直面する可能性。1)対日感情・安全保障リスク、2)恣意的な法律運用リスク、3)コスト上昇リスク、4)契約・商習慣リスク、5)株式・不動産バブルリスク、6)品質・安全管理リスク、7)雇用リスク。


もちろん、pdfの全文リポートもアップされていますので、いくつか図表を引用しつつ簡単に紹介したいと思います。

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まず、上の円グラフはリポートから 中国の成長鈍化による業績への影響 を引用しています。中国の成長鈍化により、自社の業績にどのような影響があるか尋ねた結果なんですが、私の予想に反して、「影響はない」が5割弱で最も多くなっています。それなら、現時点での景気の減速感や閉塞感は何だろうかという気がしなくもありません。やや不思議です。また、「悪影響がある」と回答した企業は 25.4%にとどまっており、それでも、企業の4社に1社が中国の成長鈍化で自社の業績への悪影響を見込んでいることになります。他方、「好影響がある」との回答も1.1%ありました。

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次に、上の棒グラフはリポートから引用しており、規模・業界別で 中国の成長鈍化により業績に「悪影響がある」割合 を示しています。当然ながら、規模が大きいほど中国を含むグローバル市場で事業を展開しているため影響が大きくなっており、業界別でもグラフの通りで、製造、運輸・倉庫、卸売などで高く、いずれも30%超の企業が業績悪化への懸念を持っています。中国に進出している企業は製造業が全体の42.9%を占めるなか、チャイナリスクによる倒産件数のうち卸売業と製造業が86.5%を占めている

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次に、上の棒グラフはリポートから中国の成長鈍化の 具体的影響 を複数回答で質問したうちの上位5番目までの結果です。想定の範囲内というか、大方の想像通りなんですが、トップの売上げは中国の国内市場をターゲットとしている企業に当てはまり、2番めの利益は売上げ減はもちろんながら、コストアップも含めれば中国人を雇用して輸出に向ける製造業などについても当てはまるんではないかと考えています。4番目に中期的な経営計画が上げられていますが、単年度やせめて来年度くらいまでの短期の業績だけでなく、中長期の経営戦略までドップリと中国経済に依存している企業があるのかもしれません。

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最後に、上の画像はリポートから 日本企業が直面する7つのリスク を引用しています。中国人の雇用を含めて、中国での経済活動上のリスクについてアンケート調査から、品質管理が51%に達してトップとなったほか、安全管理意識が49.0%、反日教育が40.2%が40%を越え、対日抗議行動、不透明な政策運営、賃金水準の上昇、わいろの横行もこの順で30%超となっており、これらの結果を主成分解により因子を抽出し直交バリマックス回転を行った因子分析の結果が上の画像だそうです。

最後に、日本企業は業績不振を往々にして他社あるいは他者に責任転嫁する傾向もまま見られるんですが、10月15日付けのエントリーでも私が主張したように、少なくとも、中国における賃金の上昇は、開発経済学的にはルイス的な転換点を超えた、ということを意味しており、経済開発の進展の観点からはご同慶の至りだと私は考えています。ですから、企業として新たな経済社会環境に対応すべき面が大いにあると私は考えないでもありません。付け加えておきたいと思います。
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2015年10月19日 (月) 21:26:00

米国大統領選挙の民主党と共和党の予備選の現況やいかに?

先週に米国大統領選、というか、大統領予備選挙への出馬予定候補のTVディベートがあり、民主とのクリントン上院議員がややリード、などと報じられていたところ、とても旧聞に属する話題なんですが、私がよく参照している米国の世論調査機関であるピュー・リサーチ・センターから10月2日に "Contrasting Partisan Perspectives on Campaign 2016" と題する調査結果が公表されています。pdfの全文リポートもアップされています。我が国の外交パートナー、貿易パートナーとして重要な位置を占め、世界でもっとも重要な経済大国でもある米国の大統領選挙ですから、とても気にかかるところです。図表を引用しつつ、簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、上のグラフはピュー・リサーチのサイトから Economy Remains Top Campaign Issue を引用しています。大統領選の投票者の中で、やっぱり、経済を "very important" と考える人の比率がもっとも高く、83%に達しています。以下、上のグラフの通りであり、ヘルスケア73%、テロ対策71%、連邦政府の財政赤字68%、外交政策64%、移民問題59%、環境問題55%とここまでが過半数を超え、妊娠中絶は41%にとどまっています。

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ただ、政党別には政策のプライオリティが異なっています。当然です。上のグラフはピュー・リサーチのサイトから Wide Partisan Gaps Over Importance of Environment, Deficit, Health Care を引用しています。共和党支持者が民主党支持者より重要と考える割合の差が大きい分野は連邦財政、テロ対策、民主党の方が共和党を上回って差が大きいのは環境とヘルスケアです。経済問題はいずれの政党支持者からも重要と考えられているんですが、どちらかというと、共和党の方でより重要と見なされているようです。特に、環境問題、連邦財政赤字、ヘルスケア、テロ対策では両党の差が大きい、との結果が示されています。

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次に注目の共和党の候補者への支持ですが、上のグラフはピュー・リサーチのサイトから Support for the GOP Candidates Varies by Income, Education, Gender, Religiosity を引用しています。見れば明らかなんですが、大胆な発言で注目を集めているトランプ候補は、女性より男性の支持が高く、学歴や年収が低いほど支持の割合が高くなっているのが見て取れます。高所得者の支持がありそうな気もするんですが、ちょっと見の印象とは逆かも知れません。

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次に、民主党の候補者への支持について、上のグラフはピュー・リサーチのサイトから Support for Democratic Candidates Varies by Age, Race を引用しています。ヒラリー・クリントン上院議員がトップを走っているわけですが、幅広い支持を集めている中で、やっぱり、男性より女性からの支持が多く、白人より非白人が支持し、年齢層の高い50歳以上層の支持が厚い、という結果が示されています。

まあ、大統領選の前の二大政党の予備選、しかも始まったばかりの段階のファースト・ショットですから、この先のキャンペーン次第で大きく変化しそうな気もしますが、私もとても興味を持ってウォッチしています。一応、無理やりながら「経済評論の日記」に分類しておきます。
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2015年10月18日 (日) 17:28:00

週末ジャズは木住野佳子「アンソロジー」を聞く!

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週末ジャズはピアニストの木住野佳子の「アンソロジー」です。デビュー20年を記念して、ファン投票によって選ばれた代表曲を再録音したアルバムだそうです。誠に残念ながら、私はそれほどこのピアニストのファンではありませんので、ファン投票には参加しませんでした。というのは冗談としても、そのファン投票による収録曲は以下の11曲となっています。

  1. Manhattan Daylight
  2. Fairy Tale
  3. Vera Cruz
  4. Waltz for Debby
  5. Desert Island
  6. Danny Boy
  7. Beautiful Love
  8. Tenderness
  9. Night and Day
  10. Jenga
  11. Prayer


まあ、ゆったりとイージーリスニングのように、BGMとして聞く分にはいいんではないでしょうか。ストリングスが随所にピアノ・トリオにかぶって入っています。私の好きな緊張感あふれるジャズではないかもしれません。なお、下の動画は YouTube にアップされており、南青山のブルー・ノートで12月に行う東京公演の予告編だそうです。

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2015年10月17日 (土) 10:04:00

今週の読書は『インフラ・ストック効果』ほか小説も新書も読んで計5冊!

今週の読書は国土交通省の公認本『インフラ・ストック効果』ほか、フィクションの小説や当然ながらノンフィクションの新書も含めて計5冊、以下の通りです。

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まず、インフラ政策研究会『インフラ・ストック効果』(中央公論新社) です。著者の団体はほぼ国土交通省そのものと見なして差し支えないような気がします。ということで、インフラに関してその建設や施行の実施を担当する官庁の公式見解と考えて読み進むべきです。逆から見て、ダマされないようにする必要もあります。英国ケンブリッジ大学のロビンソン教授の有名な言葉に、「経済学を学ぶ目的は、経済の問題に対して一連の出来合いの答えを得るためではなく、どうしたらエコノミストに騙されないかを学ぶことである」 "The purpose of studying economics is not to acquire a set of ready-made answers to economic questions, but to learn how to avoid being deceived by economists" というのがあります。本書とか、あるいは、政府の経済政策について解説するこのブログの記事を読む場合、こういった心がけが必要かもしれません。というのは冗談としても、標準的なマクロ経済学に関する解説もあり、インフラに関して、短期的なフローの需要面だけでなく、中長期的なストックとしての供給面に大きな焦点を当てた解説です。もちろん、市場がすべての経済問題を解決してくれるわけではありませんが、逆に、すべてのインフラが公共財であるともいえません。公共財の範囲には入らないようなムダな公共事業が存在するのも事実でしょう。また、本書が主張するように、一方的にマーケットインでインフラを整備するのが常に正しいとも限らず、政策的に市場の均衡点を歪める必要も否定できません。最後に、「安心安全のインフラ」が途中からまったく忘れ去られているのは、どうしたことなんでしょうか?

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次に、保坂渉/池谷孝司『子どもの貧困連鎖』(新潮文庫) です。著者は2人とも共同通信のジャーナリストです。通信社から配信されて地方紙などに掲載された取材結果を2012年に単行本化した内容を今年2015年に文庫本で出版しています。豊かな生活を享受できる経済大国ニッポンとはとても思えないような子供の貧困生活が明らかにされます。いくつものアルバイトをかけ持ちしても生活費の足りない定時制高校生の貧困状態の取材から始まって、中学校の給食が財源不足の一言で廃止されたり、母子家庭や父子家庭の不安定かつ貧困な生活、保健室でしかまともな食事を得られない貧困家庭の子供、そして、虐待に等しい扱いしか受けられない子供、一貫して観察できる事実は子供の貧困とはすなわち親の責任であり、親の所得が少なかったり不安定だったりするために子供が貧困に陥っているという事実です。そして、子供の「居場所」のひとつである学校や保育園などでも「財源不足」を錦の御旗に子供に対する予算が大きく削られています。本書では取材の結果のケーススタディしかなく、統計的なエビデンスは出て来ませんが、私の知る限り、特に日本では教育の家庭負担が大きく、米国との比較はともかく、少なく見積もっても欧州諸国と比較してGDP比で1%は少ないと記憶しています。実額に換算すれば5兆円あまりです。これを高齢者・引退世代への手厚い社会保障経費を削減することにより捻出することができません。投票行動におけるシルバー・デモクラシーのためです。そして、私は2009-12年の3年間の民主党政権時に、安全保障政策や外交政策などでいろいろと疑問を感じないでもなかったんですが、少なくとも「子ども手当」だけは高く評価しています。このブログでも、学術論文としても、その旨は明らかにしてきたつもりです。本書を読めば、シルバー・デモクラシーを乗り越えて、子供や家庭へ振り向ける社会保障財源の確保が何としても必要だということを実感します。

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次に、大塚柳太郎『ヒトはこうして増えてきた』(新潮選書) です。著者は私でも名前を知っているくらいの著名な生物学者であり、20万年前に5000人から始まったホモ・サピエンスの生物としての歴史を最近時点まで跡付けています。7万年前の50万人の時代のいわゆる Out of Africa から始まった移動、さらに定住と農耕を開始した1万2000年前には500万人に達し、5500年前の文明に到達した時代に1000万人を数え、18世紀半ばの人口転換と産業革命の時代に7億2000万人の人口が、とうとう今年2015年に72億人に達したものの、先進国では人口減少の時代に入りつつある、という長い長い歴史をひも解いています。基本は19世紀初めのマルサス『人口論』まで、食料生産が人口増加の最大の制約条件であったことは確かなんでしょうが、その後、20世紀における農業上の技術革新、いわゆる「緑の革命」に支えられて人口が爆発的に増加し始めた一方で、本書でも原因は不明とされつつも、我が国をはじめとして、移民受入れの少ない先進国において人口減少の初期段階を経験しようとしています。最後の点に関しては、p.197 の図5-1のイングランドとウェールズにおける人口転換の模式図がとても示唆に富んでいると私は受け止めました。また、別の視点から、社会科学的な人口の歴史、すなわち、マルクス主義的な原始共産制、奴隷制、封建制、資本制の発展形態についても、こういった明示的な表現ではないものの、きちんと踏まえられており、生産に余裕ができた段階で交易や戦争が始まるとの正しい認識が示されています。

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次に、岩城けい『Masato』(集英社) です。太宰賞を受賞したデビュー作『さようなら、オレンジ』に続く第2作です。なお、前作のデビュー作については2013年11月22日付けのこのブログのエントリーで取り上げており、メタ構造を批判する三浦しをんに対抗しつつ、何と、今年もノーベル文学賞を逃した村上春樹の『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』や経済書のダニエル・カーネマン『ファスト&スロー』上下などと並べて、「今年のマイ・ベストに近い」と私は絶賛しています。本作についても、著者の住むオーストラリアを舞台にして、日本の自動車会社の駐在員の男の子を主人公に、とても力強く前向きなストーリーを編み出しています。英語を理解できずに小学校でいじめられつつもサッカーに居場所を見つける少年が、両親のいさかいや愛犬の死に悲しみ悩みつつも力強く人生を歩み続けます。愛する我が子が日本人でなくなってゆく一方で、現地に対応しきれない母親の哀しみ、また、ある意味で、現地に適応しすぎて会社を辞めて中古車店をオーストラリアで開業しようと考える父親、高校受験で早々に帰国してしまった姉、さらに日本から連れてきた柴犬の家族の物語を少年の目から描き出しています。そして、最後は少年は秀でも指折りの名門ハイスクールに入学するサクセス・ストーリーとして完結しています。私自身も独身時代にチリで経済アタッシェとして大使館勤務を、結婚して2人の倅が幼稚園児のころにジャカルタでODAの専門家を、それぞれ経験していますが、異文化に囲まれて周囲と十分なコミュニケーションを図れない外国での駐在員生活、さらに日本とは大きく異なるシステムの下での子供の教育、いろいろとネガティブな要素がいっぱいある環境ながら、力強くたくましく前向きに生き、そして母親から自立しようともがく少年の青春前期、すなわち、本格的な異性との恋愛を経験する前の段階の青春物語です。とても読後感のさわやかな傑作小説です。

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最後に、中野晃一『右傾化する日本政治』(岩波新書) です。実に、私が普段から感じて恐れていることについて、政治学を専門とする上智大学教授の著者が正面から取り上げています。冒頭に振り子の図解があって、現在の日本政治の右傾化は振り子が右に振れているんではなく、そもそも振り子の支点が右にシフトしているのであると解き明かしています。もちろん、日本単独の政治現象ではなく、1980年前後に米英で成立した英国サッチャー内閣、米国レーガン政権といったニュー・ライト=新右派政権の台頭があり、少し遅れて日本でも中曽根内閣が政権の座に就いて、国鉄などの民営化を進めて労働組合運動の弱体化につながったのは歴史的事実です。そして、日本の新右派の政治的な目標は2点あり、いわゆる自主憲法の制定ないし現憲法のカギカッコ付きの「改正」、そして、歴史修正主義ないし歴史観や道徳観の国家主義化です。当然ながら、マルクス主義的な上部構造と下部構造ではないんですが、経済においても1980年前後から米国もフリードマン教授らの右派的な経済学がケインズ経済学を押しのける形で政策に関与し始めます。今世紀に入ってからは、政府が経済や市場に関与する部分が特に小さくなり、規制緩和などで企業が自由に利潤を追求し極大化した上で、国民や労働者への分配が大きく滞る、といった現象が見られるのは衆知の通りです。その上で、本書を私が高く評価するのは、正しく講座派的な視点で政治経済を分析している点です。すなわち、戦後の吉田ドクトリン以来、安全保障の観点からは大きく米国に従属し、日本国内で軍事費を最小化した上で経済発展を目指した路線の上で、例えば、今年の集団的自衛権の議論としても、単に日本が戦争をできる国に変えたわけではなく、米国に従属し米国を補完するする形で戦争を出来るように集団的自衛権を設定したと、本書では正しく指摘されています。この対米従属の観点を忘れて、独立した軍事大国としての集団的自衛権に関する労農派的な議論は、私はどこまで有効なのか疑問に受け止めるくらいです。私の専門外ながら、とても重要なテーマを論じている良書だと思います。
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2015年10月16日 (金) 22:08:00

「2015年 スポーツマーケティング基礎調査」やいかに?

やや旧聞に属する話題かもしれませんが、先週10月9日にマクロミルと三菱UFJリサーチ&コンサルティングの共同調査による「2015年 スポーツマーケティング基礎調査」の速報版が公表されています。まず、リポートから【調査結果概要】を何と9点も引用すると以下の通りです。

【調査結果概要】
  • スポーツ参加市場規模は約2.5兆円に縮小。「観戦」「施設利用・会費」市場の減少による。
  • スタジアム観戦の支出額: 年間32,408円で、昨年より13.4%減。
  • スポーツ関連メディア市場は2,475億円で、昨年より6.6%減。
  • 最も好きなスポーツは野球。テニス、バレーボールの人気が上昇。
  • スポーツブランドでは、アディダス、ナイキ、プーマなどの海外ブランドが人気。
  • 好きなスポーツ選手は12年連続でイチロー選手が1位。テニスの錦織選手が2位に。
  • プロ野球ファン人口は2,998万人に減少。サッカー日本代表のファンは3,222万人で減少傾向続く。
  • プロ野球でファン人口を伸ばしている球団では女性ファンが増加。
  • 自分でやるのは、「健康・体力作りによい」、「年齢に関わらない」、「身近な場所でできる」、「一人でできる」といったスポーツが人気。


この【調査結果概要】だけで終わってもいいんですが、スポーツの秋にこのブログでも毎年フォローしている調査ですので、今年もリポートからいくつか図表を引用しつつ、私の興味に従って簡単に紹介しておきたいと思います。ただし、今年の調査期間は9月10-11日でしたので、ラグビーのワールドカップのある種熱狂的な興奮はまだ反映されていないようです。

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まず、エコノミストとしての注目点で、リポート p.5 から 図表3. スポーツ参加市場規模 を引用しています。最初に引用した【調査結果概要】の初めから3点目までにある通り、人口動態とどこまで関係しているか定かではないものの、スポーツ関連市場はややジリ貧だという気がします。オリンピックやサッカーのワールドカップなどのメジャーな世界大会が開催されなかったり、テニスの錦織選手が昨年ほど活躍していない影響もなくはないんでしょうが、実際にスポーツに参加する市場も、スタジアム観戦も、メディアもそれぞれに去年から縮小しています。また、もっとも好きなスポーツとしては昨年に続いて野球が上げられており、2位にサッカー、3位にテニス、4位にウォーキング、5位にバレーボールが入っており、スポーツブランドのトップ5はアディダス、ナイキ、アシックス、プーマ、ミズノの順となっています。どうでもいいことながら、私もアディダスは特にシューズが好きなんですが、全般的にはミズノやデサントといった国産ブランドを愛用しています。ただ、水泳については、英国ブランドであるスピードのスイムウェアやゴーグルなども人気ではなかろうかと受け止めています。

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次に、プロ野球ファンとしての注目点で、リポート p.9 から 図表9. 日本のプロ野球、サッカー日本代表、なでしこジャパン、Jリーグチームのファン人口の推移 を引用しています。いずれもここ数年は右肩下がりの傾向を示していたりします。そして、このグラフの直後に、図表10. 球団別プロ野球ファン人口推計 のテーブルがあり、私がこの調査を重視しているのは、このプロ野球ファンの推計が正確だからといえますが、我が阪神タイガースが648万人でトップ、続いて、読売ジャイアンツが僅差の634万人、大きく引き離された3番目が福岡ソフトバンクホークスの313万人、4番目に「カープ女子」も注目された広島東洋カープ262万人、そして、北海道日本ハムファイターズが230万人の5球団でもってトップ5となっています。

来年こそ日本でもっとも多いファンの熱い期待を背負って、
がんばれタイガース!
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2015年10月15日 (木) 19:26:00

東京商工リサーチ「『チャイナリスク』関連倒産調査」の結果やいかに?

去る9月16日付けのエントリーにおいて、帝国データバンクの8月の「全国企業倒産集計」に付属している「日本企業に迫るチャイナリスクの脅威」と題する別紙を紹介しましたが、先週10月8日付けで、今度は東京商工リサーチから「データを読む」のコラムのひとつの記事として「『チャイナリスク』関連倒産調査」と題する調査結果が公表されています。先に取り上げた帝国データバンクのフォローの意味でも、図表を引用しつつ簡単に紹介しておきたいと思います。

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まず、上のグラフはリポートから チャイナリスク関連倒産月次推移 を引用しています。見れば明らかだと思いますが、最近、チャイナリスクが影響した倒産は大きく増加しており、2015年度上半期で43件(前年同期30件)発生しており、特に年度明けの4月以降に急増し、直近の9月は調査を開始してから最多の11件を記録したため、今年度上半期の負債総額は2,117億2,000万円に達し、経営破綻(倒産+実質破綻)は52件(前年同期30件)発生している、などとリポートされています。

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次に、上のグラフはリポートから チャイナリスク関連 要因別倒産状況 (4-9月) を引用しています。要因別では、さすがに、前年同期に6件発生した反日問題の発生はなかったものの、最多はコスト高の33件で、全体の76.7%を占めると報告されています。中国市場の安価な製造コストと豊富な労働力の魅力に進出した企業も多かったと思うんですが、コスト高の倒産が前年同期の17件からほぼ倍増し、負債総額は3倍に上っており、その他、労使問題、売掛金回収難、中国景気減速は各1件の増加となっているとリポートされています。コスト高の部分集合である賃金の上昇については、開発経済学的にはルイス的な転換点を超えた、ということを意味しており、経済開発の進展の観点からはご同慶の至りだと私は考えています。ですから、社会主義に基づく中央指令型経済の中国政府に賃金引下げを要求するのではなく、冷たい態度かもしれませんが、企業として新たな経済社会環境に対応すべき面が大いにあると私は考えないでもありません。

グラフはありませんが、産業別・業種別には卸売業の増加が目立つとリポートでは指摘しており、大型倒産もいくつか発生している上に、「4月以降に合計9件発生している実質破綻の企業が今後、破産へ移行することが予想され、チャイナリスク関連倒産はさらに増加するとみられる。小売業は2件(前年同期0件)だったが、中国の景気減速に伴い訪日中国人が減少した場合、販売不振による倒産を押し上げる可能性もある。」と結論しています。帝国データバンクのケーススタディとともに、今回の東京商工リサーチのデータも興味深いと受け止めています。
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2015年10月14日 (水) 19:38:00

マイナス幅を拡大する企業物価をどう考えるか?

本日、日銀から9月の企業物価指数(PPI)が公表されています。ヘッドラインの国内物価上昇率は前年同月比で▲3.9%を記録しました。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

9月の企業物価指数、3.9%下落 下げ幅、09年11月以来の大きさ
日銀が14日発表した9月の国内企業物価指数(2010年=100)は102.2で、前年同月比3.9%下落した。市場予想の中心は3.9%下落だった。原油やガスなどの国際商品価格の下落を受け、マイナス幅は8月(3.6%下落)から拡大し、2009年11月以来、5年10カ月ぶりの大きさとなった。前月比では0.5%下落と4カ月連続でマイナスとなった。
前月比で見ると、下落の最も大きな要因となったのは「電力・都市ガス・水道」。液化天然ガス(LNG)の価格下落を背景に、産業用の電力料金などが下がった。原油安の影響で石油・石炭製品や化学製品も下げた。国際市況の低迷で鉄鋼や非鉄金属も下落した。
企業物価指数は出荷や卸売り段階で取引される製品の価格水準を示す。公表している814品目のうち、前年同月比で上昇したのは300品目、下落は383品目となった。下落品目と上昇品目の差は8月から拡大した。
円ベースの輸出物価は前年比で1.2%下落した。下落は1年4カ月ぶり。輸入物価は15.5%下落。9カ月連続の下落となった。


いつもながら、よく取りまとめられた記事だという気がします。次に、企業物価(PPI)上昇率のグラフは下の通りです。上のパネルは国内物価、輸出物価、輸入物価別の、下のパネルは需要段階別の、それぞれの上昇率をプロットしています。いずれも前年同月比上昇率で、影をつけた部分は、景気後退期を示しています。

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ヘッドラインの国内物価上昇率は、今年4月統計で昨年の消費増税の影響が一巡して▲2.1%を記録してから、月を追うごとに下落幅を拡大して、5月▲2.2%、6月▲2.4%、7月▲3.1%、8月▲3.6%から、とうとう最新統計である9月には▲3.9%になっています。とはいっても、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスとピッタリ一致していますので、マーケットにはすでに織込み済みかもしれませんが、それにしても下落幅が大きいので私のような気弱なエコノミストにはちょっとショックだったりします。もちろん、国際商品市況における石油や金属などの価格下落に伴う物価低迷であり、さらに国際商品市況の下落の背景には中国をはじめとする新興国の景気の強烈な減速があるわけで、米国の連邦準備制度理事会(FED)のイエレン議長が何度か年内利上げに言及する中で、日銀がどこまで追加緩和を実施すべきかは議論のあるところかもしれませんし、物価の現在の傾向はほぼ年内に底打ちすると見込んでいるエコノミストもいますが、少なくとも昨日10月13日に日経センターから公表されたESPフォーキャスト10月調査結果によれば、次回の金融政策の変更の予想は、緩和が26名と前月の22名から増加した一方で、引締めは13名と前月の16名から減少しており、緩和の時期としては2015年10月ころが18名と一番多くなっているのも事実です。政府の月例経済報告でも総括判断が半ノッチ引き下げられていることから、日銀も政府と同じように景気判断を引き下げる可能性が十分あり、10月末の「展望リポート」見直しの際に追加緩和が実施されるものと、私も多数派のエコノミストと同じ見方をしています。
ただし、海外エコノミストの見方は少し違っている可能性があります。すなわち、同じく昨日10月13日に公表されたドイツの ZEW Indicator of Economic Sentiment とともに明らかにされている ZEW Financial Market Survey の10月調査結果を見ていると、ユーロ圏欧州・米国・日本・英国と並べてある短期金利 Short-term interest rates の先行き見通しについて、欧州と米国では上昇 increase の予想が減少しているのに対して、日本では大多数のエコノミストが不変 no change の96%、上昇がわずかに3%と、いずれも前月調査結果と同じでありながら、下落 decrease が2%から1%に減少しています。ごくわずかな差ながら、内外のエコノミストの日銀の金融政策の先行き予想に対する見方が少し違っているのが目につきました。海外のエコノミストの見方については、私にはにわかに理解できない点もありますが、参考までメモしておきたいと思います。
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2015年10月13日 (火) 21:38:00

9月の消費者態度指数の悪化は雇用や賃金に由来するのか?

本日、内閣府から9月の消費者態度指数が公表されています。一般世帯の消費者態度指数は前月から▲1.1ポイント低下して40.6を記録しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

9月の消費者態度指数、1.1ポイント低下の40.6 判断は据え置き
内閣府が13日発表した9月の消費動向調査によると、消費者心理を示す一般世帯の消費者態度指数(季節調整値)は前月比1.1ポイント低下の40.6だった。「暮らし向き」や「耐久消費財の買い時判断」など4つの意識指標が全て低下し、2カ月ぶりの低下となった。8月下旬以降に株式相場が急落したことが消費者の心理を落ち込ませた。
方向感のない動きが続いていることから、内閣府は消費者心理の基調判断を「足踏みがみられる」に据え置いた。
意識指標では「暮らし向き」が1.3ポイント低下したほか、「雇用環境」も1.4ポイント低下した。株価下落により「資産価値」も3.0ポイント低下した。
1年後の物価見通しについて「上昇する」と答えた割合(原数値)は前月から0.8ポイント上昇し、86.3だった。
調査基準日は9月15日。全国8400世帯が対象で、有効回答数は5510世帯(回答率は65.6%)だった。


いつもながら、簡潔によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、消費者態度指数のグラフは以下の通りです。ピンクで示したやや薄い折れ線は訪問調査で実施され、最近時点のより濃い赤の折れ線は郵送調査で実施されています。また、影をつけた部分はいずれも景気後退期です。

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消費者態度指数を構成する各消費者意識指標のコンポーネントを前月差で見ると、雇用環境が▲1.4ポイント低下し44.9、暮らし向きが▲1.3ポイント低下し38.8、耐久消費財の買い時判断が▲1.2ポイント低下し39.1、収入の増え方が▲0.5ポイント低下し39.4と、すべてのコンポーネントがマイナスに振れています。7月には▲1.4ポイント低下、8月には逆に+1.4ポイント上昇、そして、直近の9月には▲1.1ポイントの低下と、ならしてみてほぼ横ばい圏内の動きながら、引用した記事にもある通り、統計作成官庁である内閣府では基調判断は「足踏み」で据え置いています。基本的には、消費者態度指数のコンポーネントのうちでも雇用や暮らし向きが特に前月からのマイナス幅が大きくなっており、少なくとも8月から9月にかけては雇用や賃金発のマインド悪化の可能性が考えられます。今夏のボーナスをはじめとして、賃上げや所得の改善が不十分であるためにマインドが低迷しているのではないかと私は危惧しています。
私は公務員であると同時にエコノミストなので、ややどうかという気もするんですが、政労使会議が賃上げに一定の効果があったという見方なのかどうか、本日、総理大臣官邸で第19回日本経済再生本部が開催され、未来への投資を拡大するために官民対話が設置されたそうです。賃上げの次は、政府から企業に投資拡大を要請するんでしょうか? そこまで我が国企業人のアニマル・スピリットは冷え固まっているんでしょうか?

なお、広く報道されている通り、日本時間の昨夜、ノーベル経済学賞はアンガス・ディートン教授に授与されると発表されています。昨夜は体調が思わしくなくて早寝してしまいましたので、改めて取り上げておきたいと思います。いわゆる AIDS = Almost Ideal Demand System についてミュールバウアー教授との共著で発表した American Economic Review の論文へのリンクは以下の通りです。なお、同じ2人の著者による消費理論に関する書籍もあるハズです。それから、近著では邦訳された『大脱出』(みすず書房)があり、私も読んで今年2015年2月8日付けのエントリーで読書感想文を公開しています。ただ、開発経済学的に考えて、インセンティブを適切に活用すれば、先進国からの開発援助なしに途上国の自律的な経済発展や自立が進む、といった趣旨の『大脱出』の考えには同意できない旨も明記してあります。

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2015年10月12日 (月) 17:15:00

クライマックス・シリーズ第3戦に負けてシーズン終了!!

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阪  神000000100 150
読  売10000200x 390


巨人とのクライマックス・シリーズ第3戦に負けてシーズン終了でした。今日の試合でも疑問の多いベンチワークでした。私は日テレG+での観戦でしたが、せめて、テレビの解説者にあそこまでボロクソに言われないようにお願いしたいもんです。
昨日の試合でも実感しましたが、前の真弓監督と今の和田監督の数年間で若手の育成を怠って来たツケが今シーズン、特に9月に一気に出たようです。投手でモノになったのは藤浪投手だけで、野手の方はほぼ皆無に等しく、今シーズンは梅野捕手を育てるのか、岩本投手がローテーションに入るのか、と期待していましたが、目先の1勝のために1年を、それどころか、ひょっとしたら、数年をムダにした可能性のある真弓・和田両監督の怠慢が今年の9月に吹き出した気がします。来年の監督に大いに期待します。

来シーズンは、
がんばれタイガース!
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2015年10月12日 (月) 13:58:00

週末ジャズはもう1枚キース・ジャレットのソロ・ピアノを聞く!

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昨日に続いてジャズのアルバムで、キース・ジャレットの「クリエイション」です。記憶が不正確ですが、今春、2015年4月か5月ころにリリースされており、いわゆるソロ・コンサートのタイプの演奏です。曲目はパートIからIXまであり、9曲構成ですが、それぞれに重複はあるものの録音場所と、当然、日時が異なります。一応、以下の通りご紹介しておきます。

  • パート I (2014年6月25日トロント、ロイ・トムソン・ホール)
  • パート II (2014年5月9日東京、紀尾井ホール)
  • パート III (2014年7月4日パリ、サル・プレイエル)
  • パート IV (2014年7月11日ローマ、オーディトリアム・パルコ・デッラ・ムジカ)
  • パート V (2014年5月9日東京、紀尾井ホール)
  • パート VI (2014年5月6日東京、Bunkamuraオーチャードホール)
  • パート VII (2014年7月11日ローマ、オーディトリアム・パルコ・デッラ・ムジカ)
  • パート VIII (2014年7月11日ローマ、オーディトリアム・パルコ・デッラ・ムジカ)
  • パート IX (2014年4月30日東京、Bunkamuraオーチャードホール)


何と、キース・ジャレットは今年70歳だそうで、このアルバムはその記念なんだそうです。さすがに年齢的な衰えもあるのかもしれませんが、いわゆるソロ・コンサートはここ数年では、2010年が3回、2011年が7回、2012年が8回、2013年が2回と決して多くはなかったところ、昨年2014年は本アルバムも視野に入れて10回となっています。キース・ジャレットのソロ・コンサートもののアルバムの場合、1枚か2枚かにもよりますが、かなり長い曲が入っていたり、いろいろな曲が収録されている場合が多いんですが、本アルバムは曲調やテンポが余り変わらないのが大きな特徴ではないかと思います。ゆったりとしたテンポでメロディアスに弾き通しています。トリオのアルバムですが、「ザ・メロディ・アット・ナイト、ウィズ・ユー」と同じ曲調を想像すれば分かりやすそうな気がします。なお、どうでもいいことながら、コンサートのライブ音源ながら、まったく観客の拍手が入っていません。
下の動画、というか、ほとんど静止画なんですが、Universal Music が YouTubeにアップしています。

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2015年10月11日 (日) 18:15:00

外国人選手の活躍でタイガースはクライマックス・シリーズ逆王手!!

  HE
阪  神300100000 4110
読  売100000100 2111


盛り上がらないことおびただしいクライマックス・シリーズなんですが、今日は阪神が外国人選手の活躍で逆王手をかけました。初回のゴメス選手の先制ツーラン、マートン選手の追打ちソロで3点を先制し、投げてはメッセンジャー投手が7回を2失点で乗り切りました。今日のような試合を見ていると、和田監督が外国人選手に頼って、若手の育成を怠る傾向があるのも理由がありそうな気もします。セパともにクライマックス・シリーズは2試合で終わらず明日の3試合目にもつれ込みました。

明日は、
がんばれタイガース!
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2015年10月11日 (日) 13:52:00

週末ジャズは寺井尚子のヴァイオリンを聞く!

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今週末のジャズは寺井尚子のヴァイオリンを聞きました。上の画像の「Very Cool」は昨年のリリースですが、下の「Hot Jazz」は今年のCDです。いつもかなり出遅れて最新ジャズを聞いている私にしては、割合とCDのリリースから早めに聞いた方かもしれません。まず、曲の構成は以下の通りです。

  • Very Cool
    1. Manhã de Carnaval
    2. Quizás, Quizás, Quizás
    3. Cantaloupe Island
    4. Estrellita
    5. Dancing in the Wind
    6. Little B's Poem
    7. Tempus Fugit
    8. Everything Happens to Me
    9. Cool Vibrations
    10. Begin the Beguine
    11. Estrellita (CM Version)
  • Hot Jazz
    1. Tango pour Claude
    2. Slow Dance of Love
    3. Fragile
    4. Blue Bossa
    5. A Story of Wind
    6. In the Velvet
    7. Spain
    8. Happy Bird
    9. November
    10. Ariake Dawn
    11. Libertango
    12. Shenandoah


一時、イージーリスニングみたいだったので効かなくなっていたんですが、寺井尚子のヴァイオリンはテクニックや力強さやセンスなど、どの点から見ても世界で通用するレベルにあり、いっぱいいる日本人の女性ジャズ・ピアニストとは違います。ただし、ヴァイオリンというジャズの世界ではかなり特殊な楽器であるという点も寄与している可能性はあります。この2枚のアルバムは、少し前までの耳あたりがよくて眠気を誘うようなイージーリスニング調の曲目構成ではなく、曲だけからいえばジャズそのものです。ただし、「ホット」と「ラテン」を少し取り違えている心配はあります。ジャズのアルバムとしては世界レベルからすれば平均的な可もなく不可もない出来上がりなんですが、日本のジャズとしてはかなりイイセンいっていると思います。愛国心豊かなジャズファンであれば聞いておくべきアルバムといえましょう。
下の動画は「Hot Jazz」に収録されている Novemver のサワリです。2015年3月23日に銀座SWINGにて撮影されたようです。

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2015年10月10日 (土) 18:10:00

クライマックス・シリーズ初戦はサヨナラ負けで勝ち上がる可能性は10%くらいか?

  HE
阪  神0000002000 281
読  売0000110001x 390


クライマックス・シリーズの初戦は延長戦にもつれ込みましたが、結局サヨナラで敗れ、阪神タイガースが勝ち上がる確率は一気にしぼみました。まあ、昨年の第1ステージでも実感しましたが、3位チームにとっては引き分けはほぼ負けに等しいわけですから仕方ないにしても、互角の実力で競った試合展開になると選手層の厚さとベンチワークがものをいいます。ハッキリ言って、どちらも阪神には不利なところです。明日は今シーズン最後の試合かもしれません。阪神ファンにも楽しめる試合をお願いしたいと思います。

明日は、
がんばれタイガース!
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2015年10月10日 (土) 10:12:00

今週の読書は久し振りに感銘を受けた『減反廃止』ほか

今週の読書は、久し振りに感銘を受けた『減反廃止』から、極めてバカバカしくもおもしろい『ホワット・イフ?』など、以下の通りの8冊です。経済書や教養書などのノンフィクションばかりでなく、私の好きな時代小説も入っています。

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まず、荒幡克己『減反廃止』(日本経済新聞出版社) です。著者は農業経済学の研究者であり、農水省勤務から大学に転じています。民主党による2009年の政権交代によって農政のアジェンダに上った個別保障政策と減反廃止ですが、経済学的にデータに基づいたフォーマルな定量分析とともに、農業政策の現場におけるヒアリングの成果などを総合して、極めて説得力ある議論を展開しています。実は、私は30年余り前に役所でのキャリアをスタートさせた時、米価の決定に関係する仕事も担当していたりしたんですが、長らく、カルテル的に生産数量を制限する政策とともに価格を引き上げるのは政策の向かう方向として矛盾していると感じて来ましたが、完全に理解できたわけではないものの、米価統制や減反実施の始まった当時の農政の実情というものがほのかに分かった気がします。農政の中でもコメ対策というのは、今回のTPP大筋合意を受けた論調などを見ても、改革の方向はかなり明確である一方で、implementation というか、実行の仕方に工夫を凝らさないと、必ずしも方向性だけで乗り切れるものではありません。その意味で、ビッグバン的な大規模な方向転換ではなく、漸進的な政策転換を目指す著者の議論にも一定の説得力を私は感じます。私とは専門が違うので、定量分析ではあっても、ヘックマン・モデルとか、知らない分析手法がいっぱいなんですが、本書ではそれなりにフォーマルな定量分析の結果を下敷きにして、政策の方向性を明示しつつ議論を進めています。p.83の表2-1の日米における過剰農産物対策の比較などの事実関係の整理もいい出来ですし、減反と食料自給率の関係なども整合的に把握されており、我が国の農政はしょせん貧困対策と考えるエコノミストが少なくない中で、現在の農政を考える上で大いに参考になる本書なんですが、その上で、今後の農政の展開として、農協改革と農政との関係、さらに、つい先日大筋合意したTPP対策としての農政のあり方、の2点についてさらなる分析が追加されれば、大いに我が国の農政への理解がさらに深まりそうな気がします。

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次に、ジェフ・マドリック『世界を破綻させた経済学者たち』(早川書房) です。著者は米国の経済評論家・ジャーナリストであり、経済学の専門教育を受けています。その上で、2008年のリーマン・ショック以降の金融危機について、現在の主流派の経済学が危機を予測できず、さらに、なすすべもなく世界経済を大不況 Great Recession と混乱に陥れた、との観点からアダム・スミス以来の主流派経済学の7つのポイントを厳しく批判しています。原題の Seven Bad Ideas ということなんですが、構成が序章プラス7章から成っており、この7章がそれぞれの Bad Ideas に当たるんではないかと思います。私が読んだところ、見えざる手、緊縮もしくは均衡財政、規制緩和と競争重視の市場主義、インフレ・ターゲット、投機の奨励、グローバリゼーションと自由貿易、データ偏重の7点であると考えています。先週の『市場は物理法則で動く』によく似た観点であり、現在の主流派の経済学が科学であるかどうかを極めて強く疑問視しています。ですから、先週の『市場は物理法則で動く』で書いた通り、「バブルやバブル崩壊後の金融危機を予測できない現在の主流派の経済・金融モデルは欠陥がある」と同様に、経済・金融モデルだけでなく、そもそも経済学そのものに大きな欠陥がある、という結論なのかもしれません。特に、強い批判は保守的な右派の経済学に向けられており、エコノミストとしてはシカゴ大学のミルトン・フリードマン教授が批判の対象とされています。私も大いに賛成です。1980年ころからの米国のレーガノミクス、英国のサッチャリズム、そして我が国の中曽根総理が主導した国鉄民営化などの底流にある経済学が特に強く批判されていると受け止めるべきです。そして、欠陥を是正する方向としては、エコノミストに対して不確実性を認める倫理的責任を主張し、格差の是正や雇用者の権利の充実、さらに、ルールや規制を課す強力な政府、あるいは、良識とコミュニティへの責任を重んじる社会的伝統の復活などを主張しています。

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次に、イアン・スマイリー『貧困を救うテクノロジー』(イースト・プレス) です。出版社のサイトを含めて解説などがないため、比較的私の専門分野に近いとはいえ、実は著者についてはよく分からないんですが、途上国の経済開発プロジェクトに携わっているNGOの幹部と見受けました。本書と同様の内容の出版を10年近く前にしているような記述もあり、本書の原題もそれらしく Mastering the Machine Revisited となっています。ということで、本書では途上国の経済開発に関して、私の専門のような開発経済学の視点ではなく、工学とか技術論の視点から論じています。すなわち、途上国に持ち込む技術については「小型、単純、安価、非暴力」の4つの観点を重視した現地に適した技術であるべき、との指摘です。最後の「非暴力」はよく理解できないんですが、ハッキリいって、やや、途上国をバカにした欧米的な上から目線の見方であることは否定できませんし、ここ10年ほどの中国の経済発展を考慮に入れれば、こういった指摘は的外れであることは明らかなんですが、一部の途上国では成り立つ可能性もなしとはしません。特に、グラミン銀行のようなマイクロ・ファイナンスによって資金調達されるのは、本書の指摘するような技術であろうという気はします。本書ではシューマッハー『スモール・イズ・ビューティフル』に基づいた議論を展開していますが、私のような先進国政府をバックにして経済開発のあり方を議論するエコノミストと違って、NGOが活動するような草の根的な技術協力を論ずる場合には成り立つ論点かもしれないという気はしました。それにしても、p.97あたりではNGOの負の側面を論ずるなど、それなりにバランスの取れた論考ではありますが、中国の経済発展を見た後では、いかにも古き良き時代の技術協力論、という気がしてなりません。『スモール・イズ・ビューティフル』に基づいて、「小型、単純、安価、非暴力」の技術、省エネかまどやマイクロ水力発電などを途上国の伝統的セクターである農村に導入すれば、かえって労働力を生存セクターに止め置いて、資本家セクターへの労働移動を阻害し、ルイス的な転換点を遅らせることにつながりかねないような気がします。

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次に、デイヴィッド J. ハンド『「偶然」の統計学』(早川書房) です。著者は英国の王立統計学界の前会長であり、インペリアル・カレッジ・ロンドンの数学科の名誉教授ですから、ややお年を召してすでにリタイアしているのかもしれませんが、数学や統計学のバリバリの研究者です。原題は The Improbability Principle となっており、本書では「ありえなさの原理」として紹介されています。ということで、極めて確率的には起こりえない事象について、翻訳者さんには悪いんですが、偶然というよりもキチンとした確率論の観点から論じています。片方にボレルの法則として、確率が小さくて十分に起こりそうもない出来事は起こりえない、を置き、逆の片方に超大数の法則として、確率が極めて小さくても十分に大きな数の機会があれば起こってもおかしくない、を対置しています。その上で、ユングのシンクロニシティ(共時性)、カンメラーの連続の法則、シェルドレイクの形態共鳴などから、起こりそうもないことが起こったと感じるメカニズムを説明しようと試みています。ラプラスの悪魔が否定され、アインシュタインとは逆に神はサイコロを振る確率論の世界において、確率が低くて起こりそうもない事象に対する我々凡人の受け取り方というものが明らかにされます。ただ、論理としてはかなり難しいといえ、理解するにはそれ相応の能力が要求されるかもしれず、私ごときにはなかなか理解がはかどらない部分もありました。

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次に、ポール・ドーラン『幸せな選択、不幸な選択』(早川書房) です。著者は英国の経済学研究の中心のひとつであるロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)の行動科学の教授であり、ノーベル経済学賞を受けたカーネマン教授との共同研究成果もあるとのことですから、基本的には経済心理学の研究者であろうと私は受け止めています。そしてその上で、本書では幸福、経済学的には主観的な幸福について、マイクロな個人レベルの幸福について、快楽とやりがいの継続と定義して両方の観点から分析をしています。すなわち、個人レベルの単なる快楽だけではなく、家族や社会の他の人々との関係性におけるやりがいも幸福の大きな要素と捉え、かなりレベルの高い幸福論を展開しています。本書の結論のひとつは、幸福は注意(attention)の配分の影響を強く受ける、というもので、現代人にとっては注意はかなり希少なリソースであり、ぶっちゃけていえば、ポジティブなことに注意を向け、ネガティブなことからは注意をそらせば、必ず幸福の総量はアップする、ということになります。これはおそらく真実ではないかという気が私はしています。もっといえば、本書の日本語タイトルの「選択」という言葉は、この注意の配分を表現しており、原題の Hapiness by Design も注意の配分をデザインするということなんだろうと私は受け止めています。そして、本書はどうすればそのような注意の配分が可能かについて、実にプラクティカルに解説をほどこしていたりします。ただ、本書について私がややネガティブに受け止めたのは、やっぱり幸福感というソフトなものは計測が可能であったとしても政策の目標にはならない、ということでした。本書を読んで直観的な理解として、著者は人生相談を展開しているような印象を持つと私は考えています。政府の役割として、あるいは、政策のあり方として、マイクロな個別の人々や家族に対してコンサルティングを実施して、主観的な幸福感を高めることを政策目標にすべきと考える国民は少なそうな気がするのが、最大の理由です。また、p.136で指摘されているように、薬物で幸せになりたいと希望する被験者はわずか4分の1だそうです。ただ、私自身としては国家公務員として、職場の仲間の何人かは人生相談に向いているような気がしないでもありません。

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次に、ルイス・ダートネル『この世界が消えたあとの科学文明のつくりかた』(河出書房新社) です。著者は英国宇宙局の研究者らいいんですが、サイエンス・ライターとしても有名だそうです。原題は The Knowledge How to Rebuild Our World from Scratch となっていましす。タイトルから理解できる通り、何かのきっかけで現在の文明社会が崩壊、本書では大破局とよんでいますが、文明が崩壊した際の工学的な、あるいは、テクノロジー面からのリカバリーについて記したマニュアルです。まずは、何か残されたもの、例えば、スーパーマーケットのボトル・ウォーターなどを確保するところから始まって、農業による生命の維持、化学的あるいは物理学的な原材料の調達、医療や医薬品の確保、輸送機関からコミュニケーション、最後の方では公共財としての時刻と場所の確定なども含まれています。細かな内容はエコノミストの私には分からないものも少なくないんですが、少なくとも考えさせられる内容を含んでいることは確かです。政府において社会科学を研究する者の立場から、公共財として所有権の明確化や確立とともにそれを保障する治安維持の重要性についても考えを巡らせました。本書では、p.27の最初の方で「深刻な危機が訪れれば、社会契約はなし崩し」と指摘しつつも、それ以上は深入りしていませんが、工学的あるいは技術的な側面に焦点を当てた本書のスコープに入っていない重要なポイントのひとつです。せっかく、食料生産に精を出して生命を維持することができても略奪が横行するのであれば意味がありません。著者がどのように考えているのか知りたいところです。

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次に、ランドール・マンロー『ホワット・イフ?』(早川書房) です。著者は物理学の研究者としてNASAに勤務した後、現在ではインターネット・コミック作家となり、ネット上でさまざまな質問を受けて回答しているという変わった経歴を持っています。パレード誌のマリリン・ボス・サバントのような立場の人ではないかという気がします。例のモンティ・ホール問題の確率論で有名なIQ228の女性です。ということで、光速の90%の速さの剛速球をバッターに投げたらどうなるか、とか、人類総がかりでレーザーポインターで照らしたら月の色はどうなるか、とか、いろいろと荒唐無稽で突拍子もない思いつきに基づいて読者から寄せられる質問に対して、物理と数学とマンガでこれらの疑問を徹底解明しようという趣旨です。受けた質問のうち半分くらいはかなりダメージの大きな破壊的結果で終わる、との回答のような気もします。もっとも、怖すぎて、か、バカバカしすぎてか、回答をしていない質問も収録されています。基本的には、決定論的に計測しているんですが、中には確率論的に蓋然性を計測している回答もあります。いずれにせよ、回答はいろんな仮定を置いた上での計測結果を示していると考えてよさそうです。およそ現代社会の実用には役立たないと思いますが、「頭の体操」的に思考実験をしているのであると考えて読み進めばいいんではないでしょうか。なお、海から水を抜けば陸地がどう広がるか、という質問への回答がありましたが、今年はパリでのCOP開催で地球温暖化に関する議論が盛んになりそうですので、逆に、海面が高くなればどうなるか、についての回答もあったほうがよかったような気がします。

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最後に、岩井三四二『太閤の巨いなる遺命』(講談社) です。関が原の合戦の後、侍を捨てて長崎で商人となった男が、消息を絶った同僚を探して南洋に赴き、太閤殿下豊臣秀吉の遺命による巨大軍船作りに遭遇するという時代小説です。ともに侍から商人に転じた2人の男の友情と主家への忠誠が鮮やかに描き出されています。天下分け目の関が原から一発逆転を狙う豊家の大作戦も文字通り水泡に帰し、2人の男は九州に帰って商売に精を出すというラストなんですが、p.186第3章第2節から山岡右近が延々と独白する豊家の戦略とこの小説の背景説明がややくどいながらもひとつのハイライトと考える読書子もいるかもしれません。でも、私はこの小説は大阪人の好きな太閤さんをモチーフにしながらも、しかも、太閤さんですから時代小説でありながらも、海洋ロマン小説、男性的な友情を盛り込んだ海洋冒険小説がこの作品の本質なんではなかろうかと受け止めています。ラストの白兵戦の迫力に圧倒されます。
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2015年10月09日 (金) 21:39:00

児童への就学支援と引退世代への医療費について考える!

今週10月6日に文部科学省から「平成25年度就学援助実施状況等調査」等の結果が、また、10月7日に厚生労働省から「平成25年度 国民医療費の概況」が、それぞれ公表されています。このブログでは社会保障における世代間格差について着目しているんですが、少しだけ関連する指標を見ておきたいと思います。

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まず、上のグラフは「平成25年度就学援助実施状況等調査」の全文リポートから 要保護及び準要保護児童生徒数の推移 を引用しています。アベノミクスによる景気の回復もあって、最近時点では減少して来ているとはいえ、2013年度において就学援助対象となっている要保護及び準要保護児童生徒数は前年度から▲37,508人減少したものの、依然として1,514,515人に上り、就学援助率は15.42%に達しています。なお、主な減少要因は市町村によるアンケートから、何と情けないことに、就学援助対象人数については児童生徒数全体の減少であり、就学援助率については経済状況の改善が上げられています。

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次に、上のグラフは「平成25年度 国民医療費の概況」の結果の概要から 国民医療費・対国内総生産及び対国民所得比率の年次推移 を引用しています。12年連続で増加し、初めて40兆円台に乗りました。なお、日経新聞の記事によれば、年末に改定作業が控えているため、国から医療機関に支払う方の診療報酬の削減が焦点と報じていますが、患者側からの負担についても十分な検討が必要かと私は考えています。というのは、2013年度の国民医療費400.6兆円のうち、65歳未満はわずかに169.5兆円に過ぎないのに対して、65歳以上に対しては231.1兆円を支出しています。1人当たりの医療費で見て、65歳未満は1人年間177.7千円と前年度から+0.6%増にとどまっているにもかかわらず、65歳以上では1人年間724.5千円で前年から+7.3%も増加しています。この65歳以上の医療費を何とか抑制しないと、厳しい財政事情の折から児童への就学支援にも支障を来たしかねません。現在までの日本経済への貢献の大きかった引退世代ではありますが、将来世代のために財政リソースの配分をそろそろ考え直す時期に差しかかっているような気がするのは私だけでしょうか?
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2015年10月08日 (木) 20:11:00

今年のノーベル文学賞

ノーベル文学賞はベラルーシのジャーナリスト、スヴェトラーナ・アレクシェーヴィチ女史に授与されるそうです。私は読んでいませんが、映画化もされた『戦争は女の顔をしていない』しか存じ上げません。
村上春樹は今年も選に漏れたようです。誠に残念!
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2015年10月08日 (木) 19:29:00

減少を続ける機械受注と50を割って低下する景気ウォッチャーと安定的に推移する経常収支から何を読み取るか?

本日、内閣府から8月の機械受注と9月の景気ウォッチャー、さらに、財務省から8月の経常収支が、それぞれ公表されています。まず、各統計のヘッドラインを報じる日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

機械受注、8月5.7%減 外需落ち込む、基調判断2カ月連続下げ
内閣府が8日発表した8月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標とされる「船舶・電力除く民需」の受注額(季節調整値)は、前月比5.7%減の7594億円だった。減少は3カ月連続。QUICKが事前にまとめた市場予想は3.0%増だった。2カ月連続で市場予想に反してマイナスとなり、7月(3.6%減)よりも減少幅が広がった。3カ月連続の受注減は09年3-5月以来となる。
受注額は14年6月以来、1年2カ月ぶりの低水準にとどまった。内閣府は機械受注の基調判断を「足踏みがみられる」とし、従来の「持ち直しの動きに足踏みがみられる」から引き下げた。7月に続く下方修正となり、2カ月連続の判断引き下げは14年5-6月以来となった。
主な機械メーカー280社の製造業からの受注額は前月比3.2%減の3479億円と、3カ月連続で減った。業種別では、電気機械から半導体製造装置や運搬機械のほか、鉄鋼業や自動車・同付属品からの受注が減った。非製造業は6.1%減の4221億円で、マイナスは2カ月連続。金融業・保険業や運輸業・郵便業などからの引き合いが減った。
外需は26.1%減の8723億円と大きく落ち込み、4カ月ぶりにマイナスとなった。内閣府は「中国の景気減速が一部民需や外需に影響した可能性がある」としている。
内閣府は8月、7-9月期の受注額(船舶・電力除く民需)が前期比0.3%増えるとの見通しを示していた。9月が前月比43.5%増えなければ当初見込みは達成できない。内閣府は「データをさかのぼれる05年度以降、これまで単月の最大の伸び率は前月比15%(08年1月)で、達成は現実的ではない」としている。9月が前月比横ばいだった場合、7-9月期の受注額は前期比12.2%減にとどまるという。
街角景気、現状判断は2カ月連続悪化 9月
先行きは4カ月ぶり改善

内閣府が8日発表した9月の景気ウオッチャー調査(街角景気)によると、足元の景気実感を示す現状判断指数は前月比1.8ポイント低下の47.5だった。悪化は2カ月連続。8月に続き好況の目安となる50を下回った。家計と企業動向、雇用関連の全部門の指数が前月より下がった。ただ内閣府は基調判断について「中国経済に関わる動向の影響などがみられるが、緩やかな回復基調が続いている」との見方を据え置いた。
家計動向は小売りと飲食、サービス、住宅関連の全項目が前月より悪化した。家計に関しては「9月は例年に比べ残暑が厳しくなく、飲料やアイスが不振で全体の売り上げも前年を大きく下回っている」(東海のコンビニ)との声があった。企業動向では、中国の景気減速の影響で「海外向けの受注が減っているため受注量が少ない」(南関東の金属製品製造業)との見方も出た。9月下旬のシルバーウイークについて内閣府は「地元の客が遠ざかるといった声もあり、必ずしもプラス要因となったわけではない」としている。
一方、2-3カ月後の景気を占う先行き判断指数は0.9ポイント上昇の49.1となり、4カ月ぶりのプラスに転じた。年末商戦やボーナス支給などへの期待感から、家計関連が改善した。景気減速に揺れる中国への不安は根強く「中国経済の不安定さからくる、株価の低下やインバウンド需要の減少などのマイナス材料による影響が懸念される」(近畿の百貨店)との声も聞かれた。内閣府は街角景気の先行きについて「プレミアム付き商品券への期待などがみられるものの、中国経済や物価上昇への懸念などがみられる」とまとめた。
経常収支、8月は1兆6531億円の黒字 海外投資先からの配当金増
財務省が8日発表した8月の国際収支状況(速報)によると、モノやサービスなど海外との総合的な取引状況を表す経常収支は1兆6531億円の黒字だった。黒字は14カ月連続で、前年同月の2494億円の黒字から大幅に拡大した。QUICKがまとめた民間予測の中央値(1兆2339億円の黒字)を上回った。企業が海外子会社や投資先から受け取る配当金収入の増加が増えた。旅行収支の改善などにより、長年赤字基調だったサービス収支が黒字になったことも寄与した。
8月の貿易収支は3261億円の赤字だった。赤字幅は前年同月の8526億円から縮小した。米国向けの自動車販売などが伸び、輸出額が5兆8579億円と、2053億円(3.6%)増えた。一方、輸入額は6兆1841億円と、3212億円(4.9%)減った。原油などの資源価格の下落で、輸入額が減少した。
旅行や輸送などのサービス収支は578億円の黒字だった。統計をさかのぼれる1996年以降、長らく赤字が続いていたが、今年に入って3度目の黒字になっている。旅行収支の黒字が大きく寄与している。海外で生産した自動車や医薬品が売れることによって得られる「知的財産権などの使用料」の黒字額が3314億円と、単月として過去2番目の黒字幅になったことも寄与した。
海外子会社や投資先からの配当金収入などにあたる第1次所得収支の黒字は前年同月比5325億円増の2兆518億円となった。債券の利子収入などの増加が目立った。


いずれも、よく取りまとめられた記事だという気がします。でも、3つの経済指標を一気に並べるととても長くなってしまいました。次に、機械受注のグラフは以下の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。影をつけた部分は、景気後退期を示しています。景気後退期のシャドーについては景気ウォッチャーも同じです。

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船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注を見ると、季節調整済みの系列で前月比▲5.7%減の7594億円でした。引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは季節調整済みの前月比で+2.7%増でしたから、3か月連続の前月比マイナス、で8月▲5.7%減はちょっとびっくりです。コア機械受注のうち、製造業は▲3.2%減、船舶と電力を除く非製造業も▲6.1%減といずれもマイナスを示しています。統計作成官庁である内閣府では基調判断を「足踏みがみられる」とし、先月の「持ち直しの動きに足踏みがみられる」から引き下げています。業種別に細かく季節調整済みの前月比を見ると、製造業ではもともと単月での振れの大きい鉄鋼業▲55.1%減や非鉄金属▲51.4減%に加えて、一般機械▲6.8%減、情報通信機械▲20.0%減、自動車・同付属品▲16.1%減が7月の前月比プラスから8月にはマイナスに転じており、非製造業でも金融業・保険業が▲40.4%減のマイナスに転じています。ここ2-3か月の機械受注急減のひとつの要因として、「省エネ設備導入補助金」と称された設備投資促進策が3月に申請を開始し4月半ばに申請が予算額に到達したため受付終了となり、設備投資需要の先食いをしたと考えられています。省エネ設備の投資のうち2分の1から3分の1を補助するもので、最大3,000億円規模の設備投資に寄与すると考えられており、機械受注統計からみると電気機械や金融業・保険業では政策効果による急減と反落があったといわれています。さらに、情報通信機械ではスマホ対応などのLTE基地局投資のピークアウトが生じたとも考えられています。ただ、個別の業界の個別の事情はともかく、9月調査の日銀短観で示された設備投資計画に対して最近の機械受注統計が整合的ではないように私には見えます。日銀短観の設備投資計画は企業部門のキャッシュフローなどと整合的である一方で、最近の機械受注は中国をはじめとする新興国経済の低迷や株価の動向などと整合的です。もしも、無理やりに日銀短観の設備投資計画と機械受注を整合的に見ようとすれば、年度後半に設備投資が爆発するシナリオなんですが、エコノミストの経験からしてとても現実的とは思えません。ここは大きなパズルが生じているとしか私には見えません。どちらが正しいんでしょうか?

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景気ウォッチャーのグラフは上の通りです。現状判断DIと先行き判断DIをプロットしています。色分けは凡例の通りです。9月の現状判断DIは前月比▲1.8ポイント低下の47.5となった一方、先行き判断DIは前月比+0.9ポイント上昇して49.1を記録しています。現状判断DIのうち、家計動向関連DIは小売関連などが低下したこと等から低下し、企業動向関連DIは製造業・非製造業ともに低下し、雇用関連DIについても低下しています。基調判断は、「景気は、中国経済に係る動向の影響等がみられるが、緩やかな回復基調が続いている。先行きについては、プレミアム付商品券への期待等がみられるものの、中国経済の情勢や物価上昇への懸念等がみられる」と据え置かれていて、私も霞が関文学について親しんでいるつもりではありますが、イマイチ読解力のないエコノミストには何がなんだかよくわかりません。ただ、マクロの統計としては8月に続いて低下し50を割り込んでいるのはDIとして何らかの転換点を示す可能性が高いと受け止めていますし、また、個別の景気判断理由でも、8月の猛暑に続いて9月のシルバー・ウィークは消費拡大の可能性があると見ていただけに、シルバー・ウィークに対する否定的な見方が示された点については少し驚いています。いずれにせよ、賃金の上昇が遅れているだけにマインドの方もなかなか上がりにくくなっている印象です。

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最後に、経常収支のグラフは上の通りです。青い折れ線グラフが経常収支の推移を示し、その内訳が積上げ棒グラフとなっています。色分けは凡例の通りです。ただし、引用した記事は季節調整していない原系列の統計を基に書かれているようですが、グラフは季節調整済みの系列でプロットしていますので、少し印象が異なる可能性があります。ということで、上のグラフで見ても明らかな通り、最近時点では季節調背済みの経常収支は1兆円を少し超える水準で推移しています。サブプライム・バブル崩壊前の2006-07年ころまでと大きく異なるのは経常収支の構成であり、以前のように貿易黒字が積み上がっているのではなく、所得収支の黒字が大きくなっており、それ以外は貿易収支も含めてやや赤字ながらもほぼバランスしている、ということです。特に、長らく続いていたサービス収支の赤字もインバウンド消費による旅行収支などによりほぼ均衡に近くなっているのが見て取れます。石油などの国際商品市況の動向は何とも見通し難い一方で、為替の減価は貿易収支の黒字化圧力となり、また、TPP合意による関税率の引き下げは輸出入の双方向で拡大効果を持ちつつも、サービスや投資の自由化促進は投資収益収支の黒字幅の拡大やサービス収支の黒字化に寄与する可能性が高いと私は考えています。
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2015年10月07日 (水) 21:15:00

阪神タイガース、取り急ぎ、クライマックス・シリーズ出場おめでとう!!

何と、広島が勝負どころで本拠地にもかかわらず中日に敗れ、阪神タイガースが他力本願のタナボタでクライマックス・シリーズ出場を決めました。取り立てて、特にめでたいとも思いませんが、ブログの記録にとどめておきたいと思います。それにしても、ヤクルトには負けてもいいから、野球賭博に手を染めるような選手のいるチームには勝ってほしいところです。

ポストシーズンは、
がんばれタイガース!
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2015年10月07日 (水) 19:23:00

IMF「世界経済見通し」見通し編を読む!

米国東海岸時刻の昨日、国際通貨基金(IMF)から「世界経済見通し」World Economic Outlook (WEO) の見通し編が公表されています。今週末にペルーの首都リマで開催されるIMF世銀総会に向けて、IMFと世銀の世界経済の見方を示したものです。ヘッドラインとなる世界の成長率は今年2015年が+3.1%、来年2016年は+3.6%と、いずれも7月時点の見通しから▲0.2%ポイント下方修正しています。我が国の成長率についても世界経済とまったく同じで2015-16年とも▲0.2%ポイントの下方修正を受け、2015年+0.6%、2016年+1.0%の成長率見通しとなっています。下方修正の要因は中国をはじめとする新興国経済の停滞です。中国が風邪を引いて、先進国もお付き合いではないでしょうが、いっしょに風邪を引いているようなものかもしれません。まず、以下に見通しの総括表をIMFのサイトから引用しておきます。画像をクリックすると、pdfの全文リポートp.2の Table 1.1. Overview of the World Economic Outlook Projections だけを抜き出したpdfファイルが別タブで開くようになっています。

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繰り返しになりますが、世界経済の成長率見通しは、中国をはじめとする新興国の景気低迷などのため、7月時点での前の見通しから今年も来年も▲0.2%ポイントの下方改定となり、我が国も同じ幅で成長率が下方改定されています。そして、米国経済は足元の最近時点で雇用の伸びが鈍化するなどの兆候は見られるものの、先進国の中でももっとも好調な経済状況にありますし、欧州も欧州中央銀行(ECB)の量的緩和などにより成長が回復しつつあり、やっぱり、日米欧の中でもっとも成長率が低いのが我が日本、ということになってしまっています。
上の総括表のほか、リポートからグラフをいくつか引用して、簡単に紹介しておきたいと思います。

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まず、上のグラフはリポートのp.7から Figure 1.1. Global Activity Indicators を引用しています。特に、一番下のパネルのGDP成長率見通しについて、4月時点では先進国経済が2015年上半期にかけて徐々に成長を加速させていくシナリオであったのに対し、今年2015年上半期で少し踊り場のような停滞を足元で経験し、成長率見通しが下方修正されているのが分かります。新興国経済はもともと2015年上半期にかけて成長率が減速した後、今年下半期からの成長の加速を見込んでいたのが少し後ズレし、成長の加速の度合いも緩やかになる、との変更を組み込んだようです。

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次に、上のグラフはリポートのp.8から Figure 1.2. Global Inflation を引用しています。日本はヘッドラインのインフレ率が2016年下半期にようやく1%程度に達するだけで、日銀のインフレ目標である2%にはまだ遠いというカンジでしょうか。そのもっとも大きな要因が単位労働コストであり、雇用者報酬とともに日本だけがとりわけ低くなっています。一番下のパネルに見る通りであり、2012-14年の平均でももっとも低く、足元の2015年第1四半期では日本だけが大きなマイナスを記録しています。従来からこのブログで主張しているように、企業がキャッシュを貯めこむだけでなく、賃上げの形で雇用者に還元することが必要です。

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最後に、上のグラフはリポートのp.22から Figure 1.15. Recession and Deflation Risks を引用しています。輸出の不振と消費の停滞により景気の踊り場にありますので、先進国の日米欧の中では我が国の景気後退リスクがもっとも大きい結果となっています。とはいっても、まだ30%そこそこです。景気低迷とはいえ、中国などのアジア新興国は景気後退確率がゼロだったりします。ただ、デフレ確率については日銀の異次元緩和により欧州よりはグッと低くなっています。
これらを総合して、日本経済については、p.27において "In Japan, near-term prospects for economic activity have weakened, while medium-term inflation expectations are stuck substantially below the 2 percent inflation target. At the same time, potential output growth remains low." との現状認識を示し、金融政策については日銀が追加緩和の準備を進め (the Bank of Japan should stand ready for further easing)、財政政策については中期的な財政再建策を明らかにすることにより財政政策の方向性を示す (the announced medium-term fiscal consolidation plan provides a useful anchor to guide fiscal policy) といった政策対応により雇用の拡大と物価の安定を目指すべきとしています。

IMFの「世界経済見通し」を離れて、目を国内の経済指標に転じると、本日、内閣府から8月の景気動向指数が公表されています。統計のヘッドラインとなるCI一致指数は前月から▲0.6ポイント下降し112.5を、また、CI先行指数も▲1.5ポイント下降の103.5を記録しています。基調判断は「足踏み」で据え置かれています。いつものグラフだけ以下に掲げておきます。

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2015年10月06日 (火) 20:56:00

本日の雑感は雇用の正規・非正規と雇用の質について!

先週金曜日に失業率や有効求人倍率などの雇用統計が公表され、昨日の月曜日に毎月勤労統計が公表されており、現状は踊り場的な様相を呈している足元の雇用指標を大雑把に見つつ、改めて、ほぼ完全雇用に達した我が国の労働市場において、この先、人手不足や原油価格の低下などにより賃金上昇や正規雇用の増加などが進むんではないかとの期待を私は持っています。他方で、規制改革の一環として、雇用は医療や農業などともに「岩盤規制」と称して、正社員の非正規化などが進められようとしており、私はやや疑問に受け止めています。
ということで、雇用に関して、このところ私が考えている論点について、2点ほど自論を展開して見たいと思います。第1に正規雇用と非正規雇用について、私は正規雇用を圧倒的に重視していますが、その理由は、生産性を向上させるための教育訓練と将来展望を持った消費の安定的な支出を考慮すれば、圧倒的に正規雇用を重視すべきだからです。しかし、企業サイドの論理によって、最近の雇用流動化の政策について、まるで正規雇用まで非正規化に向かいかねないような勢いで、解雇をしやすくすれば雇用が増加するがのごとき論調がまかり通っていますが、私には大いに疑問です。雇用契約の解除、すなわち、解雇がしやすく定着率の低い非正規雇用や派遣労働などでは、企業の方で積極的なOJTやOffJTによる教育訓練のインセンティブが落ちます。ですから、正規雇用と非正規雇用では生産性に差がある場合がほとんどです。さらに、ですから、賃金に差が出ます。正規雇用でも解雇しやすいシステムとなれば、従業員に対する企業の教育訓練のインセンティブは大きく損なわれる可能性があります。従業員の方でスキルアップのために自腹で語学教室に通ったり、資格試験のための勉強をしたりすることが必要となれば、実質的な賃金ダウンにもなりかねません。それに、解雇しやすい雇用システムの下では、将来に及ぶ所得流列において不確実性が高まり、消費を圧迫する可能性が高いと見るべきです。現下の消費不振の原因のひとつも将来不安であることは明らかです。
第2の論点は、世界的に見ても高い日本人の生産性に比べて適切な賃金が支払われなければ、労働者の質が低下する可能性が大きいと私は考えており、そのごく一部ながら、いわゆる「バイトテロ」の遠因となっている可能性があるんではないかと考えています。「バイトテロ」とは、飲食店や小売店にアルバイトなどの非正規の形態で雇用されている従業員が商品、特に食品や器物を使用して悪ふざけを行う様子を写真に撮ってSNSなどに流す行為であり、対象となった店舗などでは大きなダメージを受ける場合が少なくありません。私は詳しくないんですが、犯罪行為に当たるものも少なくないといわれています。あくまで直観的ながら、日本人労働者は、特にサービズ業や接客業ではかなり質が高い印象が私にはあり、それを一般化して、いわゆる「おもてなし」と称する場合もあります。もちろん、逆の見方もあって、日本的な「おもてなし」の質を疑問視する向きもないではないんですが、その質の高い労働力に対して適正な賃金が支払われないなら、極めて長時間を経るとしても、再生産が保障されずに労働の質は低下していく可能性が高いと考えるべきです。質の高い非正規労働力を雇用して企業業績が向上したにもかかわらず、労働力の質の低下を招きかねない低賃金を継続すれば、生産性の低下や極端な場合には「バイトテロ」という形で企業自身に跳ね返りかねないんではないかと危惧しています。

従来から、このブログでも主張している通り、私は雇用を重視するエコノミストであり、国民が適切な職を得ることがひいては所得につながり、景気にも好循環をもたらすわけですから、経済の出発点としての雇用をマイクロな観点とともにマクロの観点から、日本経済全体に良好なパフォーマンスをもたらすような雇用の拡大を目指す必要があると考えています。
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2015年10月05日 (月) 21:36:00

毎月勤労統計に見る賃金は増加の方向にあるのか?

本日、厚生労働省から8月の毎月勤労統計の結果が公表されています。ヘッドラインとなる現金給与総額は季節調整していない原系列の統計で見て前年同月比+0.5%増、うち所定内給与も同じ+0.5%増となり、また、景気に敏感に反応する製造業の所定外労働時間は季節調整済みの系列で前月比+0.5%増を記録しました。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

実質賃金、8月0.2%増 所定外給与の伸び目立つ
厚生労働省が5日発表した8月の毎月勤労統計調査(速報値)によると、物価変動の影響を除く実質賃金指数は前年同月より0.2%増えた。2年3カ月ぶりのプラス転換となった前月に続き2カ月連続のプラスだった。残業代などを示す所定外給与の前年からの伸び率が大きかった。ただ夏のボーナスも加味したここ数カ月合計の賃金は前年を下回っており、個人消費の押し上げにつながるかどうかは微妙だ。
調査は従業員5人以上の事業所が対象。実質賃金指数は名目の賃金指数を消費者物価指数(CPI)で割って算出する。プラスは賃金上昇が物価上昇のペースを上回っていることを示す。
名目賃金にあたる8月の1人当たりの現金給与総額は、27万2382円で前年より0.5%増えた。所定外給与の伸びが目立ち、前年比1.5%増の1万9090円だった。基本給を示す所定内給与も23万9714円で0.5%増えた。
厚労省は6月速報の発表の際、ボーナスの支給時期が昨年よりも後ずれした可能性を指摘した。6月の実質賃金は前年から3.0%減と大幅マイナスとなり、「6-8月の状況を総合的に判断する必要がある」と説明していた。
だが6-8月の実質賃金の前年からの伸びは合計で1.0%減。現金給与総額でみても0.6%減だった。一方で所定内給与では0.4%増だった。3カ月合計でみた数字はまだら模様で、個人消費への影響は見通しにくい状況だ。


いつもの通り、とてもよくまとまった記事だという気がします。次に、毎月勤労統計のグラフは以下の通りです。上のパネルは製造業の所定外労働時間指数の季節調整済み系列を、下のパネルは調査産業計の賃金、すなわち、現金給与総額と所定内給与の季節調整していない原系列の前年同月比を、それぞれプロットしています。いずれも影をつけた期間は景気後退期です。

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まず、上の所定外労働時間の動きですが、先週公表された鉱工業生産指数の季節調整済みの前月比は▲0.5%減でしたから、所定外労働時間が前月比でプラスを記録したのは、やや方向として逆ではないかという気がしないでもないんですが、いずれもほぼ横ばいを示しており、方向感の定まらない景気の踊り場ですので、月単位の統計ではあり得る動きかもしれないと受け止めています。注目すべきは賃金の動向であり、グラフに示した通り、太線の所定内賃金の前年同月比は着実に上昇幅を拡大しており、6月の現金給与総額が所定外給与の変動によって一時大きく落ち込んだ要因はいまだに不明ながら、いわゆる恒常所得部分である所定内賃金は着実に増加を示しています。これまでのところ、賃金上昇をサポートしている要因は労働市場の内外で2点あり、第1に何といっても人手不足から労働力確保のためにベアの実施をはじめとする雇用条件の改善が上げられ、さらに、第2に国際商品市況における石油をはじめとする商品価格の下落により日本企業の交易条件が改善して企業収益に好影響を及ぼしているからです。
ただし、足元の景気はかなり踊り場的な様相を呈しており、鉱工業生産は足踏みを示していますし、7-9月期のGDP成長率も4-6月期に続いて2四半期連続のマイナスを見込むエコノミストもいる中で、量的及び質的に急激な雇用の改善が進行するとは私は考えていませんが、少なくとも、量的にはほぼ完全雇用となっている中で雇用の増加の足取りは落ち着きを見せる可能性が高い一方で、質的には賃金上昇や正規雇用の増加などが徐々に進むものと期待しています。
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2015年10月04日 (日) 21:10:00

勝負どころで負け続けた阪神はBクラスに沈むのか?

今シーズン最終戦を甲子園で迎え、またまた、打線が沈黙して最終戦を飾れず、勝負どころで敗戦続きの阪神がBクラスに沈むんでしょうか。1か月前は首位だった気がするんですが、私の勘違いかもしれません。

阪神ファンのみなさま、今シーズンも応援お疲れさまでした
引退する関本選手も長らくお疲れさまでした。

ここ数年の前の真弓監督と現在の和田監督の下で阪神はかなり不本意なシーズンを送った気がします。さらに、報道に従って来シーズンが金本監督なら、私の直感としてはそれほど明るい展望が開けないような印象があります。最悪のケースを想定すると、暗黒時代の再来も可能性なしとしません。

でも明シーズンこそ、
がんばれタイガース!
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2015年10月04日 (日) 17:51:00

亡父の十三回忌に家族が集う

今日は亡父の十三回忌で我が家4人と母と母が厄介になっている妹一家4人の計9人が一同に集い、法要を営みました。
当然ながら、我が家は京都の出ですので、本来の菩提寺は京都の東山今熊野にあるお寺なんですが、私が東京で就職して早や30年余りにもなり、本来の東山今熊野の菩提寺のご親戚筋に当たる東京のお寺を紹介してもらい、そちらの方で法要を営みました。新たに購入した墓地への亡父の納骨もお世話になったところです。
十三回忌の後、お寺近くの割烹で家族そろっての昼食でした。我が家は倅2人、妹一家も男の子2人ですので、私の母がいるとはいえ、男の比率の高い会食でした。

南無阿弥陀仏
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2015年10月04日 (日) 15:04:00

先週の読書は関志雄『中国「新常態」の経済』ほか

経済書や専門書などの読書とともに、先週は村上春樹さんのエッセイ『職業としての小説家』をとうとう読みました。以下の通りです。

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まず、関志雄『中国「新常態」の経済』(日本経済新聞出版社) です。著者は野村ホールディングズの著名なエコノミストですし、私ごときから解説は不要だと思います。本書の前にも2009年の『チャイナ・アズ・ナンバーワン』と2013年『中国二つの罠』と、中国を扱った著書があるようですが、私は中国経済は専門外で意図的に避けているような側面もあって、これらの本は読んでいません。本書では、最近時点での中国経済の成長率の低下について、いわゆる停滞とか失速と捉えるのではなく、中国政府首脳のいうように、あるいは、本書のタイトルにもなっている通り、「新常態」ニュー・ノーマルと捉えています。その原因は、いわゆる一人っ子政策などによる人口動態に起因する生産年齢人口の減少と農村部における余剰労働力の枯渇、すなわち、私の専門のひとつである開発経済学でいうところのルイス的な意味での転換点の到来であると見ています。後者の見方からは、クルーグマン教授が指摘したような要素投入を増加させるような成長から、生産性の向上による成長が要請されるんですが、市場経済が未熟であることから生産性向上をもたらすイノベーションが阻害されかねない要因となっていると指摘しています。ただ、ルイス的な転換点とともに、格差に関するクズネッツの逆U字カーブの転換点も同時に到達しつつあり、この先、所得格差が是正されれば新たな消費の喚起につながる可能性も示唆しています。ただし、その実現のためには、市場経済化のいっそうの進展とともに、シャドーバンキングなどの適切な規制や地方政府の資金調達などが課題であることが示されています。もちろん、本書のp.275で指摘されている通り、中国の経済社会は全体として見て、日本の1970年代と同程度の発達度合いであり、40年遅れからのキャッチアップが可能であることはいうまでもありません。

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次に、トラン・ヴァン・トウ/松本邦愛/ド・マン・ホーン『東アジア経済と労働移動』(文眞堂)です。著者は東南アジア経済の研究者で、何がテーマかは本書のタイトルから明らかだと思います。基本的に、科研費の研究成果として学術書の体裁なんですが、ややレベルが低い気がします。それだけに、というか、逆に、バリバリの研究者ではない一般のビジネスマンなどにも分かりやすくなっている気はします。第1部の国内労働移動ではタイ、ベトナム、中国を取り上げ、ルイス的な意味での転換点を探っていますが、定量的な転換点を示す年次の同定 identification ではなく印象論的な転換点の設定だという気がします。私が学術書っぽくないと考える理由のひとつです。第2部では国際労働移動を取り上げて、主として労働力の送り出し国としてインドネシア、フィリピン、ミャンマー、ベトナムを、また、第3部では受け入れ国として日本、台湾、韓国をそれぞれ対象として分析を試みています。多くを望むのは酷かもしれませんが、記述的な統計処理だけが目立ち計量経済学的な分析はありませんし、論点としては本国送金 remittances をもう少しクローズアップして欲しい気がしますし、国としてはシンガポールがスポッと抜け落ちていますし、いろいろと物足りない気はします。開発経済学を専門分野のひとつとするエコノミストである私としては、控えめに言っても強くオススメする気にはなれません。

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次に、マーク・ブキャナン『市場は物理法則で動く』(白揚社) です。著者は米国人の物理学研究者であり、サイエンス・ライターとして何冊かベストセラーも出しています。また、本書でも『ネイチャー』の編集者のころの経験が出て来たりします。原初のタイトルは Forecast であり、2013年に出版されています。正のフィードバック、すなわち、均衡から外れるとどんどん均衡から遠ざかる方向に向かう力について言及し、経済学では、あるいは、そもそも私たち人間は正のフィードバックから生じる結果に対する想像力に欠ける、といった論点から出発し、さらに、経済には均衡がないことを論証しようと試みています。この論証が成功しているかどうかは怪しいんですが、少なくとも2008年のサブプライム・バブルの崩壊後のような金融危機の際は均衡を外れていることは確かですし、歴史的にも1929年の暗黒の木曜日から始まった世界恐慌においても同様です。その上で、効率的市場仮説や特異な現象のべき乗分布、ミクロ的な基礎付けを持ったマクロ経済学に基づくDSGEモデルへの批判などを展開していますが、ズバリ、本書のもっとも重要な主張は、バブルやバブル崩壊後の金融危機を予測できない現在の主流派の経済・金融モデルは欠陥がある、もしくは、使用に耐えないから別のモデルを考えるべきである、ということに尽きます。あるいは、別の表現を使えば、現在の主流派のモデルは科学的ではなく、単なる信仰の対象に過ぎない、といっても同じことです。その上で、本書ではデータ革命(p.358以降)という言葉を使っていますが、スモール・ワールドなどで有名なコーネル大学のダンカン・ワッツ教授のようなビッグ・データを用いた極めて複雑で、おそらく、大量のパラメータを推計するモデルに対する期待を表明している、といったところではないでしょうか。私は基本的に賛成なんですが、モデルとはすべての現実を説明するためのツールではないし、現実の経済の動きの肝になる部分を説明できればそれでいいんではないかと思っています。さらに、やや逃げの姿勢かもしれませんが、バブルとか金融危機・経済危機については、微分方程式で表現されたモデルで予測するのは不可能です。歴史を跡付ける微分法的式で把握できる範囲を超えて、確率論的なシフトが生ずることがあり、その時点で歴史は微分可能性を失うんではないかと私は考えており、物理学でも許容されている特異点、ブラックホールのようなものではないか、とも思わないでもありません。

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次に、ロジャー・ブートル『欧州解体』(東洋経済) です。著者は英国の資産運用機関のエコノミストであり、欧州共通通貨のユーロには否定的で、英国についてもEUから脱退すべきとのイデオローグだったりします。例えば、本書p.211にある通り、2012年のウォルフソン賞を "Leaving the euro: A practical guide" と題する論文で受賞したりしています。ということで、本書はEUを解体し、ユーロを廃止して各国通貨に戻るべき、との論調を展開しています。ただ、経済学的な関税同盟や最適通貨圏の理論に関する理解や実践についてはやや不足している印象を持ちました。もちろん、ユーロの流通やEUの結成については、経済学の最適化行動だけで説明できるものではなく、政治・外交・安全保障なども含めた総合的な観点から検討されるべき課題であることはいうまでもありませんが、ユーロの導入やEU加盟が巨大市場の追求という形で広がりを見せているのも事実であり、経済の観点が強く作用していることは認めざるを得ません。厳密には違いますが、一種の規模の経済といえます。ただ、本書の著者はアセモグル/ロビンソンの『国家はなぜ衰退するのか』などの論点から制度の重要性を指摘し、EUや共通通貨のユーロの欠陥をこの点から解明しようと試みています。特に、共通通貨ユーロの導入については金本位制とのアナロジーにより、強烈なデフレ圧力をもたらしたと指摘しています。こういった議論の上で、英国を例にとってp.300-301の図表9-1にあるような選択肢の中で、かなり緩やかな連合形態である自由貿易協定型を推しています。このあたりは、現時点で決定的な結論を導出するのが難しい課題について、エコノミストのポジション次第で、何とでも結論できそうな気もしますし、もしそうであれば、本書の著者のポジションがそうなんであろう、としか私には思えません。

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次に、ウォルター・ミシェル『マシュマロ・テスト』(早川書房) です。著者は長らくスタンフォード大学の心理学の教授を務め、あまりにも有名なマシュマロ・テストを心理学の実験として主催しています。マシュマロ・テストは心理学の実験ながら、経済学的に解釈すると、要するに自制心を強化し、時間割引率を低下させることの重要性を強調しているわけです。今すぐに欲望を満足させようとするホットシステムを冷却するクールシステムを強化し、自制心を高める必要があると説きます。何となく、ではありますが、カーネマン教授の『ファスト&スロー』を読んだエコノミストの端くれとしては、システム1とシステム2、あるいは、ファストとスローの違いに関係つけながら読んだりしました。そして、20年余りに及ぶ追跡調査の結果、後で2個もらえるマシュマロのために現在の1個を我慢できる4歳児は、その後、肥満の割合が小さい、コミュニケーション能力が高い、ドラッグや犯罪に手を染める確率が低い、などの特徴があることが明らかにされています。しかし、問題はこの自制心や時間割引率の低さが前頭前皮質の活性化と大いに関連するらしいが、それは先天的な遺伝子による違いなのか、後天的な恐育や訓練によるものなのか、ということです。もちろん、「どちらも」ということなんでしょうし、ストレスとの関係も大いにあるんでしょうが、重点の置き方によっては本書の第18章にも取り上げられているように、公共政策のあり方が決定的に違ってくる可能性がありますし、場合によっては、前頭前皮質を活性化させる薬物の配布が優先順位の高い政策に上げられることすら考えられなくもありません。というのも、幸福の経済学について突き詰めると、もしも主観的な幸福度を経済政策の主要な目標に据えると、脳内物質のセロトニンを分泌させる薬物を国民に配布するのが一番の経済政策、ということになりかねないからです。突き詰めて、前頭前皮質の活性化もセロトニンも、薬物の配布というのが政策の主要目標とはならないことを念頭に置いておく必要があります。

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次に、モイセス・ナイム『権力の終焉』(日経BP社) です。著者はコロンビアの開発省を経験したなどと紹介されていますが、ジャーナリズムの世界の人なのか、アカデミックな世界なのか、政界なのか、不明です。ただ、本書の最初に引用されているように、FacebookのザッカーバーグCEOのブッククラブ第1回の課題書に選定されるや、全米で20万部超のベストセラーとなった話題作だそうです。もっとも、私から見れば、メガプレーヤーに対するマイクロパワーというネーミングを別にすれば、前評判ほどは大して独創的とも学術的とも思えませんでした。現在進行中の権力のあり方については、本書のタイトルのように「終焉」と捉えるよりも、「分散」もしくは「希薄化」ではないかという気がします。著者は本書で、国際政治、国内政治、経済、宗教、労組などにおける「権力の終焉」を跡付けていますが、パワーそのものが絶対量として減少して消滅しているわけではなく、多数の自然人や機関・組織に分散されただけだという気がします。例えば、自民党政府から連立政権に移行した、といった印象ではないでしょうか。本書で3M革命、すなわち、p.125の表4-1に示された豊かさ革命(More)と移動革命(Mobirity)と意識革命(Mentality)が権力の変容の要因としていますが、少なくとも、絶対王政の後から権力は分散を続けており、フリードマンの『レクサスとオリーブの木』の「黄金の拘束服」のようなp.171の例を別にすれば、その傾向が最近になって大きく変化したとは考えられません。最後の11章における対応策の提言も貧弱と言わざるを得ません。「政治的イノベーション」なんて、何を考えているんでしょうか。もっとも、本書では、この「権力の終焉」について、インターネットの出現、米国の衰退と中国の台頭という国際政治で進行している事態を直線的に結びつけてしまうことについては警戒的なスタンスを堅持しており、これについては正しい見方だという気がします。また、私のようなエコノミストが本書を酷評する一方で、本書をFacebookのCEOが推す理由も何となく分かる気がします。しかし、そんなんでいいのかという気もします。すなわち、本屋さんに行ったら『ワーク・ルールズ!』が平積みされていて売行き好調を思わせるんですが、グーグルと同じ人事制度にすれば、グーグルと同じような売上げ増や利益を達成できるわけでもなかろう、と私のようなひねくれたエコノミストは考えてしまいます。まあ、分からないでもないんですが、女優さんと同じ化粧品を使いたがり、同じブランドの服を着たがる女性と同じ心理なのかもしれません。でも、FacebookのザッカーバーグCEOのオススメ本を読んだからといって、どこまでタメになるか、ならないか、はその人次第だという気がします。

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次に、村上春樹『職業としての小説家』(Switch library) です。著者は日本を代表する小説家のひとりであり、数年前からたびたび内外でノーベル文学賞の候補に名前を上げられることもあります。本書はその著者のノンフィクションの自伝をエッセイの形に取りまとめた作品です。紀伊国屋がネット通販に流れるのを阻止すべく初版印刷分の90%を押さえた、と違った方面で話題にもなりました。ということで、私が読んでいて、明らかに第7章と第8章の間に断絶がある、というか、第8章が浮いている印象を受けましたが、第6章までと第12章はすでに連載などで明らかにされており、第7章から第11章までが書き下ろしだそうです。非常に常識的な著者個人の生活や創作活動を淡々と記述していて、いわゆる破滅型の芸術家や作家とは違う、ということは基から明らかなんですが、いっそう明らかになった、といったところかもしれません。他方、私が読んでヘンな印象を持ったのが第8章です。学校について書いていて、小賢しい教育評論家のような学校教育批判を展開しています。そうではなくて、私が知りたかったのは偉大なる小説家の青春時代です。年代的に中学校から高校、大学はいわゆるローティーンから20歳過ぎまでの青春時代真っ盛りです。学校で何を学ぶかはもちろん重要ですが、同級生はもちろん、先輩や後輩も含めた近い年齢の友人と青春時代を過ごしたか、それがどのように小説家になる際に影響を及ぼしたか、そういったあたりを知りたかった気がします。本書では著者の学校のころの友人はまったく登場しません。第9章では作家自身と同じ年代の主人公の小説を書かない言い訳までしています。もちろん、親しい、もしくは、親しかった友人をワイドショー的な興味の対象にしないための配慮もあるんでしょうが、どのような青春時代の過ごし方が、あるいは、どういった同性異性の友人が、小説家となる際に、あるいは、なってから、著者に影響を及ぼしたかを明らかにして欲しかった気がします。青春小説の大好きな私からのささやかな疑問でした。

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最後に、エマニュエル・トッド『「ドイツ帝国」が世界を破滅させる』(文春新書) です。著者はフランスの歴史学や人口学の研究者らしいですが、私は興味ある分野とはいえ専門外でよく知りません。今年2-15年6月13日付けの読書感想文のブログで中公新書の『フランス現代思想史』を取り上げた際に、いわゆるソーカル事件について軽く触れ、フランスのマルクス主義の歪んだ一面を指摘しましたが、本書もそういった批判を免れないんではないかと私は考えます。基本的に新しい順で著者のインタビューを翻訳して編集した本なんですが、ハッキリ言って、相矛盾した意見の表明やまったく意味不明の発言も散見され、読後感としては、著者というか、インタビューを受けたこの人はフランス人的な完成からドイツを嫌っているんであろう、という印象しか残りませんでした。国境を接した独仏の両国間、両国民間の感情というものは島国に住む日本人にはやや理解し難いものがあります。特に、私は南米チリの日本大使館に外交官として赴任し、長々と国境を接する隣国であるアルゼンティンに対するチリ人の極めて複雑怪奇な感情に接し、その思いを強烈にした記憶があります。国境を接していなくても、日韓関係なんかは一部にそういった感情的なもつれのようなものがありそうな気もします。まあ、そんなカンジの本であり、話題の書ではあるものの、広くオススメすべきかどうかは悩ましいところです。
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2015年10月03日 (土) 10:05:00

米国雇用統計で雇用の伸びが鈍化し米国の金利引き上げはどうなるか?

日本時間の昨夜、米国労働省から9月の米国雇用統計が公表されています。ヘッドラインとなる非農業部門雇用者数は前月から+142千人増加し、失業率は前月と同じ5.1%を記録しています。いずれも季節調整済みの系列です。まず、New York Times のサイトから記事を最初の3パラだけ引用すると以下の通りです。

Lackluster Jobs Data Raise Concerns on Economy's Course
Unexpectedly dismal job growth last month cast a shadow on the nation's economy, as a government report on Friday sent analysts scrambling for adjectives like "dreadful," "a body blow" and "grim" to describe just how disappointing they found the latest employment figures.
The Labor Department found that the jobless rate held steady at 5.1 percent in September, but wage gains stalled, the labor force shrank and employers created many fewer positions than they had been averaging in recent months. While the latest report is only a snapshot of the economy and the weakness may ultimately prove fleeting, it made clear that ordinary workers are still failing to take home the kind of monetary rewards normally expected from a recovery that has being going on for more than six years.
The new estimates came just two weeks after the Federal Reserve decided that the economy's advance remained too fragile to risk lifting interest rates from their near-zero level - even as it hinted an increase would come before the year's end. Now, experts said, signs of a slowdown may well push any rise into 2016.


この後にエコノミストなどへのインタビューが続きます。やや長く引用してしまったものの、包括的によく取りまとめられている印象です。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは下の通りです。上のパネルは非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門、下のパネルは失業率です。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。全体の雇用者増減とそのうちの民間部門は、2010年のセンサスの際にかなり乖離したものの、その後は大きな差は生じていません。

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非農業部門雇用者数の伸びが先月の統計からハッキリと鈍化し、米国連邦準備制度理事会(FED)が雇用改善の目安としており、市場の事前コンセンサスでもあった+200千人増に届かず、9月の非農業部門雇用増は+142千人にとどまり、さらに、先月8月の統計も当初発表の+173千人から+136千人に下方修正されています。ただ、失業率は引き続き極めて低い水準の5%そこそこですから、米国雇用の評価はビミョーなところです。米国の雇用増がやや減速した要因として、中国をはじめとする新興国の景気減速やドル高の影響をどう見るかなど、エコノミストのポジションが現れそうな気がします。米国の連邦公開市場委員会(FOMC)は日銀の金融政策決定会合と違って6週間おきですから、今月10月27-28日の開催です。私自身は先月の米国雇用統計発表の時点では、9月のFOMCで利上げの可能性が高いと考えていたところ、実際には利上げが見送られたわけですから、10月下旬のFOMCでも利上げが見送られる可能性が高いと見なさざるを得ません。もちろん、ポジションによって別の雇用減速の要因を引っ張り出せば話は別ですが、9月FOMCと10月FOMCで整合性が取れないと中央銀行と市場との対話に齟齬を来たしかねないおそれがあるようで怖いです。

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また、日本やユーロ圏欧州の経験も踏まえて、もっとも避けるべきデフレとの関係で、私が注目している時間当たり賃金の前年同月比上昇率は上のグラフの通りです。ならして見て、ほぼ底ばい状態が続いている印象です。サブプライム・バブル崩壊前の+3%超の水準には復帰しそうもないですが、まずまず、コンスタントに+2%のラインを上回って安定して推移していると受け止めており、少なくとも、底割れしてかつての日本や最近の欧州ユーロ圏諸国のようにゼロやマイナスをつけてデフレに陥る可能性は小さそうに見えます。
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2015年10月02日 (金) 21:43:00

ほぼ完全雇用を示す雇用統計から次の段階の労働市場を見通す!

本日、雇用統計、すなわち、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などが公表されています。失業率は前月から0.1%ポイント上昇して3.4%を記録した一方で、有効求人倍率は前月から+0.02ポイントさらに上昇して1.23に達しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

求人倍率23年ぶり高水準、8月1.23倍 失業率3.4%
厚生労働省が2日発表した8月の有効求人倍率(季節調整値)は前月から0.02ポイント上昇して1.23倍だった。1992年1月以来、23年7カ月ぶりの高水準となる。一方、総務省が同日発表した8月の完全失業率(同)は3.4%で前月より0.1ポイント上昇した。同省はよりよい条件の仕事を探す人が増えた影響とみており「雇用情勢は改善傾向で推移している」と判断している。
有効求人倍率は仕事を探す人1人に対し、企業から何件の求人があるかを示す。8月は企業の求人が増え、有効求人数は235万3699人で前月から2.2%増えた。これに対し、有効求職者数は194万3130人で0.7%の増加にとどまった。
新たな求職の申込件数は41万8392件と前年同月より4.0%減った。一方で新規求人数は前年同月より4.9%多い81万6451人に増え、企業にとって採用が難しい状況が続いている。
主要産業別でみると、宿泊・飲食サービス業(前年同月比で13.4%増)や教育・学習支援業(同8.3%増)などで新規求人数が増えた。
働ける人のうち、職に就かずに仕事を探している人の割合を示す8月の完全失業率は前月より0.1ポイント上昇した。よりよい条件の仕事を求めて自発的に離職する人が前月より4万人増えており、総務省は「景気回復に伴う内容で、悪いものではない」と説明している。


いつもながら網羅的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、雇用統計のいつものグラフは以下の通りです。上のパネルから順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は景気後退期です。

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まず、失業率について見ると、単純に公表されている完全失業者数と労働力人口から割り算してもう少し桁数を詳しく計算すると、7月の失業率が3.334%で8月が3.394%となります。労働力人口が変化ない中で失業者数が4万人増加し、しかも、引用した記事にもある通り、条件のいい職を求めての自発的離職が4万人増なんですから、8月の失業率の上昇については何ら悲観的に見る必要はありません。有効求人倍率はさらに上昇して1992年バブル経済崩壊直後の水準に達しています。一番下のグラフの新規求人も増加しており、雇用の先行指標ですから、この先もしばらく雇用は堅調な推移を続けそうです。
失業率の水準に照らし合わせて、もちろん、有効求人倍率も考えれば、労働市場はほぼ完全雇用の状態にあると私は考えています。人手不足の状態ともいえます。ですから、賃金が上昇したり、非正規雇用から正規雇用へのスイングが生じたりし始めるんではないかと期待しているところ、2013年1月から総務省統計局の労働力調査で月次の統計を取り始めた正規・非正規雇用の状況については、まだ、非正規雇用が減って正規雇用が増えるような変化は生じているようには見えません。来週月曜日の毎月勤労統計の賃金統計なども参照したいと思います。
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2015年10月01日 (木) 19:28:00

3四半期振りに大企業製造業の業況判断DIが悪化した日銀短観をどう見るか?

本日、日銀から9月調査の日銀短観の結果が公表されています。統計のヘッドラインとなる大企業製造業の業況判断DIは足元で+12、先行きも+10と、いずれも6月調査の+15からプラス幅を縮小しています。また、今年2015年度の設備投資計画は土地を含みソフトウェアを含まない大企業全産業のベースで6月調査の+9.3%増からさらに上方修正されて前年度比+10.9%を記録しました。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

9月日銀短観、大企業製造業DIプラス12 3期ぶり悪化、先行きプラス10
日銀が1日発表した9月の全国企業短期経済観測調査(短観)は、企業の景況感を示す業況判断指数(DI)が大企業製造業でプラス12だった。前回の6月調査(プラス15)から3ポイント悪化した。悪化は3四半期ぶり。中国などの新興国の景気減速に伴い輸出や生産が伸び悩み、景況感が悪化した。もっとも訪日外国人の増加を背景に大企業非製造業の景況感は改善した。
3カ月先については、大企業製造業がプラス10の見通し。欧米経済の緩やかな回復は続いているが、新興国の景気減速や株式相場の下落が響いた。
業況判断DIは景況感が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を引いた値。9月の大企業製造業DIは、QUICKがまとめた市場予想の中央値のプラス13を下回った。回答期間は8月26日-9月30日で、今回の回収基準日は9月9日だった。
2015年度の事業計画の前提となる想定為替レートは大企業製造業で1ドル=117円39銭と、前回の115円62銭よりも円安・ドル高方向に修正された。
大企業非製造業のDIはプラス25と、前回から2ポイント改善した。改善は4四半期連続で、1991年11月(プラス33)以来の高水準になった。訪日外国人の増加で宿泊・飲食サービスや小売りなどの上昇が目立った。
3カ月先のDIは6ポイント悪化し、プラス19を見込む。新興国経済の低迷や世界的な株式相場の下落が先行き不透明感につながっている。
中小企業は製造業が横ばいのゼロだった。国内の設備投資が下支えした。非製造業は1ポイント悪化のプラス3だった。先行きはいずれも悪化した。
15年度の設備投資計画は大企業全産業が前年度比10.9%増だった。6月調査の9.3%増から上方修正され、QUICKがまとめた市場予想の中央値(8.6%増)を上回った。大企業のうち製造業は18.7%増、非製造業は7.2%増を計画している。
大企業製造業の輸出売上高は前年度比3.3%増となり、6月調査から上方修正された。円相場は1ドル=120円近辺で比較的安定していたことなどを反映した。
大企業製造業の販売価格判断DIはマイナス7と、6月調査(マイナス4)からマイナス幅が拡大した。DIは販売価格が「上昇」と答えた企業の割合から「下落」と答えた企業の割合を差し引いたもの。新興国経済の減速懸念で販売価格へコスト転嫁する姿勢がやや弱まった。


やや長いんですが、いつもながら、適確にいろんなことを取りまとめた記事だという気がします。続いて、規模別・産業別の業況判断DIの推移は以下のグラフの通りです。上のパネルが製造業、下が非製造業で、それぞれ大企業・中堅企業・中小企業をプロットしています。色分けは凡例の通りです。なお、影をつけた部分は景気後退期です。

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まず、日銀短観のヘッドラインと見なされている大企業製造業の業況判断DIは6月調査から▲3ポイント悪化の+12だった一方で、大企業非製造業は+2ポイント改善の+25を記録しています。非製造業のマインド改善は、国内消費がまだ本格回復に至らない中で、観光客によるインバウンド消費の増加や原油安による交易条件の改善などに支えられていると考えられます。シルバー・ウィーク効果も入っている可能性もありますが、これについてはサステイナブルではないと考えるべきです。ただ、製造業についても、新興国経済に対する懸念や不透明感からやや悪化したものの、もともと6月調査の時に妙に上振れていたものですから、実力はこんなものとも考えられ、かなり底堅いと評価すべきと私は考えています。先行きは大企業レベルでも製造業・非製造業とも悪化の方向は間違いのないところですが、非製造業のマインドがかなり高水準である点が、インバウンド消費も含まれるとはいえ、内需の堅調さを裏付けるといえ、タイムテーブルを別にすれば、物価上昇率のパスは上向きと見なすことも可能であり、その意味では日銀シナリオを変更する必要はなく、ましてや、追加緩和の必要性も否定されることになります。このあたりの現状分析や政策判断は10月末の「展望リポート」の見直しの中で日銀から示されるものと思います。少なくともそれまでは、追加緩和などの政策変更はない可能性が高いと私は考えています。

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続いて、いつもお示ししている設備と雇用のそれぞれの過剰・不足の判断DIのグラフは上の通りです。設備については、後で取り上げる設備投資計画とも併せて見て、設備の過剰感は完全に払拭されたと考えるべきですし、雇用人員についても不足感が広がっています。特に、採用に苦労している中堅・中小企業では大企業よりも不足感が強まっています。といいつつ、それにしては、毎月勤労統計などで見る賃金が上がらないのが不思議なんですが、少なくとも、時間はかかる可能性はあるものの、賃金の上昇や正規雇用の増加などの雇用の質的な改善に向かうルートに乗っていることは事実であろうと私は受け止めています。

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続いて、設備投資計画のグラフは上の通りです。今年2015年度の計画は黄色いラインと四角い大きな黄色いマーカで示されていますが、見ての通りで、大企業製造業の景況感とは逆に、6月調査からやや上方修正され、大企業全産業で前年度比+10.9%増と計画されています。また、大企業だけでなく、中堅・中小企業でも6月調査から上方修正となっており、全規模全産業で前年度比+6.4%増の設備投資計画となっています。特に、製造業は全規模を通じて+13.5%増と2ケタ増の計画となっています。人手不足感が強まる中で、雇用人員に代替する機械設備の需要が高まっている一方で、為替レートに応じた生産拠点の国内回帰がどれほどあるのかは不明です。ゼロではなく一定はあるものと私は期待しています。それにしても、現在まで判明しているGDPベースの設備投資は4-6月期だけながら、やや奮わない印象なんですが、この先、設備投資は爆発的に増加したりするんでしょうか?

9月調査の日銀短観は強弱入り混じった結果であり、基本的には底堅い企業マインドを反映していると私は受け止めていますが、中国をはじめとする新興国経済への不透明感などから先行きが楽観できないことも事実であり、いずれにせよ、我が国経済が上がるとも下がるとも方向感を欠いた踊り場にある現状の企業マインドを反映したものであることは間違いありません。
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