2017年04月11日 (火) 19:58:00

国際通貨基金(IMF)「世界経済見通し」分析編やいかに?

かねて予告されていた通り、国際通貨基金(IMF)の「世界経済見通し」World Economic Outlook の分析編が公表されています。まず、その章別タイトルは以下の通りです。

Chapter 2
Roads Less Traveled: Growth in Emerging Market and Developing Economies in a Complicated External Environment
Chapter 3
Understanding the Downward Trend in Labor Income Shares


ということで、第2章で新興国・途上国の経済発展の開発や経済発展について、第3章で労働分配率の低下と不平等の拡大について、それぞれ議論を展開しています。このブログのひとつの特徴はこういった国際機関のリポートを取り上げることですので、グラフを引用しつつ簡単に紹介しておきたいと思います。

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まず、上のグラフはIMFのブログ・サイトから Outside forces と題するグラフを引用しています。グローバル化に伴う貿易の拡大や資本の流入は新興国・途上国の成長に大きくプラスの寄与を示してきましたが、それが反転する可能性を示しています。左から、輸出を牽引する需要、資本流入、商品の交易条件が示されており、それぞれ、成長の持続的加速を指示していた要因だったのが反転する可能性が示されています。左右の対称性は明示されていませんが、次のグラフと同じと仮定すれば、左側のセットが2003-16年の期間で、右側のセットが2017-22年だろうと思います。

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次に、上のグラフはIMFのブログ・サイトから Under pressure と題するグラフを引用しています。このグラフの左右のセットの期間は明示されており、左側のセットが2003-16年の期間で、右側のセットが2017-22年となっています。貿易相手国の成長率と資本フローと輸出国と非輸出国の商品の交易条件がプロットされており、外部からの需要、潤沢な資本流入、資源商品価格の上昇といった良好な外部環境がより複雑化する可能性が示されています。
以上、これら2つのグラフは第2章の関連であり、次のグラフからは第3章の議論に基づいています。

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続いて、上のグラフはIMFのブログ・サイトから Labor is losing out 題するグラフを引用しています。先進国と新興国・途上国に分けて労働分配率がプロットされています。賃金上昇率が生産性の伸びを下回る中で、労働分配率が低下を続けているのが見て取れます。そして、この労働分配率の低下が不平等をもたらしているとIMFでは分析しています。

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次に、上のグラフはIMFのブログ・サイトから Inequality rising と題するグラフを引用しています。縦軸にジニ係数、横軸に労働分配率を取った散布図で相関関係を見たところ、決定係数は極めて低いものの、負の相関がみられます。経済学では、通常、関数形が y=f(x) であることから、横軸の変数が原因となってが縦軸の変数の結果を決める、ということが暗黙の裡に前提されており、我が国でも観察される事実ですが、低調な賃上げが労働分配率を低下させ、さらに不平等の拡大につながった、という議論を展開しています。


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最後に、上のグラフはIMFのブログ・サイトから Driving forces を引用しています。ここでは、根源的な原因とされた労働分配率の低下の要因を探っています。すなわち、積上げ棒グラフで示されている通り、先進国ではブルーの技術動向が労働分配率低下の半分を説明する最大の要因となっており、他方、新興国・途上国では臙脂色の金融統合が大きな割合を占めています。ただし、新興国と途上国では黄色のグローバル・バリュー・チェーン(GVC)への組込みは逆方向に作用しているのが見て取れます。これらの結果、先進国ではルーティーンに基づく (routine-biased) 中程度の熟練労働 (middle-skilled labor) が新興国・途上国に流出し空洞化 (hollowing out) する可能性を強調しています。

また、IMFと世銀とWTOの3機関共同で、Making Trade an Engine of Growth for All と題するリポートが明らかにされています。私はまだ Executive Summary しか読んでいませんが、"The role of trade in the global economy is at a critical juncture." で書き始められ、昨年2016年9月の米国大統領選挙前に開催された杭州でのG20会合において、広く通商や交易の利益に関する支持が表明されたことをリマインドし、米国トランプ政権などの内向きで貿易制限的な通商政策を強く牽制する内容となっています。このリポートも注目かもしれません。加えて、4月17日からの週は米国の首都ワシントンにてIMF世銀の各種の会議が開催され、おそらく、来週には「世界経済見通し」の第1章見通し編が明らかにされることと私は予想しています。また、公表次第、日を改めて取り上げたいと思います。
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