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2013年02月22日 (金) 20:24:00

正規と非正規の賃金格差に関する統計を考える

昨日2月21日に、厚生労働省から「賃金構造基本統計調査結果の概況」が発表されています。我が家で購読している朝日新聞などでは賃金の男女差が注目されていたように見受けましたが、もちろん、それ以外にも学歴別、企業規模別、産業別、雇用形態別などの賃金構造が明らかにされています。2012年における統計です。今夜のエントリーでは、必ずしもメディアで注目されていない雇用形態別、すなわち、正規と非正規に分けた賃金格差について簡単にグラフを見ておきたいと思います。なお、厚生労働省の統計では「正社員・正職員」及び「正社員・正職員以外」と表記されていますが、このブログでは短く「正規」と「非正規」と表記しています。意味は同じつもりですので念のため。

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まず、上のグラフは年齢階級別の正規と非正規の賃金とその格差を正規を100とする非正規賃金のパーセント表示でプロットしています。縦軸は千円単位の月額給与とパーセント、横軸は年齢階級です。見れば明らかですが、すでに20歳代前半から正規と非正規の差はありますが、年齢を経て拡大して行きます。年功序列賃金は過去のものとなったとはいえ、正規雇用では年齢とともに順調に50歳代前半まで賃金が上昇カーブを描くのに対して、非正規雇用はほぼ横ばいで推移しています。それどころか、より正確には非正規は30歳代前半から50歳代前半にかけて月額給与は減少します。バックグラウンドに非正規雇用者がOJTなどによる職業訓練から排除された結果として生産性が低いといった可能性があるのはもちろんですが、社会的に許容できる格差かどうかは疑問が残ります。「同一労働・同一賃金」の原則は守られているのでしょうか。

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次に、産業別の賃金と賃金格差は上のグラフの通りです。縦軸は上と同じで月額給与を千円単位と正規を100とする格差をパーセント単位で表示し、横軸は産業別になっています。産業計の月額給与で正規が317.0千円、非正規が196.4千円、格差は62パーセントとなっています。情報通信業や金融業・保険業、教育・学習支援業などは平均よりも高く、格差も金融業・保険業がやや高いほかはほぼ平均並みとなっている一方で、正規と非正規の格差が大きいのは金融・保険業のほか製造業や卸売業・小売業などとなっています。建設業は産業平均よりも賃金が低い一方で、正規と非正規の格差はかなり小さくなっています。

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非正規雇用の中でも、賃金が少しずつながら上昇して来ています。上のグラフは、リクルートジョブズによる「アルバイト・パート募集時平均時給調査」をプロットしています。棒グラフが時給、折れ線グラフがその前年同月比です。三大都市圏におけるアルバイト・パートの募集時賃金は大雑把に900円台前半で推移しているんですが、ジワジワと上昇しているように見えます。

正規雇用と非正規雇用の賃金格差や、より大きな括りで見た待遇格差もそうなんですが、非正規雇用の条件を正規雇用に合わせるのが本筋と私は考えています。もちろん、まったく同じになることを目標にするのは非現実的と見なす向きもあるかもしえませんが、少なくとも「同一労働・同一賃金」の原則は守られるべきです。
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