2013年12月02日 (月) 19:23:00

法人企業統計に見る企業経営環境は賃上げと設備投資の増加を許容するか?

本日、財務省から今年2013年7-9月期の法人企業統計が発表されました。国内総生産(GDP)改定値を算出する基礎となり注目が高いソフトウエアを除く全産業の設備投資額は季節調整して前期と比べると▲0.5%減少しています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

7-9月の設備投資1.5%増 2期連続プラス 法人企業統計
財務省が2日発表した7-9月期の法人企業統計によると、金融機関を除く全産業の設備投資は前年同期比1.5%増の8兆9424億円で、2四半期連続のプラスとなった。製造業は減少が続いたが、建設業など非製造業の新規投資が全体を押し上げた。
設備投資の産業別の投資動向をみると、製造業は6.7%減と4四半期連続で減少した。前年の投資の反動減が出たり、不採算部門の投資を抑制した電気機械や情報通信機械などの投資が減少した。ただ減少幅は4-6月期の9.1%減より縮小した。コスト削減のための設備再編などを進めた鉄鋼や、新型車対応の新工場投資のあった自動車など輸送用機械、タブレット端末向けの高機能部材の生産能力を増強した印刷などが増加した。
非製造業は6.6%増と、2四半期連続で増えた。建設業で大型物流施設や太陽光発電向け投資などが増えたほか、リース用資産を購入した物品賃貸業、航空機を購入した運輸業などが増えた。一方、携帯電話の基地局投資が一巡した情報通信業などは減少した。
国内総生産(GDP)改定値を算出する基礎となり、注目が高いソフトウエアを除く全産業の設備投資額は、季節調整して前期と比べると0.5%減と4四半期ぶりのマイナスだった。
全産業の売上高は0.8%増の318兆8438億円と6四半期ぶりに増えた。製造業は0.3%増。石油・石炭や輸送用機械などが増えた。非製造業は1.1%増。建設業や不動産業などが増加した。
経常利益は前年同期比24.1%増の12兆9735億円と、7四半期連続で増えた。なかでも製造業は46.9%増と伸び率が高く、4四半期連続で増加した。円安で輸出採算が改善した自動車など輸送用機械業に加え、化学や情報通信機械などが増益となった。非製造業は14.5%増で2四半期連続で増えた。電気業や建設業、不動産業などで増えた。
財務省は設備投資と経常利益について「前年同期比で増加が継続しており、基調として企業収益は改善し、設備投資も上向きつつある」と指摘。「日本経済は足元で緩やかに回復しつつある」との認識を示した。
同統計は資本金1000万円以上の企業の収益や投資動向を集計。今回の結果は内閣府が9日に発表する7-9月期のGDP改定値に反映される。


いつもの通り、とてもよくまとまった記事だという気がします。法人企業統計とGDP統計の関係についても最後のパラに適切に記述されています。次に、法人企業統計のヘッドラインに当たる売上げと経常利益と設備投資をプロットしたのが下のグラフです。影をつけた部分は景気後退期なんですが、いつものお断りで、直近の景気の谷は2012年11月あるいは10-12月期と仮置きしています。

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上のグラフは季節調整済みの系列をプロットしていますので、主として季節調整していない原系列の統計を基にした引用記事と少し印象が異なるかもしれません。見れば分かりますが、季節調整済みの前期比で見て、売上高が緩やかに伸びた一方で、経常利益は減少しています。ただし、経常利益の水準はかなり高く、リーマン・ショック前のレベルに近づきつつある一方で、売上げはまだまだ届きません。同様に、経常利益は昨年のミニ・リセッション前の水準を軽く超えましたが、売上はまだだったりします。企業の経営効率が強化されたという評価ができる一方で、リーマン・ショック前のように、家計部門にトリックル・ダウンすることなく企業部門だけが余剰資金を溜め込む方向に進みつつある懸念が残されています。経団連の賃上げへの前向きな姿勢は評価できますし、昨年のミニ・リセッション後の景気回復・拡大局面では企業部門よりも家計部門が先行しましたので、家計部門が購買力を使った一方で、企業部門にキャッシュが残ったという側面も見られますが、この先の景気回復・拡大をさらに力強く、さらに長期にするためには企業部門が溜め込んでいる購買力を家計部門に対して適切に配分することが必要となります。将来への明るい展望が開け切れないために、企業部門がキャッシュを溜め込むのは、明らかに合成の誤謬を生じつつあります。

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続いて、上のグラフは擬似的に計算した労働分配率及び設備投資とキャッシュフローの比率をプロットしています。労働分配率は分子が人件費、分母は経常利益と人件費と減価償却の和です。なお、特別損益は無視しています。キャッシュフローは実効税率を50%と仮置きして経常利益の半分と減価償却の和でキャッシュフローを算出しています。まず、上のパネルの労働分配率について見ると、昨年のミニ・リセッションではほとんど上昇も見られず、リーマン・ショック後のピークから下がり続け、大雑把にならして70%を十分に下回る水準で推移しているのが読み取れます。他方、下のパネルの設備投資はキャッシュフローの半分近くまで水準が低下しています。ほぼ歴史的な低水準と受け止めています。労働分配率については量的な雇用の増加、あるいは、質的な賃金の上昇に耐える企業体質が出来上がったと評価できますし、設備投資向けの資金も債券発行や銀行借入れに頼る必要なく、十分に内部資金で調達できると理解できます。今日発表の法人企業統計で、すでに十分に賃上げと設備投資の増加に向けた経営環境は整った姿が示されたと受け止めています。

最後に、来週月曜日12月9日には7-9月期のGDP速報改定値、いわゆる2次QEが内閣府から発表されますが、設備投資についてはこの法人企業統計を受けて、やや下方修正される可能性が高いと私は考えています。
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