2013年12月04日 (水) 19:38:00

数学、読解力、科学ともに日本が順位を上げた PISA2012 の結果やいかに?

昨日のエントリーでも最後に触れましたが、経済開発協力機構 (OECD) から2012年に実施された学習到達度調査 (Programme for International Student Assessment, PISA) の結果が発表されています。OECD の原資料に当たるのが一番で、このブログでは結果報告書の第1巻 PISA 2012 Results: What Students Know and Can do : Student Performance in Mathematics, Reading and Science (Volume I) からグラフなどを直接引用していますが、国立教育政策研究所では「OECD生徒の学習到達度調査」と題して、とてもいい日本語の要約が出ています。何分、膨大なページ数の英文リポートですので、こういった日本語資料を活用するのもいいかもしれません。
なお、PISA は日本では高校1年生に当たる15歳児を対象に、数学 mathematics、読解力 reading、科学的 science の3教科の学習到達度を測定するものです。2000年から3年おきに、中心分野として読解力、数学、科学のサイクルで実施されています。結果はOECD加盟国の生徒の平均が500点、標準偏差が100点になるように調整した上で公表されていますが、実は、2000年以降も新規加盟国がパラパラとあるので、正確に平均500点になっているわけではありません。ひとつの目安です。ローテーションからして、昨日発表された PISA 2012 は数学を中心に組まれていたわけで、今夜のブログで取り上げるのも数学が中心になります。報告書第1巻は以下の章別構成になっています。

Chapter 1
What is PISA?
Chapter 2
A Profile of Student Performance in Mathematics
Chapter 3
Measuring Opportunities to Learn Mathematics
Chapter 4
A Profile of Student Performance in Reading
Chapter 5
A Profile of Student Performance in Science
Chapter 6
Policy Implications of Student Performance in PISA 2012


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ということで、気になる我が国の順位なんですが、上のグラフの通りです。2000年から3年おきの PISA の結果の3教科の我が国のランクとスコアをプロットしてあります。なお、前述の通り、各年各教科のスコアはOECD平均でほぼ500になるように調整されており、破線で示してあります。また、PISA 2012 の結果はSnapshot of performance in mathematics, reading and science として、1枚のpdfファイルに取りまとめられています。数学ではトップの上海のスコアが613に対して、日本は536で7位、読解力と科学もともに上海がトップで、日本はこの2教科ではともに4位を占めています。前回の PISA 2009 をこのブログで取り上げたのは、ほぼ3年前の2010年12月21日付けのエントリーなんですが、PISA 2009 における日本の順位は数学9位、読解力8位、科学5位でしたから、いずれの教科においても順位を上げたことになります。今夜のエントリーでは PISA 2012 の眼目であった数学を中心に、リポート第1巻からいくつかグラフを引用して、簡単に PISA 2012 の結果を紹介したいと思います。

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まず、上のグラフはリポート第1巻 p.35 Figure I.2.1 Mathematics performance and Gross Domestic Product を引用しています。ただし、データから私なりにグラフを書き加えています。赤い大きなマーカーが日本を示しています。見れば分かりますが、縦軸に数学のスコア、横軸に1人当たりGDPをプロットしてあります。当然ながら、相関係数は低いものの正の相関が認められます。しかし、ここでは単に相関であって因果関係ではありません。豊かだから数学が出来るのか、数学が出来るから豊かなのか、この因果関係は不明ですが、1人当たりGDPで測った豊かさと数学のスコアの間に正の相関は認められます。なお、日本について着目すると、数学のスコアの割りには1人当たりGDPが低い、というか、1人当たりGDPの割りには数学のスコアが高い、という結果が示されています。長らく金融政策の失敗により国民の能力に見合った経済成長が実現できていなかった可能性が示唆されていると私は受け止めています。なお、グラフの引用はしませんが、リポート第1巻 p.55 の Figure I.2.16 Curvilinear trajectories of average mathematics performance across PISA assessments がとても興味深い結果を示しています。すなわち、最初にお示しした通り、PISA ではOECD加盟国で平均点がほぼ500点、標準偏差が100点になるように調整されていますので、スコアとランクはかなりの程度に連動すると考えて差支えないんですが、2000年から始まったこの PISA の結果を年率の向上度合いで計測し、スコア/ランクが向上、変化なし、低下の3種類に分け、さらに、向上/低下については加速、着実、減速の3種類に分け、変化なしについては一度下がってから上がったケース、ずっと横ばいのケース、一度上がってから下がったケースの3かける3の9種に分類しています。我が日本はおおむね変化なしの中の一度下がってから上がったケースに分類されています。世間的なメディアの報道でも、いわゆる「ゆとり教育」で PISA のスコア/ランクを落とし、その後、「ゆとり教育」をヤメにしてスコア/ランクを上げた、という評価が一般的なように見受けます。単身赴任して大学教員を一時的にやって教育には携わったものの、私には専門外の分野ですが、そうなのかもしれないと思うところはあります。

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次に、上のグラフはリポート第1巻 p.58 Figure I.2.18 Relationship between annualised change in performance and average PISA 2003 mathematics scores を引用しています。最初に数学を中心分野として実施した PISA 2003 をひとつの基準として、PISA 2003 における数学の到達度の水準とその後の到達度の改善・悪化をプロットしています。我が国は右上の領域に入っており、PISA 2003 において平均以上の数学の到達度を示すとともに、PISA 2012 までその水準を向上させている国です。ドイツやスイスなどとともに、この領域にはアジアの国々が含まれています。とても単純な収束理論 convergence からすれば、このグラフの横軸 PISA 2003 の水準と縦軸 PISA 2012 までの改善・悪化には負の相関がある可能性が指摘でき、実際にも相関は負ではないかと見えなくもありませんが、日本は数学の到達度の水準が高く、さらにそれが向上している数少ない国のひとつと考えるべきです。労働力として優秀かつさらに向上も見られており、どうして企業経営者が賃上げに踏み切らないのかがとても不思議にすら見えます。

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ここからは PISA 2012 の結果の概略となります。上のグラフはリポート第1巻 p.62 Figure I.2.22 Proficiency in mathematics を引用しています。レベル1未満とレベル1-6の割合が国別に到達度の水準でソートしてプロットされています。ここでも、数学に関しては、エストニア、フィンランド、スイスなどとともに、多くのアジア諸国が上位に名を連ねています。

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次に、上のグラフはリポート第1巻 p.65 Figure I.2.b Top performers in mathematics, reading and science を引用しています。数学、読解力、科学のそれぞれのレベル5と6の割合の高い順にソートしてプロットされています。国名の横には平均スコアも記されており、必ずしもレベル5-6の生徒の割合の順位と一致しません。最初にお示しした通り、我が国は平均スコアでは数学7位、読解力と科学がともに4位でしたが、上のグラフに示されたレベル5-6の割合では、数学が8位、読解力と科学はともに3位を占めるようです。

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最後に、上のグラフはリポート第1巻 p.73 Figure I.2.25 Gender differences in mathematics performance を引用しています。数学の到達度における男女差をプロットしています。上の国ほど女子のスコアが高く、下ほど男子の方が高い、というようにソートされており、OECD平均の数学スコアの男女差は11となっています。日本はこの男女差が20近いので、OECD諸国の中では男女差が大きい方に属するようです。

どうでもいい個人的なことですが、昨年2012年に PISA 2012 を受けた高校1年生の15歳児は我が家の上のおにいちゃんと同い年です。実際にウチの子が参加したかどうかはともかく、社会に貢献できる日本の優秀な構成員に育てるのが親としての私の重要な務めのひとつであると考えています。
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