2013年12月16日 (月) 20:52:00

日銀短観は楽観視すべきか、悲観視すべきか?

本日、日銀から12月調査の短観が発表されています。ヘッドラインとなる大企業製造業の業況判断DIは9月調査の+12からさらに4ポイント改善して+16を記録しました。ただし、3月時点の先行きは+14とやや低下する見込みであり、また、設備投資計画は下方修正されており、大企業全産業では9月調査の前年度比+5.1%増が+4.6%増まで伸び率を低下させています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

大企業製造業の景況感、4四半期連続改善 日銀短観
先行き見通しは悪化

日銀が16日発表した12月の全国企業短期経済観測調査(短観)は、企業の景況感を示す業況判断指数(DI)が大企業製造業でプラス16だった。前回の9月調査(プラス12)から4ポイント改善した。DIの改善は4四半期連続。2007年12月調査(プラス19)以来6年ぶりの高い水準を維持した。QUICKがまとめた民間の予測中央値(プラス15)を上回った。生産が緩やかに増加しているほか、円安基調を背景に企業収益の拡大がマインドの改善につながった。国内販売が好調な自動車や、公共投資や住宅投資に伴う建築需要の高まりで木材・木製品などが改善した。
3カ月先については、大企業製造業がプラス14と改善は一服する見通し。市場予想の中央値(プラス17)を下回った。世界経済が緩やかに回復するとの見方から輸出や生産などの持ち直しが見込まれるものの、2014年4月の消費税率引き上げ前の駆け込み需要の反動減などに対する慎重な見方が強かった。
2013年度の事業計画の前提となる想定為替レートは大企業製造業で1ドル=96円78銭と、前回の94円45銭よりも円安・ドル高方向に修正された。
業況判断DIは景況感が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を引いた値。調査期間は11月14日-12月13日で、今回の回収基準日は11月28日だった。
一方、大企業非製造業のDIはプラス20と、前回から6ポイント改善した。改善は4四半期連続。消費税増税前の駆け込み需要による住宅投資や経済対策による公共投資の増加で建設が好調だったほか、小売業も改善。引き続き内需関連を中心に底堅さを示した。プラス20は07年9月調査(プラス20)以来の水準だった。
3カ月先のDIは3ポイント悪化し、プラス17を見込む。
中小企業は製造業が10ポイント改善のプラス1、非製造業は5ポイント改善のプラス4だった。非製造業のDIは92年以来約21年ぶりのプラス圏に浮上した。製造業のプラスも07年以来。これまで大企業が中心だった安倍晋三首相の経済政策である「アベノミクス」による企業業況感の改善が、中小企業にも波及してきた。先行きはいずれも小幅の悪化を見通す。
大企業・全産業の13年度設備投資計画、4.6%増 前回は5.1%増
日銀が16日発表した12月の全国企業短期経済観測調査(短観)によると、2013年度の設備投資計画は大企業全産業が前年度比4.6%増だった。9月調査の5.1%増から下方修正され、QUICKがまとめた市場予想の中央値(5.3%増)も下回った。
先行きの海外経済への不透明感が拭えないことに加え、消費税増税を2014年4月に控え、特に製造業で設備投資を手控える動きが広がったようだ。
大企業のうち製造業は4.9%増、非製造業は4.4%増を計画している。
13年度の収益計画は、大企業全産業の経常利益が23.4%増、売上高は4.0%増を見込んでいる。大企業製造業の輸出売上高は前年度比10.9%増となり、9月調査から上方修正された。円安基調が続いていることで輸出企業が先行きについて強めの計画を維持したとみられる。


ということで、いつもながら、適確にいろんなことを取りまとめた記事だという気がします。続いて、規模別・産業別の業況判断DIの推移は以下のグラフの通りです。上のパネルが製造業、下が非製造業で、それぞれ大企業・中堅企業・中小企業をプロットしています。色分けは凡例の通りです。なお、影をつけた部分は景気後退期です。このブログのローカル・ルールで、昨年10-12月期を直近の景気の谷と仮置きしており、ほかのグラフについても以下同文です。

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業況判断DIについて、特徴を3点ほど上げると、第1に幅広い企業でマインドの改善が見られることです。大企業も、中堅企業も、中小企業も、製造業も非製造業も、とても幅広くマインドが改善し、引用した記事にもある通り、中小企業の製造業・非製造業がプラスを記録したのは本当に久し振りです。実質的に昨年暮れ以降のアベノミクスが企業規模や業種を横断するような形で広がっていると考えています。第2に円安と公共事業によるマインド回復の特徴が見られます。幅広くマインドが改善しているとはいえ、製造業では特に輸出の回復に起因するとみられる自動車やはん用機械、あるいは公共事業に起因する木材・木製品、窯業・土石製品などが改善幅が大きくなっています。第3に消費税率引上げ前の駆込み需要の影響が見られます。3か月先のマインドの先行きについては製造業と非製造業を問わず、ほとんどの業種で下げる見込みとなっていますが、非製造業でもっとも上げる見通しなのが小売です。そこそこよかったボーナスを手に、年明けから消費税率引上げ前の駆込み需要がいっそう本格化すると考えるべきです。逆に、4月の消費税率引上げによりそれなりの反動減のショックを生ずることは覚悟せねばなりません。

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設備と雇用の要素需要に関する過不足判断DIは上のグラフの通りです。設備についてはかなり過剰感は払拭されましたが、まだしつこく残っています。他方、雇用についてはほぼ完全に過剰感が払拭され、規模が小さい企業ほど不足感が広がっています。まずは年末ボーナスでしたが、デフレ脱却の方向に進んで物価が上昇しつつあり、企業部門の企業業績や株価が大いに回復している中で、家計部門の賃金や雇用条件などの回復が立ち遅れています。来年は雇用の改善がどこまで進むのかが現在の景気の継続性の焦点になる可能性を指摘しておきたいと思います。

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大企業の設備投資計画が下方修正されています。私は「当てた」と思っています。すなわち、先週の金曜日に、日銀短観予測のエントリーで指摘した通り、日経QUICKの事前コンセンサスに反して、大企業全産業では下方修正されました。ただし、これにはウラがあり、全規模全産業の本年度の設備投資計画は9月調査よりも上方修正されています。中堅企業と中小企業での上方修正が大企業を上回った結果です。上方修正と下方修正のいずれにせよ、大企業でも前年度比で+5%近い設備投資増を計画していますが、従来からの私の主張で、GDPベースの設備投資がこれから爆発するとも思えませんし、この先、設備投資計画は下方修正されると私は見込んでいます。

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さらに、大企業製造業の製品・サービスに関する需給判断DIと販売・仕入の価格判断DIの推移です。需給判断DIはすでに昨年のミニ・リセッションの水準を超えて、リーマン・ショック前の水準に迫っています。販売・仕入価格判断DIもやや直近の足元で足踏みしているものの、高い水準に上昇して来ています。来年2014年4月の消費税率引上げで一時的に需給ギャップは緩むと考えるべきですが、その後は堅調に推移すると期待されます。需給ギャップとともにデフレ脱却の条件が整いつつあります。でも、何度かこのブログでも主張したように、私はデフレ脱却の十分条件は賃金の上昇だと考えています。

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最後に、新卒採用計画は上のグラフの通りです。大企業よりも、雇用不足感の強い中堅・中小企業で採用増が見込まれています。このグラフを見ると、私は2年間ながら大学の教員を経験しましたから、少なくとも就職に関していえば、生まれてくる時による運不運というか、不公平というのは確かに存在すると感じざるを得ません。
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