2014年03月02日 (日) 17:34:00

先週読んだ話題の新刊書から

先週読んだ本の読書感想文です。1年以内くらいに出版された、という程度の新刊書ということで取り上げています。いろいろと旧刊書や文庫本も読んでいるんですが、今日のところはパスしておきます。

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まず、福場ひとみ『国家のシロアリ』(小学館) です。今日の読書感想文の中では唯一のノンフィクションで、残りはすべて小説だったりします。この本は週刊ポストに寄稿するジャーナリストが震災復興費が被災地以外に流用されている事実について取りまとめ、小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞したルポを基にした本なんですが、実は、震災復興予算がひどく水膨れしていて不要な予算がいっぱい入り込んでいるという点については、このブログでも2012年7月18日付けのエントリーで取り上げた原田泰『震災復興欺瞞の構図』(新潮新書) ほかでいろいろと明らかにされています。その点で特に新しい視点は提供されていませんが、ていねいな取材で事実関係を跡付けているのは好感が持てます。ただし、官僚も政治家も、それも与党も野党も、さらに、メディアまで全部が悪い、日本的なシステムが悪い、との結論は分からなくもないものの疑問を感じます。というのも、「みんなが悪い」というのは「誰も悪くない」というのとほぼ同義だからです。事実関係の積重ねはジャーナリストとして当然といえますが、さらに突っ込んだ分析で問題の本質を明らかにし、何をどうすれば解決できるのかを提示していただきたかったような気がします。そうでなければ、今後も同じ問題が引き続いて起こる可能性が高いんではないかと、問題の一端を担う官僚機構に属する私なんぞは悲観してしまいます。

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次に、中村文則『去年の冬、きみと別れ』(幻冬舎) です。どうでもいいことながら、私はこのブログで「読書感想文の日記」のカテゴリのエントリーを300以上もアップしているんですが、おそらく、このブログを始めたばかりのころの2005年9月の中川文則の「土の中の子供」が最初の読書感想文だと記憶しています。芥川賞を授賞されて読み、ガッカリして酷評した記憶が残っています。この『去年の冬、きみと別れ』は、2人の女性を焼死させた猟奇殺人事件の被告を取材しルポを書こうとしているライターの視点からストーリーが語られますが、この作者にしては初めてのミステリといえます。私はこの作者の最高傑作はなんといっても『掏摸 [スリ]』と『王国』(河出書房新社) の一連の姉妹作品であろうと受け止めており、おそらく、『掏摸 [スリ]』を最高傑作に推す読書人が多かろうと考えていますが、「土の中の子供」などと違って、もっと強烈な反社会的な行為とかウラ世界の組織とか、典型的には先の姉妹作品に共通して登場する木崎のような人物を描写するのに、この作者は長けているんではないかという気がします。その意味で、この作品は微妙なところであり、かなりいい出来だとは思いますが、『掏摸 [スリ]』を超える最高傑作ではないような気もします。2014年本屋大賞にノミネートされているそうですから、その意味では注目の書です。

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次に、伊坂幸太郎『首折り男のための協奏曲』(新潮社) です。基本的に短篇集なんですが、連作短編集に仕上げようとして失敗したカンジがします。タイトルにある「首折り男」を中心に据えるのか、それとも、時空の歪みなのか、はたまた、空き巣の黒澤なのか、いろいろと絡み合う話はあるんですが、逆に、まとまりなく発散しているような気もします。さらに、私の場合は図書館から借りて新潮文庫のアンソロジーをかなり読んでいますので、7編の短編のうち3作を既読だったりします。伊坂幸太郎や東野圭吾は借りるんではなくて買うようにしているんですが、この本は買ってやや損したと思ってしまいました。でも、新潮文庫のアンソロジーを未読の方はもっと楽しめそうな気もしないでもありません。

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次に、ミシェル・ウエルベック『地図と領土』(筑摩書房) です。2010年のゴンクール賞を本作品により授賞されています。私はこの作家の作品は初めて読みましたが、前作の『素粒子』がそれなりの話題をさらったのは知っています。本作品の主人公はアーティストであり、写真家から画家に転じ、大成功を収めて早々に引退します。そのほぼ生涯をすべて視野に入れ、なおかつ、作家本人が作中に登場して惨殺されたりします。本書のテーマのひとつであるアートとマーケットの関係についてはアングロ・サクソン人とフランス人では大きく意見が異なりそうな気がします。なお、私の感想よりも新聞などの書評のほうがより参考になるかもしれません。私が見ている限りで主要に以下の通りです。ご参考まで。


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最後に、原田マハ『総理の夫』(実業之日本社) です。多作な作家なんですが、私はこの作者の作品は『楽園のカンヴァス』しか読んだことがありません。この『総理の夫』は日本で初めての女性総理大臣の亭主の視点から、その日記を通して語られます。権謀術数渦巻く政界で、一直線な性格で突き進む女性総理とその所属政党である直進党のスタッフ、あるいは、連立政党の寝業師、はたまた、総理の夫の実家である実業家の兄や母などなど、あくまでフィクションとして読む分にはオッケーだろうという気がしますが、政治も経済と同じで1億国民が総評論家ですから、政策や政治姿勢や何やかやまで真剣に読み込んで感情移入すると、そこまですると少しやり過ぎの嫌いがあります。サラッとエンタメで軽く読むヒマ潰し本と考えるべきです。

今週末も何冊か話題の本を借りることが出来ました。経済書は含まれていませんが、来週の読書も楽しみです。
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