2014年10月01日 (水) 19:37:00

9月調査の日銀短観に表れた企業マインドをどう見るか?

本日、日銀から9月調査の短観が公表されています。ヘッドラインとなる大企業製造業の業況判断DIが+13と前回6月調査よりも+1ポイント改善しています。大企業の設備投資計画も2014年度+8.6%増のと前回調査の+7.4%増から上方修正されています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

大企業の先行き景況感 横ばい 日銀短観
日銀が1日発表した9月の全国企業短期経済観測調査(短観)は、大企業製造業の景況感が先行き横ばいになるなど、個人消費のもたつきを背景に企業心理の回復の鈍さがにじんだ。一方、2014年度の設備投資計画は6月調査の前年度比12.7%増から同13.4%増へ上方修正された。雇用の改善で人手不足感も強まっており、景気の回復力を左右しそうだ。
9月短観では、企業の景況感を示す業況判断DIが消費増税の影響で、もたついている様子が浮き彫りになった。政府・日銀は当初、7-9月期以降は増税の影響が徐々に和らいでいくとみていたが、短観では先行き3カ月後の企業景況感も横ばい圏にとどまった。
ただ企業の設備投資意欲は堅調だ。14年度の設備投資計画は大企業非製造業も6月調査の前年度比4.9%増から同6.3%増へ上方修正となり、9月調査として7年ぶりの高い伸びとなった。
日銀は「維持更新に加えて、能力増強の投資を上積みする動きが出ている」(調査統計局)とみている。中小企業でも設備投資計画は製造業、非製造業ともに6月調査から上方修正となった。
好調な企業収益も投資意欲を支える。製造業、非製造業ともに14年度計画の経常利益は上方修正され、大企業の全産業ベースでは前年度比3.0%減となった。13年度が同35%増と大幅増益だった反動で前年度比ではマイナスにとどまっているものの、高水準の利益を維持している。
今回調査は円安が急速に進んだ8月27日から9月30日にかけて実施された。調査開始時点は1ドル=103円台だった円相場は110円目前まで円安が進行した。円安による円建て輸出額の増加を通じ、輸出企業の収益を押し上げた面もある。
14年度の大企業製造業の想定為替レートは1ドル=100円73銭で、6月調査の100円18銭から円安方向へ修正された。ただ足元の実勢レート(110円前後)との差は大きく、収益押し上げの余地はなお大きい。
ただ一時1ドル=110円台まで進んだ円安を巡っては企業側からも懸念の声が高まり始めた。輸入物価上昇を通じて、コスト増となる面があるためだ。
30日発表された8月の鉱工業生産が前月比マイナスとなるなど、消費増税後の景気の回復に足踏み感も出ている。堅調な計画通りに設備投資が実行されるかどうかは、企業心理が着実に改善に向かっていくかにかかっている。


やや長いんですが、いつもながら、適確にいろんなことを取りまとめた記事だという気がします。続いて、規模別・産業別の業況判断DIの推移は以下のグラフの通りです。上のパネルが製造業、下が非製造業で、それぞれ大企業・中堅企業・中小企業をプロットしています。色分けは凡例の通りです。なお、影をつけた部分は景気後退期です。

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ヘッドラインとなる大企業製造業の業況判断DIについては、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスが足元で+10、先行きで+12でしたから、足元・先行きともポジティブな方向に外れたサプライズでした。昨日の鉱工業生産指数のネガティブなサプライズとは反対です。どうして外れたのかというと、もっぱら製造業が上振れしていることから、足元における円安の進行であろうと私は推測しています。逆に、大企業非製造業の業況判断DIは同じ事前コンセンサスでは+17でしたが、製造業とは逆に実績は下振れして+13を記録しました。すなわち、内需の回復が遅れていることを背景に弱めの企業マインドが示されたと考えるべきです。ただし、引用した記事にもある通り、大企業製造業でも先行きの業況判断DIは足元から横ばい、大企業非製造業でも+1ポイントの改善にとどまりますので、企業は先行きに対して慎重な見方を崩していないと考えるべきです。なお、為替と景気や企業マインドとの関係は非常にデリケートなんですが、例えば、日本総研のリポート「円安進行の景気への影響をどうみるか」では、貿易面では1ドル100円台前半が最適である一方で、株価動向を加味すれば「110円前後が景気には最適」と試算しています。1ドル110円はほぼ現時点の水準であり、短観に示された事業活動の前提となっている想定為替レート約100円から10%の円安水準です。

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次に、大きな傾向は変わりありませんが、設備と雇用についても、4月の消費増税を経て、要素需要が拡大する方向に回帰しています。上のグラフは製造業の設備判断DIと全産業の雇用判断DIをプロットしています。プラスが過剰超でマイナスが不足超を示しています。設備についてはまだ過剰超のプラスが記録されているという意味で、過剰感が完全に払拭されたわけではありませんが、過剰から不足に向かう方向感は続いていますし、雇用についても企業規模が小さくなるほど不足感が強まっています。設備については、グラフは示しませんが、今年度2014年度の大企業全産業の経常利益は前年比▲3.0%と減益見通しながら、6月調査よりは上方修正されていますので、設備投資計画の上積みに寄与している可能性があります。また、労働供給については、人口減少に向かう中で長期的にはもちろん不足の方向にありますが、短期的な足元でも労働供給に対する不足感が大きくなってきており、賃上げの素地が広がっていると私は受け止めています。

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上のグラフは2007年度から2014年度までの設備投資計画を調査時期ごとの修正を踏まえてプロットしています。設備投資計画については、6月調査の上方修正についてはやや疑問視していましたが、9月調査で上方修正されたことから、今年度はかなり伸びる可能性が高いと私は受け止めています。上のグラフを見ても、リーマン・ショック前の2007年度計画に匹敵する水準を示しており、かなり強気な設備投資計画に見えます。大企業に限定されることなく、設備投資増の裾野が広がっていることは確かで、中小企業においてはまだ前年度比マイナス計画ながら上方修正の幅が大きくなっています。ですから、全規模全産業で前年度比+4.2%の設備投資計画となっています。だたし、昨年度2013年度下期の消費増税前の駆込み需要に伴って、いわゆるゲタが大きくなっていますから注意は必要です。

景気の状況やそれに基づく景況感は今年に入ってかなり複雑な動きを示しています。すなわち、年前半は消費税率引上げに伴う駆込み需要とその後の反動減は想定の範囲内であり、年央から年末にかけてV字回復が予想されていたのに対して、実際は、少なくとも1997年に比べて消費増税のショックは大きく、ハードデータに示された景気やソフトデータに示された景況感は低迷しました。昨夜のエントリーでも取り上げたように、ニッセイ基礎研のリポート第一生命経済研のリポートでも景気後退局面入りの可能性がトピックのひとつとして取り上げられ始めたのも事実です。しかし、9月に入って足元で円安が進んだことから製造業を中心にマインドとしての景況感に上向きの効果が生じ始めていることが今日発表の日銀短観で確認されました。今後の先行き景気に注目が集まります。
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