2014年12月17日 (水) 19:34:00

貿易赤字が縮小した貿易統計をどう見るか?

本日、財務省から11月の貿易統計が発表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、ヘッドラインとなる輸出額は前年同月比+4.9%増の6兆1889億円、輸入は▲1.7%減の7兆807億円、差引き貿易収支は▲8919億円の赤字でした。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

11月の貿易赤字8919億円 輸出額は前年同月比4.9%増
財務省が17日発表した11月の貿易統計速報(通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は8919億円の赤字で、赤字額は1兆3011億円だった前年同月に比べ31.5%減少した。貿易赤字は29カ月連続。QUICKが16日時点で集計した民間予測の中央値は9960億円の赤字だった。1-11月の貿易赤字の累計額は12兆円を超え、年間で過去最大だった2013年(11兆4683億円)を上回った。輸出額の増加に加え輸入が3カ月ぶりの減少に転じた結果、赤字幅が縮小した。
輸出額は前年同月比4.9%増の6兆1889億円で、3カ月連続で増加した。品目別では半導体等電子部品、液晶デバイスを含む科学光学機器、金属加工機械などの輸出増が寄与した。地域別では対アジアが5.8%増の3兆4304億円。うち対中国は0.9%増の1兆1516億円と、11月としてみると比較可能な1979年以降で最大。対米国は6.8%増の1兆2083億円と3カ月連続で増えたが、対欧州連合(EU)は1.3%減の5917億円と18カ月ぶりに減少した。輸出全体の数量指数は1.7%減り、3カ月ぶりの減少となった。米国やEU向けの自動車輸出の減少などが響いた。
一方の輸入額は1.7%減の7兆807億円で、3カ月ぶりに減少した。原粗油のほか、重油などの石油製品、石炭の輸入減少が目立った。対アジアは3.4%増の3兆3842億円で、うち対中国は3.9%増の1兆7484億円。ともに11月としては79年以降で最大だった。対EUは2.4%増で11月として過去最大の6820億円、対米国は3.3%減の6262億円だった。
為替レート(税関長公示レートの平均値)は1ドル=111円43銭で、前年同月比13.2%の円安。地域別の貿易収支は輸出入ともに最も多い対アジアが462億円の黒字で、貿易黒字は2カ月連続。対中国は5968億円の赤字で、33カ月連続の貿易赤字となった。


いつもの通り、とてもよく取りまとめられている記事だという気がします。次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

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輸出額が増加して輸入額が減少していますので、差引き貿易収支は前年同月に比べて赤字幅を縮小させています。季節調整していない原系列の貿易指数で輸入について詳しく見ると、原油などの国際商品市況の大幅低下が我が国の輸入価格の押下げに寄与した一方で、ハロウィン緩和後に進行した円安による上昇圧力の方が強くなった結果、輸入価格指数は前年同月比で比+7.4%の上昇と10月統計の+4.9%から上昇幅が大きく拡大しています。しかし、この価格上昇に応じた数量の減少とは必ずしもいえないかもしれませんが、国内景気の停滞もあって、輸入数量が▲8.3%減と前月の▲1.7%減に続いて2か月連続の減少を示したことが輸入金額を押し下げる要因となっています。詳細な分析はしていませんが、輸入数量の減少は国内景気の停滞と円安に伴う輸入価格の上昇の合せ技であり、この輸入数量の減少が輸入価格の上昇を上回って輸入額を低下させ貿易赤字の縮小に結びついているのではないか、と私は受け止めています。ただし、輸入額は季節調整していない原系列の統計で見ても、季節調整済みの系列で見ても、いずれも7兆円は軽く超えており、引き続き、高い水準にあることは確かです。

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上のグラフは輸出の動向をフォローしています。上のパネルは季節調整していない輸出額の前年同月比の伸び率を数量と価格で要因分解しており、下のパネルは輸出数量とOECD先行指数のそれぞれの前年同月比をプロットしています。ただし、OECD先行指数は1か月だけリードを取っています。11月統計については季節調整していない原系列の輸出指数の前年同月比で見て、円安の進行により金額ベースの輸出額指数では増加しているものの、輸出数量は▲1.6%の減少を記録しています。上のグラフの上のパネルを見ても、赤い積上げ棒グラフの数量よりも青い価格の寄与で輸出数量が前年比プラスを示しているのが見て取れます。OECD先行指標も緩やかにプラス幅を縮小させており、海外からの需要は停滞しています。所得効果が大きくありませんので、円安に伴う価格効果で輸出が伸びるかどうかがカギになります。ただし、このところの輸出額を見ると、消費増税ショック直後の5月をボトムに季節調整済みの輸出額は緩やかながら11月まで6か月連続の前月比プラスを示しています。輸出先としては欧州はまだ十分な回復を示していないものの、米国に続いてアジアも景気を持ち直しつつあり、今後の輸出先として期待が持てます。

この先、内需も外需も大きく増加に転じる見込みは小さく、しばらくはやや停滞気味の景気が続く可能性が高いんではないかと私は考えています。金融政策が円安などを通じて徐々に景気拡大的な作用を及ぼすのか、それとも政府の経済対策による景気浮揚がどこまで可能なのか、貿易統計とともに内需の動向も含めて目先の景気については注目です。
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