2015年03月02日 (月) 19:24:00

法人企業統計にみる好調な企業収益から賃上げや設備投資へのトリクルダウンは見られず!

本日、財務省から昨年2014年10-12月期の法人企業統計が発表されています。季節調整していない原系列のベースで統計のヘッドラインを見ると、売上高は前年同期比+2.4%増の340兆9719億円、経常利益は+11.6%増の18兆651億円、設備投資は+2.8%増の9兆7080億円をそれぞれ記録しており、収益をはじめとする堅調な企業活動がうかがい知れます。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

設備投資、前年比2.8%増 経常利益は最高・10-12月の法人企業統計
財務省が2日発表した2014年10-12月期の法人企業統計によると、金融機関を除く全産業の設備投資は前年同期比2.8%増の9兆7080億円で、7四半期連続で増加した。経常利益は11.6%増の18兆651億円と、比較可能な1954年4-6月期以降で最高だった。円安などの外部環境改善で製造業を中心に業績が回復し、稼いだ利益を設備投資に振り向ける好循環が継続している。設備投資の産業別の投資動向をみると、製造業は8.0%増と2四半期連続で増加。工場の生産自動化システムや自動車関連が伸びた電気機械などの業種で増加した。非製造業は0.3%増だった。
国内総生産(GDP)改定値を算出する基礎となり、注目が高いソフトウエアを除く全産業の設備投資額は、季節調整して前期と比べると0.6%増。伸び率は7-9月期(3.0%)から縮小した。
全産業の売上高は2.4%増の340兆9719億円と6四半期連続で増えた。製造業は0.1%増。情報通信機械や電気機械が増えた。非製造業は3.4%増えた。
経常利益は12四半期連続で増加。北米向けを中心に販売好調な輸送用機器を中心に製造業は16.4%増えた。非製造業は8.3%増。土木建築事業の増加や利益率の改善で建設業が増えたほか、鉄道旅客が好調な運輸業も伸びた。
財務省は今回の結果を受け「景気は緩やかな回復基調が続いている」とみている。同統計は資本金1000万円以上の企業の収益や投資動向を集計。今回の結果は内閣府が9日に発表する14年10-12月期のGDP改定値に反映される。


いつもの通り、とてもよくまとまった記事だという気がします。次に、法人企業統計のヘッドラインに当たる売上げと経常利益と設備投資をプロットしたのが下のグラフです。色分けは凡例の通りです。ただし、グラフは季節調整済みの系列をプロットしています。季節調整していない原系列で記述された引用記事と少し印象が異なるかもしれません。また、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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まず、ビジネスとしての企業活動は極めて活発で売上げや利益が高水準にあることが法人企業統計から確認できます。上のグラフの上のパネルを見ても明らかな通り、水色の折れ線グラフで示した売上げこそまだ水準として過去と比べて低いものの、昨年2014年4-6月期の消費増税のショックのあった期を除いて2013年4-6月期以降は前期比でプラスの増収を続けていますし、経常利益についてはすでにサブプライム・バブル崩壊前の水準をはるかに超えています。部分的には昨年後半からの原油価格の下落も企業の売上げ増や利益の拡大に寄与していることはいうまでもありません。それにしては、ということで、下のパネルの設備投資が伸び悩んでいます。グラフは1990年からプロットしていて、それなりに循環的な動きを示していますが、これをならせばバブル経済の崩壊以降では右肩下がりであることは明白です。企業が設備投資もせず、非正規雇用を拡大して総人件費も抑制され、企業部門内部のキャッシュが溜め込まれている現状と整合的な設備投資の動きです。

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続いて、上のグラフは私の方で擬似的に試算した労働分配率及び設備投資とキャッシュフローの比率をプロットしています。労働分配率は分子が人件費、分母は経常利益と人件費と減価償却費の和です。特別損益は無視しています。また、キャッシュフローは実効税率を50%と仮置きして経常利益の半分と減価償却費の和でキャッシュフローを算出しています。このキャッシュフローを分母に、分子はいうまでもなく設備投資そのものです。いずれも、季節変動をならすために後方4四半期の移動平均を合わせて示しています。太線の移動平均のトレンドで見て、労働分配率は現在の景気拡大局面に入ってから一貫して低下しているのが見て取れます。キャッシュを溜め込んでいる企業から賃金として雇用者に滴り落ちてトリクルダウンする人件費の割合を示す労働分配率はここ2-3年でほぼ一貫して低下し、1985年からプロットしている上のグラフの上のパネルを見ても、60%をやや上回った水準の労働分配率は歴史的な低水準を示しています。下のパネルの設備投資がキャッシュフローに占める比率も50%台半ばで横ばいないしジワジワと低下を示しています。

何度も繰り返しましたが、企業部門に溜め込まれたキャッシュを賃上げや設備投資という形で、いかにして家計部門に還元するのか、というのが、企業部門と家計部門の相互関係による経済の好循環をもたらす課題であると言えます。なお、本日発表の法人企業統計に伴う2次QEに向けた修正は余り大きくないものと私は推測しています。
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