2015年04月11日 (土) 16:39:00

今週の読書は『世界は危機を克服する』と『民主主義の財政赤字』ほか

今週の読書は『世界は危機を克服する』と『赤字の民主主義』ほか、経済書や専門書ばかりで小説はなく、以下の通りです。

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まず、野口旭『世界は危機を克服する』(東洋経済) です。著者はリフレ派のエコノミストであり、副題は「ケインズ主義2.0」とされています。私も基本的に本書の見方に賛同するんですが、今回のリーマン・ショック後の経済危機からの回復がはかばかしくなかったのは、ギリシアや南欧諸国などで財政危機あるいは財政赤字に対する厳しい見方が一般化してしまったため、世界中の各国が財政引締めに余りに早期に転じてしまったのが一因だとの見方を示しています。我が国の消費増税もその一例であり、昨年4月の消費税率引上げから景気が大きくスローダウンしたのは記憶に新しいところです。その政策的なインプリケーションとして、財政は引締めに向かうことなく、景気の拡大とともに税の自然増収を図るにとどめる、などが示されています。

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次に、ジェームズ M. ブキャナン/リチャード E. ワグナー『赤字の民主主義』(日経BP社) です。逆に、古典的な本書では民主主義が税制赤字を招きやすいバイアスを指摘しています。もちろん、いわゆるハーヴェイロードの仮説が成り立つ世界でのケインズ的な財政運営の有効性は認めつつ、現実的な運営面での財政政策のケインズ的な運営と民主主義は両立しないとし、後者の民主主義に立脚するのであれば前者のケインズ的な財政運営を放棄して財政均衡主義に立ち返るべきであると主張しています。民主主義下のケインズ的な財政運営に起因する財政赤字がインフレに帰結しやすい、というのはとても懐かしい議論であると思ってしまいました。

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次に、大沢真知子『女性はなぜ活躍できないのか』(東洋経済) です。タイトルだけでは分かりにくいかもしれませんが、高学歴女性の働き方を考える労働経済学の本です。そして、著者はまさにこのテーマを論ずるにふさわしいエコノミストだと考えられます。高学歴女性の活躍を阻害している要因にはさまざまなものがありますが、ひとつ通説と異なると感じたのは、適切に評価されないために本人がモチベーションを上げられず、組織から脱落してしまうという見方です。モチベーションが低下した際、男性と比べて、石にかじりついても会社を辞めない姿勢を見せる比率が女性の場合は少ない可能性は私も感じます。ただ、本書の解決策としては「意識改革」が目につき、いまだにインセンティブに基づく経済学的な解決を志向するエコノミストがいる中で、それなりに誠実な姿勢を感じなくもなかったんですが、どこまで「意識改革」が有効なのか、少し考えさせられました。

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最後に、原武史『皇后考』(講談社) です。明治以降の近代日本における天皇と対比した皇后について考察を巡らせています。650ページに達する大作です。特に、著者は狭い専門領域が大正天皇のようですから、大正天皇の皇后だった貞明皇太后と昭和天皇、あるいは昭和天皇の弟である秩父宮殿下との微妙な関係などの見方が大きな紙幅を持って示されていたりします。明治維新以降、先進国の仲間入りをするに当たって、鹿鳴館で舞踏会をしたのと同じラインで、天皇家における単婚制度の定着と天皇後継者の誕生のトレードオフの間で、天皇家の結婚制度の移り変わりとともに、あるいは、政治と儀式のかかわりの変化とともに、天皇のみならず皇后においても近代化の中で大きな役割を負った姿が浮き彫りにされます。
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