2016年01月29日 (金) 22:06:00

本日公表の鉱工業生産指数と雇用統計と消費者物価はすべて日本経済の停滞を示しているのか?

今日は今月最後の閣議日に当たり、主要な政府経済指標がいくつか公表されています。すなわち、鉱工業生産指数が経済産業省から、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が、また、総務省統計局から消費者物価 (CPI)が、それぞれ公表されています。いずれも昨年2015年12月の統計です。鉱工業生産指数は季節調整済みの系列で前月比▲1.4%の減産を示し、失業率は前月と変わらず3.3%、有効求人倍率は前月からさらに0.02ポイント上昇して1.27倍となり、消費者物価は生鮮食品を除くコアCPIの前年同月比上昇率で+0.1%を記録しています。まず、長くなりますが、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

12月の鉱工業生産1.4%低下 スマホ部品など低調
経済産業省が29日発表した2015年12月の鉱工業生産指数(10年=100、季節調整済み)速報値は前月比1.4%低下の96.5だった。マイナスは2カ月連続で、QUICKがまとめた民間予測の中央値だった0.3%低下も下回った。半導体製造装置やスマートフォン(スマホ)用の電子部品などが低調だった。
12月は出荷が1.7%低下となり、在庫率指数は0.4%上昇した。経産省は生産の基調判断を「一進一退で推移している」に据え置いた。15年10-12月期は前期比0.6%上昇となって3期ぶりにプラスとなったものの、15年通年では前年比0.8%低下となり、2年ぶりに前年水準を下回った。
12月の生産指数は15業種のうち11業種が前月から低下し、4業種が上昇した。はん用・生産用・業務用機械が2.9%低下したほか、電子部品・デバイスも3.5%低下した。中国向け輸出を中心にスマホ用電子部品の落ち込みが目立った。輸送機械も0.9%低下した。
1月の予測指数は7.6%の上昇、2月は4.1%低下を見込んでいる。もっとも経産省はこれまでの計画から実績が下振れてきた傾向をふまえると、1月の高い伸びは実績では大きく引き下がる可能性があるとしている。
有効求人倍率、15年は1.2倍 24年ぶり高水準
厚生労働省が29日発表した2015年平均の有効求人倍率(季節調整値)は1.20倍と1991年以来、24年ぶりの高水準となった。総務省が同日発表した完全失業率(原数値)も3.4%で97年以来、18年ぶりの低い水準だった。生産や消費は低迷しているが、宿泊・飲食、医療・福祉を中心に人手不足が続いており、雇用情勢は堅調だ。
有効求人倍率は全国のハローワークで仕事を探す人1人あたり求人が何件あるかを示す。
2015年12月の有効求人倍率は前月より0.02ポイント増の1.27倍で、単月でも24年ぶりの高水準だった。仕事を探す人が減っている一方で、企業の求人は増えており、採用が難しい状況が続く。
雇用の先行指標とされる新規求人数(原数値)は前年同月より6.2%増の78万980人だった。業種別では、宿泊・飲食サービス業(同16.7%増)、医療・福祉(同7.6%増)などで求人数の増加が目立った。
15年平均の完全失業率(原数値)は前年より0.2ポイント減となり、5年連続で低下した。就業率は前年比0.3ポイント増の57.6%。年齢階級別にみると、15-64歳は73.3%と比較可能な68年以降で最高だった。男女別でも女性の就業率が68年以降最高の64.6%だった。
15年12月の完全失業率(季節調整値)は3.3%で前月から横ばい。就業者数が6403万人と前月比45万人増えた一方で、非労働力人口は50万人減の4442万人だった。15年3月以降、完全失業率は3%台前半の低い水準で推移しており、総務省は「雇用情勢は引き続き改善傾向で推移している」とみている。
全国消費者物価、12月は0.1%上昇 1月都区部はマイナス0.1%に
総務省が29日発表した2015年12月の全国消費者物価指数(CPI、2010年=100)は、値動きの大きな生鮮食品を除く総合が103.3と、前年同月比0.1%上昇した。プラスは2カ月連続。QUICKが事前にまとめた市場予想(0.1%上昇)と一致した。食料(生鮮食品除く)や家庭用耐久財、テレビをはじめとする教養娯楽用耐久財が値上がりし、原油安によるエネルギー品目の価格下落の影響を補った。
チョコレートなどの値上がりで食料価格が2.3%上昇。家庭用耐久財は4.7%、教養娯楽用耐久財は14.7%上がった。一方、原油安を背景にガソリンや電気代などエネルギー関連の価格下落は続いた。ただ前の年の12月に原油価格の下げ幅が大きかった反動で、前年比の下落の影響が11月より和らいだ面もある。食料・エネルギーを除く「コアコアCPI」は101.6と0.8%上昇し、11月(0.9%上昇)から伸び率がやや鈍った。生鮮食品を含む総合は0.2%上昇した。総務省は物価動向について「エネルギー関連の影響を除くと上昇基調」との判断を据え置いた。
併せて発表した15年通年のCPIは生鮮食品除く総合が103.2と、前年比0.5%上昇した。プラスは3年連続。同年3月までを中心に14年4月の消費増税の影響が残り、この要因を除く実質では横ばいだった。
先行指標となる東京都区部のCPI(中旬速報値、10年=100)は、16年1月の生鮮食品除く総合が101.1と、前年同月から0.1%下落した。12月(0.1%上昇)から一転、3カ月ぶりのマイナスとなった。原油安でエネルギー品目が軒並み下落した。コアコアCPIの上昇率は0.4%となり、12月(0.6%)から伸びが鈍った。外国パック旅行やテレビなどの上昇の勢いが11月より鈍ったことが影響した。


いつもながら、網羅的によく取りまとめられた記事だという気がします。しかし、3つもの統計の記事を一気に並べるとそれなりのボリュームになります。これだけでお腹いっぱいかもしれません。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは以下の通りです。上のパネルは2010年=100となる鉱工業生産指数そのもの、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は次の雇用統計とも共通して景気後退期です。

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まず、鉱工業生産ですが、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは前月比で▲0.3%の減産で、レンジでも下限が▲0.9%の減産でしたから、この下限を下回って大きな減産を記録しています。先行きは引用した記事にもある通り、製造工業生産予測調査で見て1月は+7.6%の増産の後、2月は▲4.1%の減産と中国の春節要因を織り込んだ形になっていますが、どうもこの製造工業生産予測調査は実際には下振れすることが多く、どこまで信用すべきか疑問が残ります。従って、経済産業省による基調判断は「一進一退」ながら、真横の横ばいでないなら、やや下向きの横ばいになりそうな気がしています。ここ1年ほど生産は一貫して踊り場にあり、12月統計の基となる12月時点での日本の経済活動は天候要因もあって、かなり弱かったわけですので鉱工業生産も昨日公表された商業販売に応じて減産した、ということなのかもしれません。また、問題は設備投資なんですが、日銀短観の設備投資計画がその後大きく下方修正されつつあるという情報には接していませんが、年が明けても投資が「爆発」する兆候が見られるわけでもなく、どこまで生産や日本経済をけん引するかは不透明です。上のグラフのうちの下のパネルを見ても、耐久消費財出荷はやや下向き、投資財は横ばいないしやや上向きと見えますが、日銀短観の設備投資計画に整合的なほどの上向きとは私には見えません。また、生産だけから10-12月期のGDP成長率を考えるのも無謀な気はしますが、それでもあえて予想するとすれば、鉱工業生産は四半期ベースで前期比プラスながら、10-12月期はほぼゼロか小幅のマイナス成長と私は受け止めています。

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次に、10-12月期の四半期データが利用可能となりましたので、いつもの在庫循環図を書いてみました。上の通りです。縦軸は出荷の前年同月比を、横軸は在庫の前年同月比を、それぞれプロットしています。ただし、ややトリッキーなんですが、季節調整済みの指数の前年同月比です。右向きの黄緑色の矢の2008年1-3月期から始まって、リーマン・ショックの大きな循環を経て、黄色の右上向きの矢まで循環しました。一昨年10-12月期から直近の昨年2015年10-12月期まで5四半期連続で第4象限にあり、在庫調整局面を示しています。もっとも、直近の10-12月期は横軸上はマイナス領域ながら縦軸上にあります。通常は時計回りを描くところが、この5四半期はほぼ反時計回りの動きを示しており、踊り場的な停滞局面を脱することができれば、もしそうならば、第1象限に戻るんではないかと私は予想しています。もっとも、繰り返しになりますが、足元の1-3月期は踊り場から脱することは難しそうに感じているのも確かです。

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次に、雇用統計のグラフは上の通りです。上のパネルから順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は景気後退期です。失業率についてはほぼ完全雇用状態に差しかかって、3%を下回って低下する可能性は少なさそうな気がしますが、有効求人倍率については12月統計でもまだ上昇を示しました。1.27倍に達しています。同時に、引用した記事にもある通り、雇用の先行指標である新規求人数についても増加を続けており、労働市場における人手不足はまだ続きそうな気配です。かなり長いラグがあるのかもしれませんが、基本的には、労働需給は人手不足で推移しており、雇用の量的な拡大・増加から賃金上昇や正規雇用の増加などの質的な改善も見込める局面に差しかかっていると私は考えています。

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続いて、いつもの消費者物価上昇率のグラフは上の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く全国のコアCPI上昇率と食料とエネルギーを除く全国コアコアCPIと東京都区部のコアCPIのそれぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフは全国のコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。東京都区部の統計だけが11月中旬値です。これまた、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1位の指数を基に私の方で算出しています。丸めない指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。ということで、11-12月の全国コアCPI上昇率は2か月連続でプラスを記録しましたが、国際商品市況における石油価格の下落はまだ続いており、さらに、ラグを伴いつつエネルギー以外の他の品目にも波及しますから、遅かれ早かれコアCPI上昇率はマイナスに下落すると予想しています。ただし、食料とエネルギーを除く総合で定義されるコアコアCPIの上昇率はまだ+0.8%を示していることは忘れるべきではありません。本日の日銀金融政策決定会合で導入されたマイナス金利による物価押上げ効果については未知数の部分が少なくありませんし、国際商品市況も含めて物価の先行きは不透明です。

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最後に、本日、日銀から公表された「経済・物価情勢の展望 (2016年1月)」の p.10 に示された 2015-2017年度の政策委員の大勢見通し のテーブルを引用すると上の通りです。成長率については前回見通しから大きな修正はないんですが、少なくとも来年度2016年度の物価上昇率は大きく下方修正されています。従って、今日の勇敢で大きく報じられている通り、今までの量的・質的緩和に加えて、マイナス金利という金利次元の緩和を開始し、「量」、「質」、「金利」の3つの次元で緩和を進めることとしています。
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