2016年02月22日 (月) 21:28:00

帝国データバンク「2016年度の賃金動向に関する企業の意識調査」の結果やいかに?

先週金曜日2月19日に取り上げた産労総合研究所による「2016年 春季労使交渉にのぞむ経営側のスタンス調査」に続いて、これまた見逃していて、かなり旧聞に属する話題かもしれませんが、ちょうど1週間前の2月15日に帝国データバンクから「2016年度の賃金動向に関する企業の意識調査」が公表されています。まず、帝国データバンクのサイトから調査結果について4点引用すると以下の通りです。

調査結果
  1. 2016年度の賃金改善が「ある」と見込む企業は46.3%。前回調査(2015年度見込み)を2.0ポイント下回り、リーマン・ショックで大幅減を記録した2009年調査(2009年度見込み)以来7年ぶりの減少。また、2015年度は3社に2社が賃金改善を実施
  2. 賃金改善の具体的内容は、ベア35.5%(前年度比1.2ポイント減)、賞与(一時金)26.0%(同1.4ポイント減)。2013年度以降3年連続で上昇していたベアは4年ぶりに低下
  3. 賃金を改善する理由は「労働力の定着・確保」が73.8%で過去最高を記録。また「同業他社の賃金動向」の割合も過去最高を更新するなか、「自社の業績拡大」は3年連続で減少。改善しない理由は、「自社の業績低迷」が61.5%で最多となる一方、「同業他社の賃金動向」「人的投資の増強」は前年調査より3ポイント以上増加
  4. 2016年度の総人件費は平均2.49%増加する見込み。従業員の給与や賞与は総額で約3.4兆円増加と試算される


金曜日に取り上げた産労総合研究所による「2016年 春季労使交渉にのぞむ経営側のスタンス調査」は実施時期やサンプル数がやや物足りない印象でしたが、今夜の帝国データバンクの調査は2016年1月18日から31日に実施され、調査対象は全国2万3,228社、有効回答企業数は1万519社の回答率45.3%となっています。加えて、賃金に関する調査は2006年1月以降、毎年1月に実施し、今回で11回目となりますので、かなり信頼性があるんではないかという気もします。ということで、pdfの全文リポートからグラフを引用しつつ、簡単に紹介しておきたいと思います。

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まず、上のグラフはリポートから、ここ3年の 賃金改善の具体的内容 を引用しています。ベースアップも賞与もどちらも減少しているんですが、実は、リーマン・ショック前の2008年1月に実施された同じ調査ではベースアップが40.0%、賞与が22.1%だったんですが、その後、ベースアップがジリジリと低下し、逆に、賞与がジワジワと上昇してきていたところ、ごく最近では、この動きにも歯止めがかかり、2013年調査から3年連続でベースアップが上昇していたところ、2016年調査では低下してしまいました。経済動向について考えると、賞与のような一時金ではなく、消費へのインパクトの大きい恒常所得の増加が必要です。

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次に、上のグラフはリポートから、ここ3年の 賃金を改善する理由 を引用しています。合計が100%を超えますが、複数回答です。労働力の定着・確保の割合が高く、しかも、ここ3年で急ピッチで上昇しています。人手不足の深刻さが伺えます。他方、2番めの理由は業績拡大ながら、ここ3年でジワジワと低下してきています。物価動向は今年2016年調査では大きく下げました。消費増税に伴う物価上昇が一巡した上に、国際商品市況での石油価格の低下の影響が大きいから当然といえます。なお、グラフは引用しませんが、賃金を改善しない理由も同様に質問しており、自社の業績低迷が圧倒的にトップ回答となっています。

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最後に、上のグラフはリポートから、業界別と従業員数別のそれぞれの 2016年度の総人件費の増加見通し を引用しています。少し判りにくいんですが、棒グラフは金券比画像化すると回答した企業の割合で、折れ線グラフは平均の人件費上昇率を示しています。業界によってマチマチの上昇なんですが、規模別では、厚生労働省が毎月勤労統計で調査しない5人以下企業も調査が行き届いていて興味深い結果が示されています。すなわち、通常、規模の小さい企業ほど人手不足が深刻となっていて、従業員確保のために人件費の上昇率が高いと考えられているんですが、それはあくまで毎月勤労統計の調査対象の5人以上企業であって、零細企業の5人以下企業では決して人件費上昇率が高いわけではない、という結果が明らかにされています。1000人超の大企業では、もともとのベースとなる人件費が割高な上に、安定的な賃金支給条件をテコに人件費の上昇率は低く抑えられているような印象です。結果として、帝国データバンクでは、2016年度の総人件費は前年比で平均2.49%増加すると見込まれ、総額で約4.3兆円、そのうち従業員への給与や賞与は約3.4兆円増加するとの試算結果を示しています。私の大雑把な計算では、限界消費性向が50%とすれば、年間のGDP成長率を約0.3%押し上げる可能性があります。ここ数年の企業収益の増加を考慮すれば、私のように、やや物足りない気がするエコノミストも少なくないかもしれません。
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