2016年04月01日 (金) 19:31:00

業況感が大幅に悪化した3月調査の日銀短観をどう見るか?

本日、日銀から3月調査の日銀短観が公表されています。主要な結果はほぼ前回12月調査から弱含みました。まず、ヘッドラインとなる大企業製造業の業況判断DIは12月の+12から悪化して+6を、大企業非製造業も12月の+25からやや悪化して+22を、それぞれ記録しました。また、昨年度2015年度の大企業全産業の設備投資計画は12月調査の+10.8%増から下方修正され+9.8%増と集計されています。加えて、先行き景況判断は大企業製造業でさらに低下して+3を、また、大企業非製造業でも+17を、それぞれ見込んでいます。また、2016年度の大企業全産業の設備投資計画は前年度比で▲0.9%のわずかな減少から始まっています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

大企業製造業の景況感、2期ぶり悪化 3月の日銀短観
日銀が1日発表した3月の全国企業短期経済観測調査(短観)は、企業の景況感を示す業況判断指数(DI)が大企業製造業でプラス6となり、2013年6月調査(プラス4)以来の低水準だった。前回15年12月調査(プラス12)から6ポイント悪化した。悪化は2四半期ぶり。中国など新興国経済の減速が輸出比率の高い製造業の重荷となり、自動車や機械などの悪化が目立った。国際商品価格の下落を受けて素材の景況感も悪化。1ドル=110円台前半まで進んだ円高も製造業のDI悪化につながった。
業況判断DIは景況感が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を引いた値。3月の大企業製造業DIは、QUICKがまとめた市場予想の中央値のプラス8を下回った。回答期間は2月25日-3月31日で、今回の回答基準日は3月11日だった。3カ月先の先行き判断は大企業製造業がプラス3となった。
16年度の事業計画の前提となる想定為替レートは大企業製造業で1ドル=117円46銭だった。15年度の想定レートは119円80銭と、前回の119円40銭よりも円安・ドル高方向に修正された。
大企業非製造業のDIはプラス22と、前回から3ポイント悪化した。悪化は6四半期ぶり。訪日外国人観光客による消費の伸びが鈍化し、宿泊・飲食サービスが悪化した。国内の個人消費の力強さを欠けていることも非製造業全体のDIを押し下げた。大企業非製造業の3カ月先のDIは5ポイント悪化のプラス17を見込む。
中小企業は製造業が4ポイント悪化のマイナス4、非製造業は1ポイント悪化のプラス4だった。先行きもともに悪化した。
16年度の設備投資計画は大企業全産業が前年度比0.9%減だった。15年度計画は9.8%増と、12月調査の10.8%増から下方修正され、QUICKがまとめた市場予想の中央値(9.4%増)を上回った。人手不足を背景に非製造業は高い伸びが維持されたが、新興国経済の低迷などを背景に製造業の下方修正が大きかった。16年度は大企業のうち製造業は3.1%増、非製造業は2.9%減を計画している。
大企業製造業の16年度の輸出売上高の計画は前年度比1.5%減だった。円高や新興国経済の減速を背景に、企業が慎重な姿勢を示したとみられる。
大企業製造業の販売価格判断DIはマイナス15と、12月調査から4ポイント下落した。DIは販売価格が「上昇」と答えた企業の割合から「下落」と答えた企業の割合を差し引いたもの。企業のコスト転嫁の姿勢の弱さを映した。


やや長いんですが、いつもながら、適確にいろんなことを取りまとめた記事だという気がします。続いて、規模別・産業別の業況判断DIの推移は以下のグラフの通りです。上のパネルが製造業、下が非製造業で、それぞれ大企業・中堅企業・中小企業をプロットしています。色分けは凡例の通りです。なお、影をつけた部分は景気後退期です。

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まず、当然の評価ですが、企業マインドは足元と目先の先行きで大幅に悪化しています。昨年半ばからの中国やブラジルをはじめとする新興国景気の低迷、今年明けて以降の株安や為替の円高進行などの金融市場の動揺、などなど、企業マインドを悪化させる要素が決して少なくない中で、12月調査から日銀短観は規模や産業に共通して、大きな悪化を示しています。さらに、12月調査でもそうだったんですが、先行きはさらにマインド悪化の方向が示されています。従って、国内景気だけでなく、世界全体の景気や先行きの為替動向などに対する企業の慎重姿勢は強まっていると考えるべきです。ただ、ここから先は私の解釈、というか、直感的な理解なんですが、現時点では、このまま景気後退に一直線で進む、というまでの強いマインド悪化ではないように受け止めています。すなわち、言葉を換えれば、先行きに対する漠然とした不安感とでもいう雰囲気が漂っている段階ではないかと考えられます。もしもそうであれば、政策的に何らかの景気対策を考えることにより、この漠然とした不安感はある程度までは取り除ける可能性がなくはない、と私は考えています。

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続いて、いつもお示ししている設備と雇用のそれぞれの過剰・不足の判断DIのグラフは上の通りです。設備については、後で取り上げる設備投資計画とも併せて見て、設備の過剰感は完全に払拭されたと考えるべきですし、雇用人員についても不足感が広がっています。特に、採用に苦労している中堅・中小企業では大企業よりも不足感が強まっています。ただし、足元から目先の先行きについては、設備・雇用とも大きな変化はなく、統計の誤差範囲かもしれませんが、人手不足に関してはマイナス幅の縮小すら見られます。どのような観点からも、景気がやや停滞気味に推移していることは明らかです。

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続いて、設備投資計画のグラフは上の通りです。今年2015年度の計画は黄色いラインと同色のマーカで示されていますが、見ての通りで、12月調査からやや下方修正されたものの、大企業全産業で前年度比+9.8%増と計画されています。下方修正されたとはいえ、まだかなり高い増加率だと考えるべきですし、全規模全産業では、12月調査の前年度比+7.8%増から、3月調査では+8/0%増にむしろ上方修正されています。企業の設備投資マインドはまだ強いと見てよさそうです。また、2016年度の設備投資計画も、昨夜のブログでも書いた通り、この統計の「クセ」のようなもので、ちょっぴりマイナスという標準的なところから始まっているようです。グレーのマーカです。景気が上向くのであれば、先行き上方修正される可能性が高くなるのが日銀短観の統計としてのクセと考えるべきです。

繰り返しになりますが、日銀短観に現れた企業マインドは漠然とした先行き不安を読み取れると私は受け止めています。設備投資意欲はまだ高水準にあり、規模の小さな企業では人手不足も解消されていません。ですから、先行きの漠然とした不安を取り除くような政策対応は効果ありそうな気がします。でも、大げさに対応することなく、無視できる範囲の企業マインドの変化と受け取る向きもあるかもしれません。解釈の余地は広いように受け止めています。
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