2016年04月28日 (木) 20:28:00

いっせいに公表された政府統計と日銀「展望リポート」やいかに?

今日は、月末最後の閣議日で明日からはゴールデン・ウィークが始まりますから、政府統計などの経済指標がいっせいに公表されています。鉱工業生産指数は季節調整済みの前月比で+3.6%の増産を示し、商業販売統計のうち小売業売上は季節調整していない前年同月比で▲1.1%減となり、雇用統計のうち失業率は前月から0.1ポイント低下して3.2%を、有効求人倍率は前月からさらに+0.02ポイント上昇して1.30を、それぞれ記録し、消費者物価 (CPI)は生鮮食品を除くコアCPIの前年同月比上昇率で見て▲0.3%の下落となっています。まず、長くなりますが、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

3月鉱工業生産、3.6%上昇 1-3月は1.1%低下
経済産業省が28日発表した3月の鉱工業生産指数(2010年=100、季節調整済み)速報値は前月比3.6%上昇の96.6だった。2カ月ぶりの上昇となり、伸びはQUICKがまとめた民間予測の中央値の2.9%上昇も上回った。自動車や半導体製造装置などの生産活動が良好だった。1-3月でみると、2月の落ち込みが響いて前期比1.1%低下の96.0だった。
経産省は生産の基調判断を「一進一退で推移している」に据え置いた。業種別では15業種中12業種で生産が前月を上回った。自動車などの輸送機械は8.8%上昇した。トヨタ自動車(7203)による計画減産で2月に大きく落ち込んだ反動が出た。半導体製造装置などはん用・生産用・業務用機械は3.2%の上昇となった。半面、通信会社向けの装置などが落ち込み、情報通信機械は1.5%低下した。
4月の予測指数は2.6%の上昇となった。ただ4月中旬以降に発生した熊本地震の影響は反映されておらず、経産省は「地震の影響を加味すれば、4月は前月からマイナスになる可能性が高い」とみている。
3月の小売業販売額、前年比1.1%減 2カ月ぶりマイナス
経済産業省が28日発表した3月の商業動態統計(速報)によると、小売業販売額は前年同月比1.1%減の12兆2680億円となった。2カ月ぶりに減少した。季節調整済みの前月比では1.4%増えた。
経産省は小売業の基調判断を「弱含み傾向」で据え置いた。業種別では石油製品の価格低下により燃料小売業が15.0%減となったほか、機械器具小売業も4.6%減だった。乗用車などの販売が低調で自動車小売業も3.1%減った。一方、医薬品・化粧品小売業は花粉症対策製品などが伸びて4.0%増えた。
百貨店とスーパーを含む大型小売店の販売額は前年比0.2%減の1兆6460億円。既存店ベースでは1.2%減で、うち百貨店は2.8%減、スーパーは0.3%減だった。百貨店、スーパーともに衣料品の販売が低調だった。
コンビニエンスストアの販売額は3.5%増の9371億円だった。加工食品などが伸びた。
完全失業率、3月は3.2% 前月比0.1ポイント低下 労働力調査
総務省が28日発表した3月の労働力調査によると、完全失業率(季節調整値)は3.2%で、前月比0.1ポイント低下(改善)した。低下は2カ月ぶり。QUICKの市場予想は3.3%だった。人手不足で雇用情勢が改善傾向にあり、3%台前半の低い失業率が続いた。
完全失業率を男女別にみると、男性が前月比0.2ポイント低下の3.4%、女性は0.2ポイント上昇の3.0%だった。完全失業者(季節調整値)は前月比5万人減の211万人となった。男性が9万人減る一方、女性は4万人増えた。「自発的な離職」は5万人減、勤務先の都合や定年退職などの「非自発的な離職」は1万人減った。
就業者数(同)は6387万人で、前月から13万人減少した。雇用者数は18万人減の5693万人だった。
就業率は前年同月から0.1ポイント上昇し57.2%となった。宿泊業・飲食サービス業、医療・福祉などで就業者の増加傾向が続いた。
3月全国消費者物価0.3%下落 5カ月ぶりマイナス
総務省が28日発表した3月の全国消費者物価指数(CPI、2010年=100)は、値動きの大きな生鮮食品を除く総合が102.7と、前年同月比0.3%下落した。2015年10月(0.1%下落)以来、5カ月ぶりにマイナスに転じた。QUICKの市場予想(0.2%下落)より下振れし、マイナス幅は2013年4月(0.4%下落)以来2年11カ月ぶりの大きさだった。原油価格の下落の影響で、電気代や都市ガス代、ガソリン代などエネルギー関連の品目に値下げ圧力が強まった。
生鮮食品を含む総合は103.3と0.1%下落した。下落するのは13年5月以来、2年10カ月ぶり。食料・エネルギーを除く「コアコア」の指数は101.3と0.7%上昇し、伸び率は2月の0.8%から鈍った。家庭用耐久財の価格が下がる一方、外国パック旅行や食料(生鮮食品除く)の値上がりが物価を下支えした。併せて発表した2015年度のCPI(生鮮食品除く)は14年度と比べ横ばいの103.2だった。
東京都区部の4月のCPI(中旬速報値、10年=100)は、生鮮食品除く総合が101.7と、前年同月比0.3%下落した。下落率は3月と同じだった。原油安が引き続き物価の重荷となっている。食料・エネルギーを除く総合は0.6%上昇し、3月と同じ伸び率だった。


いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。それにしても、一気にこれだけ引用するとおなかいっぱいです。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは以下の通りです。上のパネルは2010年=100となる鉱工業生産指数そのもの、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は他の統計とも共通して景気後退期です。

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鉱工業生産の増加の背景として、2月に鋼材メーカーの事故に伴って生産を停止していたトヨタ自動車の増産にともなう反動増がけん引したほか、輸出もそれなりの増産寄与があったといわれています。ほかにも、2月の減産からの自律反発とみられる動きが重なり大きな増産となりました。四半期にならして見ると、昨年10-12月期の+0.1%増の後、1-3月期は前期比▲1.1%減とマイナスに転じましたが、この先、製造工業生産予測調査によれば4月+2.6%増の後、5月▲2.3%減とジグザグの動きながら、指数に引き直せば4-5月平均は1-3月期のほぼ+2.0%増となりますので、1-3月期の減産をカバーできる可能性があります。ただし、熊本地震の影響が明らかでなく、というか、そもそも地震そのものが近日中に終息するかどうかも判りませんから、その影響については何とも見通しがたいところがあります。さらに、この製造工業生産予測調査は実績が出ると下方修正されるクセのある指標ですので、そのまま単純に指数に引き直すのははばかられます。ということで、統計作成官庁の経済産業省は基調判断を「一進一退」で据え置いていますが、鉱工業生産の先行きリスクは上振れよりも下振れの方に厚いんではないかと受け止めています。上振れについての期待は設備投資なんですが、2015年度から2016年度に先送りされた部分も少なくないと私は想像しており、消費や輸出などの最終需要次第では設備投資がそれなりに増加して増産につながる可能性も決して見逃すべきではないと予想しています。上のグラフのうちの下のパネルに示された通り、耐久消費財よりは投資財の出荷の方が底堅く推移しているのも事実です。

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続いて、商業販売統計のグラフは上の通りです。上のパネルは季節調整していない小売販売額の前年同月比増減率を、下のパネルは季節調整指数をそのまま、それぞれプロットしています。同時に総務省統計局から家計調査の結果も公表されていますが、グラフはないものの、世帯当たりの実質消費支出は前年同月比で▲5.3%の大きな落ち込みを記録しています。商業販売統計の小売販売は名目であって実質でなく、さらに、世帯当たりではなく総額の販売額ですので、ベースがかなり異なるものの、季節調整していない系列の前年同月比が▲1.1%減、季節調整済みの系列の前月比は+1.4%増となっています。引用した記事にもある通り、国際商品市況における石油価格の低下により燃料小売業が▲15.0%減と大きく売上げを減らしたほか、乗用車などの販売が低調で自動車小売業も売上げを減らしています。1-3月期をならして見ると、2月のうるう年効果により、あるいは、GDPベースの消費はプラスとなる可能性も否定できませんが、これを除けば消費の実勢はかなり停滞していると考えざるを得ません。経済産業省の基調判断の「弱含み傾向にある」はその通りです。そして、背景としては賃金の伸び悩みがあり、春闘のベースアップは冴えないものに終わりましたし、夏季ボーナスも私は増加を見込んでいますが、どこまで消費を増加させる効果があるかはビミューなところです。

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続いて、雇用統計については、上のグラフの通りです。上のパネルから順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。いずれも季節調整済みの系列です。上のグラフを見ても明らかな通り、失業率と有効求人倍率がさらに改善を示す一方で、雇用の先行指標となる新規求人がなぜか3月は大きく低下しています。このあたりは不明なんですが、人手不足がさらに進んでいる一方で、賃金が上がらないという不思議な現象が進んでいます。基本的には先月の雇用統計発表時に示したグラフの通りで、中年女性と高齢男性の労働市場参入の効果が大きいと考えています。ただし、足元で労働力化率はやや低下し始めている可能性があります。それにしても、賃金は上がらずとも人手不足で雇用の場が確保されているという点については、家計からすれば安心感があるところであり、冴えない経済指標が多い中でも、家計のマインドなどから景気が急降下する可能性を小さくしていると私は評価しています。さらに賃金が上がればマインドだけでなく、消費行動に結びついて実体経済を上向かせると期待しています。

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経済指標の最後に、いつもの消費者物価上昇率のグラフは上の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く全国のコアCPI上昇率と食料とエネルギーを除く全国コアコアCPIと東京都区部のコアCPIのそれぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフは全国のコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。東京都区部の統計だけが3月中旬値です。いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1位の指数を基に私の方で算出しています。丸めない指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。ということで、5か月振りに生鮮食品を除くコアCPI上昇率はマイナスを記録した一方で、食料とエネルギーを除くコアコアCPI上昇率はプラスを維持しており、消費増税の物価押上げ効果が一巡した昨年2015年4月以降も、極めて大雑把ながら、コアコアCPI上昇率は+0.8%前後でそれなりに安定していますので、明らかに国際商品市況における石油価格下落の影響によって我が国消費者物価が下落していることが伺われます。物価安定を目指す日銀も苦しいところです。

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ということで、昨日から開催されていた日銀金融政策決定会合ですが、金融政策は現状維持、というか、追加緩和なしで終了しました。マーケットは期待を裏切られた形で、円高が進行し株安となっています。もう修正されましたが、最初、日経新聞の電子版には「日銀覚悟の現状維持」という趣旨のタイトルの記事があったような気がします。上のテーブルは「展望リポート」の基本的見解から2015-2018年度の政策委員の大勢見通しを引用しています。インフレ目標の達成は先送りされています。
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