2016年05月12日 (木) 19:48:00

景気ウオッチャーの悪化は熊本地震の影響か?

本日、内閣府から4月の景気ウォッチャーが、また、財務省から3月の経常収支が、それぞれ公表されています。景気ウォッチャーの現状判断DIは前月から▲1.9ポイント低下して43.5を記録した一方で、経常収支は季節調整していない原系列の統計で+2兆9804億円の黒字を計上しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

街角景気、2カ月ぶり悪化 4月、熊本地震で 基調判断は据え置き
内閣府が12日発表した4月の景気ウオッチャー調査によると、街角景気の実感を示す現状判断指数は前月比1.9ポイント低下の43.5だった。悪化は2カ月ぶりで、指数は2014年11月以来の低水準だった。指数を構成する家計と企業動向、雇用関連の全項目が前月から低下した。熊本地震の影響が大きく、九州地域の現状判断指数が大幅に下がった。景気の基調判断はこれまでの「弱さがみられる」を据え置いた。
街角では地震の悪影響を懸念する声が目立ち、企業からは「熊本地震で自動車部品メーカーが操業停止したこともあり、当社の加工量も減っている」(東海・輸送用機械器具製造業)との声があがった。雇用面では「求人依頼数が前四半期よりも低調である。熊本地震の影響もあり採用を見合わす企業も出ている」(九州・人材派遣会社)との指摘もあった。
2-3カ月後の景気を聞いた先行き判断指数は1.2ポイント低下の45.5と、3カ月連続で悪化した。飲食関連が大きく悪化した家計動向のほか、企業動向、雇用関連のいずれの指数も低下した。「熊本地震による自粛ムードが高まっていることから、今後についてはやや悪くなる」(北海道・高級レストラン)との見方が出ていた。
15年度の経常黒字17兆9752億円、原油安で黒字額は2倍
財務省が12日発表した2015年度の国際収支状況(速報)によると、海外との総合的な取引状況を示す経常収支は17兆9752億円の黒字だった。原油価格の下落を受けて貿易収支が5年ぶりに黒字転換し、経常収支の黒字額は前年度(8兆7245億円の黒字)の2倍超となった。企業が海外事業への投資で受け取る配当金などの第1次所得収支は比較可能な1985年度以降で過去最大となり、20兆円を超えた。
15年度の貿易収支は6299億円の黒字だった。輸出額は3.3%減の73兆1355億円となり、3年ぶりに減少した。市況の悪化で鉄鋼の輸出額が落ち込んだことなどが響いた。輸入額は11.8%減の72兆5057億円で、6年ぶりに前年度を下回った。
サービス収支は1兆2109億円の赤字となり、赤字額は1兆5144億円減少した。項目別では「旅行収支」が訪日外国人観光客の増加を受けて、1兆2731億円の黒字となった。旅行収支は比較可能な1996年度以降で過去最大の黒字となった。
第1次所得収支は20兆5611億円の黒字となった。企業が海外事業への投資で受け取る配当金や証券投資からの収益が増え、黒字額は5855億円増加した。
同時に発表した3月の経常収支は2兆9804億円の黒字だった。経常黒字は21カ月連続。原油安による輸入額の減少などにより貿易収支は9272億円の黒字となった。輸出、輸入ともに前年同月から10%を超える減少となった。輸出は鉄鋼などの落ち込みが続いた。第1次所得収支は2兆1317億円の黒字だった。


いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、景気ウォッチャーのグラフは下の通りです。現状判断DIと先行き判断DIをプロットしています。色分けは凡例の通りです。また、影をつけた部分はいずれも景気後退期です。

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景気ウォッチャーは、現状判断DIが前月比▲1.9ポイント低下の43.5、先行き判断DIが前月比▲1.2ポイント低下の45.5をそれぞれ記録しています。上のグラフを見ても明らかなんですが、現状も先行きもジワジワと低下を続けており、供給サイドのマインドは悪化から抜け出せないでいます。特に、4月のマインドについては熊本地震の影響が色濃く出ていると受け止めています。なお、この統計の調査期間は毎月25日から月末となっています。2011年3月の震災ほどではないにしても、九州の自動車部品メーカーが操業を見合わせたり、もちろん、観光には大きな影響が及んでいるであろうことは専門外の私にも想像できます。もっとも、さすがに、2011年3月の統計では前月から現状判断DIで▲20.7ポイントの落ち込みを記録しましたが、今回2016年4月の指数は▲1.9ポイントにとどまっていますので、落ち込みとしてはかなり違いがあります。4月の現状判断DIの3つのコンポーネントの前月からの変化を見ると、家計動向関連がもっとも大きなマイナスで▲2.1ポイントを記録しており、次に、雇用関連が▲1.9ポイント、企業動向関連が▲1.5ポイントとなっており、昨日の景気動向指数と同じ傾向を示していて、家計部門がもっとも弱い現状を的確に示していると私は受け止めています。

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最後に、経常収支のグラフは上の通りです。青い折れ線グラフが経常収支の推移を示し、その内訳が積上げ棒グラフとなっています。色分けは凡例の通りです。上のグラフは季節調整済みの系列をプロットしている一方で、引用した記事は季節調整していない原系列の統計に基づいているため、少し印象が異なるかもしれませんが、経常収支についてもかなり震災前の水準に戻りつつある、と私は受け止めています。メディアの報道では2015年度の統計を取り上げて、国際商品市況における石油価格の下落から経常収支の黒字幅が前年度から倍増した点に注目が集まっています。ほぼ、年間20兆円近くの経常黒字ですから、震災前の水準に戻ったわけですが、当然ながら、このまま黒字が拡大するわけではないと考えるべきです。少なくとも、為替と石油市況はすでに反転している可能性が高いんではないでしょうか。また、貿易収支についても黒字化しているものの、輸出入ともに減少しての縮小均衡です。決して、輸出が伸びて黒字に貢献しているわけではありません。ただ、インバウンド消費だけはもう少し伸びる余地があるかもしれません。いずれにせよ、経常収支の黒字はGDP比で見てほぼ3-4%の震災以前の水準に戻ったものの、このまま黒字幅が拡大するわけではない点は注意が必要です。
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