2016年06月03日 (金) 21:54:00

本日公表の毎月勤労統計の実質賃金上昇は物価下落によるものか?

本日、厚生労働省から4月の毎月勤労統計が公表されています。ヘッドラインとなる現金給与総額は季節調整していない原系列の前年同月比で見て+0.3%増の27万4984円となり、季節調整済みの系列による製造業の所定外労働時間は前月から+0.4%増を示しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

実質賃金、4月0.6%増 物価下落で
厚生労働省が3日発表した4月の毎月勤労統計調査(速報値)によると、物価変動の影響を除いた実質賃金は前年同月に比べ0.6%増えた。増加は3カ月連続。3月はほぼ横ばいだった消費者物価が4月に0.3%下落したことが実質賃金を押し上げた。
実質賃金の増加は物価よりも給与の伸びが上回っていることを示す。賃金は緩やかな上昇傾向にあるが、伸びは小幅にとどまっており、賃上げの勢いは力強さを欠く状態が続いている。
調査は従業員5人以上の事業所が対象。名目賃金にあたる現金給与総額は0.3%増の27万4984円だった。3カ月連続で増加した。現金給与総額のうち基本給にあたる所定内給与は0.2%増の24万3275円。残業代など所定外給与は1.0%増の2万432円、特別に支払われた給与は4.3%増の1万1277円だった。
業種別では電気・ガス業の現金給与総額が4.9%増と比較的高い伸びを示した。特別に支払われた給与の増加がけん引した。娯楽や理髪店などを含む生活関連サービス業は4.6%減少した。


いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、毎月勤労統計のグラフは下の通りです。順に、上のパネルは製造業の所定外労働時間指数の季節調整済み系列を、まん中のパネルは調査産業計の賃金、すなわち、現金給与総額と所定内給与の季節調整していない原系列の前年同月比を、下のパネルはいわゆるフルタイムの一般労働者とパートタイム労働者の就業形態別の原系列の雇用指数の推移を、それぞれプロットしています。影をつけた期間は景気後退期です。

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一番上のパネルの製造業の所定外労働指数は、ほぼ鉱工業生産指数と同じ方向性の動きを示しています。鉱工業生産が4月に増産を示したわけですから、所定外労働時間指数も上昇を記録しています。次のパネルに見える賃金指数の上昇率はかなり明確にプラスに転じ、しかも上昇が加速を示し始めた、と私は受け止めています。しかしながら、引用した日経新聞の記事については、ややデフレ的なバイアスがあると私は考えており、すなわち、実質賃金の上昇が物価下落に負う部分が無視できないのは明らかとしても、例えば、名目でマイナスの上昇率が物価の影響でプラスに転じてしまう、というわけでもありません。名目でプラスですので雇用者・消費者の方にイリュージョンがあるわけでもなく、とてもわずかながら着実に所得が増加しているとの実感はあるものと考えるべきです。特に、グラフにはありませんが、フルタイムの一般労働者の所定内給与は1月+0.4%増、2月+0.7%増、3月も+0.7%増、4月は+0.5%増と着実に増加しており、一番下のパネルの一般労働者の増加率が上昇していることと相まって、かなり雇用の質的な改善が図られていると私は受け止めています。かつては、非正規雇用がさほど伸びないお給料で雇用されるケースがかなりあったんですが、昨今の人手不足により、正規雇用、しかも雇用の安定性だけでなくお給料もそれなりの伸びを示す正規雇用が増加し始めていると考えるべきです。パートタイム雇用の増加はまだフルタイムを上回っていますが、人手不足に伴って徐々にフルタイムへのシフトが進む可能性があるものと期待しています。何度か、このブログでも指摘して来ましたが、経済学の示すところに従えば、人手不足が続いたとしても、雇用の量的な拡大は完全雇用に達すれば停止する一方で、雇用の質的な改善につながると考えられ、本日公表の毎月勤労統計などの現実のデータを見る限りでは、賃金ではなく正規職員増という形での雇用の質の改善が進む可能性が十分あるんではないか、と私は考えています。
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