2016年06月20日 (月) 21:27:00

4か月振りの赤字を記録した貿易統計をどう見るか?

本日、財務省から5月の貿易統計が公表されています。ヘッドラインとなる輸出額は季節調整していない原系列の統計で前年同月比▲11.3%減の5兆910億円、輸入額も▲13.8%減の5兆1317億円で、差引き貿易収支は▲407億円の赤字を記録しています。4か月振りの赤字です。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

貿易収支、5月は赤字407億円 輸出低迷、4カ月ぶり赤字
財務省が20日発表した5月の貿易統計速報(通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は407億円の赤字(前年同月は2153億円の赤字)だった。貿易赤字は4カ月ぶり。円高やスマートフォン(スマホ)需要の一巡でアジア向けの輸出が振るわなかったうえ、熊本地震で一部の工場が生産を停止した影響が出た。QUICKがまとめた市場予想は265億円の黒字だった。
輸出額は前年同月比11.3%減の5兆910億円と、8カ月連続で減った。米国向けの鉄鋼や、ベトナム向けの半導体等電子部品などが減少した。財務省は「世界的なスマホ需要の一巡が電子部品などの輸出に影響した」と説明している。4月の熊本地震により、自動車メーカーの部品工場が生産を停止した影響も一部残ったという。地域別では、米国向けが10.7%減、中国含むアジアは13.0%減だった。
対ドルの円相場は税関長公示レートの平均値で108.97円と、前年同月と比べ8.8%の円高だった。対世界の輸出数量指数は2.4%低下し、3カ月連続でマイナスとなった。
輸入額は13.8%減の5兆1317億円と、17カ月連続で減少した。原油安でアラブ首長国連邦(UAE)からの原粗油やマレーシアの液化天然ガス(LNG)などの輸入額が減った。原粗油の輸入数量は2カ月ぶりに増加した。


いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

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貿易収支の赤字化はさほどでもない気がしますが、貿易については輸出入とも減少を続け、いわば「縮小均衡」的に差し引きたる収支が小幅に動いています。引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは黒字だったんですが、いずれにしろ、小幅の変動の中で5月の貿易収支は赤字に振れました。市場の事前コンセンサスでも300億円足らずの小幅な黒字との予想でしたから、ほぼ収支均衡に近い印象ではないかと思います。ただし、上のグラフを見ても明らかな通り、季節調整済みの系列では昨年2015年11月に黒字化してから、今年2016年2月に黒字幅としてはピークを付けた後に3か月連続で黒k時は縮小していますが、依然として、長期とはまでいなわいものの、そこそこの期間の傾向を反映する季節調整済みの系列で見た貿易収支はまだ黒字を維持しています。そして、減少を続けてきた輸入額も、これも季節調整済みの系列で見ると、5月は底入れして前月比で増加に転じています。大きな傾向に変化を生じつつある転換点という印象があるわけではありませんが、石油などの商品市況の反転とか、円高進行の為替相場とか、徐々に貿易黒字縮小ないし赤字化を促進する変更への動きが進行しつつあるような気もします。

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輸出をいくつかの角度から見たのが上のグラフです。上のパネルは季節調整していない原系列の輸出額の前年同期比伸び率を数量指数と価格指数で寄与度分解しており、まん中のパネルはその輸出数量指数の前年同期比とOECD先行指数の前年同月比を並べてプロットしていて、一番下のパネルはOECD先行指数のうちの中国の国別指数の前年同月比と我が国から中国への輸出の数量指数の前年同月比を並べています。ただし、まん中と一番下のパネルのOECD先行指数はともに1か月のリードを取っており、また、左右のスケールが異なる点は注意が必要です。ということで、季節調整していない原系列の輸出額の前年同月比で見て、輸出額は昨年2015年10月から8か月連続で減少を記録しています。特に、ここ2か月、すなわち、2016年4月と5月は2桁マイナスです。ただし、これは基本的に為替の円高進行に伴うものであり、例えば、本日公表の直近5月統計では輸出額は▲11.3%減である一方で、一番上のパネルに見えるように貿易指数による要因分解では、価格要因が▲9.0%減、数量要因が▲2.6%となります。価格要因で輸出額の減少がもたらされているといえます。もう一方の需要要因については、OECD加盟国に代表される先進国、中国に代表される新興国とも、これまた前年同月比ではまだマイナスを続けていることが、2番目と3番目のパネルから読み取れます。ただし、このマイナス幅は縮小に転じつつあり、輸出の最大のマイナス要因は為替と考えるべきです。6月の米国雇用統計などから、なかなか利上げに踏み切れない米国連邦準備制度理事会(FED)に対して、これまた追加緩和にためらいがあるように見受けられる日銀と、金動向が膠着している中で為替は円高が進行し、輸出へのダメージが懸念されます。ただ、大きな傾向に変化を生じるような貿易動向や国際情勢の動きは見出しがたく、貿易はしばらく膠着した動きを続ける可能性があります。
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