2016年10月03日 (月) 19:22:00

大企業製造業の業況判断DIが2四半期連続で横ばいを示した日銀短観をどう見るか?

本日、日銀から9月調査の短観が公表されています。ヘッドラインとなる大企業製造業の業況判断DIは+6と、めずらしくも2四半期連続の横ばいを記録し、本年度2016年度の設備投資計画は大企業全産業が前年度比+6.3%増と、わずかに6月調査を上回りました。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

9月日銀短観、大企業製造業DIプラス6 2期連続で横ばい
日銀が3日発表した9月の全国企業短期経済観測調査(短観)は、企業の景況感を示す業況判断指数(DI)が大企業製造業でプラス6だった。前回の6月調査(プラス6)から横ばいだった。海外経済の先行き不安の後退や自動車輸出の底入れ、熊本地震の影響が薄れたことが景況感を支えた。半面、外国為替市場で円相場が想定レートよりも円高に振れ、はん用機械、生産機械などのDI悪化を招いた。
業況判断DIは景況感が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を引いた値。9月の大企業製造業DIは、QUICKがまとめた市場予想の中央値のプラス7を小幅ながら下回った。回答期間は8月29日-9月30日で、回答基準日は9月12日だった。
3カ月先については、大企業製造業がプラス6になる見通し。英国のEU(欧州連合)離脱決定後の国際金融市場の落ち着きが支えになる一方、円高進行は重荷になる。
2016年度の事業計画の前提となる想定為替レートは大企業製造業で1ドル=107円92銭だった。前回の111円41銭よりも円高・ドル安方向に修正された。
大企業非製造業のDIはプラス18と、前回から1ポイント悪化した。悪化は3四半期連続。円高進行による訪日外国人(インバウンド)消費の伸び悩みや相次いだ台風上陸が小売業などの景況感を下押しした。一方、建設業や不動産業などのDIは上昇が続いた。
3カ月先のDIは2ポイント悪化し、プラス16を見込む。内需不振への懸念が根強いためとみられる。すでに高水準の建設、不動産も先行きは悪化を見込む。
中小企業は製造業が2ポイント改善のマイナス3、非製造業は1ポイント改善のプラス1だった。先行きはいずれも悪化だった。
2016年度の設備投資計画は大企業全産業が前年度比6.3%増だった。6月調査の6.2%増から上方修正されたが、前年同期(10.9%増)は下回った。大企業のうち製造業は12.7%増、非製造業は2.9%増を計画している。
16年度の全規模全産業の設備投資計画は前年度比1.7%増で、市場予想の中央値(2.3%増)を下回った。
大企業製造業の16年度の輸出売上高の計画は前年度比3.7%減で6月調査の1.6%減から下方修正された。
大企業製造業の販売価格判断DIはマイナス10と、6月調査(マイナス12)から2ポイント上昇した。DIは販売価格が「上昇」と答えた企業の割合から「下落」と答えた企業の割合を差し引いたもの。個人消費の伸び悩みや物価の低迷で販売価格には下落圧力が強い。
金融機関の貸出態度判断DIは全規模全産業で25と6月調査のプラス23から改善した。1989年12月調査(プラス26)以来の高水準だった。


やや長いんですが、いつもながら、適確にいろんなことを取りまとめた記事だという気がします。続いて、規模別・産業別の業況判断DIの推移は以下のグラフの通りです。上のパネルが製造業、下が非製造業で、それぞれ大企業・中堅企業・中小企業をプロットしています。色分けは凡例の通りです。なお、影をつけた部分は景気後退期です。

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まず、上のグラフにお示しした業況判断DIについては、規模別産業別で極めて複雑な動きを示しています。すなわち、製造業については大企業が今期も来期も前期から横ばいを示した一方で、中堅企業と中小企業は今期は前期から+2ポイントの改善を見せた一方で、先行きの来期は▲2ポイントの悪化を予想しています。非製造業については、大企業が今期▲1ポイントの悪化に続いて来期も▲2ポイントの悪化を予想している一方で、中堅企業と中小企業は」前期から今期にかけて+1ポイントとわずかながら改善を示した後、来期は中堅企業で▲5ポイント、中小企業で▲3ポイントの悪化を見込んでいます。傾向を見出しがたい動きながら、全体として、後に取り上げる設備投資計画も含めて、企業マインドはまだ不透明感が強い、と私は受け止めています。私の考える不透明感の原因は2-3点あり、第1に、円高と海外需要とそれに起因する企業業績です。円高については、大企業製造業における2016年度下半期の想定レートが1ドル107.42円ですから、本日の取引中心相場と比べれば5円くらい甘めになっている印象です。円高に振れて企業業績が伸び悩む不透明感は払拭されていません。第2に、インバウンド消費です。昨年年央あたりからの中国経済の停滞については広く認識されていましたが、我が国のインバウンド消費についても影響が出始めています。非製造業の小売業などでは不透明感が残されているような気がします。第3に、経済対策です。規模などは明らかにされていて、その基礎となる補正予算案はすでに国会に上程されていますが、業種によっては経済効果の方に確信が持てない企業も少なくないのかもしれません。

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続いて、いつもお示ししている設備と雇用のそれぞれの過剰・不足の判断DIのグラフは上の通りです。設備については、後で取り上げる設備投資計画とも併せて見て、設備の過剰感はほぼほぼ払拭されたと考えるべきですし、雇用人員についても不足感が広がっています。特に、採用に苦労しているように聞き及んでいる中堅・中小企業では大企業よりも不足感が強まっています。ただし、失業率などを見る限り、量的にはほぼ完全雇用状態に達している可能性があり、今後は質的な雇用の改善、すなわち、正社員の増加や賃金上昇などに移行する局面ではないかと、私は期待しています。

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最後に、設備投資計画のグラフは上の通りです。今年2016年度の計画は黄緑色のやや太いラインと同色の大きなマーカで示されていますが、見ての通りで、6月調査からわずかに上方修正され大企業全産業で前年度比+6.4%増と見込まれています。ただし、大企業製造業では上方修正、非製造業では下方修正となっています。なお、全規模全産業では、6月調査の前年度比ほぼ横ばいから、9月調査では+1.7%増に上方修正されています。業況判断が不透明感漂う割りには、設備投資計画は底堅いと私は理解しています。ただし、上のグラフを見ても明らかな通り、パターンは例年と同じであり、かなり2012年度と似通っていて、昨年度2015年度や一昨年度2014年度よりは下振れしているのが見て取れます。もしも、後送りされているのであれば、今年度もこの先下方修正される可能性が大いにあると覚悟すべきです。

景気に関する企業マインドは、年央時点から大きな変化は見られず、おおむね踊り場的な景気状態にある認識されていると確認できたと思います。先行きは、為替と海外経済動向の不透明感から、どうしても冴えない見通しに陥りがちですが、経済対策の効果や、この先のオリンピック需要などが加われば、消費が上向いて景気の足取りが確かなものになる可能性も秘めている気がします。もっとも、そうでないかもしれません。
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