2016年12月01日 (木) 21:38:00

法人企業統計に見る企業活動は最悪期を脱しつつあり賃上げ貢献に期待!

本日、財務省から7-9月期の法人企業統計が公表されています。季節調整していない原系列の統計で、4期連続の減収でしたが、経常利益は増益に転じました。すなわち、売上高は前年同期比▲1.5%減の323兆1626億円、経常利益は+11.5%増の16兆9639億円でした。また、設備投資は製造業・非製造業ともふるわず前年同期比で▲1.3%減の10兆3521億円と14四半期振りのマイナスを示しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

法人企業統計、設備投資1.3%減 7-9月期、14四半期ぶりマイナス
財務省が1日発表した7-9月期の法人企業統計によると、金融業・保険業を除く全産業の設備投資は前年同期比1.3%減の10兆3521億円だった。マイナスは14四半期ぶり。製造業、非製造業ともに減った。経常利益は11.5%増と4四半期ぶりに増加。7-9月としては過去最高になった。非製造業の大幅な伸びが寄与した。
産業別の設備投資動向は製造業が1.4%減と9四半期ぶりに減少した。前年の工場新設や生産能力の増強投資の反動が情報通信機械や生産用機械で出た。非製造業は1.3%減と2四半期連続のマイナス。建設業で前年にあった自社ビル建設の反動減が響いた。情報通信業では基地局など通信設備投資が減った。
国内総生産(GDP)改定値を算出する基礎となる「ソフトウエアを除く全産業」の設備投資額は、季節調整済みの前期比で0.4%増と4四半期ぶりにプラスを確保した。内訳は製造業が2.5%減で、非製造業は2.1%増だった。
経常利益は前年同期比11.5%増の16兆9639億円だった。非製造業は24.5%増と3四半期ぶりのプラス。サービス業で持ち株会社の子会社からの受取配当金が増えた。受注環境の良好な建設業で工事利益率が改善した。製造業は12.2%減と5四半期連続のマイナスだった。輸送用機械で円高による利幅が縮小した。
全産業の売上高は、前年同期比1.5%減の323兆1626億円にとどまった。製造業は3.4%減と5四半期連続で減収。情報通信機械でスマートフォン(スマホ)向け電子部品の価格が下落した。円高・ドル安の影響から、円換算の売り上げが減った。鋼材の供給過剰で鉄鋼の販売価格が下がった。非製造業も0.7%減と4四半期連続で減った。小売業で婦人衣料が不振で、インバウンド消費の客単価下落も響いた。建設業では着工の遅れから売り上げが減った。
同統計は資本金1000万円以上の企業収益や収益動向を集計。今回の7-9月期の結果は、内閣府が8日発表する同期間のGDP改定値に反映される。


やや長いものの、いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、法人企業統計のヘッドラインに当たる売上げと経常利益と設備投資をプロットしたのが下のグラフです。色分けは凡例の通りです。ただし、グラフは季節調整済みの系列をプロットしています。季節調整していない原系列で記述された引用記事と少し印象が異なるかもしれません。影をつけた部分は景気後退期を示しています。

photo


上のグラフにプロットしたように、季節調整済みの系列で見た企業活動については、昨年終わりの2015年10-12月期ころから円高の進展に伴って企業活動に陰りが見え始めた、とこのブログで指摘し、今年に入って2016年1-3月期から4-6月期についても同様の停滞が伺え、基本的に、企業活動のまだ停滞しているものの底入れから回復に向かう方向にある、と私は受け止めています。さすがに、経常利益は4-6月期から前期比でプラスに転じ、売上高も設備投資も7-9月期に至ってプラスに転じています。ただし、経常利益については特殊要因の可能性を忘れるべきではありません。すなわち、産業別に見て、上に引用した記事の4パラ目にも見える通り、「サービス業で持ち株会社の子会社からの受取配当金が増えた」とありますが、統計の項目では受取利息等が急増しているのが原因です。何が生じたのかの詳細について私は情報を持ち合わせませんが、決してサステイナブルではないと考えるべきです。いずれにせよ、個人消費の鈍い動きと企業活動そのものも決して活発ではなく、結果として売上高や経常利益で見た企業活動は停滞を示していたんですが、今年2016年の年央に至ってようやく底入れの兆しを見せたと私は考えています。昨日の生産統計にも企業活動の復活が現れているといえます。しかし、まだまだ先行きの展望は明るいものではなく、上のグラフの下のパネルに見るように設備投資はまだ横ばいを続けています。従って、経常収益が増益に戻って、「過去最高」を連発したリーマン・ショック前をも超える利益水準を達成している点は、何らかの企業の社会貢献を考える上ではそれなりの重要性を持つと考えるべきです。要するに、設備投資を縮小させつつ、賃上げにも消極的で、ひたすら内部留保として溜め込んでいるだけでいいのかどうか、ということです。政府も何らかの所得政策で賃上げをサポートすべき時期なのかもしれません。

photo


続いて、上のグラフは私の方で擬似的に試算した労働分配率及び設備投資とキャッシュフローの比率、さらに、利益剰余金をプロットしています。労働分配率は分子が人件費、分母は経常利益と人件費と減価償却費の和です。特別損益は無視しています。また、キャッシュフローは実効税率を50%と仮置きして経常利益の半分と減価償却費の和でキャッシュフローを算出しています。このキャッシュフローを分母に、分子はいうまでもなく設備投資そのものです。この2つについては、季節変動をならすために後方4四半期の移動平均を合わせて示しています。利益剰余金は統計からそのまま取っています。上の2つのパネルでは、太線の移動平均のトレンドで見て、労働分配率はグラフにある1980年代半ば以降で歴史的に経験したことのない水準まで低下しましたし、キャッシュフローとの比率で見た設備投資は50%台後半で停滞が続いており、これまた、法人企業統計のデータが利用可能な期間ではほぼ最低の水準です。他方、いわゆる内部留保に当たる利益剰余金だけはグングンと増加を示しています。これらのグラフに示された財務状況から考えれば、まだまだ雇用の質的な改善のひとつである賃上げ、もちろん、設備投資も大いに可能な企業の財務内容ではないか、と私は期待しています。

本日公表された法人企業統計などを盛り込んで、7-9月期のGDP統計2次QEが来週12月8日に内閣府から公表される予定となっています。設備投資が上方修正され、成長率もわずかながら上方修正されるんではないかと私は予想しています。でも、いくつかのシンクタンクの2次QE予想を見ていると、下方修正の方が多数意見かもしれません。いずれにせよ、改定幅は小さいと思われます。また、日を改めて2次QE予想として取りまとめたいと思います。
Entry No.5131  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

コメント

コメントを投稿する

URL
コメント
パスワード  編集・削除するのに必要
非公開  管理者だけにコメントを表示
 

トラックバック

この記事のトラックバックURL



この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
この記事へのトラックバック

 | BLOG TOP |