2017年03月09日 (木) 21:02:00

本日公表の毎月勤労統計に見られる賃金動向やいかに?

本日、厚生労働省から1月の毎月勤労統計が公表されています。景気動向に敏感な製造業の所定外労働時間指数は季節調整済みの系列で前月から横ばいを示し、他方で、現金給与指数は季節調整していない原系列の前年同月比で+0.5%の伸び、特に、そのうち所定内給与は+0.8%増となっています。ただし、消費者物価がすでにプラスの上昇を示しており、物価上昇を差し引いた実質賃金は横ばいとなっています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

実質賃金1月横ばい 物価上昇で押し下げ
厚生労働省が9日発表した1月の毎月勤労統計調査(速報値、従業員5人以上)によると、物価変動の影響を除いた実質賃金は前年同月と比べて横ばいだった。名目賃金にあたる現金給与総額は27万274円で前年同月比で0.5%増加した。物価の上昇が実質賃金を名目より押し下げた。実質賃金の力強い回復がなければ、消費の拡大にはつながりにくい。
名目賃金の内訳をみると、基本給を示す所定内給与は前年同月比0.8%増の23万8737円で、00年3月以来16年10カ月ぶりの大幅増となった。ただ雇用形態別にみるとフルタイム労働者の所定内給与は0.4%増で、16年平均の0.6%増を下回る。厚労省はフルタイム労働者比率の増加が賃金を押し上げていると分析する。
企業は将来の人手不足をみこして長く雇える正社員の求人を増やしている。そのためパートタイム労働者比率は前年と比べ0.33ポイント低下した。マイナスに転じるのは08年10月以来8年3カ月ぶりだ。パートと比べて賃金が高いフルタイム労働者が増え、賃金全体を押し上げた格好だ。
消費者物価指数(持ち家の帰属家賃を除く総合)は円安や原油相場の持ち直しで前年同月比0.6%上昇した。


いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、毎月勤労統計のグラフは以下の通りです。上から順に、1番上のパネルは製造業の所定外労働時間指数の季節調整済み系列を、次の2番目のパネルは調査産業計の賃金、すなわち、現金給与総額と所定内給与のそれぞれの季節調整していない原系列の前年同月比を、1番下の3番目のパネルはいわゆるフルタイムの一般労働者とパートタイム労働者の就業形態別の原系列の雇用の前年同月比の伸び率の推移を、それぞれプロットしています。いずれも、影をつけた期間は景気後退期です。

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まず、景気動向に敏感な所定外労働時間については、中華圏の1月春節効果などにより生産が低下した影響で残業も伸びを鈍化させ横ばいとなっています。先行き、景気が緩やかに回復するとともに、残業を示す所定外労働時間も増加に向かう可能性が高いと私は考えていますが、政府のはたらき方改革やワーク・ライフ・バランスの重視などにより、従来のような景気と残業の連動性は崩れる可能性があるんではないかとも言われており、先行きは景気に従って増加一辺倒ではない可能性もあります。賃金については、特に所定内賃金が前年から大きく伸びました。ただし、消費者物価が昨年10-12月期からヘッドライン指数の上昇率はすでにプラスに転じており、生鮮食品を除くコア指数の上昇率も今年に入ってプラスに転じていますので、さらに大きな名目賃金の伸びがなければ消費を活性化させるには力不足の可能性があります。ただ、上のグラフのうちでも一番下のパネルに示された通り、フルタイムの一般労働者の増加率がパート労働者の伸びを上回り始めました。現在、かなり完全雇用に近いものの、決して完全雇用に到達していない労働市場の状況を考えると、賃金よりも先に正規雇用の増加という形で雇用の質の向上がもたらされるのかもしれません。完全雇用に伴う賃金上昇はさらに時間がかかるのかもしれませんが、よし悪しは別として、少なくともフルタイムの一般職員の方が給与水準が高いですから、引用した記事でも示唆されているシンプソン効果により、パートタイムよりもフルタイム職員が増加するのはそれだけでマクロの所得増につながると考えるべきです。

最後に、サイド・インフォメーションながら、今日の公表から毎月勤労統計の指数が2010年基準から2015年基準に基準改定されています。厚生労働省のお知らせメモにある通り、指数は遡及改定されたものの、増減率は旧基準指数に基づくものから遡及改定されないため、新基準指数で計算している私のブログの増減率と厚生労働省の公式な増減率がビミョーに異なっている可能性があります。悪しからず。
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