2017年06月08日 (木) 23:14:00

予想に反して下方修正されたGDP統計2次QEは日本経済の停滞を示しているのか?

本日、内閣府から1~3月期のGDP統計2次QEが公表されています。季節調整済みの前期比成長率は+0.3%、年率では+1.0%を記録し、1次QEから下方改定されています。もちろん、潜在成長率をやや超えており、なかなかの高成長といえます。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

実質GDP年率1.0%増に下方修正 1~3月改定値
速報は2.2%増

内閣府が8日発表した2017年1~3月期の国内総生産(GDP)改定値は、物価変動を除いた実質で前期比0.3%増、年率換算では1.0%増だった。速報値(前期比0.5%増、年率2.2%増)から下方修正となった。法人企業統計など最新の統計を反映した。
QUICKが7日時点でまとめた民間予測の中央値は前期比0.6%増、年率2.5%増となっており、速報値から上振れすると見込まれていた。
生活実感に近い名目GDPは前期比0.3%減(速報値は0.0%減)、年率では1.2%減(同0.1%減)だった。
実質GDPを需要項目別にみると、個人消費は前期比0.3%増(0.4%増)、住宅投資は0.3%増(0.7%増)、設備投資は0.6%増(0.2%増)、公共投資は0.1%減(0.1%減)。民間在庫の寄与度はマイナス0.1ポイント(プラス0.1ポイント)だった。
実質GDPの増減への寄与度をみると、内需がプラス0.1ポイント(プラス0.4ポイント)、輸出から輸入を差し引いた外需はプラス0.1ポイント(プラス0.1ポイント)だった。
総合的な物価の動きを示すGDPデフレーターは、前年同期と比べてマイナス0.8%だった。


ということで、いつもの通り、とても適確にいろんなことが取りまとめられた記事なんですが、次に、GDPコンポーネントごとの成長率や寄与度を表示したテーブルは以下の通りです。基本は、雇用者報酬を含めて季節調整済み実質系列の前期比をパーセント表示したものですが、表示の通り、名目GDPは実質ではなく名目ですし、GDPデフレータと内需デフレータだけは季節調整済み系列の前期比ではなく、伝統に従って季節調整していない原系列の前年同期比となっています。また、項目にアスタリスクを付して、数字がカッコに入っている民間在庫と内需寄与度・外需寄与度は前期比成長率に対する寄与度表示となっています。もちろん、計数には正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、データの完全性は無保証です。正確な計数は自己責任で最初にお示しした内閣府のリンク先からお願いします。

需要項目2016/1-32016/4-62016/7-92016/10-122017/1-3
1次QE2次QE
国内総生産 (GDP)+0.6+0.4+0.3+0.3+0.5+0.3
民間消費+0.3+0.2+0.4+0.0+0.4+0.3
民間住宅+1.2+3.1+2.6+0.2+0.7+0.3
民間設備▲0.1+1.3▲0.2+1.9+0.2+0.6
民間在庫 *(▲0.3)(+0.3)(▲0.3)(▲0.2)(+0.1)(▲0.1)
公的需要+1.1▲0.9▲0.1▲0.6+0.1▲0.0
内需寄与度 *(+0.2)(+0.5)(▲0.1)(▲0.0)(+0.4)(+0.1)
外需寄与度 *(+0.5)(▲0.1)(+0.4)(+0.4)(+0.1)(+0.1)
輸出+0.5▲1.4+1.9+3.4+2.1+2.1
輸入▲2.0▲1.1▲0.2+1.3+1.4+1.4
国内総所得 (GDI)+1.3+0.6+0.1+0.0+0.1▲0.3
国民総所得 (GNI)+0.9+0.3+0.0▲0.1+0.2▲0.1
名目GDP+0.9+0.2+0.1+0.4▲0.0▲0.3
雇用者報酬+1.0+0.1+0.7+0.3▲0.1▲0.1
GDPデフレータ+0.9+0.4▲0.1▲0.0▲0.8▲0.8
内需デフレータ▲0.3▲0.7▲0.8▲0.3+0.1+0.0


上のテーブルに加えて、いつもの需要項目別の寄与度を示したグラフは以下の通りです。青い折れ線でプロットした季節調整済みの前期比成長率に対して積上げ棒グラフが需要項目別の寄与を示しており、左軸の単位はパーセントです。グラフの色分けは凡例の通りとなっていますが、本日発表された1~3月期の最新データでは、前期比成長率が5四半期連続でプラスを示し、特に大きいものではありませんが、赤の消費と黒の外需がプラス寄与しているのが見て取れます。また、最近3四半期連続でグレーの在庫がマイナス寄与していて、成長率にはマイナスなんですが、在庫調整が進んでいることを裏付けています。

photo


1~3月期のGDP統計2次QEは1次QEの前期比年率+2.2%成長から+1.0%成長と大きく下方修正されたように見えますが、かなり多くのエコノミストは新しいデータを基にした推計で成長が鈍化したとは考えていません。すなわち、年率化しない前期比伸び率で見て、1次QEの+0.5%成長から2次QEでは+0.3%成長に下振れしたわけですが、この▲0.2%ポイント分の下振れはそのまま在庫調整の進展によるものだからです。1次QE時点では在庫の寄与度は+0.1%と算出されていましたが、先週の法人企業統計を受けて2次QEでは▲0.1%の寄与度に下方修正されました。成長率への寄与度は下方修正ながら、先行きを見通せば、在庫調整が進展することにより、さらに成長への確かな道取りが見えたように多くのエコノミストは感じています。1~3月期に限って見れば、内需の寄与が+0.1%、外需も同じで+0.1%となり、数字の丸めの関係で合わせて+0.3%成長という結果になりますが、先行きについては在庫調整の進展により、外需に偏らず内需の寄与も見込めることから、バランスのいい形の成長の姿が予想されています。
ということで、2次QEでの下方修正が決して日本経済の停滞を示しているわけではない点を強調しつつ、ついでながら、最初のテーブルで懸念される項目として、名目GDP成長率に加え、国内総所得(GDI)や国民総所得(GNI)といった名目変数の成長率が軒並みマイナスに突っ込んでいます。生活実感に近い数字だけに気がかりではあるんですが、実は、私の見るところ、GDPデフレータのイタズラのような気がします。すなわち、国際商品市況における石油高が控除項目の輸入の名目値を膨らませ、GDPデフレータの上昇率がマイナスとなった影響で名目GDP成長率もマイナスを記録したのであろうと受け止めています。逆に、国内需要デフレータはプラスに振れていますので、石油価格の変動が一巡しすれば解消できる名目マイナスではなかろうかと考えています。ただ、もうひとつのマイナスで、より懸念すべきは雇用者報酬です。国内需要デフレータがプラスとなって物価上昇が観察される中で、消費の原資となる実質雇用者報酬がマイナス化しており、先行きの個人消費の動向が少し気にかかるところです。企業の設備投資よりも大きなリスクかもしれないと私は考えています。

photo


我が国のGDP統計を離れて、昨日、経済協力開発機構(OECD)か「経済見通し」OECD Economic Outlook no.101 が明らかにされています。上の画像はプレス向けの資料から pp.2-5 を連結して引用しています。
まず、世界経済については、貿易と投資が回復を示すとともに、国際商品市況における資源の値上がりを受けて資源国経済も回復する中、今年2017年の世界の成長率は+3.5%へとわずかに加速すると予想し、加えて、来年2018年もさらに成長が加速して+3.6%になると予想される一方で、景気の持ち直しは歓迎できるものの、世界経済の成長は依然としてリーマン・ショック前の過去の平均的なペースを下回っており、景気回復の勢いを増すためには政策的なサポートを強めるための一層の取組みが必要、と指摘しています。そして、日本経済については、アジア地域の貿易の順調な増加と財政刺激策により、経済成長率は今年2017年については+1.4%に高まり、来年2018年は財政支援は弱まると見込まれる一方で、労働のひっ迫や資本の不足感、過去最高水準の企業収益を背景に、雇用と企業の設備投資が増加を示し、ほぼ潜在成長率と同じ+1%近い成長を維持し、ヘッドライン消費者物価の上昇率は金融緩和により2017年の終わりには+1%に達する、と見込まれています。
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