2017年06月30日 (金) 23:14:00

いっせいに公表された政府統計から今後の景気の先行きを考える!

本日、経済産業省から5月の鉱工業生産指数(IIP)が、また、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が、さらに、総務省統計局から消費者物価(CPI)が、それぞれ公表されています。鉱工業生産は季節調整済みの系列で前月比▲3.3%の減産となり、失業率は3.1%と前月から0.3%ポイント上昇し、有効求人倍率は前月からさらに上昇して1.49と、43年振りの高水準に達し、また、生鮮食品を除くコアCPI上昇率は+0.4%と前月からやや上昇幅を拡大しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

鉱工業生産、5月は3.3%低下 自動車など反動減
経済産業省が30日発表した5月の鉱工業生産指数(2010年=100、季節調整済み)速報値は前月比3.3%低下の100.4となった。低下は2カ月ぶり。自動車メーカーを中心に、前月に大幅な増産となった反動もあって生産が抑制された。大型連休で工場の操業を停止した企業があった影響も出た。QUICKが事前にまとめた民間予測の中央値(3.2%の低下)を下回った。
単月では比較的大きな低下幅となったが、計画的な減産であるうえ4月実績(4.0%上昇)とならせば水準自体はそれほど低下していないとして、経産省は生産の基調判断を「持ち直しの動き」で据え置いた。同省では4-6月期の生産指数について「6月が大幅な減産にならない限り前四半期を上回る」とみている。
出荷指数は前月比2.8%低下の98.3だった。在庫指数は0.1%上昇の111.4だった。在庫率指数は1.9%低下の112.5となった。
5月の生産指数は15業種のうち14業種が前月から低下し、1業種が上昇した。輸送機械工業が11.7%低下したほか、汎用・生産用・業務用機械工業が2.6%、金属製品工業が6.3%それぞれ低下した。
製造工業生産予測調査によると、6月は前月比2.8%の上昇、7月は0.1%の低下を見込んでいる。6月については輸送機械工業や電気機械工業などの生産持ち直しが寄与するとみられる。経産省による補正済みの試算値では1.7%の上昇となる見通し。4-6月期の生産指数については、6月実績が試算値通りなら前期比2%程度の上昇になりそうだとしている。
求人倍率5月1.49倍、人手不足に拍車 43年ぶり高水準
企業の人手不足に一段と拍車がかかっている。厚生労働省が30日発表した5月の有効求人倍率(季節調整値)は1.49倍と、1974年2月以来43年3カ月ぶりの高さを記録。なかでも正社員の有効求人倍率は調査開始以来、最高となった。完全失業率(同)は3.1%だがまだ職種や勤務地など条件が合わない「ミスマッチ失業率」並みの低水準だ。ただ賃上げペースは緩やかで家計の節約志向は根強く、消費は勢いを欠く。
有効求人倍率は全国のハローワークで仕事を探す人1人あたり何件の求人があるかを示す。5月は前月を0.01ポイント上回り、3カ月連続で上昇した。正社員の有効求人倍率(季節調整値)は0.99倍で2004年の調査開始以来で最高となった。人手を確保したい企業は正社員の求人を増やしている。
企業の新規求人数に対して実際に職に就いた人の割合を示す充足率(季節調整値)は15.4%だった。6-7人雇おうとして採用できたのが1人という計算で、比較可能な02年以降で最低を更新した。ハローワークを介さず、インターネットなどを通じて求人広告に応募するといった統計で捕捉できない求職者も多いとみられるが、人手不足は深刻さを増している。
新規求人数を業種別にみると製造業が前年同月比11.5%増だった。自動車を中心に生産が堅調に推移。慢性的な運転手不足に悩む運輸・郵便業が10.4%増えたほか、医療・福祉業も9.0%増だった。
総務省が同日発表した5月の完全失業率は3.1%だった。前月を0.3ポイント上回り、6カ月ぶりに上昇。完全失業者(季節調整値)が205万人と、前月から19万人増えた。よりよい条件を求めて離職する人が増えたようだ。
求人はあるが勤務条件で折り合わず就業に至らない「ミスマッチ失業率」は3%超とされる。5月は失業率が上昇したとはいえ、引き続き、働く意思がある人は働ける「完全雇用」状態にある。
5月の就業者数は6547万人で、前年同月より76万人増えた。正社員は50万人、パート労働者など非正規社員は5万人増えた。就業者を男女別にみると、男性は3688万人、女性は2859万人だった。女性の就業者数は比較可能な1953年以来過去最多だ。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の宮崎浩シニアエコノミストは「当面は定年を迎えた高齢者らを非正規で再雇用するなどの対応が欠かせない」と人手不足が長期化するとみる。一方で「非正規社員は正社員より賃上げ幅が大きく、所得の増加につながりやすい面もある」と分析する。
5月の全国消費者物価、0.4%上昇 エネルギー高と魚介不漁で
総務省が30日発表した5月の全国消費者物価指数(CPI、2015年=100)は、値動きの大きな生鮮食品を除く総合指数が100.3と、前年同月比0.4%上昇した。上昇は5カ月連続。QUICKがまとめた市場予想の中央値は0.4%上昇だった。ガソリンなど石油製品の価格や電気料金の上昇が押し上げた。
生鮮食品を除く総合では全体の53.7%にあたる281品目が上昇し、180品目が下落した。横ばいは62品目だった。
生鮮食品を含む総合は100.4と0.4%上昇した。イカなど一部魚介類で不漁が続き、価格が高止まりした。生鮮食品とエネルギーを除く総合は100.8と横ばいだった。
併せて発表した東京都区部の6月のCPI(中旬速報値、15年=100)は生鮮食品を除く総合が99.8と横ばいだった。前月は0.1%上昇し1年5カ月ぶりに前年実績を上回ったものの、6月は物価上昇の勢いは続かなかった。石油製品やマグロなど一部生鮮食品が上昇した一方で、家賃や携帯電話端末料金が低下した。生鮮食品を含む総合は99.8と横ばいだった。


いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。でも、統計をいくつも取り上げたので、とても長くなってしまいました。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは以下の通りです。上のパネルは2010年=100となる鉱工業生産指数そのもの、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた期間は、後の雇用統計のグラフとともに、景気後退期を示しています。

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鉱工業生産は▲3.3%の減産でしたが、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは▲3.2%でしたので、ほぼ予想通りの結果といえます。評価としても、引用した記事にある通りで、4月+4.0%の増産の後、自動車などでゴールデンウィークの日並びがいいことなどから計画的なラインの停止などによる減産であり、製造工業生産予測調査によると、6月は+2.8%の増産、7月も▲0.1%の減産にとどまると見込まれており、統計作成官庁である経済産業省による基調判断は「総じてみれば、生産は持ち直しの動きがみられる」ということで据え置かれています。報道の通りであれば、4-6月期としてならせば+2%程度の増産となる可能性が高く、私が電卓をたたいた結果でも、6月が予測指数通りの前月比+2.8%なら4-6月期は+2.4%の増産、仮に6月が5月から横ばいであっても+1.5%の伸びとなります。月単位のジグザグはありますが、基本的には持ち直しの動きが続いており、今後についても、耐久消費財は家電エコポイント導入時に購入された白物家電などが買い替えサイクルを迎えて緩やかな増産が見込まれているほか、海外経済では景気拡大局面に入ったと考えられている欧州を中心に輸出が生産を牽引するものと見られますから、引き続き、緩やかに増産のトレンドが維持されるものと見込んでいます。

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続いて、雇用統計のグラフは上の通りです。いずれも季節調整済みの系列で、上から順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。影をつけた期間はいずれも景気後退期です。引用した記事にもある通り、失業率も有効求人倍率もいずれもバブル経済期のレベルに近いところまで人手不足を示す水準にあります。特に、有効求人倍率については、バブル経済期を飛び越えて、第1次石油危機直後の1974年までさかのぼらねば経験できない水準まで上昇を示しており、メディアなどでははやし立てていますが、繰り返しこのブログで指摘している通り、まだ賃金が上昇する局面には入っておらず、賃金が上がらないという意味で、まだ完全雇用には達していない、と私は考えています。なお、私の手元にあるデータでは、有効求人倍率の過去最高値は1973年11月の1.93となっていて、さすがに、この水準に到達するにはもっと時間がかかりそうです。なお、私自身の直観ながら、失業率が3%を下回ると賃金上昇が始まると予想していたんですが、まだそうなっていません。労働需要サイドで、デフレ経済下で安価な労働力に依存していた低生産性企業が退出し非正規雇用への需要が低下したのかもしれませんし、あるいは、労働供給サイドで、デスキリングが広範に生じているのかもしれません。たぶん、どちらも違うんだろうという気がしています。そして、ここまで日本の労働市場の賃金弾力性が大きく、賃金上昇がほとんどなくても労働供給が大いに湧き出てくるのであれば、労働市場改革なんて必要ではないのではないか、とすら思わないでもありません。でも、素直に人手不足で賃金が上昇する世界がとても遠く感じてしまいます。

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続いて、いつもの消費者物価上昇率のグラフは上の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く全国のコアCPI上昇率と食料とエネルギーを除く全国コアコアCPIのそれぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフは全国のコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。エネルギーと食料とサービスとコア財の4分割です。なお、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1位の指数を基に私の方で算出しています。丸めない指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。加えて、酒類の扱いがビミョーに私の試算と総務省統計局で異なっており、私の寄与度試算ではメンドウなので、酒類(全国のウェイト1.2%弱)は通常の食料には入らずコア財に含めています。念のため。ということで、現状での物価上昇は財関係ではエネルギーが、そして、サービスでは人手不足が物価上昇を牽引しているように見えます。コアCPIの前年同月比上昇率は、今年に入ってから4か月連続でプラスを記録し、小幅ながらジワジワと上昇幅を拡大しています。ただ、継続的に物価上昇がマイナス、というか、物価が下落するデフレからは脱却したような気もする一方で、ヘッドラインCPIで+2%の日銀の物価目標にはまだまだ遠いわけで、市場に出回っている国債を買い切る前に達成できるのだろうか、と心配になってしまいます。

いずれにせよ、今日発表された政府統計から、物価に関しては日銀の物価目標からまだまだ距離があるとはいえ、生産や生産の派生需要である雇用については、日本経済が回復ないし拡大しているとの印象がより強くなっています。目先についても、欧州を中心とする世界経済の回復が我が国経済にフォローの風を吹かせることは明らかであり、引き続き緩やかな回復・拡大が続くものと期待してよさそうです。
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