2017年08月02日 (水) 19:32:00

一進一退の続く消費者態度指数をどう見るか?

本日、内閣府から7月の消費者態度指数が公表されています。前月から+0.5ポイント上昇し43.8を記録しています。統計作成官庁の内閣府では基調判断を「持ち直し」で据え置いています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

7月の消費者態度指数、前月比0.5ポイント上昇の43.8 基調判断据え置き
内閣府が2日発表した7月の消費動向調査によると、消費者心理を示す一般世帯の消費者態度指数(季節調整値)は前月比0.5ポイント上昇の43.8だった。上昇は2カ月ぶり。株価上昇で資産効果が働き、消費者の暮らしへの見方が好転した。ビールが値上がりする一方で野菜価格が安定し、物価の見方が落ち着いたことも支えとなった。前月は0.3ポイント低下の43.3だった。内閣府は消費者心理の基調判断を「持ち直している」で据え置いた。
指数を構成する意識指標では、「暮らし向き」「収入の増え方」「耐久消費財の買い時判断」が前月を上回った。「雇用環境」は横ばいだった。
1年後の物価見通し(2人以上世帯)について「上昇する」と答えた割合(原数値)は前月より3.4ポイント低い75.8%と2カ月ぶりに減少した。一方で「低下する」との見通しは微増。「変わらない」は4カ月ぶりに増えた。調査基準日は7月15日。調査は全国8400世帯が対象で、有効回答数は5748世帯(回答率68.4%)だった。


いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、消費者態度指数のグラフは上の通りです。ピンクで示したやや薄い折れ線は訪問調査で実施され、最近時点のより濃い赤の折れ線は郵送調査で実施されています。また、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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引用した記事にもある通り、消費者態度指数を構成する4つのコンポーネントのうち、暮らし向き、耐久消費財の買い時判断、収入の増え方が上昇した一方で、雇用環境は前月と変わらず横ばいでした。上のグラフを見ても、2014年4月の消費増税の際に直近の底を打ってから、大雑把に改善傾向にあると考えていますが、まだ、サブプライム・バブル崩壊前の2005-06年における40代後半の指数の水準には達していません。7月統計の指数水準で見て、完全雇用に近い労働市場を反映して、雇用環境は48.1に達しているものの、収入の増え方が41.7、また、暮らし向きが42.3にとどまっています。雇用の改善で量的には雇用が増加し、家族の中でも働くメンバーが増加しているのかもしれませんが、お給料はさほどではなく暮らし向きも雇用の改善ほどにはよくなっていない、という実感なのでしょう。私は根本の雇用に関するマインドがいいので、収入や暮らし向きにも雇用の改善が当然に波及するものと単純に予想していましたが、まだ、ラグの範囲内なのか、あるいは、私の想定する単純な波及経路から構造変化が生じているのか、やや謎です。いずれにせよ、所得に先立ってマインドが向上を見せて来ましたが、ソフトなマインドだけでなく、そろそろハードの所得の上昇も消費の拡大には必要な段階に達しつつあるような気がします。

別の話題ですが、本日、国立社会保障・人口問題研究所から2015年度の「社会保障費用統計」が公表されています。相変わらず、高齢者にだけ優しい社会保障給付の実態が明らかにされています。可能であれば、日を改めて取り上げたい気もしますが、今週は米国雇用統計も公表される予定ですし、パスするかもしれません。
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2017年08月01日 (火) 19:32:00

東京商工リサーチによる2017年3月期決算「上場企業2,172社の平均年間給与」調査の結果やいかに?

やや旧聞に属する話題かもしれませんが、ちょうど1週間前の先週7月25日に東京商工リサーチから2017年3月期決算「上場企業2,172社の平均年間給与」調査の結果が明らかにされています。消費を支える所得の2016年度までの一隻について興味あるデータが提供されています。過去の数字ながら、図表を引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、上のグラフは東京商工リサーチのサイトから、上場企業2,172社平均年間給与の推移のグラフを引用しています。2017年3月期決算の上場企業2,172社の平均年間給与は6,281千円、中央値6,100千円で、前年より41千円+0.6%の増加となっています。2011年3月期以来7年連続の増加で7年間で491千円の上昇を示しています。ただ、直近の伸び率は2016年3月期の+1.2%増を▲0.6%ポイント下回り、2013年3月期の+0.2%増以来の+1%割れとなっています

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次に、上のグラフは東京商工リサーチのサイトから、業種別の平均年間給与のテーブルを引用しています。業種別のトップは、建設業の7,118千円となっており、このテーブルの分類による全業種で唯一7,000千円越えとなっています。活発な建設投資を背景に、好決算が続出した上場ゼネコンが引き上げた、との分析です。次いで、水産・農林・鉱業の6,946千円、金融・保険業の6,940千円、不動産業の6,902千円、電気・ガス業の6,901千円の順となっています。逆に、最低は7年連続で小売業の5,153千円となっており、次いで、サービス業の5,390千円と、これら下位2業種だけは5,000千円台でした。ただし、小売業とサービス業では7年連続の増加を示しており、深刻化する人手不足に対応した待遇改善に動いている姿が透けて見える、と分析しています。

東証1部2部に加えて、地方上場、NASDAQにマザーズと上場企業対象の調査ですので、大企業に偏っていることは明らかですから、世間一般の感触よりも高めのお給料が弾き出されているように感じますが、人手不足に対応して消費を支える所得も徐々に増加を示しているようです。
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2017年07月31日 (月) 22:57:00

6月統計の鉱工業生産指数(IIP)は順調な回復を確認!

本日、経済産業省から6月の鉱工業生産指数(IIP)が公表されています。季節調整済みの系列で前月比+1.6%の増産となっています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

6月の鉱工業生産、1.6%上昇 自動車けん引
経済産業省が31日発表した6月の鉱工業生産指数(2010年=100、季節調整済み、速報値)は101.7となり、前月から1.6%上がった。2カ月ぶりに前月を上回った。大型連休で生産を減らした自動車など輸送機械工業が6月に入って生産水準を戻し、全体のけん引役となった。基調判断は「生産は持ち直しの動き」として据え置いた。
全15業種のうち12業種で前月比プラスだった。輸送機械工業は前月比で4.2%上がった。前年同月と比べても4.5%伸びた。昨年4月に発生した熊本地震のほか、三菱自動車の燃費不正問題の影響による軽自動車の生産の落ち込みが回復したとみられる。
化学工業は前月比3.4%のプラスだった。フェノールなど化学物質や乳液など化粧品の生産が増加した。経産省は「7月に生産設備の定期修理を控えて、在庫を積み増すために生産を増やしている」とみている。
一方、ICや太陽電池など電子部品・デバイス工業は2.6%下がった。2カ月連続の低下となった。メモリー用のICが減産となった。ただスマートフォン向けなど中小型の液晶素子は10.9%上昇し好調を維持した。
メーカーの先行き予測をまとめた製造工業生産予測調査によると、7月が0.8%、8月が3.6%それぞれ上昇となった。7月は半導体など電子部品・デバイス工業のほか、夏の気温上昇で販売が伸びるエアコンなど電子機械工業も増産を見込む。
SMBC日興証券の丸山義正チーフマーケットエコノミストは「今年前半に限らず、今年後半から来年前半も世界経済の持ち直し基調が続き、日本の生産も拡大を続ける」と指摘し、生産の復調傾向が長期に及ぶと予測する。


いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは以下の通りです。上のパネルは2010年=100となる鉱工業生産指数そのもの、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた期間は景気後退期を示しています。

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季節調整済みの前月比で+1.6%の増産ですから、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサス+1.7%にほぼほぼジャストミートしたと私は受け止めています。季節調整しているとはいえ、5月のゴールデンウィークで減産し、6月はそこから増産に転じる、という判りやすいパターンのような気もしますが、単にカレンダー要因だけでなく、世界経済の回復・拡大に伴う輸出の増加や我が国国内需要の拡大にも支えられていることは忘れるべきではありません。生産と出荷がともに増加した一方で、在庫は低下し、好ましい形での増産ですし、特に、我が国のリーディング・インダストリーともいうべき自動車産業がけん引している形ですから、この先、徐々に力強さを増すものと期待してよさそうです。6月統計ですので財別の四半期ベースで見ると、輸送機械を除く資本財出荷は今年2017年1-3月期は前期比▲2.4%減でしたが、4-6月期は+4.8%増に回復を示していますし、耐久消費財も1-3月期▲2.8%減から、4-6月期は+4.6%と持ち直しています。先行きについても、製造工業生産予測調査で見て、前回調査結果は7月▲0.1%の減産となっていましたが、今回調査は7月も+0.8%増と上向いています。ただ、製造工業生産予測調査は結果的に下振れるクセがあり、経済産業省では7月は▲0.3%減と試算を示しています。でも、8月は同じ製造工業生産予測調査ながら、+3.6%の大幅増を予測しています。引き続き、生産は先行きも堅調に推移しそうです。

世界経済の今後の動向については、基本的に、順調に回復・拡大を続けるものと期待していますが、米国の連邦準備制度理事会(FED)の金融引き締め、すなわち、利上げと資産圧縮の影響、もちろん、」為替への影響も含めて、及び、今年秋に予想される中国共産党大会の後の経済政策運営に私はリスクを感じています。中国の場合は党大会までは問題ないと思えるものの、党大会後の経済動向には注意が必要かもしれません。
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2017年07月28日 (金) 23:39:00

本日公表の商業販売統計と雇用統計と消費者物価(CPI)から景気の現状を探る!

今日は、閣議日としては当月最終で、いくつか政府統計の経済指標が公表されています。すなわち、経済産業省から商業販売統計が、また、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が、さらに、総務省統計局から消費者物価指数(CPI)が、それぞれ公表されています。いずれも6月の統計です。小売業販売額は季節調整していない原系列の統計で前年同月比+2.1%増の11兆5660億円、季節調整済みの系列で前月比+0.2%を記録した一方で、失業率は2.8%と前月から▲0.3%ポイント低下し、有効求人倍率は前月からさらに上昇して1.51倍、また、正社員の有効求人倍率も1倍に達しています。また、生鮮食品を除くコアCPI上昇率は+0.4%と前月と同じ上昇幅となっています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

6月の小売販売額、2.1%増 自動車や夏物衣料が好調
経済産業省が28日発表した6月の商業動態統計(速報)によると、小売業販売額は前年同月比2.1%増の11兆5660億円だった。8カ月連続で前年実績を上回った。経産省は小売業の基調判断を「持ち直しの動きがみられる」で据え置いた。
業種別では自動車小売業の寄与度が最も高く、前年同月との比較では8.5%増加した。新型車の投入効果が続き、軽自動車を含めて好調を維持した。織物・衣服・身の回り品小売業も5.1%増だった。前年同月と比べて気温が低めに推移したが、専門店では夏物衣料が販売を伸ばした。医薬品・化粧品小売業は5.5%増だった。ドラッグストアの新規出店効果に加え、雨が少なく日照時間が長かったことから紫外線(UV)対策関連の商品などが伸びた。
大型小売店の販売額は、百貨店とスーパーの合計で0.1%増の1兆5694億円だった。既存店ベースでは0.2%増となった。百貨店は訪日外国人や富裕層向けの販売が好調だったほか、夏のセールを前倒しで実施したことが寄与し0.2%増と20カ月ぶりに前年同月を上回った。一方、スーパーは主力の飲食料品が伸びたものの衣料品が振るわず横ばいとなった。
コンビニエンスストアの販売額は2.9%増の9731億円だった。前年にチケット販売が好調だった反動もあり、サービス売上高は9カ月ぶりに減少に転じた。
正社員の求人倍率 初の1倍超え 6月1.01倍
厚生労働省が28日発表した6月の正社員の有効求人倍率(季節調整値)は前月より0.02ポイント高い1.01倍だった。1倍を超えて求人が求職を上回るのは2004年の調査開始以来初めて。企業の人手不足感が一段と鮮明になった。主婦や高齢者の非正規雇用が中心だった雇用改善が賃金水準の高い正社員に広がり、賃金上昇圧力が高まる可能性もある。
有効求人倍率は全国のハローワークで仕事を探す人1人あたり何件の求人があるかを示す。パートタイムを含む全体の有効求人倍率(同)は1.51倍で前月比0.02ポイント上昇した。バブル期で最も高かった1990年7月の1.46倍を上回った。
正社員の新規求人数は前年同月より8.7%増えた。パートタイム労働者ら非正規社員も含めた求人数の伸び(6.3%増)よりも大きかった。幅広い業種で人手不足がおこり、各企業は長期で人を雇おうと正社員の求人を増やしている。
業種別にみると、17.5%増えた宿泊・飲食サービス業や、16.3%増えた製造業の伸びが目立った。運輸・郵便業や教育・学習支援業も1割以上増えており、正社員の確保を急ぐ動きは広がりもみられる。一方、娯楽業は0.8%減り、卸売・小売業も0.2%増にとどまった。
同日発表の6月の完全失業率(季節調整値)は2.8%。15歳以上の働く意思のある人のうち失業している人の割合を示す。職種や年齢、勤務地などの条件で折り合わずに起きる「ミスマッチ失業率」は3%台前半とされ、現在働く意思のある人なら誰でも働ける「完全雇用」状態にある。
消費者物価0.4%上昇 6月、エネルギー上昇で
総務省が28日発表した6月の全国消費者物価指数(CPI、2015年=100)は、値動きの激しい生鮮食品を除く総合指数が100.2となり、前年同月比0.4%上昇した。上昇は6カ月連続だが、低水準で伸び悩みが続く。上昇はエネルギー価格が上がったことが主因で、生鮮食品とエネルギーを除く総合指数は100.7と、3カ月連続の横ばいだった。
エネルギー価格の上昇が、総合指数の0.4%の上昇幅の大部分を占めた。光熱費の電気代で上昇幅が拡大し、都市ガス代もプラスに転じた。ビールなど酒類も、6月から安売りを規制する改正酒税法が施行した影響で上昇した。イカやサケなど生鮮魚介も上昇に寄与した。価格高騰が落ち着いた野菜や、値下げが続く携帯電話機は上昇幅を抑える要因となった。
先行指標となる東京都区部の7月のCPIは生鮮食品を除く総合指数で0.2%上昇した。家庭用耐久財がエアコンの新商品の発売効果で上昇したほか、外国パック旅行費の上昇も影響した。


いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。でも、統計をいくつも取り上げたので、とても長くなってしまいました。続いて、商業販売統計のグラフは下の通りです。上のパネルは季節調整していない小売販売額の前年同月比増減率を、下のパネルは季節調整指数をそのまま、それぞれプロットしています。影を付けた期間は、次の雇用統計とも共通して、景気後退期です。

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6月の小売業販売額について、季節調整していない原系列の前年同月比で見ると、小売業全体では+2.1%増と前月と同じ伸び率で引き続き持ち直しの動きが続いています。もう少し業種別に詳しく見ると、機械器具小売業が▲2.1%の減少を示したものの、自動車小売業が+8.5%増、医薬品・化粧品小売業が+5.5%増、織物・衣服・身の回り品小売業が+5.1%増、燃料小売業が+4.4%増など、特に自動車の増加が大きくなっており、昨年2016年8月から1年近く前値同月比プラスが続いており、しかも、今年に入ってからは+5%増以上の伸びを示すこともめずらしくありません。基本的には、2014年4月の消費増税前後の駆け込み需要増とその後の反動減の影響がようやく一巡したと私は考えていますが、自動車メーカーによる新車投入効果も考えられます。余りに最近時点なので統計には反映されていない可能性が高いんですが、欧州において英仏政府やボルボ社などから、ガソリン車やディーゼル車などの販売終了がアナウンスされ、この先、ハイブリッド車への乗り換えなどが我が国でも増加する可能性があります。燃料の販売増は国際商品市況における石油価格上昇の影響ですが、今年2017年3月の+15.0%増、4月の+11.8%増に比べてピークアウトしたように受け止めています。衣類が好調なのは基本的には天候要因であり、気温が順調に上昇しているのと、一部に豪雨災害があった一方で、今年の梅雨が多くの地方で空梅雨気味であるのが影響していると考えられます。また、6月統計では前年同月比でマイナスをつけましたが、電機についても消費増税の影響は抜けつつあると私は考えています。消費については、通常、このブログでは経済産業省の商業販売統計しか見ていませんが、総務省統計局の家計調査でも、6月統計では前年同月比で見た実質伸び率が+2.3%増と、昨年2016年2月のうるう年効果を別にすれば、何と1年10か月ぶりにプラスを記録しています。消費統計はいずれも回復を示していると私は受け止めています。

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続いて、雇用統計のグラフは上の通りです。いずれも季節調整済みの系列で、上から順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。影をつけた期間はいずれも景気後退期です。引用した記事にもある通り、失業率も有効求人倍率もいずれもバブル経済期のレベルに近いところまで人手不足を示す水準にあります。特に、有効求人倍率については、バブル経済期を飛び越えて、第1次石油危機直後の1974年までさかのぼらねば経験できない水準まで上昇を示しており、しかも、引用した記事にもある通り、正社員の有効求人倍率が1倍を超えて1.01倍を記録しましたので、新聞・テレビなどのメディアなどでははやし立てていますが、繰り返しこのブログで指摘している通り、まだ賃金が上昇する局面には入っておらず、賃金が上がらないという意味で、まだ完全雇用には達していない、と私は考えています。なお、私の手元にあるデータでは、有効求人倍率の過去最高値は1973年11月の1.93となっていて、さすがに、この水準に到達するにはもっと時間がかかりそうです。昨夜のリクルートジョブズのデータとの関係で、グラフは示しませんが、非農業部門8業種のやや粗い産業別雇用者数を調べてみると、医療・福祉では今年2017年1月こそ前年同月から21万人の増加を示していますが、2月▲19万人減、3月▲14万人減、4月+16万人増の後、5月▲5万人減、6月▲2万人減と推移しています。政府による規制の強い分野ですので、単純に需要減から賃金減というわけでもなく、ひょっとしたら、政府規制による賃金伸び悩みから雇用者減が生じている可能性もありますし、それほど単純な構図ではないような気がしますが、昨年2016年10月くらいまでほぼコンスタントに前年から毎月20-30万人の雇用者があっただけに、高齢化の進展が止まったとはとても考えられない一方で、昨年10-12月期以降くらいから医療・福祉分野の雇用者の動向に何か変化が現れた可能性を感じ取ることができます。

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続いて、いつもの消費者物価上昇率のグラフは上の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く全国のコアCPI上昇率と食料とエネルギーを除く全国コアコアCPIのそれぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフは全国のコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。エネルギーと食料とサービスとコア財の4分割です。なお、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1位の指数を基に私の方で算出しています。丸めない指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。加えて、酒類の扱いがビミョーに私の試算と総務省統計局で異なっており、私の寄与度試算ではメンドウなので、酒類(全国のウェイト1.2%弱)は通常の食料には入らずコア財に含めています。念のため。ということで、現状での物価上昇は財関係ではエネルギーが、そして、サービスでは人手不足が物価上昇を牽引しているように見えます。コアCPIの前年同月比上昇率は、今年に入ってから4か月連続でプラスを記録し、小幅ながらジワジワと上昇幅を拡大しています。一方で、全国の先行指標となる東京都区部のコアCPI上昇率が6月の前年同月比保合いから、上のグラフのグレーの折れ線で示したように、7月は+0.2%とプラスを示し始めたものの、他方で、引用した記事にもある通り、全国コアCPI上昇率のほとんどがエネルギーの寄与となっています。私の計算でも、全国コアCPI上昇率+0.4%のうち、+0.37%がエネルギー価格の寄与となっています。国際商品市況における石油価格がほぼピークアウトした現状では、先行き、コアCPI上昇幅は縮小する可能性が高いんではないか、私は危惧しています。いずれにせよ、継続的に物価上昇がマイナス、というか、物価が下落するデフレからは脱却したような気もする一方で、コアCPI上昇率で+2%という日銀の物価目標にはまだまだ遠い気がします。

本日公表の消費統計や来週月曜日公表予定の鉱工業生産指数(IIP)を基に、8月14日公表予定の4-6月期GDP統計1次QEの予想が、そろそろシンクタンクなどから来週あたりに公表されるんではないかと私は考えています。そのうちに取りまとめたいと思います。
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2017年07月27日 (木) 22:57:00

リクルートジョブズの調査結果に見る派遣スタッフ時給はまだ反転しないか?

明日金曜日7月28日に失業率や有効求人倍率などの雇用統計が公表される予定となっていますが、何度か取り上げているリクルートジョブズの非正規雇用の時給調査、すなわち、アルバイト・パートと派遣スタッフの募集時平均時給の6月の調査結果が明らかにされています。リンク先は以下の通りです。



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ということで、アルバイト・パート及び派遣スタッフそれぞれの募集時平均時給の推移は上のグラフの通りです。前者のアルバイト・パート順調に賃上げがなされているんですが、派遣スタッフについては、2016年9月に前年同月比でマイナスに転じてから、3月統計ではとうとう前年同月比で▲2%を超えるマイナスを記録した後、直近の6月統計でも▲0.4%減を記録しています。この間、ゼロないしわずかながらプラスの水面上に浮上した時もあったんですが、実は、同じ業界の「エン派遣 三大都市圏の募集時平均時給レポート」でも6月の派遣スタッフ時給は昨年2016年10月から、何と、9か月連続でマイナスを記録していたりします。派遣スタッフの時給については、マイナス幅は一時より縮小して来ていますが、まだ、プラスに転じるに至っていません。
リクルートジョブズとエン・ジャパンの両社でビミョーに職種の分類が異なるので何ともいえないんですが、エン・ジャパンのデータでは2015年年央くらいから2年近く医療・介護系の派遣スタッフ時給がマイナスを続けており、リクルートジョブズでも医療介護・教育系は必ずしも上昇圧力が感じられません。他方、オフィスワークや営業・販売系はここ2-3年でプラスを維持しています。また、地域別では、両者に共通して、東海はプラス圏を維持している一方で、首都圏と関西圏はマイナスに振れています。

アルバイト・パートが堅調にプラスを続けている一方で、派遣スタッフだけがマイナスに落ち込んでいるのもやや不思議な気がします。
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2017年07月26日 (水) 19:41:00

企業向けサービス物価(SPPI)は6月統計でも引き続き堅調にプラス圏内で推移!

本日、日銀から6月の企業向けサービス物価指数(SPPI)が公表されています。ヘッドラインSPPI上昇率は+0.8%、国際運輸を除くコアSPPIも+0.7%と、前月からほとんど変化なく、引き続き、+1%を少し下回るプラス圏内で推移しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

6月の企業向けサービス価格、前年比0.8%上昇 はがきの値上げで
日銀が26日に発表した6月の企業向けサービス価格指数(2010年平均=100)は103.7で、前年同月比で0.8%上昇した。前年比での上昇は48カ月連続。上昇率は5カ月連続で横ばいで、前月比では0.1%下落した。はがきの値上げを受けて運輸・郵便価格が上昇し、指数全体を押し上げた。
はがきは日本郵便が6月1日に郵便料金を52円から62円に10円値上げした影響が出た。値上げの背景には人手不足による人件費の上昇や郵便物の減少がある。
一方で、宿泊サービス価格は上昇幅を縮小した。インバウンド(訪日外国人)需要は好調だが、全国的なホテルの建設ラッシュや近畿地方での民泊利用の増加といった供給要因が価格を押し下げた。
企業向けサービス価格指数は輸送や通信など企業間で取引するサービスの価格水準を総合的に示す。対象の147品目のうち、前年比で価格が上昇したのは81品目、下落は30品目だった。上昇から下落の品目を引いた差は51品目で、5月の確報値(48品目)から3品目拡大した。
日銀によると「人手不足による人件費の上昇を価格に転嫁する動きが今後も出てくるかを注視したい」(調査統計局)という。


いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、SPPI上昇率のグラフは以下の通りです。サービス物価(SPPI)と国際運輸を除くコアSPPIの上昇率とともに、企業物価(PPI)上昇率もプロットしてあります。SPPIとPPIの上昇率の目盛りが左右に分かれていますので注意が必要です。なお、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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上のグラフからは判りにくいかもしれませんが、ヘッドラインのSPPIの前年同月比上昇率は今年2017年2月から直近統計の6月まで、ほぼ半年近くに渡って+0.8%を続けています。日銀の物価目標が生鮮食品を除くコア消費者物価(CPI)で+2%ですから、これに比較してかなり上昇率が足りないような印象を受けるんですが、エコノミストの間ではそうは考えられていません。SPPI上昇率の+0.8%というのはかなり高い、というのが私を含めた多くのエコノミストの受け止めではないかと思います。すなわち、原辞の2010年基準のSPPIが利用可能なのはバブル経済直前の1985年からなのですが、消費税率が引き上げられた1997年度や2014年度を例外とすれば、ヘッドラインのSPPI上昇率が+0.8%を超えていたのはバブル経済崩壊直後の1993年3月までさかのぼらねばなりません。ですから、ここ数か月のヘッドラインSPPI上昇率はほぼ四半世紀振りの高さであるといっても過言ではありません。この+1%を少し下回るSPPI上昇率に対して、企業物価(PPI)のヘッドラインである国内物価は現状では約+2%なわけで、CPI換算ではまだ時間がかかるとはいえ、日銀物価目標に着実に近づいているというのが、私の感想です。先行きについては、サービス物価ですから、国際商品市況における石油価格よりもひょっとしたら為替の影響の方が大きいかもしれませんが、国内の人手不足を背景に、引き続き堅調に推移すると私は見込んでいます。先の7月の「展望リポート」で物価目標達成が先送りされましたが、少なくとも方向としては、物価を目標とした現在の日銀金融政策は間違っているわけではない、と考えるべきです。
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2017年07月25日 (火) 19:38:00

日経BP社「第18回環境ブランド調査」の結果やいかに?

とても旧聞に属する話題ですが、7月13日付けで日経BP社から「第18回環境ブランド調査」の結果が明らかにされています。主要560企業ブランドにつき、全国の消費者2万300人から環境ブランド指数を構成する4つの指標「環境情報接触度」、「環境コミュニケーション」、「環境イメージ」、「環境評価」の結果を得て指数化しています。昨年トップのトヨタ自動車から、今年はサントリーは首位を奪回しています。なお、サントリーは2011~15年まで5年連続でトップでした。100位までのランキングは以下の通りです。

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私の直観的な理解ながら、上位には食料や飲料、自動車、総合小売り業などが入っているようです。消費者を対象にしたアンケート調査結果ですから、当然ながら、BtoBの企業はいていません。高炉を持っているような製鉄会社、エチレン・プラントを主力とするような化学会社などです。そういったところこそ環境に対する負荷、特にCO2排出などが大きそうな気がするんですが、いかがなものでしょうか。それとも、環境ブランドとしては下位に沈んでいるんでしょうか?
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2017年07月24日 (月) 23:13:00

IMF「世界経済見通し改定」やいかに?

本日、クアラルンプール時間の午前11時に国際通貨基金(IMF)から「世界経済見通し改定」World Economic Outlook Update, July 2017 が公表されています。ヘッドラインとなる世界経済の成長率は今年2017年が+3.5%、来年2018年が+3.6%とともに4月時点から据え置かれています。

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まず、IMFのサイトから世界経済の成長率見通しの総括表を引用すると上の通りです。4月の「世界経済見通し」World Economic Outlook から大きな変更はありませんが、米国の成長率は2017年+2.3%から+2.1%に、2018年+2.5%から+2.1%に、それぞれ下方修正されています。どうしてかというと、財政政策が先に想定していたほど拡張的ではない "fiscal policy will be less expansionary than previously assumed" ということだそうです。他方、国別の数字は上げませんが、フランス、ドイツ、イタリア、スペインなどの多くのユーロ圏諸国の成長率は2017年の成長予測が上方修正されています。2017年1-3月期の成長率が予想以上に良好で、想定よりも強い国内需要のモメンタムが示されていると指摘されています。私のややひねくれた見方を示せば、フランス大統領選挙でのEU支持派の勝利という政治的な動向も影響しているんではないか、という気がしています。そして、我が日本については、2017年の成長見通しがやはり+0.1%ポイント上方修正されて+1.3%と見込まれており、来年2018年は4月時点の見通しから変わらず+0.6%で据え置かれています。なお、2018年の成長率見通しが2017年から大きく縮小するのは、2017年の成長率が過去にさかのぼった統計の見直し "a comprehensive revision of the national accounts" によるものであると、4月の「世界経済見通し」に明記されている通りです。ですから、ゼロ・パーセント台半ばが我が国の成長率の実力というか、潜在成長率であると考えるべきです。中国などの新興国についても4月時点から大きな変更はありません。
最後に、先行きリスクについては、短期的なリスクは概ね均衡状態にある一方で、中期的には依然として下振れリスクに傾いている "Short-term risks are broadly balanced, but medium-term risks are still skewed to the downside." と指摘しています。また、私の解釈としては、主として米国の金融引き締めの影響についてだろうと思うんですが、世界的な金融引き締めが予期していたよりも急速に行われたり、先進国・地域が保護主義へとシフトしたりした場合は、新興国市場からの資本流出が再び加速することになる "a shift toward protectionism in advanced economies could reignite capital outflow pressures from emerging market" リスクも指摘しています。
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2017年07月21日 (金) 22:56:00

NTTデータ経営研究所「AI/ロボットによる"業務代替"に対する意識調査」の結果やいかに?

昨日、7月20日にNTTデータ経営研究所から「AI/ロボットによる"業務代替"に対する意識調査」の結果が明らかにされています。2045年ともされるシンギュラリティに向かって、とても興味あるテーマです。オックスフォード大学や野村総研でもいくつか研究成果が明らかにされていて、このブログでも取り上げたことを記憶しています。まず、NTTデータ経営研究所のサイトから【調査結果 概要】を6点引用すると以下の通りです。

【調査結果 概要】
  • 「仕事はまるごと消えない。テクノロジー代替は3割程度で、7割の仕事が"手元に残る"」、「将来的に自分の仕事を代替するのは、テクノロジーよりもむしろ"自分以外の人間"」と考える傾向
  • 「コミュニケーションや創意工夫が必要な仕事は、引き続き人間が行うだろう」、一方で、「手順とルールが決められた業務は自動化されるだろう」と考える傾向
  • テクノロジーによる業務代替。過半数が"ポジティブ"
  • 「業務へのシステム、AI、ロボット等による人間の仕事の代替について、どのように感じますか」
    →「非常に楽しみであり効果に期待している」「期待をもっている」などのポジティブな回答が59%
  • AI・ロボット化に対して具体的な準備を行っているのは9%
  • さらにその中から、「環境変化に強い、上位7.7%の人物像」が判明。このグループは異動や転職等の環境変化にも適応する傾向、また、所属する職場での貢献実感が高く自己肯定感が強い


もう少しコンパクトに取りまとめて欲しい気もしますが、まあ、判りやすくはあります。上に引用した通り、結果はかなり楽観的で、ポジティブなようです。ということで、とても興味深いテーマですから、グラフをいくつか引用しつつ論点を絞って簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、リポートから 図表2-2. 自業務の、テクノロジー代替余地に関する認識 を引用すると上の通りです。最初に引用した【調査結果 概要】にもあった通り、「仕事はまるごと消えない。テクノロジー代替は3割程度で、7割の仕事が"手元に残る"」ということなんだろうと思います。このブログの2016年1月7日付けで取り上げたところですが、野村総研がオックスフォード大学グループの手法により日本で試算したところ、日本の労働人口の49%が人工知能やロボット等で代替可能、との結果を得ていますので、この50%近い数字に比較すれば、ポジティブというか、根拠なく楽観的な気もします。また、図表の引用はしませんが、もう少し具体的な業務内容に関してテクノロジーでの代替可能性を考えると、第1に、手順とルールが決められた業務は自動化されるだろう、第2に、人とのコミュニケーションが発生する業務は、引き続き人が行うだろう、第3に、創造的な仕事も、引き続き人が行うだろう、といった調査結果が示されています。

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次に、リポートから AI/ロボット等の自動化テクノロジーに関する感情 に関して、いくつかの図表をまとめて引用すると上の通りです。全体の結果として、ポジティブな「期待派」とネガティブな「抵抗派」の円グラフとともに、棒グラフで性別・年収別・年齢別の期待派と抵抗派の内訳を示しています。全体では期待派の方が多いところ、性別では男性が期待派が多いにもかかわらず、女性では抵抗派の方が多くなっています。年収別では高所得の方が期待派が多い一方で、低所得では抵抗派が目立ちます。ただし、年齢別には大きな差は見られません。なお、グラフは引用していませんが、正社員では期待派が多い一方で、派遣社員・契約社員では抵抗派の方が多くなっていたりします。
最後に、グラフは引用しませんが、この調査結果でもっとも楽観的と考えられるのは、AI/ロボット等のテクノロジーによる自動化により、削減された労働時間をいかに有効に活用するかについての回答で、「プライベートを充実させる」や「早く帰宅する」という趣旨の回答を答えた人は全体の74.2%に上ります。さらに、AI/ロボット等のテクノロジーによる自動化に対する対策については、9%のみが対応している一方で、91%は対策は取っていません。まあ、そうなんでしょうね。

本日、内閣府から「財政経済白書」が公表されています。かつては、このブログでもがんばって当日中に取り上げたこともあるんですが、最近時点では取り逃している場合が多くなっています。新聞やテレビなどの大手メディアでも注目している人気の白書ですから、このブログでは今年も遠慮しておきたいと思います。
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2017年07月20日 (木) 23:53:00

2か月振りに黒字を記録した貿易統計における輸出の先行きやいかに?

本日、財務省から6月の貿易統計が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、輸出額は前年同月比+14.9%増の5兆8514億円、輸入額は+17.8%増の6兆547億円、差引き貿易収支は▲2034億円の赤字を計上しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

6月の貿易収支、2カ月ぶり黒字 4399億円 1~6月は3期連続黒字
財務省が20日発表した6月の貿易統計(速報、通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は4399億円の黒字だった。貿易黒字となるのは2カ月ぶり。QUICKがまとめた市場予想の中央値は4880億円の黒字だった。半導体製造装置や自動車などの輸出が好調に推移したが、石炭などをはじめとした輸入額の伸びが上回り前年同月の黒字幅(6864億円)は下回った。
輸出額は前年同月比9.7%増の6兆6075億円と7カ月連続で増加した。6月の為替レート(税関長公示レートの平均値)が1ドル=110.91円と前年同月に比べ円安だったことに加え、数量ベースでも堅調に推移した。
韓国向けのIC製造装置が好調だったほか、米国向けの自動車や台湾向けの鉄鋼板製品の伸びなども目立った。地域別では対米国が7.1%増、対欧州連合(EU)が9.6%増、対アジアが13.6%増といずれも増加した。
輸入額は15.5%増の6兆1676億円となった。資源価格が前年同月から上昇しているのに伴い、石炭や液化天然ガス(LNG)、原粗油の輸入額が増加した。石炭は主要な輸入先であるオーストラリアをサイクロンが襲った影響などで価格が高くなっているうえ、数量ベースでも19.8%増加した。
併せて発表した2017年1~6月の貿易収支は1兆444億円の黒字だった。半期ベースで3期連続の黒字となったが、資源関連の輸入額の増加によって前年同期と比べ黒字幅は4割縮小した。輸出額は前年同期比9.5%増の37兆7872億円、輸入額は12.2%増の36兆7428億円となった。輸出について、財務省は昨年発生した熊本地震からの反動増も「少なからず出ているのではないか」とみている。


いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

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まず、貿易収支については、季節調整していない原系列の統計では、4月黒字、5月赤字、6月黒字となった一方で、季節調整済みの系列では4~6月の3か月とも黒字ながらも、一貫して黒字幅は縮小を続けました。ひとつには国際商品市況における石油などの資源価格の動向に起因する輸入額の増加が要因なんですが、少なくとも、我が国の輸入価格指数に見る原油価格については、昨年2016年1~3月期にほぼ底を打って上昇に転じた後、今年2017年1~3月期に上昇局面を終えて、その後は小幅な動きになっています。大雑把に直近時点で高止まりしているカンジですが、ここ2~3か月はそれなりに安定して推移していると評価できます。それにしても、輸入物価が上昇しているんですから、我が国から見て交易条件が悪化しているわけです。また、引用した記事にもある通り、昨年4月の熊本地震からの反動による輸入増も一定のボリュームがあったようです。先月と同じように、鉱物性燃料の6月の輸入額について前年同月比を計算すると+31.1%であり、5月の+40%超よりやや伸び率は鈍化したものの、このブログでも私が何度か主張した通り、輸入については「要るモノは要る」というのが私の考えであり、特に、そのモノが鉱物性燃料であれば輸入せざるを得ないわけですから、我が国のマクロ経済には何ら問題なはいと考えています。

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輸出をいくつかの角度から見たのが上のグラフです。上のパネルは季節調整していない原系列の輸出額の前年同期比伸び率を数量指数と価格指数で寄与度分解しており、まん中のパネルはその輸出数量指数の前年同期比とOECD先行指数の前年同月比を並べてプロットしていて、一番下のパネルはOECD先行指数のうちの中国の国別指数の前年同月比と我が国から中国への輸出の数量指数の前年同月比を並べています。ただし、まん中と一番下のパネルのOECD先行指数はともに1か月のリードを取っており、また、左右のスケールが異なる点は注意が必要です。中国や欧州をはじめとする海外経済の順調な回復・拡大に応じて、我が国の輸出数量も拡大を示しています。上のグラフのうちの一番上のパネルを見ても、最近数か月では輸出額の伸びのうち、青い価格の寄与よりも赤い数量の寄与の方が大きくなっているのが見て取れます。下の2つのパネルからも、先進国や中国のOECD先行指数の上昇に伴った我が国からの輸出の拡大が示されています。

  実質GDP消費者物価指数
(除く生鮮食品)
 
消費税率引き上げの
影響を除くケース
 2017年度+1.5~+1.8
<+1.8>
+0.5~+1.3
<+1.1>
 4月時点の見通し+1.4~+1.6
<+1.6>
+0.6~+1.6
<+1.4>
 2018年度+1.1~+1.5
<+1.4>
+0.8~+1.6
<+1.5>
 4月時点の見通し+1.1~+1.3
<+1.3>
+0.8~+1.9
<+1.7>
 2019年度+0.7~+0.8
<+0.7>
+1.4~+2.5
<+2.3>
+0.9~+2.0
<+1.8>
 4月時点の見通し+0.6~+0.7
<+0.7>
+1.4~+2.5
<+2.4>
+0.9~+2.0
<+1.9>


最後に、貿易統計を離れて、上のテーブルは日銀金融政策決定会合で示された「展望リポート」から政策委員の大勢見通しを引用しています。日銀のインフレ目標である「2%程度に達する時期は、2019年度頃になる可能性が高い」(p.4)と、目標達成時期は後送りされました。
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2017年07月19日 (水) 19:39:00

野村総研による国内100都市を対象とした成長可能性ランキングやいかに?

とても旧聞に属する話題ながら、7月5日に野村総研がランキングによる都市の持つ「成長可能性」の可視化というタイトルでNRIメディアフォーラムを開催したタイミングで、国内100都市を対象に成長可能性をランキングした結果を明らかにしています。野村総研が提唱する産業創発力の観点から現状と将来のポテンシャルを分析した「成長可能性都市ランキング」が明らかにされています。当日の配布資料もpdfでアップされていて、詳細な情報の入手が可能となっています。今夜のところは、地図でプロットされたトップテンのランキングの画像だけ引用しておきます。

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上の画像は、総合ランキングでみた成長可能性の高い上位都市を地図に落としています。要するに、現状でのランキングといえます。見れば明らかな通り、東京都区部がトップ、2位が福岡市、3位が京都市となっています。東京都区部は文句なしでしょうが、福岡市は空港・港湾・新幹線へのアクセスや多様性に対する許容度などが評価されています。京都市は文化財やアートとのふれあい、国際的な開放度、都市内の公共交通機関の充実などがアドバンテージとして上げられています。まあ、そうなんでしょうが、よく調べれば、そういった都市はもっとありそうな気もします。名古屋市がトップテンに入っていないのも、少し違和感があります。

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次に、上の画像は、ポテンシャルランキングでみた成長可能性の高い上位都市のトップテンです。ここで、東京都区部や大阪市などが軒並み抜けるのに対して、福岡市がトップに躍り出ます。そして、地図を見れば明らかな通り、ポテンシャルでは西高東低の分布となっています。というか、トップテンについては九州に多く集中しており、沖縄も含めれば九州・沖縄でトップテンのうち6都市を占めています。しかしながら、トップの福岡市については、例えば、ビジネス環境が整っているにもかかわらず独自の産業が少ない点を上げて、伸びしろが大きいと判断されたようで、少し疑問に感じないでもありません。まあ、私なんぞが思いつきもしない観点がたくさんあるんだろうという気はします。

最後に、評価視点別ランキングとして、4点目に人材の多様性・充実という観点があるんですが、トップが東京都区部で2位が京都市と、大学ランキングみたいなんですが、九州というか、関西から西の地方は、この項目に弱点があります。ようやく5位に福岡市が入っているだけで、あとは首都圏に名古屋圏に関西圏となっています。地方の活性化のためには進学・教育や仕事の面で人を引きつける必要があると考えられ、こういった弱点を克服しつつ地方再生が進むんだろうと思います。
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2017年07月18日 (火) 19:52:00

東京商工リサーチによる「女性役員比率」調査の結果やいかに?

やや旧聞に属する話題かもしれませんが、先週7月10日付けで東京商工リサーチから2017年3月期決算の上場企業2,430社「女性役員比率」調査の結果が明らかにされています。2017年3月期決算の上場企業2,430社の役員総数は2万8,465人に上るうち、女性役員は957人で全体のわずか3.3%にとどまっています。グラフを引用しつつ、簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、上の円グラフは2017年3月期決算の上場企業2,430社すべての女性役員比率です。繰り返しになりますが、上場企業2,430社の女性役員比率は3.3%で極めて低く、しかも、女性役員が1人もいない企業が1,682社(69.2%)と7割近くを占めます、このゼロを含めて、上のグラフに見られる通り、女性役員比率10%未満が2,088社(85.9%)に上っています。他方、わずかに1社ながら、50%以上の企業もあったりします。お化粧品製造のシーボンで、女性比率は60%だそうです。

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次に、やや粗めの業種別の女性役員比率のグラフは上の通りです。もう少し細かい業種で見る女性役員の構成比では、最高が保険業の12.4%で11社の役員総数169人のうち女性役員は21人でした。以下、石油・石炭製品は5.77%で役員総数104人のうち女性役員6人、医薬品は5.74%で役員総数523人、女性役員30人、空運業は5.3%で役員総数56人、女性役員3人、サービス業は5.2%で役員総数2,043人、女性役員108人と続いています。一方、最低は鉄鋼の1.5%で役員総数517人、女性役員8人だそうです。逆に、女性役員がゼロの企業の構成比は、最高がゴム製品で85.7%の12社、次いで、電気機器で82.0%の165社、建設業で81.7%の112社、金属製品で81.5%の53社、鉄鋼で81.4%の35社となっています。石油・石炭製品を別にすれば、極めて大雑把に、いわゆる重厚長大産業で女性役員比率が低く、女性の活躍の場の多い保険業などの非製造業で女性役員比率が高いのかもしれません。

政府見解の受け売りに近いんですが、一般的に、女性が企業の意思決定に関わることで多様な価値観が企業の経営に反映され、多様な価値観を受容する組織ではイノベーションが促進される場合が多いと考えられています。そういった観点から、また、働く女性の処遇からも、女性役員比率の上昇が望まれそうな気がします。
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2017年07月16日 (日) 18:26:00

エコノミスト誌によるビッグマック指数やいかに?

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英国エコノミスト誌の最新号において、世界各国の購買力平価を計測するひとつの指標であるビッグマック指数が明らかにされています。今年初めからの変化も含めて、上のグラフの通りです。
スライドが右にあるほど自国通貨が米ドルに比べて高く評価されていて、逆に、左にあるほど低く評価されているわけです。本文から引用すると、日本円については、"The latest version of the index shows, for example, that a Big Mac costs $5.30 in America, but just ¥380 ($3.36) in Japan. The Japanese yen is thus, by our meaty logic, 37% undervalued against the dollar." ということになります。
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2017年07月14日 (金) 22:38:00

NTTデータによる2017年上半期「ソーシャルヒット番付」やいかに?

昨夜に続いて、やや旧聞に属する話題かもしれませんが、イマツイが、2017年上半期のソーシャルヒット番付を発表、と題して、6月28日付けでNTTデータから2017年上半期「ソーシャルヒット番付」が明らかにされています。私もすべてをフォローしているわけではありませんが、取りあえず、以下の画像だけ引用しておきます。番付に登場するモノが何かについては、このブログの管理者ではなく、Googleにでも聞いてみることをオススメします。

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2017年07月13日 (木) 22:41:00

トランプ大統領は米国の評価を低下させているのか?

とても旧聞に属するトピックですが、私がよく参照している米国の世論調査機関ピュー・リサーチ・センターから6月26日付けで、U.S. Image Suffers as Publics Around World Question Trump's Leadership と題するリポートが明らかにされています。オバマ前大統領に比べて、現在のトランプ大統領の評価が低く、それがひいては米国の評価の低下にもつながりかねない、という論調を示しています。かなり多くの国を調査対象にしていて、もちろん、欧州や日本を含むアジアの主要国も入っていますので、図表を引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、上のグラフはリポートから引用しており、オバマ前大統領末期とトランプ現大統領初期の比較、米国大統領に対する信任と米国の見方についての結果です。大統領交代とともに米国大統領への信認はまったく逆転した感があります。米国そのものに対する好意的な見方が減少しているのも見て取れます。以下のグラフすべてに共通して、世界37か国からの回答結果です。

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次に、上のグラフもリポートから引用しており、オバマ前大統領とトランプ現大統領のそれぞれに対する信頼感の差を算出しています。スウェーデンから始まって、軒並みオバマ前大統領の方をトランプ現大統領よりも高く評価する国が並んでいるんですが、一番下の2国、すなわち、イスラエルとロシアだけはトランプ現大統領の方を高く評価しています。極めて大雑把には、成熟した民主主義体制下にある先進国の方がオバマ前大統領の方をより高く評価している傾向が読み取れます。我が日本は▲54ポイント差でオバマ前大統領の方を高く評価しており、平均的な水準よりもややトランプ現大統領に厳しい部類のような気がします。

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次に、上のグラフはリポートから引用しており、国別・地域別の米国への見方を示しています。"Views of the U.S. vary across regions" とのタイトル通りで、地域により、また、地域内でも国により、米国への好感度は大きく差があり何ともいえません。ただ、上のグラフは "Views of the U.S." と米国を対象としているのに対して、グラフの引用はしませんが、別に、"Views of Americans" の調査結果のグラフも同じページにあり、米国に対する好感度よりも米国民に対する好感度はかなり上回っている印象があります。また、これもグラフの引用はしませんが、米国の大衆文化、すなわち、音楽、映画、テレビに対する好感度はごく一部の例外を除いて、世界的にかなり高くなっているとの調査結果も示されています。国と国民と文化、特に大衆文化は少し違いがありそうです。

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最後に、上のグラフはリポートから引用しており、トランプ現大統領に対する地域別・国別の信頼感を示しています。ロシアを除く欧州とイスラエルを除く中東諸国と中南米ではトランプ大統領への信認はかなり低く、アジアでは国により大きな差があるものの、おおむね信頼感は高くない一方で、アフリカでも国により差は見られますが、唯一地域としてトランプ大統領に対する信認が50に達しています。我が国では72vs24で不信任が信任を上回っており、世界全体の74vs22とのトリプル・スコアとほぼ近い比率を示しています。世界的にトランプ大統領への信頼感が低くなっている現状が見て取れます。

米国のオバマ前政権に対する評価として、2008年の初当選の大統領選に続く2010年の中間選挙で、まるで当時の日本のような議会でのねじれ現象が生じて、優柔不断で決めきれない印象を持った人もいたかもしれませんが、他方で、トランプ政権になれば「前のオバマ政権はよかった」という意見がとてもたくさん出るだろう、と指摘するエコノミストも少なくありませんでした。まったく、その通りかもしれません。
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2017年07月12日 (水) 19:44:00

企業物価(PPI)上昇率は前年同月比+2%強でそろそろ頭打ちか?

style="color:#ff0000;font-size:2em;font-weight:bold;" href="http://www.boj.or.jp/statistics/pi/cgpi_2015/index.htm/" title="企業物価指数 (2015年基準)">企業物価 (PPI)が公表されています。ヘッドラインとなる国内物価の前年同月比上昇率は前月統計と同じ+2.1%を記録しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

6月の企業物価指数、2.1%上昇 6カ月連続で前年上回る 伸び率は頭打ち
日銀が12日に発表した6月の国内企業物価指数(2015年平均=100)は98.4で、前年同月比で2.1%上昇した。6カ月連続で前年を上回った。原油や天然ガスなどの国際商品価格の前年比での上昇を製品価格に転嫁する動きが続いた。ただ、伸び率は頭打ちで、前月比では横ばいだった。
燃料の天然ガスや原油の1~3月期の価格高を反映し、電力価格が値上がりした。北海道の秋サケの不漁が原因でいくらの価格も上がった。一方で、原油価格の足元での下落を背景に石油・石炭製品などの価格は下がり、上昇分を打ち消した。
円ベースの輸出物価は前年比で5.6%上昇し、前月比では0.8%下落した。輸入物価は前年比で11.9%上昇し、前月比では1.6%下落した。前月比での原油安や外国為替市場での円高の進行が影響した。
企業物価指数は企業同士で売買するモノの価格動向を示す。公表している744品目のうち、前年比で上昇したのは353品目、下落したのは300品目だった。上昇と下落の品目差は53品目と、5月の確報値(72品目)から減少した。
日銀の調査統計局は「サービス価格とは異なり、人手不足による人件費の上昇を財の価格に転嫁する動きは見られない」と分析している。


いつもながら、よく取りまとめられた記事だという気がします。次に、企業物価(PPI)上昇率のグラフは上の通りです。上のパネルから順に、国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率、需要段階別の上昇率を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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ヘッドラインの国内物価の前年同月比上昇率は先月や先々月と同じ+2.1%ですから、引き続き堅調な推移と考えていますが、現在の+2%の国内物価上昇率はかなりの部分を国際商品市況における石油価格や資源価格の上昇の寄与によるものですから、例えば、上のグラフの下のパネルに見られる通り、石油を含む素原材料価格がすでにピークアウトした今後の物価の推移に注目すべきであり、金融政策よりも石油価格の動向に敏感な物価ですから、年度後半には物価上昇率がピークアウトする可能性も否定できません。ただ、先月や今月のPPI統計を見る限りは、4月の年度替わりの価格改定期の値上げがいくぶんなりとも浸透し、その流れを引き継いでいるように見受けられます。PPIの外数でSPPIなんですが、運輸サービスなどで順調に価格転嫁が進めば、PPIの上昇やひいては賃金上昇にもプラスなんではないかと私は考えています。輸入物価と素原材料価格はヘッドラインとなる国内物価の先行指標と考えられるんですが、上のグラフのうちの下のパネルの素原材料の上昇率はまだまだ高いものの、ピークアウトしつつある印象ですし、輸入物価上昇率もまだ2桁ながら5月+12.5%から6月は+11.9%へ伸びが鈍化しているのも事実です。消費者物価(CPI)への本格的な転嫁は少し先になりそうで、PPIとCPIには当然のラグがあり、PPI上昇率が鈍化すればCPIの伸びも停滞する、ということになる可能性が高いと考えるべきです。そして、そのCPIの伸びが鈍化する時期において、日銀の物価目標である+2%に達している可能性は低いんではないかと懸念しています。
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2017年07月11日 (火) 21:13:00

日銀「さくらリポート」に見る各地域の景気の現状やいかに?

昨日午後、四半期ごとの支店長会議に合わせて日銀から「さくらリポート」が公表されています。以下のテーブルの通りです。

 2017年4月判断前回との比較2017年7月判断
北海道緩やかに回復している回復している
東北緩やかな回復基調を続けている緩やかな回復基調を続けている
北陸緩やかに拡大している緩やかに拡大している
関東甲信越緩やかな回復基調を続けている緩やかな拡大に転じつつある
東海緩やかに拡大している緩やかに拡大している
近畿緩やかに回復している緩やかな拡大基調にある
中国緩やかに回復している緩やかに拡大しつつある
四国緩やかな回復を続けている緩やかな回復を続けている
九州・沖縄緩やかに回復している地域や業種によってばらつきがみられるものの、緩やかに拡大している


上のテーブルを見れば明らかなんですが、北海道、関東甲信越、近畿、中国、九州・沖縄の5地域で総括判断を引き上げている一方で、残り4地域では総括判断に変更なしです。総括判断が上方修正された地域の背景については、生産が、海外向けの電子部品・デバイスや生産用機械を中心に増加していることや、個人消費が、耐久消費財や高額品の販売堅調などから上向いていること、などが上げられています。全体として、「海外経済の緩やかな成長に伴い、輸出が増加基調にある中で、労働需給が着実に引き締まりを続け、個人消費の底堅さが増しているなど、所得から支出への前向きな循環が強まっている」と結論しています。
なお、トピック分析では、前回の4月リポートから、やや遅れて別冊で公表されるスタイルになり、6月にさくらレポート別冊として「各地域における女性の活躍推進に向けた企業等の取り組み」と題するリポートが明らかにされています。今回はどうなるのでしょうか?
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2017年07月10日 (月) 22:57:00

停滞する機械受注と強気な景気ウォッチャーと震災前の水準に戻った経常収支!

本日、内閣府から5月の機械受注が、また、6月の景気ウォッチャーが、加えて、財務省から5月の経常収支が、それぞれ公表されています。機械受注では変動の激しい船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注の季節調整済みの系列で見て前月比▲3.6%減の8055億円だった一方で、景気ウォッチャーでは現状判断DIが前月から+1.4ポイント上昇して50.0を、先行き判断DIも+0.9ポイント上昇して50.5を、それぞれ記録し、また、経常収支は季節調整していない原系列の統計で1兆6539億円の黒字を計上しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

機械受注、5月3.6%減 判断8カ月ぶり下げ、非製造業が低調
内閣府が10日発表した5月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標とされる「船舶・電力除く民需」の受注額(季節調整値)は、前月と比べ3.6%減の8055億円だった。2カ月連続の前月割れで、QUICK算出の市場予想(1.6%増、中央値)を大幅に下回った。非製造業の低迷が続く。内閣府は基調判断を「持ち直しの動きに足踏みがみられる」から「足踏みがみられる」へ、8カ月ぶりに下方修正した。
非製造業が5.1%減と3カ月連続で前月を下回った。「通信業」は次世代投資が立ち上がる前の端境期にあるといい、29.5%減だった。鉄道の設備更新の一巡などにより「運輸業・郵便業」は21.7%減となった。「金融業・保険業」は59.2%増だが、4月の38.5%減という大幅な落ち込みから反動で増えた面が大きい。内閣府は「企業が投資に慎重な様子がうかがえる。目先、投資意欲を刺激する要因が見当たらず、同じ傾向が続く可能性は高い」(経済社会総合研究所)と指摘する。非製造業の受注額は4473億円と、2015年8月以来の小ささとなった。
一方、製造業は1.0%増と4カ月連続で伸びた。スマートフォン向け半導体製造装置などの堅調が続くほか、自動車の需要が北米で改善している。製造業全体の受注額は内閣府の従来の見通しを上回って推移しているもようだ。受注額は3656億円と16年12月の高さへ迫っている。
非製造の低迷が続くが、内閣府の従来想定よりは底堅い推移だという。4~6月期の「船舶、電力を除く民需」の季節調整値見通しは現状、前期比5.9%減となっているが、減少幅は縮小する公算という。
6月の街角景気、3カ月連続改善 基調判断は据え置き
内閣府が10日発表した6月の景気ウオッチャー調査(街角景気)によると、街角の景気実感を示す現状判断指数(季節調整済み)は前月比1.4ポイント上昇の50.0だった。上昇(改善)は3カ月連続。住宅関連や自動車小売業を中心に消費者の需要の高さに対する実感がみられたほか、企業動向や雇用関連の指数も伸び、景況感の分かれ目となる50を2016年12月以来、半年ぶりに上回った。
部門別では、家計動向、企業動向、雇用の全てが改善した。企業動向では製造業、非製造業ともに前月比1.1ポイント上昇した。家計動向では小売りと住宅が上昇した。飲食やサービスは悪化したものの、小幅な低下にとどまったため「おおむね横ばいと評価している」(内閣府)という。
2~3カ月後を占う先行き判断指数は50.5となり、前の月から0.9ポイント上昇した。上昇は3カ月連続。家計動向と企業動向がともに改善した。家計動向ではボーナス商戦や訪日外国人需要への期待が聞かれたほか「新型車効果が続き、新車販売が好調に推移する」(東北・乗用車販売店)との見方もあった。半面、雇用は人材派遣業で人手不足への懸念がみられるなどし、前月調査から低下した。
内閣府は基調判断を「持ち直しが続いている」で据え置いた。判断を維持した理由として、内閣府は指数が上昇基調にあることから「下げる理由はない」とした上で「さらに一段押し上げるようなイベントがあるかというと今のところは見当たらない」としている。先行きについても「人手不足に対する懸念もある一方、引き続き受注や設備投資などへの期待がみられる」から変更しなかった。
経常黒字1兆6539億円に縮小 5月、貿易収支が赤字に
財務省が10日発表した5月の国際収支状況(速報)によると、海外との総合的な取引状況を示す経常収支は1兆6539億円の黒字だった。黒字は35カ月連続。黒字額は前年同月(1兆7576億円)に比べて1037億円縮小した。原油価格の持ち直しを背景に輸入が増加し、貿易収支が赤字に転化したことが響いた。
貿易収支は1151億円の赤字で、前年同月(308億円の黒字)から悪化した。原油価格の上昇で液化天然ガス(LNG)や石炭、原粗油などの輸入が増加し、輸入全体は15.8%増えた。自動車や鉄鋼の好調を映し、輸出も12.9%増加したが、輸入の影響が上回った。
サービス収支は421億円の黒字と前年同月(819億円の黒字)から黒字幅を縮小した。ソフトウエアのロイヤルティーなど知的財産権使用料の支払いが増えたことが響いた。
第1次所得収支は1兆9243億円の黒字と前年同月(1兆8936億円の黒字)に比べて黒字額を拡大した。海外から受け取る債券利子など証券投資収益の黒字額が拡大した。


いつもながら、よく取りまとめられた記事だという気がします。ただし、統計3つの記事を並べましたので、やたらと長くなってしまいました。次に、機械受注のグラフは以下の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は、次の景気ウォッチャーとも共通して、景気後退期を示しています。

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引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスではコア機械受注の季節調整済みの系列のベースで増加が見込まれており、予測レンジの下限でも▲1.6%減でしたから、かなり大きなマイナスと私は受け止めています。加えて、前月統計でも▲3.1%減を受けての5月統計でしたから、機械受注、ひいては設備投資が先行き伸び悩む可能性が取りざたされても不思議ではありません。ですから、統計作成官庁である内閣府の基調判断も「持ち直しの動きに足踏み」から「足踏み」に下方修正されています。私の直観でも、上のグラフから明らかな通り、かなり横ばいに近い印象だという気もします。大雑把な産業別では、製造業が今年2017年1月の大幅なマイナスの後、2月から5月まで4か月連続のプラスで推移している一方で、非製造業は3か月連続のマイナスとなっています。人手不足の高まりから非製造業での省力化や合理化のための設備投資が進むという見方もあっただけに、やや拍子抜けな気もします。加えて、コア機械受注の外数ながら、5月統計では外需が▲5.2%減と大きく減少していえるのも、外需はコア機械受注の先行指標だけに少し気がかりです。ただ、もともと4~6月期のコア機械受注の見通しは前期比▲5.9%減ですから、こんなもんだという気もします。例えば、4~5月平均の受注実績は1~3月期と比べて▲3.5%減にとどまっており、見通しから少し上振れていたりします。評価の難しいところながら、もちろん、前月比マイナスが続いたせいもあって悲観的な見方が広がるのも当然で、日銀短観などで示された設備投資計画が単純に実行されるわけではないことは留意すべきです。

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続いて、景気ウォッチャーのグラフは上の通りです。現状判断DIと先行き判断DIをプロットしています。いずれも季節調整済みの系列です。色分けは凡例の通りです。また、影をつけた部分はいずれも景気後退期です。現状判断DIに着目すると、3つのコンポーネント、すなわち、家計動向関連、企業動向関連、雇用関連のすべてのDIが上昇を示しています。ついでながら、先行き判断DIについては、雇用関連のDIがマイナスとなっていますが、6月統計で雇用関連は現状判断DIが前月差+3.0とジャンプした後、先行き判断DIがその反動で▲1.8の低下を示しているんだろうと思います。話を現状判断DIに戻すと、企業関連でも製造業・非製造業ともに前月から上昇しています。現状判断DIで特に前月からの上昇幅が大きいのは、雇用関連+3.0上昇とともに、家計関連+1.2上昇のうちの小売関連の+2.2上昇と住宅関連+2.7上昇です。ただ、飲食関連やサービス関連は前月からマイナスを記録しており、家計が全般的に上向きとはいえ、それほど単純な評価は下せないような気もします。いくつか理由を見ると、南関東で「3か月前と比較して、商品単価、購入単価共に落ち込みが少なくなってきている。特に、服飾雑貨や衣料品の商品単価が前年を上回るようになっており、好調であった消耗品以外の衣料品などにもやや消費意欲が出てきたようである(百貨店)。」との声があり、また、東海では「今月は、問い合わせ、成約件数共に多く、とにかく良く売れている(乗用車販売店)。」などの意見も目につきました。

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次に、経常収支のグラフは上の通りです。青い折れ線グラフが経常収支の推移を示し、その内訳が積上げ棒グラフとなっています。色分けは凡例の通りです。上のグラフは季節調整済みの系列をプロットしている一方で、引用した記事は季節調整していない原系列の統計に基づいているため、少し印象が異なるかもしれません。経常収支については、引用した記事の雰囲気がやや悲観的で、5月統計については季節調整していない原系列で見ると、貿易収支が赤字に転じて経常収支がその影響で黒字幅を縮小させた、ということになっており、確かに統計上はその通りですが、先月の統計発表後にお示しした6月9日付けのブログのグラフにある通り、経常黒字の対GDP比はすでに4%近くに上昇して来ており、対外不均衡は日本の黒字方向に拡大しているトレンドとなっていることから、このまま経常黒字が拡大するのがいいのか悪いのかについては議論が分かれるところかもしれません。経常収支の水準は、極めて大雑把に、四半期ベースで5兆円、年ベースで20兆円に回帰しており、震災後の赤字基調はすでに克服しているものと多くのエコノミストは考えています。この先、直近統計のように国際商品市況において石油価格などの資源価格が上昇して経常収支が黒字幅を縮小させたり、あるいは、赤字に転じる可能性もあり得ますが、我が国製造業の国際競争力が為替相場も込みで落ちていないのであれば、それほど問題と考える必要はないんではないかと私は考えています。また、季節調整済みの系列では5月の経常収支は黒字であり、先月4月よりもむしろ黒字幅は拡大しています。あくまで参考意見なんですが、5月についてはゴールデン・ウィークの日並びによって季節調整がゆがむ可能性がありますので、どこまで信頼できるかは別問題です。

最後に、日銀では四半期に1度の支店長会議が開催されており、本日午後に「さくらリポート」が公表されています。日を改めて取り上げたいと思います。
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2017年07月08日 (土) 09:44:00

6月の米国雇用統計は連邦準備制度理事会(FED)の金融正常化を支持するか?

日本時間の昨夜、米国労働省から6月の米国雇用統計が公表されています。非農業雇用者数の増加幅は市場の時zんコンセンサスであった+170千人増を大きく上回って+222千人増となった一方で、失業率は前月から+0.1%ポイント上がって4.3%を記録しています。いずれも季節調整済みの系列です。まず、New York Times のサイトから最初の6パラだけ記事を引用すると以下の通りです。

U.S. Job Growth Picks Up the Pace, but Wages Lag Behind
Automobile sales may be slowing, e-commerce is putting the squeeze on bricks-and-mortar stores, and overall economic growth is limp. But the labor market has nevertheless managed to charge ahead.
Employers added an impressive 222,000 jobs in June, the government reported on Friday. Although the jobless rate ticked up slightly to 4.4 percent, it was because some people who had dropped out of the labor force were lured back.
But the hunger for workers and mounting complaints of labor shortages have raised a vexing question: Why isn't the heightened demand for workers driving up pay?
The Federal Reserve pointed to that conundrum in the updated report on the American economy it sent to Congress on Friday. "Despite the broad-based strength in measures of employment," it said, "wage growth has been only modest, possibly held down by the weak pace of productivity growth in recent years."
The Fed's report reflected its overall confidence in the country's economic direction, which has led it to begin raising interest rates for businesses and consumers after years of holding them near zero to encourage investment and risk-taking. After increasing its benchmark rate last month, the Fed is expected to do so at least once more before the year's end.
One of its aims is to head off any inflation that might result from a tight job market that prompts employers to offer higher pay to get the workers they need. Yet prices have been rising at a slow pace, and sluggish wage growth suggests that the fear may be premature.


長くなりましたが、金融政策動向も含めて、包括的によく取りまとめられている印象です。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは下の通りです。上のパネルは非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門、下のパネルは失業率です。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。全体の雇用者増減とそのうちの民間部門は、2010年のセンサスの際にかなり乖離したものの、その後は大きな差は生じていません。

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米国経済の好調さが裏付けられた雇用統計だったと評価できます。6月統計の非農業部門雇用者数が大きく伸びただけでなく、直近の4-5月分もそれぞれ33千人、14千人ずつ上方修正されていて、4-6月の3か月の平均で毎月+194千人の雇用増とほぼ+200千人近い水準を達成しています。失業率も6月統計では前月より僅かに上昇したものの、ほぼ完全雇用水準にあります。なお、米国連邦準備制度理事会(FED)では完全雇用の失業率を4%台半ばと見なしているといわれています。ですから、FEDの金融政策の方向性としては、年3回程度とされる利上げをサポートするのに加えて、利上げだけでなく、9月ころから資産圧縮が開始されるといわれており、これも特に延期する必要はなさそうです。こういったいわゆる金融の正常化は雇用統計からは支持されていると考えるべきです。

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ということで、時間当たり賃金の前年同月比上昇率は上のグラフの通りです。ならして見て、底ばい状態を脱して少し上向きに転じた印象ながら、もう一段の加速が見られません。バーナンキ前議長の下で、FEDは事実上のインフレ目標政策を取っており、物価上昇率の動向は気がかりなところです。明らかに、リーマン・ショック前の+3%台には戻りそうに見えません。ただ、一時の日本や欧州のように底割れしてデフレに陥ることはほぼなくなったと私は受け止めています。
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2017年07月07日 (金) 20:22:00

一致指数が下降した景気動向指数と賃金がわずかに上昇した毎月勤労統計!

本日、内閣府から5月の景気動向指数が、また、厚生労働省から4月の毎月勤労統計が、それぞれ公表されています。景気動向指数のうち、CI先行指数は前月比+0.5ポイント上昇の104.7を、CI一致指数は逆に▲1.6ポイント下降の115.5を、それぞれ記録しています。毎月勤労統計からは、景気動向に敏感な製造業の所定外労働時間指数は季節調整済みの系列で前月から▲0.7%減を、また、現金給与指数のうちのきまって支給する給与は季節調整していない原系列の前年同月比で+0.7%増を、それぞれ記録しています。なお、消費者物価が上昇を示していますので、消費者物価でデフレートした実質賃金は前年同月から+0.1%増となり、5か月振りにプラスの伸びを示しました。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

5月の景気一致指数、2カ月ぶり低下 自動車関連の落ち込みで
内閣府が7日発表した5月の景気動向指数(CI、2010年=100)によると、景気の現状を示す一致指数は前月比1.6ポイント低い115.5となり、2カ月ぶりに低下した。前の月に自動車関連の生産や出荷が堅調だった反動が出た。
一致指数を構成する指標で、前月と比べられる7つの指標のうち、5指標が押し下げ要因となった。自動車関連が落ち込み、耐久消費財出荷指数や鉱工業生産指数などが低下した。生鮮食品の販売減が響き、小売業の商業販売額も減少した。
内閣府は、一致指数の動きからみた基調判断を「改善を示している」とし、8カ月連続で据え置いた。
数カ月先の景気を示す先行指数は0.5ポイント上昇の104.7だった。上昇は2カ月ぶり。
実質賃金、5月は0.1%増 5カ月ぶり増加 毎月勤労統計
厚生労働省が7日発表した5月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)によると、物価変動の影響を除いた実質賃金は前年同月に比べて0.1%増加した。増加は5カ月ぶり。名目賃金が0.7%伸びたものの、消費者物価指数(持ち家の帰属家賃を除く総合)が前年同月比0.5%上昇し、上昇を抑えた。
名目賃金にあたる現金給与総額は前年同月比0.7%増の27万241円だった。2カ月連続で増加し、伸び率は昨年7月(1.2%増)以来10カ月ぶりの高水準だった。
内訳をみると、基本給にあたる所定内給与が0.9%増加し、2000年3月(0.9%増)以来17年2カ月ぶりの大きな伸び率だった。残業代など所定外給与は0.7%増、ボーナスなど特別に支払われた給与は1.6%減少した。
パートタイム労働者の時間あたり給与は2.0%増の1108円だった。パートタイム労働者比率は30.18%で、前年同月に比べて0.14ポイント低下した。厚労省は賃金動向について「基調としては緩やかに増加している」との見方を示した。


いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。でも、2つの統計を並べるとついつい長くなってしまいます。続いて、下のグラフは景気動向指数です。上のパネルはCI一致指数と先行指数を、下のパネルはDI一致指数をそれぞれプロットしています。影をつけた期間は景気後退期を示しています。

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5月のCI一致指数はやや下降を示しましたが、3か月後方移動平均も7か月後方移動平均もまだ上昇を続けており、引用した記事にもある通り、統計作成官庁である内閣府では基調判断を「改善」に据え置いています。基調判断は、昨年2016年10月に「足踏み」から「改善」に上方改定されており、半年余り据え置かれているわけです。CI一致指数を構成するコンポーネントを詳しく見ると、5月指数では、商業販売額(卸売業)(前年同月比)と投資財出荷指数(除輸送機械)はプラス寄与となりましたが、耐久消費財出荷指数、生産指数(鉱工業)、鉱工業用生産財出荷指数、商業販売額(小売業)(前年同月比)などがマイナス寄与を示しています。鉱工業生産指数(IIP)と連動性の高いCI一致指数ですから、単月では5月はマイナスになりましたが、上のグラフを見ても理解できる通り、トレンドとしてはまだ上昇中であると考えてよさそうです。なお、CI先行指数を詳しく見ると、もっとも大きなマイナス寄与を示したのが中小企業売上げ見通しDIであり、その次がマネーストック(M2)となっています。規模別では大企業よりも中小企業の方が景気に敏感であり、先行性あることから、今後の景気のゆくえについては中小企業に着目すべきなのかもしれません。ただ、私は所得についてはトリクルダウンは生じず、お金持ちが豊かになれば、徐々に所得の低い層にも裨益する、というのはまったく信じられませんが、企業規模の波及経路については大企業から徐々に規模の小さい企業に波及することは十分あり得ると考えており、為替が安定し、海外経済が順調な現状では、中小企業から景気が反転する可能性は決して大きくないものと考えています。もっとも、その小さい可能性の原因となる可能性があるのは人手不足です。人手不足から非正規雇用に依存していた規模の小さな企業経営が苦しくなる可能性はあり得るものと考えます。要するに、人手不足で非正規雇用の安い労働力に依存していた企業については、正規雇用を活用しつつ生産性を向上させることに失敗すれば、あるいは、淘汰される可能性が残ります。

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続いて、毎月勤労統計のグラフは上の通りです。上から順に、1番上のパネルは製造業の所定外労働時間指数の季節調整済み系列を、次の2番目のパネルは調査産業計の賃金、すなわち、現金給与総額ときまって支給する給与のそれぞれの季節調整していない原系列の前年同月比を、3番目のパネルはこれらの季節調整済み指数をそのまま、そして、1番下のパネルはいわゆるフルタイムの一般労働者とパートタイム労働者の就業形態別の原系列の雇用の前年同月比の伸び率の推移を、それぞれプロットしています。いずれも、影をつけた期間は景気後退期です。なお、賃金についてはかなり長期の季節調整済みの系列が公表され始めていますが、どうも世間一般ではまだ季節調整していない原系列の統計の前年同月比を名目賃金上昇率として見て、さらに、消費者物価(CPI)の前年同月比でデフレートして実質賃金として見る、というエコノミスト間の慣行が残っており、当ブログでも、世間一般の動向を見極めつつ対応いたしたいと思います。ということで、景気に敏感な所定外労働時間は5月に▲3.3%の減産を示した生産と整合的に、製造業の季節調整済みの前月比で▲0.7%になっています。賃金は、現金給与総額・きまって支給する給与ともに、名目で前年同月比+0.7%、実質で+0.1%の伸びを示しています。なかなか賃金の伸びが渋いんですが、今日の日経新聞の経済教室でも、東大の渡辺先生が価格硬直性が先進国の中でも突出して大きいとの分析結果を明らかにしていますが、賃金もご同様な気がします。ただ、引用した記事にもある通り、人手不足から雇用を確保するためにパートタイム比率がじわじわと低下し始めています。我が国賃金の伸び悩みは、いわゆるシンプソン効果でパートなどの非正規雇用比率の上昇による寄与がそれなりに大きく、個別の賃金上昇とともにフルタイム正規雇用が増加すれば、マクロでの賃金上昇につながる可能性が高く、大いに期待したいと思います。賃金と物価はニワトリとタマゴですから、ともに手を携えて上向きになることが十分にあり得ます。
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2017年07月06日 (木) 22:57:00

インテージの調査結果から猛暑の夏は何が売れるか?

今週に入って、月曜日は特に暑くて35度に達する猛暑日でしたが、今日まで梅雨も明けないうちに連日30度の暑い日が続いています。エコノミストとしては消費の先行きなどを考える上で、猛暑になると何が売れるのかについて興味があるところ、やや旧聞に属する話題ながら、6月20日にネット調査大手のインテージから「猛暑になると何が売れるのか? 独自データで消費への影響に迫る」と題しるリポートが明らかにされています。図表を引用しつつ、簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、上のグラフは、インテージのリポートから、「観測史上最も暑い夏」として記録に残っている2010年夏に販売金額が伸びたカテゴリを引用しています。見れば明らかな通り、トップの香辛料のほか、上位にはスポーツドリンク、日焼け止め、美容・健康ドリンク、制汗剤、アイスクリームなどが上がっており、いずれも前年比で1.2倍を超えています。この次に、リポートではなぜか、夏に向けた「汗の匂い対策」になるんですが、それはすっ飛ばして、「猛暑」と聞いて、買いたくなるもの、行きたくなる場所は次の通りです。

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ということで、繰り返しになりますが、上のグラフは、インテージのリポートから、「猛暑」と聞いて、買いたくなるもの、行きたくなる場所を引用しています。私の場合、買いたくなるものはアイス・かき氷はその通りなんですが、行きたくなる場所はトップがプールで、2番目は図書館かもしれません。でも、全体として判りやすくなっている気がします。

梅雨明け前の今週でもこれだけ暑いんですから、梅雨が明ければ今年は本格的な猛暑になるんでしょうか?
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2017年07月05日 (水) 19:57:00

東京商工リサーチによる「役員報酬1億円以上開示企業」調査の結果やいかに?

先週は3月決算の上場企業の株主総会が数多く開催されましたが、6月30日付けで東京商工リサーチから「役員報酬1億円以上開示企業」調査の結果が明らかにされています。役員報酬1億円以上を受け取った役員の個別開示を行った上場企業は221社で開示人数は457人でした。社数は2015年3月期の212社から、また、人数は414人からそれぞれ増加を示しており、過去最多を更新したそうです。個別開示トップはソフトバンクグループのニケシュ・アローラ元副社長の103億46百万円で、歴代役員報酬額の最高額を更新しています。以下、トップテンは下のテーブルの通りです。

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なお、同様の調査結果は東洋経済オンラインでも見かけました。「年収1億円超」の上場企業役員530人リストです。トップは同じアローラ元副社長なんですが、当然ながら、いろいろと違いが見かけられます。ご参考まで。
先週末は私にもボーナスが出て、それなりの幸福感に浸っていたんですが、まあ、私のような公務員とは桁違いですね。経済的な合理性のある報酬だということは理解しつつも、今さらながらに思い知らされました。
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2017年07月04日 (火) 19:52:00

国民生活基礎調査に見る貧困率の動向やいかに?

やや旧聞に属する話題かもしれませんが、6月27日付けで厚生労働省から昨年2016年調査の国民生活基礎調査の結果が公表されています。昨年度の国民生活基礎調査は3年に1度の大規模調査でしたので、相対的貧困率が利用可能となっています。2009年、2012年の時点では16%台に上昇し高止まりしていたんですが、2015年では15.6%にやや低下を示しています。下のグラフの通りです。

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繰り返しになりますが、2009年16.0%、2012年16.1%だった貧困率が、2015年では15.6%にやや低下を示している一方で、子どもの貧困率については、2012年の16.3%から2015年には13.9%に一気に低下しています。低下の理由は不明なんですが、もしも、2013年に成立した「子どもの貧困対策の推進に関する法律」が役立っているとすれば喜ばしいことではないかと受け止めています。なお、子どもと大人は17歳以下と18歳以上で区分けしています。ただし、▲2.4%ポイントの低下というのはかなり大きな数字ですが、詳細な引用はしないものの、母子家庭などの大人1人で子どものいる現役家庭の貧困率は50%を超えるなど、まだまだ貧困や格差が厳しい状況にある点は変わりありません。高齢化の進展とともに、格差の拡大は見かけ上しかたないとしても、我が国の将来を担う子供達については高齢者以上に十分な社会保障や福祉が行き渡るような社会の実現が待たれます。
なお、今年2017年に公表された国民生活基礎調査は、昨年2016年に実施され、さらにその前の2015年時点の状況を問うています。誤解のないよう、念のため。
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2017年07月03日 (月) 23:12:00

業況感がさらに上昇し設備投資計画が上方修正された日銀短観から何が読み取れるか?

本日、日銀から6月調査の短観が公表されています。ヘッドラインとなる大企業製造業の業況判断DIは3月調査から+5ポイント改善して+17を記録し、本年度2017年度の設備投資計画は全規模全産業が前年度比+2.9%増と集計されています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

大企業製造業DI、14年3月以来の高水準 3期連続改善、日銀短観
日銀が3日発表した6月の全国企業短期経済観測調査(短観)は、企業の景況感を示す業況判断指数(DI)が大企業製造業でプラス17だった。前回3月調査(プラス12)から5ポイント改善した。改善は3四半期連続で2014年3月調査以来の高水準だった。世界的な景気拡大を反映した。業種別では石油・石炭製品や鉄鋼、非鉄金属業などの改善が目立った。為替相場が安定していることもあり、中小企業製造業のDIも改善した。
業況判断DIは景況感が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を引いた値。6月の大企業製造業DIは、QUICKがまとめた市場予想の中央値であるプラス15を上回った。回答期間は5月30日~6月30日で、回収基準日は6月13日だった。
3カ月先の業況判断DIは大企業製造業がプラス15だった。米国での自動車販売の頭打ちやトランプ米政権の先行き不透明感などから、先行きには慎重な見方が強かった。
17年度の事業計画の前提となる想定為替レートは大企業製造業で1ドル=108円31銭と今の実勢レートより円高・ドル安だった。
大企業非製造業の現状の業況判断DIはプラス23と前回を3ポイント上回った。改善は2四半期連続。国内消費の底堅さが増す中で小売の景況感が改善した。都心の再開発が進み、建設関連は高水準を維持した。小売りや対個人サービスも改善した。3カ月先のDIは5ポイント悪化のプラス18だった。
中小企業は製造業が2ポイント改善のプラス7と07年3月以来の高水準だった。非製造業は3ポイント改善のプラス7だった。先行きはいずれも悪化した。
大企業全産業の雇用人員判断DIはマイナス16となり、前回(マイナス15)から低下した。DIは人員が「過剰」と答えた企業の割合から「不足」と答えた企業の割合を引いたもので、1992年2月(マイナス24)以来のマイナス幅となった。
17年度の設備投資計画は大企業全産業が前年度比8.0%増と、市場予想の中央値(7.4%増)を上回った。3月調査(0.6%増)からは増加幅が拡大した。


やや長いんですが、いつもながら、適確にいろんなことを取りまとめた記事だという気がします。続いて、規模別・産業別の業況判断DIの推移は以下のグラフの通りです。上のパネルが製造業、下が非製造業で、それぞれ大企業・中堅企業・中小企業をプロットしています。色分けは凡例の通りです。なお、影をつけた部分は景気後退期です。

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ということで、規模と製造業・非製造業を押しなべて、昨年12月調査や今年3月調査に続いて3期連続で今期も景況感が改善しつつ、しかし、先行きの来期はやや落ちる、という典型的な短観の統計としての「クセ」が出ています。さはさりながら、DIですので水準よりも方向性が重要ながら、水準もかなり高くなっています。ですから、このブログでも何度か強調している通り、企業部門の景況感はとても堅調です。前回調査の結果に続いて、個人消費の関連で小売業に着目すると、3月調査で+5の後、6月調査では+10にジャンプし、先行きも+11とさらなる上昇を示す可能性が示唆されています。小売業のマインドから個人消費の今後の方向も透けて見える気がします。さらに、事業計画の前提となっている想定為替レートについては、3月調査でも6月調査でも1ドル108年代で極めて安定しており、円安方向への動きも悪くはないんでしょうが、為替の安定は企業の活動計画や見通し立案の際にはそれなりに重要だという気がします。

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続いて、いつもお示ししている設備と雇用のそれぞれの過剰・不足の判断DIのグラフは上の通りです。設備については、後で取り上げる設備投資計画とも併せて見て、設備の過剰感はほぼほぼ払拭されたと考えるべきですし、雇用人員についても不足感が広がっています。特に、雇用人員については規模の小さい中堅企業・中小企業の方が大企業より採用の厳しさがうかがわれ、人手不足幅のマイナスが大きくなっています。テーブルは引用しませんが、6月調査と12月調査だけで実施される新卒採用計画では、2018年度大企業が+5.2%増、中堅企業が+6.0%増、中小企業が+11.8%増と計画しているようです。規模の小さい企業ほど新卒採用に積極的といえますが、大企業でも+5%増の計画なんですから、就活は売り手市場が続きそうです。ただ、調査事項にはないんですが、お給料が上がるかどうかも気にかかるところです。

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最後に、設備投資計画のグラフは上の通りです。今年度2017年度の全規模全産業の設備投資計画は3月調査で異例の▲1.3%減という高い水準で始まったんですが、6月調査では+2.9%増と順調に上積みされています。日銀・QUICKによる市場の事前コンセンサスは大企業ベースで+7.4%増だったところ、実際には+0.8%増だったわけですから、設備投資は期待できそうです。加えて、特に2016年度の大企業の設備投資の実績が、結局、▲2.1%減に終わったようですので、ある程度の2016年度過年度の設備投資の先送り分、というか、積み残し分も発生している可能性があります。この部分がそのまま先送りされる可能性もありますが、今年度2017年度に遅れて実行される可能性もあり、いずれにせよ、設備投資は計画段階では強気に出ているように受け止めています。

先行きについて考えると、まず、日銀の統計ですから、日銀金融政策への影響なんですが、ほとんどないと私は考えています。かなり景況感が上がって来たので、金融政策の方向性としては緩和よりは引締めを主張する向きもあるかもしれませんが、実体経済の物価がここまで目標と乖離している現状では、金融政策が引締め方向に修正される可能性はほぼほぼありません。逆に、景況感が上がって来ている現段階で、金融政策の追加緩和も考えにくいところです。次に、先行きリスクを考えると、日銀短観の景況感の統計としてのクセとして、来期を慎重に見るために先行きの景況感が下がる、というのがあり、国際商品市況における石油をはじめとする資源価格の動向、米国の国内経済や通商政策の動向など、リスクは海外にあるような気もします。でも、都議選の結果などを見れば、国内もリスクはないとはいえないように思えてきました。
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2017年06月30日 (金) 23:14:00

いっせいに公表された政府統計から今後の景気の先行きを考える!

本日、経済産業省から5月の鉱工業生産指数(IIP)が、また、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が、さらに、総務省統計局から消費者物価(CPI)が、それぞれ公表されています。鉱工業生産は季節調整済みの系列で前月比▲3.3%の減産となり、失業率は3.1%と前月から0.3%ポイント上昇し、有効求人倍率は前月からさらに上昇して1.49と、43年振りの高水準に達し、また、生鮮食品を除くコアCPI上昇率は+0.4%と前月からやや上昇幅を拡大しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

鉱工業生産、5月は3.3%低下 自動車など反動減
経済産業省が30日発表した5月の鉱工業生産指数(2010年=100、季節調整済み)速報値は前月比3.3%低下の100.4となった。低下は2カ月ぶり。自動車メーカーを中心に、前月に大幅な増産となった反動もあって生産が抑制された。大型連休で工場の操業を停止した企業があった影響も出た。QUICKが事前にまとめた民間予測の中央値(3.2%の低下)を下回った。
単月では比較的大きな低下幅となったが、計画的な減産であるうえ4月実績(4.0%上昇)とならせば水準自体はそれほど低下していないとして、経産省は生産の基調判断を「持ち直しの動き」で据え置いた。同省では4-6月期の生産指数について「6月が大幅な減産にならない限り前四半期を上回る」とみている。
出荷指数は前月比2.8%低下の98.3だった。在庫指数は0.1%上昇の111.4だった。在庫率指数は1.9%低下の112.5となった。
5月の生産指数は15業種のうち14業種が前月から低下し、1業種が上昇した。輸送機械工業が11.7%低下したほか、汎用・生産用・業務用機械工業が2.6%、金属製品工業が6.3%それぞれ低下した。
製造工業生産予測調査によると、6月は前月比2.8%の上昇、7月は0.1%の低下を見込んでいる。6月については輸送機械工業や電気機械工業などの生産持ち直しが寄与するとみられる。経産省による補正済みの試算値では1.7%の上昇となる見通し。4-6月期の生産指数については、6月実績が試算値通りなら前期比2%程度の上昇になりそうだとしている。
求人倍率5月1.49倍、人手不足に拍車 43年ぶり高水準
企業の人手不足に一段と拍車がかかっている。厚生労働省が30日発表した5月の有効求人倍率(季節調整値)は1.49倍と、1974年2月以来43年3カ月ぶりの高さを記録。なかでも正社員の有効求人倍率は調査開始以来、最高となった。完全失業率(同)は3.1%だがまだ職種や勤務地など条件が合わない「ミスマッチ失業率」並みの低水準だ。ただ賃上げペースは緩やかで家計の節約志向は根強く、消費は勢いを欠く。
有効求人倍率は全国のハローワークで仕事を探す人1人あたり何件の求人があるかを示す。5月は前月を0.01ポイント上回り、3カ月連続で上昇した。正社員の有効求人倍率(季節調整値)は0.99倍で2004年の調査開始以来で最高となった。人手を確保したい企業は正社員の求人を増やしている。
企業の新規求人数に対して実際に職に就いた人の割合を示す充足率(季節調整値)は15.4%だった。6-7人雇おうとして採用できたのが1人という計算で、比較可能な02年以降で最低を更新した。ハローワークを介さず、インターネットなどを通じて求人広告に応募するといった統計で捕捉できない求職者も多いとみられるが、人手不足は深刻さを増している。
新規求人数を業種別にみると製造業が前年同月比11.5%増だった。自動車を中心に生産が堅調に推移。慢性的な運転手不足に悩む運輸・郵便業が10.4%増えたほか、医療・福祉業も9.0%増だった。
総務省が同日発表した5月の完全失業率は3.1%だった。前月を0.3ポイント上回り、6カ月ぶりに上昇。完全失業者(季節調整値)が205万人と、前月から19万人増えた。よりよい条件を求めて離職する人が増えたようだ。
求人はあるが勤務条件で折り合わず就業に至らない「ミスマッチ失業率」は3%超とされる。5月は失業率が上昇したとはいえ、引き続き、働く意思がある人は働ける「完全雇用」状態にある。
5月の就業者数は6547万人で、前年同月より76万人増えた。正社員は50万人、パート労働者など非正規社員は5万人増えた。就業者を男女別にみると、男性は3688万人、女性は2859万人だった。女性の就業者数は比較可能な1953年以来過去最多だ。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の宮崎浩シニアエコノミストは「当面は定年を迎えた高齢者らを非正規で再雇用するなどの対応が欠かせない」と人手不足が長期化するとみる。一方で「非正規社員は正社員より賃上げ幅が大きく、所得の増加につながりやすい面もある」と分析する。
5月の全国消費者物価、0.4%上昇 エネルギー高と魚介不漁で
総務省が30日発表した5月の全国消費者物価指数(CPI、2015年=100)は、値動きの大きな生鮮食品を除く総合指数が100.3と、前年同月比0.4%上昇した。上昇は5カ月連続。QUICKがまとめた市場予想の中央値は0.4%上昇だった。ガソリンなど石油製品の価格や電気料金の上昇が押し上げた。
生鮮食品を除く総合では全体の53.7%にあたる281品目が上昇し、180品目が下落した。横ばいは62品目だった。
生鮮食品を含む総合は100.4と0.4%上昇した。イカなど一部魚介類で不漁が続き、価格が高止まりした。生鮮食品とエネルギーを除く総合は100.8と横ばいだった。
併せて発表した東京都区部の6月のCPI(中旬速報値、15年=100)は生鮮食品を除く総合が99.8と横ばいだった。前月は0.1%上昇し1年5カ月ぶりに前年実績を上回ったものの、6月は物価上昇の勢いは続かなかった。石油製品やマグロなど一部生鮮食品が上昇した一方で、家賃や携帯電話端末料金が低下した。生鮮食品を含む総合は99.8と横ばいだった。


いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。でも、統計をいくつも取り上げたので、とても長くなってしまいました。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは以下の通りです。上のパネルは2010年=100となる鉱工業生産指数そのもの、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた期間は、後の雇用統計のグラフとともに、景気後退期を示しています。

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鉱工業生産は▲3.3%の減産でしたが、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは▲3.2%でしたので、ほぼ予想通りの結果といえます。評価としても、引用した記事にある通りで、4月+4.0%の増産の後、自動車などでゴールデンウィークの日並びがいいことなどから計画的なラインの停止などによる減産であり、製造工業生産予測調査によると、6月は+2.8%の増産、7月も▲0.1%の減産にとどまると見込まれており、統計作成官庁である経済産業省による基調判断は「総じてみれば、生産は持ち直しの動きがみられる」ということで据え置かれています。報道の通りであれば、4-6月期としてならせば+2%程度の増産となる可能性が高く、私が電卓をたたいた結果でも、6月が予測指数通りの前月比+2.8%なら4-6月期は+2.4%の増産、仮に6月が5月から横ばいであっても+1.5%の伸びとなります。月単位のジグザグはありますが、基本的には持ち直しの動きが続いており、今後についても、耐久消費財は家電エコポイント導入時に購入された白物家電などが買い替えサイクルを迎えて緩やかな増産が見込まれているほか、海外経済では景気拡大局面に入ったと考えられている欧州を中心に輸出が生産を牽引するものと見られますから、引き続き、緩やかに増産のトレンドが維持されるものと見込んでいます。

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続いて、雇用統計のグラフは上の通りです。いずれも季節調整済みの系列で、上から順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。影をつけた期間はいずれも景気後退期です。引用した記事にもある通り、失業率も有効求人倍率もいずれもバブル経済期のレベルに近いところまで人手不足を示す水準にあります。特に、有効求人倍率については、バブル経済期を飛び越えて、第1次石油危機直後の1974年までさかのぼらねば経験できない水準まで上昇を示しており、メディアなどでははやし立てていますが、繰り返しこのブログで指摘している通り、まだ賃金が上昇する局面には入っておらず、賃金が上がらないという意味で、まだ完全雇用には達していない、と私は考えています。なお、私の手元にあるデータでは、有効求人倍率の過去最高値は1973年11月の1.93となっていて、さすがに、この水準に到達するにはもっと時間がかかりそうです。なお、私自身の直観ながら、失業率が3%を下回ると賃金上昇が始まると予想していたんですが、まだそうなっていません。労働需要サイドで、デフレ経済下で安価な労働力に依存していた低生産性企業が退出し非正規雇用への需要が低下したのかもしれませんし、あるいは、労働供給サイドで、デスキリングが広範に生じているのかもしれません。たぶん、どちらも違うんだろうという気がしています。そして、ここまで日本の労働市場の賃金弾力性が大きく、賃金上昇がほとんどなくても労働供給が大いに湧き出てくるのであれば、労働市場改革なんて必要ではないのではないか、とすら思わないでもありません。でも、素直に人手不足で賃金が上昇する世界がとても遠く感じてしまいます。

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続いて、いつもの消費者物価上昇率のグラフは上の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く全国のコアCPI上昇率と食料とエネルギーを除く全国コアコアCPIのそれぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフは全国のコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。エネルギーと食料とサービスとコア財の4分割です。なお、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1位の指数を基に私の方で算出しています。丸めない指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。加えて、酒類の扱いがビミョーに私の試算と総務省統計局で異なっており、私の寄与度試算ではメンドウなので、酒類(全国のウェイト1.2%弱)は通常の食料には入らずコア財に含めています。念のため。ということで、現状での物価上昇は財関係ではエネルギーが、そして、サービスでは人手不足が物価上昇を牽引しているように見えます。コアCPIの前年同月比上昇率は、今年に入ってから4か月連続でプラスを記録し、小幅ながらジワジワと上昇幅を拡大しています。ただ、継続的に物価上昇がマイナス、というか、物価が下落するデフレからは脱却したような気もする一方で、ヘッドラインCPIで+2%の日銀の物価目標にはまだまだ遠いわけで、市場に出回っている国債を買い切る前に達成できるのだろうか、と心配になってしまいます。

いずれにせよ、今日発表された政府統計から、物価に関しては日銀の物価目標からまだまだ距離があるとはいえ、生産や生産の派生需要である雇用については、日本経済が回復ないし拡大しているとの印象がより強くなっています。目先についても、欧州を中心とする世界経済の回復が我が国経済にフォローの風を吹かせることは明らかであり、引き続き緩やかな回復・拡大が続くものと期待してよさそうです。
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2017年06月29日 (木) 20:24:00

商業販売統計に見る小売販売は緩やかな回復を示す!

本日、経済産業省から5月の商業販売統計が公表されています。小売業販売額は季節調整していない原系列の統計で前年同月比+2.0%増の11兆7590億円、季節調整済みの系列で前月比▲1.6%減を記録しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

5月の小売販売額、2.0%増 自動車販売の好調映す
経済産業省が29日発表した5月の商業動態統計(速報)によると、小売業販売額は前年同月比2.0%増の11兆7590億円だった。7カ月連続で前年実績を上回った。季節調整済みの前月比では1.6%減少した。経産省は小売業の基調判断を「持ち直しの動きがみられる」で据え置いた。
業種別では、自動車小売業が前年同月比7.0%増加した。新型車の販売好調を映した。燃料小売業は8.7%増えた。原油価格の持ち直しを背景に石油製品の価格が上昇した。
大型小売店の販売額は百貨店とスーパーの合計で0.6%減の1兆5881億円だった。既存店ベースでも0.6%減少した。衣料品の販売低迷が響いた。コンビニエンスストアの販売額は3.6%増の9965億円だった。


いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、商業販売統計のグラフは下の通りです。上のパネルは季節調整していない小売販売額の前年同月比増減率を、下のパネルは季節調整指数をそのまま、それぞれプロットしています。影を付けた期間は景気後退期です。

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消費の代理変数となっている小売業販売額については、昨年2016年11月から前年同月比で見て半年余りプラスを続けています。特に最近時点では、3月+2.1%増、4月+3.2%増、5月+2.0%増を記録しています。ただ、季節調整済みの系列による前月比は、今年2017年1月から4月までプラスだったんですが、5月は反動減もあって▲1.6%と減少に転じています。季節調整していない原系列の前年同月比で見て、5月の最新統計の業種別では、燃料小売業が+8.7%増、自動車小売業が+7.0%増、医薬品・化粧品小売業が+6.3%増、織物・衣服・身の回り品小売業が+2.5%増、などを示しており、逆に、各種商品小売業(百貨店など)が▲1.6%減、無店舗小売業が▲0.5%減となっています。特に、自動車販売については、消費増税後の反動減がようやく終息し、循環的な回復局面に入っていると考えています。ただ、足元では自動車販売台数が少しオーバーペース気味であり、目先は増加のテンポが鈍化する可能性があるように見ています。
消費の先行きについても、足元での株高などを受けて消費者のセンチメントは決して悪くないと私は考えており、ボーナスも含めて所得面でのサポートがあれば消費は堅調に推移する可能性が高いと受け止めています。
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2017年06月27日 (火) 19:53:00

来週月曜日に公表予定の日銀短観の予想やいかに?

来週月曜日7月3日の公表を前に、シンクタンクや金融機関などから6月調査の日銀短観予想が出そろっています。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、ネット上でオープンに公開されているリポートに限って、大企業製造業と非製造業の業況判断DIと全規模全産業の設備投資計画を取りまとめると下の表の通りです。設備投資計画は今年度2017年度です。ヘッドラインは私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しましたが、今回の日銀短観予想については、その設備投資計画に着目しています。ただし、三菱総研だけは設備投資計画の予想を出していませんので適当です。それ以外は一部にとても長くなってしまいました。いつもの通り、より詳細な情報にご興味ある向きは左側の機関名にリンクを張ってあります。リンクが切れていなければ、html の富士通総研以外は、pdf 形式のリポートが別タブで開くか、ダウンロード出来ると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちに Acrobat Reader がインストールしてあってリポートが読めるかもしれません。

機関名大企業製造業
大企業非製造業
<設備投資計画>
ヘッドライン
3月調査 (最近)+12
+20
<▲1.3%>
n.a.
日本総研+14
+23
<+3.8%>
2017年度の設備投資計画は、全規模・全産業で前年度比+3.8%と、前回調査対比+4.5%の上方修正を予想。良好な企業収益を背景とした潤沢なキャッシュフローに加え、低金利、維持・更新や省力化・合理化などに向けた投資需要が引き続き堅調なことから、例年の足取りに沿った上方修正となる見通し。2016年度後半に先送りされた投資需要が顕在化してくることも下支えに作用。もっとも、米国トランプ政権の政策運営など、海外情勢の不透明感が依然として残るなか、収益の伸びを上回るペースでの設備投資の増加は期待し難い状況。
大和総研+14
+23
<+2.1%>
2017年度の設備投資計画(全規模全産業)は前年度比+2.1%と、前回(同▲1.3%)から上方修正されると予想する。6月日銀短観の設備投資計画には、中小企業を中心に上方修正されるという「統計上のクセ」がある。これまで企業の設備投資計画を大きく修正するような設備投資需要の変化がなかったことから、今回は例年の修正パターン並みの結果になると想定した。総じてみると、短観で見る設備投資計画は底堅い結果となろう。
みずほ総研+13
+21
<+3.9%>
2017年度の設備投資計画(全規模・全産業)は、前年比+3.9%と、3月調査(同▲1.3%)から上方修正され、近年の6月時点の計画と比べても高い伸びになるとみている。既に公表されている4~6月期の法人企業景気予測調査によれば、2017年度の設備投資計画(ソフトウェアを除き、土地含む、全規模・全産業)は、前年比+0.2%と1~3月期調査(同▲10.2%)より上方修正されている。
ニッセイ基礎研+15
+22
<+4.2%>
2017年度の設備投資計画(全規模全産業)は、2016年度実績比で4.2%増と前回調査時点の1.3%減から上方修正されると予想。例年6月調査では、計画が固まってくることで大幅に上方修正される傾向が極めて強い。前回調査で、近年の3月調査での伸び率をかなり上回る計画が示されたことで発射台が高いだけに、今回調査でも近年の同時期の伸び率を上回る高い伸び率となるだろう。ただし、比較対象となる16年度実績が低いということを考慮すれば、実勢としては力強さを欠くとの評価になる。企業収益は改善しているが、海外情勢をめぐる先行きの不透明感が強い状況が続いており、現段階において投資を大きく積極化する動きは限られるとみている。
第一生命経済研+15
+26
<大企業製造業+14.1%>
<大企業非製造業+4.5%>
マクロの設備投資は上向いてきて、輸出・設備投資といった企業中心の景気拡大になっている。短観でも、2017年度の大企業・製造、非製造業はともにプラス計画となるだろう。企業の生産・営業用設備判断DIは、3月調査は中小企業が▲3の不足超となった。中小・非製造業は、2017年度こそマイナス計画であるが、2016年度実績ではしっかりと2桁プラスになるだろう。企業収益の好調さが、設備投資を後押しする格好である。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券+14
+23
<大企業全産業+7.0%>
17年度の設備投資計画は、大企業(前年度比7.0%増)、中小企業(同18.5%減)とも、3月調査からの上方修正が予想される。もっとも、例年6月調査では設備投資計画が上方修正される傾向があり、今回予想される上方修正幅は、昨年6月における上方修正幅と大きく変わらない。好調な企業業績が、設備投資の回復をけん引しているものの、米国のトランプ大統領の経済政策や、英国のEU離脱方針などに不透明感が残る中、企業は設備投資計画の大幅な上方修正に踏み切れない模様である。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング+15
+22
<大企業全産業+8.3%>
2017年度の計画については、大企業製造業は前年比+15.5%、非製造業では同+4.3%と、前回調査から上方修正されると見込まれる。将来、需要が伸び悩むと見込まれる国内から、需要の拡大が期待される新興国へ投資先を移す流れは変わらないが、企業の手元資金が潤沢であることや、人手不足が一段と深刻になる中で機械への投資の重要度が増すことが、国内の設備投資を押し上げるだろう。さらに、国内外の景気回復を背景に、2017年度は国内の生産能力を増強するための投資も増加すると予想する。
中小企業についても、製造業、非製造業とも上方修正され、製造業は前年比-5.0%、非製造業は同-22.0%になると見込まれる。製造業、非製造業ともに前年比マイナスであるものの、例年、計画は調査を経るごとに上方修正される傾向があるため、今後、マイナス幅は徐々に縮小していくだろう。
三菱総研+15
+22
<n.a.>
先行きの業況判断DI(大企業)は、製造業は+15%ポイント、非製造業は+22%ポイントと横ばいを予測する。国内外の実体経済の回復が業況を下支えするものの、米国を始めとする海外の政治・経済への不透明感や、地政学リスクへの懸念が残ることなどが企業マインドの重石となると見込む。
富士通総研+14
+23
<+4.1%>
2017年度の設備投資計画(全規模・全産業)は前年度比4.1%と、3月調査から上方修正されると見込まれる。人手不足の深刻化により、人手を機械やロボットに置き換える省力化投資に対する企業の意欲はより一層高まっている。これに関連して、物流効率化のための投資も活発化している。また、IoT関連の投資需要の高まりも顕著になっている。この結果、大企業製造業を中心に、過去の平均を上回って、3月調査から上方修正されると見込まれる。また、中小企業も例年並みに上方修正されると予想される。なお、2016年度の設備投資実績は、過去のパターンと同様、大企業では3月調査より下方修正されると見込まれる。


日銀短観のヘッドラインと目されている大企業製造業の業況判断DIは、少し過去にさかのぼると2012年10-12月期の景気転換点にほぼ一致して、2013年6月調査からプラスに転じています。大企業非製造業では2011年9月調査から一貫してプラスを続けています。その上で、この2017年6月調査では3月調査から業況判断DIはわずかながらさらに上昇を示すと予想されています。先日の内閣府の景気動向指数研究会でも、2012年11月に暫定的に同定した第15循環の景気の谷以降のCI一致指数やヒストリカルDIを見る限り、2014年3月に景気の山は設定されず、第15循環の景気の谷以降景気の山は設定されない、と結論していますし、少なくとも企業マインドの観点からはこの結論をサポートし、加えて、足元から目先の今年中くらいの短いスパンでは、少なくとも日本経済において自律的な景気の転換は見通しにくい、と私は考えています。上のテーブルに取りまとめたシンクタンクなどの日銀短観予想の通りです。同時に、設備投資についても、まだ多くの中堅・中小企業で計画が取りまとめられていなかった3月調査から大きく上方改定されると見込んでいます。
下のグラフはニッセイ基礎研のリポートから設備投資計画 (全規模全産業)を引用しています。

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2017年06月26日 (月) 22:51:00

企業向けサービス物価(SPPI)は5月統計で前年同月比+0.7%を記録!

本日、日銀から5月の企業向けサービス物価指数(SPPI)が公表されています。ヘッドラインSPPI上昇率は+0.7%、国際運輸を除くコアSPPIも+0.7%と、引き続きプラス圏内で推移しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

5月の企業向けサービス価格、前年比0.7%上昇 人手不足や観光需要増で
日銀が26日発表した5月の企業向けサービス価格指数(2010年平均=100)は103.7で、前年同月比で0.7%上昇した。前年同月比での上昇は47カ月連続。人手不足による人件費の上昇で運輸・郵便の価格が上昇した。観光需要の高まりを背景に宿泊サービスや旅客輸送の価格も上昇した。
上昇率は前月の0.8%から0.1ポイント縮小し、前月比では0.1%低下した。新聞広告で前年比の下落率が拡大した。広告のデジタル媒体への移行が背景にある。人気イベント開催時期の後ずれの影響でテレビ広告も前年比で下落に転じた。
同指数は輸送や通信など企業間で取引するサービスの価格水準を総合的に示す。対象の147品目のうち価格が前年比で上昇したのは78品目、下落は33品目だった。上昇から下落の品目を引いた差は45品目と4月の確報値(51品目)と比べて減少した。
日銀は価格上昇の動きについて「広がりはあるものの、力強いとまではいえない」(調査統計局)とみている。


いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、SPPI上昇率のグラフは以下の通りです。サービス物価(SPPI)と国際運輸を除くコアSPPIの上昇率とともに、企業物価(PPI)上昇率もプロットしてあります。SPPIとPPIの上昇率の目盛りが左右に分かれていますので注意が必要です。なお、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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SPPI上昇率は今年2016年2-4月の+0.8%から小幅に縮小を示し、5月は+0.7%となりました。引用した記事にもある通り、広告が7月の+0.7%上昇から5月には▲0.7%と下落に転じた影響が出ています。ただ、広告については2-3月の年度末には、いわゆる「予算消化」のような形での出稿が増加して単価を釣り上げた、といわれていたんですが、そうとしても、広告が前年比マイナスに転じても、SPPI総合では底堅く推移していることも確かです。人手不足の影響については、運輸・郵便+1.1%上昇のほか、土木建築サービスが+4.9%、警備+3.6%と、職業紹介サービス+3.3%などと、決して一様ではないものの、全般的に底堅いサービス物価の動向が垣間見える気がします。ただし、引用した記事の最後の日銀コメントにある通り、広がりはある一方で、力強いとはいえない、との受け止めもあります。もっとも、私が調べた範囲では、現行の2010年基準ながらSPPIの前年同月比上昇率が4か月も連続して+0.7%とか、+0.8%の+1%近い水準に達していたのは、1997年や2014年の消費増税のケースを除けば、ほとんど、バブル崩壊直後の1993年年初までさかのぼらなければ見当たりません。その意味で、インフレ目標2%を掲げる日銀から見て、決して力強くはないかもしれませんが、現状の日本経済を前提に考えれば、十分な上昇幅なのかもしれません。逆から考えると、CPIでの計数とはいえ、2%の物価上昇目標はそれほど遠いのかもしれません。
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2017年06月23日 (金) 20:12:00

リクルート・ワークス研のシンポジウムを拝聴する!

今日は午後から外出して、リクルートワークス研が主催する「働き方改革の進捗と評価」JPSEDシンポジウムを聞いて来ました。少し前の6月9日にに全国就業実態パネル調査(JPSED)2016年調査に基づくリポート「Works Index 2016」が公表されており、その内容に関するお披露目といえます。なお、6月9日にはデータ集も明らかにされています。

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まず、Works Index なんですが、同一人物を追ったパネルデータであり、データとしてはまだ2015-16年の2時点しかありません。コンポーネントとなるインデックスとインディケーターは上の通りであり、「Works Index 2016」の p.4 から引用しています。今年の特徴としては2点上げられており、第1に、2015年から2016年にかけて、Works Index は▲1.2ポイント低下しています。平たくいえば、労働条件が悪化しているわけです。特に、上のインデックスの中の5番目のディーセントワーク(DW)が▲1.2ポイント低下しており、女性より男性が、また、男性の中では比較的若い世代が、それぞれ低下幅が大きいことから、人手不足の影響が職場における業務負荷の増加につながっている点が今後の課題と分析されています。同時に、人手不足に起因する業務負荷増のため、ディセントワークの項目以外でも、休暇が取れないとか、OJTの機会が減少しているなどの指摘もありました。下の一連のグラフはリポートから p.5 Works Index と前年との比較 を引用しています。

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もうひとつは、最近我が国の一貫した傾向ですが、労働所得は長期的に低下のトレンドにあり、Works Index でも2015年から16年にかけて▲1.6%の減少を示しています。ただし、継続就業者の労働所得は増加しています。すなわち、2015-16年にかけて継続して同一企業に就業している人に限ると、労働所得の増減率が+2.0%と増加しています。逆から見て、2016年に入職した新規就業者や転職者の労働所得は継続就業者よりもかなり低く、新卒者のみならず中途入社者の処遇の低さが課題として指摘されています。

昨年の第1回のシンポジウムも拝聴に行った記憶があるんですが、パネルデータでありながら第1回の結果でしたので1時点だけではパネルにもならず、今年の結果や来年の結果などから、徐々に研究目的の利用が広がるかもしれません。
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2017年06月22日 (木) 21:28:00

MM総研によるITデジタル家電購入意向調査(2017年夏ボーナス商戦編)やいかに?

やや旧聞に属する話題かもしれませんが、MM総研から6月13日に「ITデジタル家電購入意向調査 (2017年夏ボーナス商戦編)」と題するリポートが公表されています。まず、MM総研のサイトから調査結果の要約を3点引用すると以下の通りです。

  • ボーナス支給額は引き続き改善傾向、購買意欲は昨夏・昨冬とほぼ同水準
  • 商品・サービス別の購入意向はITデジタル家電、健康・美容家電が増加
  • ITデジタル家電は薄型テレビが1位。スマートフォン(3位)が人気上昇


ということで、夏のボーナスはまずまず好調で、それにしたがって、IT家電の購買意欲も悪くない、という内容です。いくつか図表を引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、MM総研のサイトから ボーナスの増減率と購買意欲の推移 に関して一連の図表を引用すると上の通りです。ボーナス支給についてはまずまず良好な見通しが得られており、購買意欲についてもリーマン・ショック以降では、少なくとも、「上がった」+「変わらない」の比率はもっとも高くなっています。このブログでもすでに、4月17日付けの記事で今年の夏季ボーナスの予想を取りまとめているところですが、まずまず期待できそうだという感触かもしれません。

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次に、上のテーブルはMM総研のサイトから 夏のボーナスの具体的な使い途 のついての問いの回答です。夏のボーナスの具体的な使い途について複数回答での問いに対する回答であり、目立って増加したのは、ITデジタル家電と健康・美容家電となっています。特に、ITデジタル家電は昨夏の28.7%から今夏は40.4%と+11.7%ポイントも上昇を見せています。さらに、煩雑になるのでテーブルの引用はしませんが、ITデジタル家電の購入意欲ランキングは、薄型テレビが全体の11.1%を占めてトップとなり、次いでノートパソコンが2位の10.2%、スマートフォンが3位の8.9%、デスクトップパソコンが4位の6.1%、デジタルカメラとタブレット端末がともに5位の4.1%となっています。とても興味深い内容です。我ら公務員も来週6月30日にボーナスが支給されますが、果たして、今夏のボーナス商戦やいかに?
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2017年06月21日 (水) 21:04:00

東洋経済オンライン「社会人が転職したい会社」300社ランキングやいかに?

やや旧聞に属する話題ですが、東洋経済オンラインから6月10日付けで「社会人が転職したい会社」300社ランキングと題する転職先人気企業が特集されています。以下の画像の通りです。

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実は、6月5日付けで転職サービス「DODA」のインテリジェンスから「転職人気企業ランキング 2017」が公表されているんですが、やっぱり、というか、当然のように、1位トヨタ、2位グーグル、3位ソニー、とバッチリ一致しています。東洋経済オンラインでは、学生の新卒の就職では人気投票のように、金融業界に目が行きがちな一方で、ビジネス社会で活動中のビジネスパーソンは、転職の際にはメーカーや外資系企業を評価している、と分析しています。なかなか興味深い結論です。
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2017年06月20日 (火) 21:13:00

東証上場企業の株主総会集中日6月29日(木)はとうとう30%を割り込む!

とても旧聞に属する話題かもしれませんが、今月6月9日付けで3月決算企業の株主総会の集中率に関するグラフが東証から公表されています。下に示した通りです。いわゆる総会屋の排除などを目的としたご当局からの指導もあって、かつては90%を超えた集中を見せていたんですが、長期低落傾向の中で今年はとうとう30%を下回って29.6%となっています。東証のサイトから引用しています。

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2017年06月19日 (月) 22:59:00

輸出入とも順調に拡大する貿易統計の先行きやいかに?

本日、財務省から5月の貿易統計が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、輸出額は前年同月比+14.9%増の5兆8514億円、輸入額は+17.8%増の6兆547億円、差引き貿易収支は▲2034億円の赤字を計上しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

4月の貿易収支、4カ月ぶり赤字 2034億円
資源関連の輸入増

財務省が19日発表した5月の貿易統計(速報、通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は2034億円の赤字だった。貿易赤字となるのは4カ月ぶり。QUICKがまとめた市場予想の中央値は730億円の黒字だった。5月は大型連休の影響で輸出が伸び悩む傾向があり、主に資源価格の上昇を背景とした輸入の増加幅が上回った。
輸出額は前年同月比14.9%増の5兆8514億円と6カ月連続で増加した。4月の為替レート(税関長公示レートの平均値)が1ドル=111.47円と前年同月に比べて円安になったことに加え、輸出数量全体も堅調に推移した。輸入の増加幅は下回ったものの、伸び率は2015年1月(16.9%増)以来の大きさとなった。財務省では「(昨年の)熊本地震からの反動増という面もあるだろう」とみている。
米国向けの自動車輸出が好調だったほか、メキシコ向けフラットロールをはじめとした鉄鋼などの伸びが目立った。地域別では対米国が11.6%増、対アジアが16.8%増となった。対欧州連合(EU)もイタリア向けに船舶の輸出があったことなどが寄与し、19.8%増と伸びた。
輸入額は17.8%増の6兆547億円となった。資源価格の上昇に伴い、原粗油や石炭の輸入額が増加した。いずれも数量ベースでの輸入は前年同月から減少している。オーストラリアを襲ったサイクロンの影響で同国からの石炭の供給が滞り、インドネシアや中国からの輸入が増加。液晶デバイスなどの輸入も増え、対中貿易は3カ月連続の赤字となった。


いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

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まず、季節調整していない原系列の統計の貿易収支ですが、ほぼ赤字を脱却した2015年10-12月期の後も、年2-3月くらいは貿易赤字を計上することが経験的にありましたので、少なくとも悲観する必要はありません。前回の貿易赤字は今年2017年1月ですから、中華圏の春節効果による統計の歪みだったと私は受け止めています。昨年2016年4-5月についても熊本地震の影響があり、今年5月の輸出が大きく伸びたのも反動増の要因が含まれていると考えるべきです。加えて、国際商品市況の石油価格の上昇を受け、今年に入って原油輸入価格指数が季節調整していない前年同月比でプラスに転じ、2-3月には+75%の上昇を示しています。このため、5月の輸入のうち鉱物性燃料の輸入額は前年同月比で+41.5%の伸びを示し、輸入額の伸び+17.8%に対する寄与度で+7.0%に上っています。加えて、引用した記事にもある通り、為替が前年同期に比べてやや円安に振れていますので、その昔はJカーブ効果と称された円安初期の輸入額押上げ効果により、さらに輸入額が膨らみ貿易収支の赤字化の方向への圧力となっています。また、輸入額指数を価格指数と数量指数で分解して寄与度を求めると、輸入額の前年同月比伸び率+17.8%のうち、価格は+11.8%、数量は+5.4%の寄与となっています。我が国経済の順調な回復・拡大も輸入数量の増加をもたらしていることはいうまでもありません。ですから、このブログでも私が何度か主張した通り、輸入については「要るモノは要る」というのが私の考えであり、この程度の赤字であれば我が国のマクロ経済には何ら問題なはいと考えています。さらに、トレンドで見る際に有益な季節調整済みの系列では、2015年11月から一貫して貿易黒字を計上している点も忘れるべきではありません。

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輸出をいくつかの角度から見たのが上のグラフです。上のパネルは季節調整していない原系列の輸出額の前年同期比伸び率を数量指数と価格指数で寄与度分解しており、まん中のパネルはその輸出数量指数の前年同期比とOECD先行指数の前年同月比を並べてプロットしていて、一番下のパネルはOECD先行指数のうちの中国の国別指数の前年同月比と我が国から中国への輸出の数量指数の前年同月比を並べています。ただし、まん中と一番下のパネルのOECD先行指数はともに1か月のリードを取っており、また、左右のスケールが異なる点は注意が必要です。順調な回復・拡大を見せる海外経済に応じて、我が国の輸出数量も拡大を示しています。上のグラフのうちの一番上のパネルを見ても、最近数か月では輸出額の伸びのうち、青い価格の寄与よりも赤い数量の寄与の方が大きくなっているのが見て取れます。下の2つのパネルからも、先進国や中国のOECD先行指数の上昇に伴った我が国からの輸出の拡大が示されています。先行き、我が国経済も世界経済も順調な回復・拡大を続けると予想されていることから、為替や米国などの通商政策次第の面もあるものの、順調に貿易も拡大すると予想して差し支えないものと私は考えています。
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2017年06月15日 (木) 19:58:00

福井県あわら市とパナソニックによる「宅配ボックス実証実験」結果やいかに?

やや旧聞に属する話題かもしれませんが、人手不足の宅配サービスの再配達問題解決に向けて、宅配ボックスの設置が有力案として考えられており、福井県あわら市とパナソニックによる「宅配ボックス実証実験」が行われていたところ、6月8日に最終結果が報告されています。とても興味あるテーマですので、諸般の事情により、グラフを引用して簡単に取り上げておきたいと思います。

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上のグラフはパナソニックのサイトから引用していますが、宅配ボックス設置前の昨年2016年10月時点で、モニター103世帯に対する再配達率が49%とほぼ半数に上っていたところ、実験開始後、2016年12月8%、2017年1月9%、2月6%、3月10%と、期間平均で8%に低下し、この実験期間4か月間トータルで、再配達削減による宅配業者の労働削減時間想定値が222.9時間、再配達削減によるCO2削減量想定値が465.9kgに達したことがリポートされています。
まあ、ぶっちゃけで、パナソニック社の宅配ボックスの宣伝の一環なんですが、データはデータとして、それなりに参照可能なんではないかと思います。
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2017年06月14日 (水) 19:55:00

ピュー・リサーチによる経済に関する世論調査結果やいかに?

かなり旧聞に属する話題ですが、6月5日付けでピュー・リサーチ・センターから Global Publics More Upbeat About the Economy と題して、世界主要国における経済を対象とする世論調査結果が明らかにされています。もちろん、pdfの全文リポートもアップロードされています。我が国の経済に対する見方は相変わらず悲観的なんですが、それでも、主要国と同じ傾向を示しており、リーマン・ショック後の Great Depression を経た後、2010-12年をトラフとして、徐々に経済に対する楽観的な見方が広がっていることが示されています。2点ほど図表を引用して簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、上の画像はピュー・リサーチのサイトから In Europe, Japan, U.S., views of economy fully recovered from before financial crisis と題する日米欧先進国における直近15年くらいの経済状態に関するよいとする回答の比率の時系列をプロットしています。リーマン・ショック後の2010-12年くらいを底に、徐々に回復を示し、少なくとも現時点の2017年にはリーマン・ショック前の水準を回復しています。日本について昨年2016年に一度低下しているんですが、ハードデータに基づく原因は私にも不明ながら、確かに、企業マインドも消費者マインドも昨年は低下していたのは事実だと思います。

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次に、上の画像はピュー・リサーチのサイトから Globally, views of economy differ greatly と題するグラフを引用しています。要するに、各国の経済の現状に対する国民の評価の結果です。大雑把な地理的な傾向として、北米や中欧から北欧にかけて、インドや東南アジアなどで経済状態がよいとする回答の比率が高いのに対して、中南米や日韓両国、欧州ではギリシアやラテン系の国々でその比率が低くなっています。ソフトデータの世論調査に示されたマインドですので、ハードデータなどの経済実態とは必ずしも一致しない可能性もありますが、まあ、何となく理解できるところではあります。

この調査は経済に関する世論調査だけでなく、公的部門に関して子供の将来への味方なども含んでいたりしますが、取りあえず、割愛しておきます。
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2017年06月13日 (火) 22:52:00

マイナスを記録した法人企業景気予測調査に見る企業マインドやいかに?

本日、財務省から4~6月期の法人企業景気予測調査が公表されています。ヘッドラインとなる大企業全産業の景況感判断指数(BSI)は1~3月期の+1.3から下降して4~6月期は▲2.0を記録し、先行きについては、7~9月期は+7.1に、また、10~12月期は+6.7に、それぞれ上昇すると見通されています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

大企業景況感 4期ぶりマイナス 4-6月、自動車など下げ
財務省と内閣府が13日発表した法人企業景気予測調査によると、4~6月期の大企業全産業の景況判断指数(BSI)はマイナス2.0だった。新型車効果が一服した自動車メーカーなどが指数を押し下げ、4四半期ぶりにマイナスに転じた。財務省などは「緩やかな回復基調」自体は維持しているとみており、翌7~9月期以降は再びプラス基調が続く見通しだ。前回調査14~3月期はプラス1.3だった。
4~6月期は大企業のうち、製造業がマイナス2.9となった。自動車・同付属品製造業で、1~3月期と比べて新型車の投入効果が一服した影響などが全体の景況判断を押し下げた。受注減や原材料となる鉄の価格上昇が響いた船舶製造業なども低下に寄与し、1~3月期のプラス1.1と比べて悪化した。
非製造業はマイナス1.6となり、1~3月期のプラス1.5から悪化した。建設業で前年に工事完成が集中したことによる反動減が出たほか、金融機関の収益悪化などが響いた。
先行き7~9月期の見通しはプラス7.1で、製造業がプラス9.6、非製造業がプラス5.8だった。10~12月期は全産業でプラス6.7となった。財務省と内閣府の統括コメントは「企業の景況感は慎重さもみられるが、緩やかな回復基調が続いている」として前回調査時から据え置いた。
17年度の設備投資は前年度比で3.8%増加する見込みとなった。スマートフォン向け電子部品の生産能力増強などが寄与する。前回調査時の4.6%減から上昇した。経常利益の見通しは0.4%減となり、前回調査(0.8%減)からは改善した。
景況判断指数は「上昇」と答えた企業と「下降」と答えた企業の割合の差から算出する。今回の調査は5月15日時点。


いつもながら、よく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、下のグラフは法人企業景気予測調査のうち大企業の景況判断BSIをプロットしています。重なって少し見にくいかもしれませんが、赤と水色の折れ線の色分けは凡例の通り、濃い赤のラインが実績で、水色のラインが先行き予測です。影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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企業活動については、ハードデータの売上げや利益といった企業収益の部分が昨年年央から後半くらいに底を打ち、マインドのソフロデータについても昨年2016年10~12月期くらいから改善を示して来ていると受け止めています。やや遅れて消費者マインドも最近時点で改善を示しており、消費者マインド・企業マインドともに底を打って改善の方向を示していると考えるべきです。ただ、跛行性が見られるのも確かで、規模の大きな企業ほどマインドは改善し、非製造業よりも製造業の方が海外経済の恩恵を受けやすく、マインドは改善を示しています。個別項目では、人手不足感が広がっており、特に、中堅・中小企業では大企業よりも人材確保が困難になっている現状がうかがわれます。すなわち、6月末時点で大企業の人手不足感が過剰感を+15.4上回っているのに対し、中堅企業では+29.0、中小企業では+27.1に上っています。また、ソフトウェア投資額を含み土地購入額を除くベースの2017年度設備投資額については、引用した記事にもある通り、全産業で前回調査時の▲4.6%減から、今回調査では+3.8%の増加に大きく上方修正されました。日銀短観と同じで、年度開始前の慎重な投資計画から、年度が始まって各種の売上げや利益計画が固まる中で、設備投資についても企業活動の各種計画に応じた上方修正がなされるという通常のパターンに沿った動きと受け止めています。ただ、全産業で+3.8%の増加のうち、製造業が+8.7%増に対して、非製造業は+1.0%増にとどまっており、世界経済の回復・改善に比較した国内景気の出遅れ感がほの見える気がします。

7月に入れば、より詳細な企業マインドを調査した6月調査の日銀短観が公表される予定となっており、シンクタンクなどの日銀短観予想が出そろった段階で、このブログでも取りまとめたいと考えています。
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2017年06月12日 (月) 22:25:00

3か月ぶりに減少した機械受注とプラス2%超が続く企業物価(PPI)上昇率をどう見るか?

本日、内閣府から4月の機械受注が、また、日銀から5月の企業物価 (PPI)が、それぞれ公表されています。機械受注では変動の激しい船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注の季節調整済みの系列で見て前月比▲3.1%減の8359億円だった一方で、PPIはヘッドラインとなる国内物価の前年同月比上昇率が+2.1%を記録しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

機械受注、4月は3.1%減 非製造業が不振
内閣府が12日発表した4月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標とされる「船舶・電力除く民需」の受注額(季節調整値)は、前月と比べ3.1%減の8359億円と3カ月ぶりに減少した。不動産や金融・保険業など非製造業がふるわなかった。QUICKの市場予想(1.0%減)にも届かなかった。
4月は官公需を除けば民需に大型案件が乏しく、非製造業の5.0%減が重荷になった。製造業は2.5%増と底堅く、中期的な受注の推移は「横ばい」(内閣府経済社会総合研究所)として、内閣府は機械受注の基調判断を「持ち直しの動きに足踏みがみられる」で据え置いた。
非製造業の受注額は2カ月連続で減少し、4715億円となった。前年同月(4759億円)も下回り、2015年11月以来の規模に縮小した。金融・保険業でシステム投資が鈍化しており「まとまった案件の受注がない」(内閣府)という。
半面、製造業の受注額は3618億円と16年12月以来の大きさ。前年実績も上回った。前月に受注した非鉄金属分野の大型案件がなくなった反動で伸び率は小幅だったが、同案件の影響を差し引くと前月実績を11%程度上回ったという。輸出向けを中心に、スマートフォンやモノをインターネットでつなぐIoT関連で半導体製造装置などが堅調で「最近の受注は上向いている」(内閣府)という。
4~6月期の「船舶、電力を除く民需」の季節調整値の見通しは前期比5.9%減となっている。
5月の企業物価指数、5カ月連続上昇 勢いは鈍化
日銀が12日に発表した5月の国内企業物価指数(2015年平均=100)は98.4で、前年同月比で2.1%上昇した。前年比での上昇は5カ月連続で、上昇率は前月(2.1%)から横ばいだった。国際商品市況の改善や原材料価格の上昇を製品価格に転嫁する動きが続いているものの、勢いは鈍化しつつある。
前月比では横ばいで7カ月ぶりに上昇が止まった。再生可能エネルギー賦課金や燃料費の上昇を受け、電力価格が上昇した。鉄鉱石の値上がりで鉄鋼価格も上がった。半面、4~5月の原油価格の下落を受け、石油・石炭製品が下落した。鉄くずも在庫の積み増しや値上げの一服で下落した。
円ベースの輸出物価は前年比で4.4%上昇し、前月比では1.0%上昇した。輸入物価も前年比で13.5%上昇し、前月比では2.2%上昇した。前年比のみならず前月比でも円安・ドル高が進行し、輸出入物価を押し上げた。
企業物価指数は企業同士で売買するモノの価格動向を示す。公表している744品目(都市ガスの自由化の影響で前月の746品目から2品目減少)のうち前年比で上昇したのは360品目、下落は283品目だった。上昇と下落の品目差は77品目で、4月の確報値(60品目)から拡大した。
日銀の調査統計局は「企業物価指数は国際商品価格の動向に左右される状況が続いている。各国の政治情勢や地政学リスク、中国の環境規制が商品市況に与える影響を注視したい」との見解を示した。


いつもながら、よく取りまとめられた記事だという気がします。次に、機械受注のグラフは以下の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は、企業物価(PPI)とも共通して、景気後退期を示しています。

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引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは▲1.0%減でしたから、これを下回り、2月+1.5%増、3月+1.4%増の2か月分がほぼ吹っ飛んだことになります。レンジの下限が▲3.5%げんでしたので、ほぼそれに近い印象です。ただ、もともと4~6月期のコア機械受注の見通しは前期比▲5.9%減ですから、こんなもんだという気もします。ですから、統計作成官庁である内閣府の基調判断も「持ち直しの動きに足踏み」で据え置かれているようです。でも、私の直観ではかなり横ばいに近い印象だという気もします。製造業は1月にドカンと大きく▲10.8%減を記録した後、2月から4月まではさすがに反動増もあって堅調に推移している一方で、非製造業は3~4月の2か月連続で前月比マイナスを続けています。機械受注は短期に振れる指標なので、あくまで印象論であって必ずしも正確とは限りませんが、為替や海外経済に支えられた製造業と伸び悩む内需に依存する非製造業の業況がクッキリと出ている可能性もあります。4月単月の統計ながら、外需が大きく伸びているのもそのあらわれかもしれません。いずれにせよ、全体として機械受注はそのバックグラウンドの設備投資とともに、横ばい圏内ながら堅調な先行きを見込んでいます。

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次に、企業物価(PPI)上昇率のグラフは上の通りです。上のパネルから順に、国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率、需要段階別の上昇率を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期を示しています。ヘッドラインの国内物価の前年同月比上昇率は先月と同じ+2.1%ですから、引き続き堅調な推移と考えていますが、現在の2%の国内物価上昇率はかなりの部分を国際商品市況における石油価格の上昇の寄与によるものですから、例えば、上のグラフの下のパネルに見られる通り、石油を含む素原材料価格がすでにピークアウトした今後の物価の推移に注目すべきであり、金融政策よりも石油価格の動向に敏感な物価ですから、年度後半には物価上昇率がピークアウトする可能性も否定できません。ただ、5月統計を見る限りは、4月の年度替わりの価格改定期に値上げがいくぶんなりとも浸透し、その流れを引き継いでいるように見受けられます。PPIの外数でSPPIなんですが、運輸サービスなどで順調に価格転嫁が進めば、PPIの上昇やひいては賃金上昇にもプラスなんではないかと私は考えています。
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2017年06月09日 (金) 20:12:00

昨日公表の景気ウオッチャーと経常収支を振り返る!

いずれも昨日なんですが、内閣府から5月の景気ウォッチャーが、また、財務省から4月の経常収支が、それぞれ公表されています。、景気ウォッチャーは季節調整済みの系列で見て、現状判断DIは前月差+0.5ポイント上昇の48.6を、また、先行き判断DIも前月比+0.8ポイント上昇の49.6を、それぞれ記録し、経常収支は季節調整していない原系列の統計で1兆9519億円の黒字を計上しています。1日遅れながら、簡単に取り上げておきたいと思います。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

5月の街角景気、2カ月連続改善 基調判断は上方修正
内閣府が8日発表した5月の景気ウオッチャー調査(街角景気)によると、街角の景気実感を示す現状判断指数(季節調整済み)は前月比0.5ポイント上昇の48.6だった。上昇(改善)は2カ月連続。生産の好調を映し、企業動向が改善した。内閣府は基調判断を2016年11月以来6カ月ぶりに上方修正した。
部門別にみると、企業動向が前月比3.0ポイント上昇の51.5と2カ月連続で改善した。製造業と非製造業ともに上昇した。街角では「ここ数カ月は前年同月を上回る傾向である」(北陸・食料品製造業)といった声が聞かれた。家計動向は横ばいだった。サービスと住宅は上昇したものの、小売りと飲食が下げた。雇用関連は小幅に低下した。
2~3カ月後を占う先行き判断指数は49.6と、前の月から0.8ポイント上昇した。上昇は2カ月連続。家計動向、企業動向、雇用の全てが上昇した。家計動向については「東京オリンピックに向けて、インバウンド客も増えており、来客数はまだ伸びそうである」(南関東・一般レストラン)との見方があった。
内閣府は基調判断を「持ち直しが続いているものの、引き続き一服感がみられる」から「持ち直しが続いている」に上方修正した。先行きについては「人手不足に対する懸念もある一方、引き続き受注や設備投資などへの期待がみられる」とし、前月までの「コストの上昇に対する懸念」の文言を削除した。
4月の経常収支、1兆9519億円の黒字 10年ぶり高水準
財務省が8日発表した4月の国際収支状況(速報)によると、海外との総合的な取引状況を示す経常収支は1兆9519億円の黒字だった。黒字は34カ月連続で、黒字額は前年同月(1兆8161億円)に比べて1358億円拡大した。4月としては2007年(1兆9601億円)以来10年ぶりの高水準で比較可能な1985年以降で過去2番目の大きさだった。旅行収支の黒字が単月として過去最大となり、第1次所得収支の黒字額も拡大した。
貿易収支は5536億円の黒字と前年同月(6825億円の黒字)から黒字幅が縮小した。原油価格の持ち直しを背景に原粗油などが増加し、輸入が14.0%増加した。半導体製造装置などの好調を映し、輸出も10.0%増加したが、輸入の影響が上回った。
サービス収支は2947億円の赤字と前年同月(4113億円の赤字)に比べて赤字幅が縮小した。訪日外国人の増加を背景に旅行収支が1779億円の黒字と、比較可能な1996年以降で単月としての過去最高を記録した。研究開発費の大口支払い減少で「その他サービス収支」の赤字額が縮小したことも寄与した。
第1次所得収支は1兆8480億円の黒字と前年同月(1兆7452億円の黒字)に比べて黒字額を拡大した。海外子会社から受け取る配当金が増加した。


いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。でも、2つの統計を並べるとどうしても長くなってしまいがちです。続いて、景気ウォッチャーと経常収支のグラフは下の通りです。

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景気ウォッチャーのグラフでは、現状判断DIと先行き判断DIをプロットしています。いずれも季節調整済みの系列です。色分けは凡例の通りです。また、影をつけた部分はいずれも景気後退期です。経常収支のグラフでは、青い折れ線グラフが経常収支の推移を示し、その内訳が積上げ棒グラフとなっています。色分けは凡例の通りです。上のグラフは季節調整済みの系列をプロットしている一方で、引用した記事は季節調整していない原系列の統計に基づいているため、少し印象が異なるかもしれません。
景気ウォッチャーについては、順調にマインドが回復していると私も受け止めています。引用した記事にもある通り、統計作成官庁の内閣府でも基調判断を半ノッチ上方修正しており、ある意味で、当然です。ただ、消費に引き直すとマインドだけでは短期の消費増につながっても、サステイナブルな消費増のためには所得の増加も必要です。

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続いて、上のグラフは、昨日公表されたばかりのGDP統計と経常収支を組み合わせて、経常収支の対GDP比の推移をプロットしています。赤い棒グラフが季節調整済みの経常収支、青い折れ線グラフが経常収支の対GDP比を表しています。極めて大雑把に、経常収支は四半期ベースで5兆円、年ベースで20兆円に回帰しましたので、経常収支の対GDP比は4%くらいに達しています。米国の時の政権の意向によっては、いわゆる貿易摩擦を引き起こしかねない水準に近づいているのかもしれません。
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2017年06月08日 (木) 23:14:00

予想に反して下方修正されたGDP統計2次QEは日本経済の停滞を示しているのか?

本日、内閣府から1~3月期のGDP統計2次QEが公表されています。季節調整済みの前期比成長率は+0.3%、年率では+1.0%を記録し、1次QEから下方改定されています。もちろん、潜在成長率をやや超えており、なかなかの高成長といえます。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

実質GDP年率1.0%増に下方修正 1~3月改定値
速報は2.2%増

内閣府が8日発表した2017年1~3月期の国内総生産(GDP)改定値は、物価変動を除いた実質で前期比0.3%増、年率換算では1.0%増だった。速報値(前期比0.5%増、年率2.2%増)から下方修正となった。法人企業統計など最新の統計を反映した。
QUICKが7日時点でまとめた民間予測の中央値は前期比0.6%増、年率2.5%増となっており、速報値から上振れすると見込まれていた。
生活実感に近い名目GDPは前期比0.3%減(速報値は0.0%減)、年率では1.2%減(同0.1%減)だった。
実質GDPを需要項目別にみると、個人消費は前期比0.3%増(0.4%増)、住宅投資は0.3%増(0.7%増)、設備投資は0.6%増(0.2%増)、公共投資は0.1%減(0.1%減)。民間在庫の寄与度はマイナス0.1ポイント(プラス0.1ポイント)だった。
実質GDPの増減への寄与度をみると、内需がプラス0.1ポイント(プラス0.4ポイント)、輸出から輸入を差し引いた外需はプラス0.1ポイント(プラス0.1ポイント)だった。
総合的な物価の動きを示すGDPデフレーターは、前年同期と比べてマイナス0.8%だった。


ということで、いつもの通り、とても適確にいろんなことが取りまとめられた記事なんですが、次に、GDPコンポーネントごとの成長率や寄与度を表示したテーブルは以下の通りです。基本は、雇用者報酬を含めて季節調整済み実質系列の前期比をパーセント表示したものですが、表示の通り、名目GDPは実質ではなく名目ですし、GDPデフレータと内需デフレータだけは季節調整済み系列の前期比ではなく、伝統に従って季節調整していない原系列の前年同期比となっています。また、項目にアスタリスクを付して、数字がカッコに入っている民間在庫と内需寄与度・外需寄与度は前期比成長率に対する寄与度表示となっています。もちろん、計数には正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、データの完全性は無保証です。正確な計数は自己責任で最初にお示しした内閣府のリンク先からお願いします。

需要項目2016/1-32016/4-62016/7-92016/10-122017/1-3
1次QE2次QE
国内総生産 (GDP)+0.6+0.4+0.3+0.3+0.5+0.3
民間消費+0.3+0.2+0.4+0.0+0.4+0.3
民間住宅+1.2+3.1+2.6+0.2+0.7+0.3
民間設備▲0.1+1.3▲0.2+1.9+0.2+0.6
民間在庫 *(▲0.3)(+0.3)(▲0.3)(▲0.2)(+0.1)(▲0.1)
公的需要+1.1▲0.9▲0.1▲0.6+0.1▲0.0
内需寄与度 *(+0.2)(+0.5)(▲0.1)(▲0.0)(+0.4)(+0.1)
外需寄与度 *(+0.5)(▲0.1)(+0.4)(+0.4)(+0.1)(+0.1)
輸出+0.5▲1.4+1.9+3.4+2.1+2.1
輸入▲2.0▲1.1▲0.2+1.3+1.4+1.4
国内総所得 (GDI)+1.3+0.6+0.1+0.0+0.1▲0.3
国民総所得 (GNI)+0.9+0.3+0.0▲0.1+0.2▲0.1
名目GDP+0.9+0.2+0.1+0.4▲0.0▲0.3
雇用者報酬+1.0+0.1+0.7+0.3▲0.1▲0.1
GDPデフレータ+0.9+0.4▲0.1▲0.0▲0.8▲0.8
内需デフレータ▲0.3▲0.7▲0.8▲0.3+0.1+0.0


上のテーブルに加えて、いつもの需要項目別の寄与度を示したグラフは以下の通りです。青い折れ線でプロットした季節調整済みの前期比成長率に対して積上げ棒グラフが需要項目別の寄与を示しており、左軸の単位はパーセントです。グラフの色分けは凡例の通りとなっていますが、本日発表された1~3月期の最新データでは、前期比成長率が5四半期連続でプラスを示し、特に大きいものではありませんが、赤の消費と黒の外需がプラス寄与しているのが見て取れます。また、最近3四半期連続でグレーの在庫がマイナス寄与していて、成長率にはマイナスなんですが、在庫調整が進んでいることを裏付けています。

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1~3月期のGDP統計2次QEは1次QEの前期比年率+2.2%成長から+1.0%成長と大きく下方修正されたように見えますが、かなり多くのエコノミストは新しいデータを基にした推計で成長が鈍化したとは考えていません。すなわち、年率化しない前期比伸び率で見て、1次QEの+0.5%成長から2次QEでは+0.3%成長に下振れしたわけですが、この▲0.2%ポイント分の下振れはそのまま在庫調整の進展によるものだからです。1次QE時点では在庫の寄与度は+0.1%と算出されていましたが、先週の法人企業統計を受けて2次QEでは▲0.1%の寄与度に下方修正されました。成長率への寄与度は下方修正ながら、先行きを見通せば、在庫調整が進展することにより、さらに成長への確かな道取りが見えたように多くのエコノミストは感じています。1~3月期に限って見れば、内需の寄与が+0.1%、外需も同じで+0.1%となり、数字の丸めの関係で合わせて+0.3%成長という結果になりますが、先行きについては在庫調整の進展により、外需に偏らず内需の寄与も見込めることから、バランスのいい形の成長の姿が予想されています。
ということで、2次QEでの下方修正が決して日本経済の停滞を示しているわけではない点を強調しつつ、ついでながら、最初のテーブルで懸念される項目として、名目GDP成長率に加え、国内総所得(GDI)や国民総所得(GNI)といった名目変数の成長率が軒並みマイナスに突っ込んでいます。生活実感に近い数字だけに気がかりではあるんですが、実は、私の見るところ、GDPデフレータのイタズラのような気がします。すなわち、国際商品市況における石油高が控除項目の輸入の名目値を膨らませ、GDPデフレータの上昇率がマイナスとなった影響で名目GDP成長率もマイナスを記録したのであろうと受け止めています。逆に、国内需要デフレータはプラスに振れていますので、石油価格の変動が一巡しすれば解消できる名目マイナスではなかろうかと考えています。ただ、もうひとつのマイナスで、より懸念すべきは雇用者報酬です。国内需要デフレータがプラスとなって物価上昇が観察される中で、消費の原資となる実質雇用者報酬がマイナス化しており、先行きの個人消費の動向が少し気にかかるところです。企業の設備投資よりも大きなリスクかもしれないと私は考えています。

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我が国のGDP統計を離れて、昨日、経済協力開発機構(OECD)か「経済見通し」OECD Economic Outlook no.101 が明らかにされています。上の画像はプレス向けの資料から pp.2-5 を連結して引用しています。
まず、世界経済については、貿易と投資が回復を示すとともに、国際商品市況における資源の値上がりを受けて資源国経済も回復する中、今年2017年の世界の成長率は+3.5%へとわずかに加速すると予想し、加えて、来年2018年もさらに成長が加速して+3.6%になると予想される一方で、景気の持ち直しは歓迎できるものの、世界経済の成長は依然としてリーマン・ショック前の過去の平均的なペースを下回っており、景気回復の勢いを増すためには政策的なサポートを強めるための一層の取組みが必要、と指摘しています。そして、日本経済については、アジア地域の貿易の順調な増加と財政刺激策により、経済成長率は今年2017年については+1.4%に高まり、来年2018年は財政支援は弱まると見込まれる一方で、労働のひっ迫や資本の不足感、過去最高水準の企業収益を背景に、雇用と企業の設備投資が増加を示し、ほぼ潜在成長率と同じ+1%近い成長を維持し、ヘッドライン消費者物価の上昇率は金融緩和により2017年の終わりには+1%に達する、と見込まれています。
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2017年06月07日 (水) 19:56:00

引き続き景気拡大を示す4月のCI一致指数の先行きやいかに?

本日、内閣府から4月の景気動向指数が公表されています。景気動向指数のうち、CI一致指数は前月比+3.3ポイント上昇の117.7を、CI先行指数は逆に▲1.2ポイント下降の104.5を、それぞれ記録しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

4月の景気一致指数、9年ぶり高水準、自動車など寄与
内閣府が7日発表した4月の景気動向指数(CI、2010年=100)によると、景気の現状を示す一致指数は前月比3.3ポイント高い117.7と2カ月ぶりに上昇し、2008年2月以来9年2カ月ぶりの高水準となった。自動車関連の生産や出荷が堅調だったためだ。上昇幅は消費税導入前の1989年3月以来、28年1カ月ぶりの大きさ。
一致指数を構成する指標で、前月と比べられる7つの指標のうち、6つが押し上げ要因となった。自動車や自動車向け部品、中国でのスマートフォン(スマホ)関連部品が堅調で、生産や出荷が上向いた。押し下げ要因となったのは商業販売額。
4月の一致指数の大幅な伸びは「連休前の特殊要因で鉱工業生産指数が伸びた影響が大きい」(内閣府経済社会総合研究所)として、5月は反動による生産指数の低下を見込んでいる。
内閣府は、一致指数の動きからみた基調判断を「改善を示している」として7カ月連続で据え置いた。
数カ月先の景気を示す先行指数は1.2ポイント低下の104.5だった。低下は3カ月ぶり。


いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、下のグラフは景気動向指数です。上のパネルはCI一致指数と先行指数を、下のパネルはDI一致指数をそれぞれプロットしています。影をつけた期間は景気後退期を示しています。

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景気動向指数のうちのCI一致指数は大きな上昇を示し、昨年2016年10月に「足踏み」から「改善」に上方改定された基調判断についても半年間余り据え置かれており、2012年12月の現在の内閣発足から今年2017年4月まで4年半近い長期の景気拡大局面が継続している、ということになります。加えて、引用した記事にもある通り、CI一致指数の水準もかなり高くなっています。CIですから、水準そのものに大きな意味があるわけではないですが、一定のボリューム感は繁栄していることと私は認識しています。ということで、今少し詳しく4月のCI一致指数を見ると、投資財出荷指数(除輸送機械)、生産指数(鉱工業)、耐久消費財出荷指数、鉱工業用生産財出荷指数、有効求人倍率(除学卒)と続いており、耐久消費財出荷が含まれているものの、企業サイドの指標が多い印象です。また、商業販売額(小売業)(前年同月比)もプラス寄与ですが、寄与度としては大きくなく、同じ商業販売額のうちの卸売業(前年同月比)はむしろマイナス寄与だったりします。また、前月から下降したCI先行指数については、鉱工業用生産財在庫率指数に次いで、消費者態度指数が2番目に大きなマイナス寄与の項目に上げられています。

CI一致指数の先行きとは、すなわち、景気の先行きそのものなわけですが、基本的に、明日公表予定の1~3月期GDP統計は潜在成長率を大きく上回る成長を見せると、私を含めて多くのエコノミストは考えていますし、輸出や設備投資をはじめとして、景気は拡大を続けるものと私は考えています。国内要因での唯一の懸念材料は、不十分な賃上げと物価の上昇により個人消費が下押しされる可能性です。
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2017年06月06日 (火) 19:56:00

毎月勤労統計に見る賃金はどのように上昇するか?

本日、厚生労働省から4月の毎月勤労統計が公表されています。景気動向に敏感な製造業の所定外労働時間指数は季節調整済みの系列で前月から▲0.8%g減を、また、現金給与指数のうちのきまって支給する給与は季節調整していない原系列の前年同月比で+0.4%増を、それぞれ記録しています。ただし、消費者物価が上昇を示していますので、消費者物価でデフレートした実質賃金は前年同月と横ばいとなり、マイナスを脱しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

実質賃金2カ月ぶりマイナス脱する 4月、正社員増が下支え
厚生労働省が6日発表した4月の毎月勤労統計調査(速報値、従業員5人以上)によると、物価上昇分を差し引いた実質賃金は前年同月と比べて横ばいだった。2カ月ぶりにマイナスから持ち直した。1人当たりの名目賃金にあたる現金給与総額は27万5321円で前年同月比で0.5%増えた。正社員の増加が賃金を下支えしている。
名目賃金の内訳をみると、基本給を示す所定内給与が前年同月に比べて0.4%増加した。通勤手当や賞与を示す特別に支払われた給与は5.6%の大幅増だった。残業代を示す所定外給与は0.2%減だった。
正規社員を含むフルタイム労働者の増加が賃金増に寄与した。パートタイム労働者の比率は30.06%と前年同月に比べて0.23ポイント低下し、2005年12月以来11年4カ月ぶりの低下幅になった。雇用形態別の賃金は、フルタイム労働者が前年同月比0.2%増だった。企業は人手不足に対応するために正社員などの雇用を増やしている。
消費者物価指数(持ち家の帰属家賃を除く総合)は前年同月比で0.5%上昇した。電気やガソリンの値段の上昇で物価全体が上がり、実質賃金を名目賃金より押し下げた。


いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、毎月勤労統計のグラフは以下の通りです。上から順に、1番上のパネルは製造業の所定外労働時間指数の季節調整済み系列を、次の2番目のパネルは調査産業計の賃金、すなわち、現金給与総額ときまって支給する給与のそれぞれの季節調整していない原系列の前年同月比を、3番目のパネルはこれらの季節調整済み指数をそのまま、そして、1番下のパネルはいわゆるフルタイムの一般労働者とパートタイム労働者の就業形態別の原系列の雇用の前年同月比の伸び率の推移を、それぞれプロットしています。いずれも、影をつけた期間は景気後退期です。

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まず、一番上の製造業における所定外労働時間については、季節調整済みの系列で見た前月比は、3月の▲1.4%減に続いて、4月も▲0.8%減の結果となっています。4月の鉱工業生産指数(IIP)はかなり大きな前月比プラスを記録していますので、必ずしも整合性ないんですが、年度の変わり目で季節調整に何かが生じたのかもしれません。4月についてはIIPの増加の方が私の実感に合致している気がします。生産の今後の推移に従って、派生需要となる労働についても緩やかな増加の方向にあるものと私は予想しています。ただ、所定外労働時間については生産が増産になるとともに、短期的には労働時間も増加することが予想されるんですが、政府の働き方改革の効果もあって残業時間への圧縮圧力は相当なものがあります。生産性が向上した上で残業時間が減少する可能性もあり得ることから、必ずしも今後とも生産や景気に敏感かどうか疑問は残ります。
賃金については、先月までは季節調整していない原系列の前年同月比だけを示していましたが、今月からは季節調整済みの系列の指数そのもののグラフも書いてみました。2番目と3番目のパネルです。先週公表の法人企業統計にも見られるように、昨年年央あたりから企業活動も底を打って、ジワジワとお給料も上昇をしているのが読み取れると思います。特に4月統計については年度の変わり目でもあり、加えて、次の最後のパネルであるフルタイムの一般労働者とパートタイム労働者の就業形態別の雇用の伸び率のグラフにも見られる通り、フルタイム雇用者が増加してパートタイムの伸びを上回っていますのでフルタイム比率が上昇し、いわゆる合成のシンプソン効果もあって4月賃金は名目ながらプラスの伸びを示しています。消費者物価(CPI)でデフレートすると実質賃金は横ばいのゼロになりますが、生活実感に近い名目ではプラスですので、それなりに消費への効果はあるように感じます。いずれにせよ、4月に特有の現象かもしれませんが、新卒一括採用という我が国独特の雇用慣行もあって、この4月にはパートタイムからフルタイムへマクロでシフト、すなわち、マイクロな個々人でパートタイムからフルタイムにシフロした実例は決して多くないんでしょうが、パートタイムよりもフルタイムの伸び率が大きく、引用した記事にもある通り、フルタイム比率が上昇したことが、結果的に、賃金上昇に寄与したように私は受け止めています。人手不足の中で、このような雇用の質的な改善が続けば、個々人のマイクロな賃上げ以上にマクロでの賃金上昇≅所得増に帰結する可能性が高いと考えるべきです。その意味で、消費への効果もあると受け止めています。
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2017年06月05日 (月) 22:27:00

今週木曜日公表予定の2次QEは1次QEからわずかに上方修正か?

先週6月1日の法人企業統計を受けてほぼ必要な統計が出そろい、今週木曜日の6月8日に1~3月期GDP速報2次QEが内閣府より公表される予定ですが、すでに、シンクタンクや金融機関などから1次QE予想が出そろっています。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、web 上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下の表の通りです。ヘッドラインの欄は私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しています。可能な範囲で、足元の4~6月期以降を重視して拾おうとしています。明示的に取り上げているシンクタンクは、下のテーブルでは2機関、すなわち、みずほ総研と第一生命経済研だけとなっています。そのため、特にみずほ総研のリポートのヘッドラインは長々と引用しています。何分、2次QEですのでアッサリとしたリポートも少なくなく、法人企業統計のオマケ的なものも見受けられます。いずれにせよ、より詳細な情報にご興味ある向きは左側の機関名にリンクを張ってありますから、リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、ダウンロード出来たりすると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちにAcrobat Reader がインストールしてあって、別タブが開いてリポートが読めるかもしれません。

機関名実質GDP成長率
(前期比年率)
ヘッドライン
内閣府1次QE+0.5%
(+2.2%)
n.a.
日本総研+0.7%
(+2.9%)
1~3月期の実質GDP(2次QE)は、設備投資、在庫変動が上方修正される一方、公共投資は下方修正となる見込み。その結果、成長率は前期比年率+2.9%(前期比+0.7%)と1次QE(前期比年率+2.2%、前期比+0.5%)から上方修正される見込み。
大和総研+0.8%
(+3.2%)
今回の法人企業統計の結果を受けて、1-3月期GDP二次速報(6月8日公表予定)では、実質GDP成長率が前期比年率+3.2%(一次速報: 同+2.2%)と、一次速報から上方修正されると予想する。基礎統計の直近値の反映により公共投資が上方修正となるほか、需要側統計の法人企業統計の結果を受けて設備投資と在庫投資がいずれも上方修正される見込みだ。
みずほ総研+0.6%
(+2.4%)
2017年度の日本経済について展望すると、海外経済の回復が、引き続き輸出や設備投資の回復につながるだろう。五輪関係や都市再開発関連の案件が進捗すること、人手不足の深刻化を背景に省力化・効率化投資の積み増しが見込まれることも、設備投資の押し上げ要因になるとみられる。他方、個人消費については、耐久消費財が持ち直していること、株高などを背景に消費者マインドが改善していることがプラスに働くものの、年度半ばにかけて見込まれるエネルギー価格の上昇が下押し要因となるだろう。
実際、5月末に発表された経済指標は、4月以降も景気回復が続いていることを示す内容だった。4月の鉱工業生産指数(5/31発表)は前月比+4.0%と大幅に上昇した。5・6月の生産が計画(予測指数)から例年並みに下振れすると仮定すると、4~6月期の生産は前期比1%程度の伸びとなる見込みである。この生産の伸びを前提に4~6月期のGDPを簡易計算すると、年率1%台になると推計される。
ただし、リスク要因に目を向けると、米国トランプ政権の行方や中国のマクロ経済運営を巡る不確実性は依然高く、景気の下振れリスクとして引き続き注意が必要だ。
ニッセイ基礎研+0.6%
(+2.6%)
6/8公表予定の17年1-3月期GDP2次速報では、実質GDPが前期比0.6%(前期比年率2.6%)となり、1次速報の前期比0.5%(前期比年率2.2%)から上方修正されると予測する。
第一生命経済研+0.6%
(+2.3%)
ゼロ%台後半とみられる潜在成長率を明確に上回る高成長であり、16年10-12月期から伸び率も加速している。2次速報でも、景気が好調に推移していることが改めて確認できるだろう。
先行きについても、輸出の増加が続く可能性が高いことに加え、景気対策効果の顕在化によって公共投資も増加が予想される。設備投資についても、企業収益の持ち直しや景況感の回復を受けて増加が期待できる。景気は今後も着実な回復傾向を続ける可能性が高い。
伊藤忠経済研+0.5%
(+2.1%)
2017年1~3月期の実質GDP成長率は前期比+0.5%(年率+2.1%)へわずかに下方修正されると予想。設備投資が下方修正される一方、公共投資が上方修正される見込み。需給ギャップは概ね解消されるが、企業業績の大幅改善下で低水準にとどまる労働分配率の上昇が課題。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券景気循環研究所+0.6%
(+2.5%)
三菱UFJモルガンスタンレー証券景気循環研究所は、実質GDP成長率が1次速報の前期比年率2.2%から同2.5%に上方修正されると予想する。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング+0.8%
(+3.2%)
2017年1~3月期の実質GDP成長率(2次速報値)は、前期比+0.8%(年率換算+3.2%)と1次速報値の同+0.5%(同+2.2%)から上方修正される見込みである。
上方修正される主因は、企業の設備投資である。公共投資も上方修正される可能性があるものの、全体への影響は軽微にとどまろう。その他の項目については、大きな修正はない見込みである。
三菱総研+0.7%
(+3.0%)
2017年1-3月期の実質GDP成長率は、季調済前期比+0.7%(年率+3.0%)と、1次速報値(同+0.5%(年率+2.2%))から上方修正を予測する。


ということで、唯一、伊藤忠経済研が下方改定を見込んでいるんですが、私を含めて、大方のエコノミストは2次QEは1次QEから上方修正されるものと予想しています。例えば、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスも前期比+0.6%、前期比年率+2.4%と小幅な上方改定を示しています。レンジとしても、前期比年率で見て+2.2%~+3.2%となっており、私が見た範囲では1次QEの+2.2%を下回る予想を出している機関はありませんでした。主要な改定項目は、いくつかのリポートのヘッドラインで取り上げている通り、設備投資の上方修正です。私自身は直観的に年率+3%には届かないものと見込んでいます。いずれにせよ、第一生命経済研のヘッドラインに引用したように、たとえ伊藤忠経済研のようにわずかに下方修正であったとしても、明確に潜在成長率を上回る成長であり、昨年2016年10~12月期と同等ないしやや加速しているわけですから、景気の現状は好調を持続していると判断されます。その上、足元から先行きについても、回復ないし拡大が見込める内容になるものと私は受け止めています。
最後に、下のグラフはみずほ総研のリポートから引用しています。

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2017年06月01日 (木) 19:44:00

法人企業統計に見る企業活動は上向きを確認し賃上げや設備投資の動向を考える!

本日、財務省から昨年2016年10~12月期の法人企業統計が公表されています。季節調整していない原系列の統計で、売上高は2期連続の増収で前年同期比+5.6%増の350兆6366億円、経常も3期連続の増益で+26.6%増の20兆1314億円でした。また、設備投資は設備投資は製造業で+1.0%、非製造業で+6.3%それぞれ増加し、非製造業が牽引する形で、+4.5%増の14兆2901億円を記録しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

1~3月設備投資4.5%増、金額でリーマン前回復 法人企業統計
財務省が1日発表した2017年1~3月期の法人企業統計によると、金融業・保険業を除く全産業の設備投資は前年同期比4.5%増の14兆2901億円だった。プラスは2四半期連続。建設業や不動産、自動車分野の投資がけん引した。設備投資額はリーマン・ショック前の08年1~3月期(16兆8648億円)以来の大きさ。経常利益は26.6%増の20兆1314億円と、10~12月期にはとどかなかったものの1~3月期としては過去最高で、企業の増益基調が続いた。財務総合政策研究所は「日本経済全体のゆるやかな回復基調が続いている」と指摘した。
設備投資を産業別にみると、非製造業が6.3%増えた。賃貸用不動産の取得や建設が伸びたほか、商業施設やオフィスビルの増加がけん引した。製造業は1.0%増だったが、10~12月期の7.4%からは伸びが鈍化した。自動車大手の新型車投入に伴う投資が増えた。
国内総生産(GDP)改定値を算出する基礎となる「ソフトウエアを除く全産業」の設備投資額は季節調整済みの前期比で1.3%増。製造業が1.8%減少したものの、非製造業が3.0%伸びた。
経常利益の増加は3四半期連続で、製造業の70.3%増という大幅な伸びが寄与した。新型車効果に加え、16年1月に起きた大手企業の工場事故による生産停止などの反動で増えた。非製造業は10.7%増と3四半期連続のプラスだった。原油など資源価格の回復が商社を中心とする卸売業の利益に貢献した。
全産業の売上高は5.6%増の350兆6366億円と2四半期連続の増収で、非製造業が6.1%、製造業が4.3%、それぞれ増えた。
同統計は資本金1000万円以上の企業収益や収益動向を集計。今回の17年1~3月期の結果は、内閣府が8日発表する同期間のGDP改定値に反映される。


やや長いものの、いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、法人企業統計のヘッドラインに当たる売上げと経常利益と設備投資をプロットしたのが下のグラフです。色分けは凡例の通りです。ただし、グラフは季節調整済みの系列をプロットしています。季節調整していない原系列で記述された引用記事と少し印象が異なるかもしれません。影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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上のグラフのうちの上のパネルに示されたように、売上高についてはサブプライム・バブル崩壊前はいうに及ばず、前世紀のピークすら超えられていませんが、経常利益についてはすでにリーマン・ショック前の水準を軽くクリアしており、我が国企業の収益力は史上最強のレベルに達しています。季節調整していない原系列の統計ながら、1~3月期の売上高経常利益率は製造業が5.7%、非製造業が5.2%と、国内経済もそれなりに堅調に回復・拡大を示しているものの、世界経済のいっそうの拡大や円安を受けて、製造業が非製造業よりも高い収益力を示しています。従来からのこのブログでお示ししている私の主張ですが、我が国の企業活動については昨年2016年1~3月期ないし年央くらいを底に、昨年10~12月期には明らかに上向きに転じ、今年1~3月期もこの流れが継続していることが確認できたと思います。特に、設備投資については2016年年央を底に上向きに転じているのが読み取れますが、海外での投資への漏れが生じていることが国内投資の水準からうかがわれます。投資については成熟を示している我が国産業の現状から、能力増強投資の割合が決して高くなく、人手不足に起因する省力化投資や更新投資が中心になっている可能性があります。経済政策の観点から見て、企業活動がここまで回復ないし拡大している中で、さらなる法人税引き下げなどによる企業活動活性化がどこまで必要なのかは疑問です。企業が賃上げに慎重姿勢を示しているのであれば、企業の余剰キャッシュを雇用者や広く国民に還元する政策が要請される段階に達しつつある可能性を指摘しておきたいと思います。

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続いて、上のグラフは私の方で擬似的に試算した労働分配率及び設備投資とキャッシュフローの比率、さらに、利益剰余金をプロットしています。労働分配率は分子が人件費、分母は経常利益と人件費と減価償却費の和です。特別損益は無視しています。また、キャッシュフローは実効税率を50%と仮置きして経常利益の半分と減価償却費の和でキャッシュフローを算出しています。このキャッシュフローを分母に、分子はいうまでもなく設備投資そのものです。この2つについては、季節変動をならすために後方4四半期の移動平均を合わせて示しています。利益剰余金は統計からそのまま取っています。上の2つのパネルでは、太線の移動平均のトレンドで見て、労働分配率はグラフにある1980年代半ば以降で歴史的に経験したことのない水準まで低下しましたし、キャッシュフローとの比率で見た設備投資は50%台後半で停滞が続いており、これまた、法人企業統計のデータが利用可能な期間ではほぼ最低の水準です。他方、いわゆる内部留保に当たる利益剰余金だけはグングンと増加を示しています。これらのグラフに示された財務状況から考えれば、まだまだ雇用の質的な改善のひとつである賃上げ、もちろん、設備投資も大いに可能な企業の財務内容ではないか、と私は期待しています。

本日公表された法人企業統計などを盛り込んで、1~3月期のGDP統計2次QEが来週6月8日に内閣府から公表される予定となっています。設備投資が上方修正され、成長率もわずかながら上方修正されるんではないかと私は予想していますが、改定幅は小さいと思われます。ただ、もともとの1次QEが年率+2%を超える高成長でしたところ、さらに成長率が上方修正されるわけです。また、日を改めて2次QE予想として取りまとめたいと思います。
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2017年05月31日 (水) 22:27:00

大きな伸びを示した鉱工業生産指数(IIP)の先行きをどう見るか?

本日、経済産業省から4月の鉱工業生産指数(IIP)が公表されています。季節調整済みの系列で前月比+4.0%の増産を記録しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

鉱工業生産、4月は4.0%上昇 自動車伸びリーマン後最高水準に
経済産業省が31日発表した4月の鉱工業生産指数(2010年=100、季節調整済み)速報値は前月比4.0%上昇の103.8となった。上昇は2カ月ぶり。国内販売が好調な乗用車の増産などがけん引し、消費増税前の駆け込み需要が発生した14年1月実績(103.2)を超えてリーマン・ショック後では最高水準となった。QUICKが事前にまとめた民間予測の中央値(4.5%の上昇)は下回った。
出荷指数は前月比2.7%上昇の101.1だった。在庫指数は1.5%上昇の111.3だった。在庫率指数は2.9%上昇の114.7となった。経産省は生産の基調判断を「持ち直しの動き」で据え置いた。
生産の増加に比べ、出荷の伸びがやや勢いを欠くことから在庫水準は高止まりしつつある。経産省では「景気拡大期の後半に出ることが多い(企業が需要増を見込む)在庫積み増し局面への転換を若干示唆する結果」とみている。ただ、在庫指数の主な押し上げ要因となっている普通車に関しては大型連休による船便の減少で輸出が滞り、一時的に在庫が積み上がっている可能性もあるとみている。
4月の生産指数は15業種のうち11業種が前月から上昇し、4業種が低下した。輸送機械工業が10.8%上昇したほか、汎用・生産用・業務用機械工業が9.2%、電子部品・デバイス工業が5.2%それぞれ上昇した。
5月の製造工業生産予測指数は前月比2.5%の低下を見込む。大型連休の日並びによる工場の稼働日数の減少などを背景に、輸送機械工業を中心に生産が減少したようだ。経産省による補正済みの試算値では3.5%の低下となる見通し。6月の予測指数は1.8%の上昇となる見込みだ。


いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。でも、統計をいくつも取り上げたので、とても長くなってしまいました。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは以下の通りです。上のパネルは2010年=100となる鉱工業生産指数そのもの、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた期間は景気後退期です。

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最近、今年2017年に入ってからの生産の動きはかなり荒っぽくなっており、季節調整済みの前月比で見て、1月が減産で2月が増産になったのは中国をはじめとする中華圏の春節の影響でいたし方ない気もしますが、3月減産の後で今日統計が発表された4月の大幅増産となっています。さらに、先行きを製造工業生産予測指数で見ると、5月減産の後の6月増産と見込まれており、減産と増産が交互に現れる形となっています。しかも、4月統計以降の大きな振れの主役は我が国のリーディング・インダストリーである輸送機械だったりします。もっとも、5月のゴールデンウィークの日並びがよくて生産ラインの停止が長かったのが5月減産の原因らしいので仕方ない面もあります。ということで、4月の増産について産業別に寄与が大きい順で、輸送機械工業、はん用・生産用・業務用機械工業と電子部品・デバイス工業の3業種となっています。先行きについては、5月の製造工業生産計画では、輸送機械工業が大きな減産計画となっており、製造工業全体で前月比▲2.5%の低下見込みとなっている一方で、逆に、6月は輸送機械工業とはん用・生産用・業務用機械工業の上昇によって増産計画となっており、前月比+1.8%を見込んでいます。6月の増産幅が5月の減産に届きませんので、6月の生産水準は4月を下回る、ということになります。
ただ、最近の統計を見る限り、生産については拡大基調が確認できると私は受け止めています。もともと、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスも+4.5%の増産でしたし、ほぼこれに近いラインの結果といえます。しかも、生産・出荷・在庫のすべてが前月から増加しています。引用した記事にもある通り、生産の増加に比べて出荷の伸びが勢いを欠いているため在庫が結果として積み上がっている可能性が高いと私は考えていますが、業種によっては先行きの需要増に対応した意図的な在庫積み増し局面に入っている可能性もあります。ただ、グラフは示しませんが、典型的な在庫循環が観察される電子・デバイス産業では4月統計で在庫率が小幅に低下しているのも事実ですから、少なくとも在庫の積み上がりを懸念する必要はないものと受け止めています。予測指数が示されていない7月以降についても、国内の耐久消費財の買い替えサイクルや消費増税後の駆け込み需要の反動などもようやく一巡し、労働市場のひっ迫に伴う投資需要の顕在化も期待できます。加えて、世界経済の回復・拡大に牽引される形で年央以降も我が国の生産は緩やかな増産傾向を続けると私は予想しています。
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2017年05月30日 (火) 22:44:00

好調な経済を裏付ける商業販売統計と雇用統計をどう見るか?

本日、経済産業省から商業販売統計が、また、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が、それぞれ公表されています。小売業販売額は季節調整していない原系列の統計で前年同月比+3.2%増の11兆8110億円、季節調整済みの系列で前月比+1.4%増、また、失業率は2.8%と前月と同水準で、有効求人倍率は前月からさらに上昇して1.48のバブル超えを記録しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

4月の小売販売額、3.2%増 資源価格の強含みなど背景
経済産業省が30日発表した4月の商業動態統計(速報)によると、小売業販売額は前年同月比3.2%増の11兆8110億円だった。6カ月連続で前年実績を上回った。経産省は小売業の基調判断を「持ち直しの動きがみられる」で据え置いた。
業種別では燃料小売業の寄与度が最も大きく、前年同月と比べ11.9%増えた。原油価格の強含みを背景に石油製品の価格が上昇した。新型車効果の続く自動車小売業も6.0%増と好調を維持している。軽自動車も4カ月ぶりにプラスに転じた。気温の上昇に伴い春物衣料の販売が伸びたことから、織物・衣服・身の回り品小売業も5カ月ぶりに増加した。
大型小売店の販売額は、百貨店とスーパーの合計で0.8%増の1兆5583億円だった。既存店ベースでは1.1%増だった。百貨店は訪日外国人(インバウンド)需要を含めた化粧品などの販売が好調で、既存店ベースでは14カ月ぶりに前年同月を上回った。閉店や改装などの影響で売り場面積が減り、全店ベースでの販売額は減少した。コンビニエンスストアの販売額は3.3%増の9514億円だった。



いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、商業販売統計のグラフは下の通りです。上のパネルは季節調整していない小売販売額の前年同月比増減率を、下のパネルは季節調整指数をそのまま、それぞれプロットしています。影を付けた期間は、次の雇用統計とも共通して、景気後退期です。

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小売業販売額を業種別に少し詳しく見ると、燃料小売業が前年同月比+11.9%増、織物・衣服・身
の回り品小売業が+6.0%増、自動車小売業が+6.0%増、医薬品・化粧品小売業が+5.3%増、電機が含まれる機械器具小売業が+4.1%増、などと、各業種とも順調に売上げを伸ばしています。従って、統計作成官庁である経済産業省でも基調判断は「持ち直しの動き」で据え置いています。ただ、売上げ増の中身は一様ではなく、引用した記事にもある通り、燃料については国際商品市況における石油価格の上昇に起因して販売単価が上がっているのも大きな要因のひとつと考えるべきです。ただ、2番目の衣料関係では、天候要因もあって春物衣料品が売れているようです。5月末の現時点でも、今夏は猛暑が予想されており、季節がメリハリあって夏暑くて冬寒いのは消費の販売増につながる可能性が高いと私は受け止めています。自動車が販売を増加させているのも、自動車産業にとっては国内市場よりも海外輸出市場のボリュームの方が大きいとはいえ、我が国のリーディング・インダストリーなだけに、それなりの波及効果が見込めるんではないかと期待されます。GDP統計の国民経済計算では国内消費の外数で輸出扱いとなるインバウンド消費についても、かつてのような爆発的な伸びは一段落しましたが、引き続き、堅調に推移している印象です。

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続いて、雇用統計のグラフは上の通りです。いずれも季節調整済みの系列で、上から順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。影をつけた期間はいずれも景気後退期です。引用した記事にもある通り、失業率も有効求人倍率もいずれもバブル経済以降くらいの人手不足を示す水準にありますが、繰り返しこのブログで指摘している通り、まだ賃金が上昇する局面には入っておらず、賃金が上がらないという意味で、まだ完全雇用には達していない、と私は考えています。私自身の直観ながら、失業率が3%を下回ると賃金上昇が始まると予想していたんですが、先週に取り上げたリクルートジョブズの派遣スタッフの時給調査結果に表れているように、派遣労働者の時給は人手不足と言われつつもここ数か月間は下げており、ようやく、下げ止まりつつあるところです。労働需要サイドで、デフレ経済下で安価な労働力に依存していた低生産性企業が退出し非正規雇用への需要が低下したのかもしれませんし、あるいは、労働供給サイドで、デスキリングが広範に生じているのかもしれません。たぶん、どちらも違うんだろうという気がしますが、素直に人手不足で賃金が上昇する世界がとても遠く感じてしまいます。
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2017年05月29日 (月) 21:22:00

東洋経済オンラインによる「給料への満足度」トップ150社ランキングやいかに?

先週5月26日付けで、東洋経済オンラインから「給料への満足度」トップ150社ランキングが明らかにされています。東洋経済オンラインのサイトから、1位から44位の50社の画像を引用すると以下の通りです。

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お給料の水準が満足度に反映されているのはほぼほぼ確実なんですが、ランキングに見られるように、平均給与が平均より低くても上位にランクインされている会社もあるように見受けられます。東洋経済オンラインのサイトではコメントを分析し、公平で明確な給与制度や、仕事の量や内容、福利厚生も含めた待遇というのも、「給与の満足度」の決定要素には含まれているといえるだろう、と指摘しています。まあ、そうなんでしょうね。
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2017年05月26日 (金) 22:43:00

プラスを続ける消費者物価(CPI)及び企業向けサービス物価(SPPI)の先行きを考える!

今日は物価統計が2本、すなわち、総務省統計局の消費者物価指数(CPI)企業向けサービス物価指数(SPPI)が、それぞれ公表されています。いずれも4月の統計です。生鮮食品を除くコアCPIの前年同月比上昇率は+0.3%と、今年に入ってから4か月連続でプラスを続けている一方で、ヘッドラインSPPI上昇率は+0.7%、国際運輸を除くコアSPPIも+0.7%と、徐々に上昇幅が拡大しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

4月の全国消費者物価、0.3%上昇 都区部は1年5カ月ぶりプラス
総務省が26日発表した4月の全国消費者物価指数(CPI、2015年=100)は、値動きの大きな生鮮食品を除く総合指数が100.1と、前年同月比0.3%上昇した。プラスは4カ月連続。ガソリンなど石油製品の価格上昇が大きく寄与したが、QUICKがまとめた市場予想の中央値(0.4%上昇)は下回った。
生鮮食品を含む総合では全体の56.6%にあたる296品目が上昇し、168品目が下落した。横ばいは59品目だった。
生鮮食品を含む総合は100.3と0.4%上昇した。イカなど一部魚介類の上昇が続いた。生鮮食品とエネルギーを除く総合は100.7と横ばいだった。
併せて発表した東京都区部の5月のCPI(中旬速報値、15年=100)は生鮮食品を除く総合が100.0と、前年同月比0.1%上昇した。プラスは2015年12月(0.1%上昇)以来1年5カ月ぶり。石油製品の上昇に加えて、うるち米や牛肉など生鮮食品を除く食料が寄与した。生鮮食品を含む総合は100.1と0.2%上昇した。
4月の企業向けサービス価格、前年比0.7%上昇 広告が鈍化
日銀が26日に発表した4月の企業向けサービス価格指数(2010年平均=100)は103.7で、前年同月比で0.7%上昇した。前年同月比での上昇は46カ月連続。ただ、上昇率は5カ月ぶりに縮小(前月は0.8%上昇)し、前月比では0.2%の下落だった。広告の上昇率縮小が主因で、土木建築や宿泊などの諸サービスの上昇率も鈍化した。
広告を種類別に見ると、テレビ広告は3月にスポーツ特番などで押し上げられた反動で伸び率が縮小した。新聞広告は飲食店の全面禁煙の検討でたばこ会社が広告の出稿に慎重になった影響もあり、3月の上昇から4月は下落に転じた。
諸サービスのうち、土木建築は引き続き人件費が上昇しているものの、上げ幅は前月より小さかった。宿泊サービスは4月の訪日外国人客数が過去最多となったものの、近畿を中心に民泊の利用が多かったことやホテルの建設ラッシュを受け、値上げの勢いが鈍化した。
一方、人手不足による人件費の上昇を背景にした情報通信、燃料費の上昇による運輸・郵便の伸び率が拡大した。
企業物価指数は輸送や通信など企業間で取引するサービスの価格水準を総合的に示す。対象の147品目のうち、消費税の影響を除くと前年比で価格が上昇したのは75品目、下落は30品目だった。上昇から下落の品目を引いた差は45品目と、3月の確報値(20品目)から25品目拡大し、15年1月以来の大きさだった。
日銀の調査統計局は「企業間のサービス需給は大きな価格上昇につながるほどには逼迫していない」との見解を示した。


いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。でも、物価統計を2本も取り上げたので、とても長くなってしまいました。続いて、いつもの消費者物価上昇率のグラフは以下の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く全国のコアCPI上昇率と食料とエネルギーを除く全国コアコアCPIのそれぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフは全国のコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。エネルギーと食料とサービスとコア財の4分割です。なお、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1位の指数を基に私の方で算出しています。丸めない指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。加えて、酒類の扱いがビミョーに私の試算と総務省統計局で異なっており、私の寄与度試算ではメンドウなので、酒類(全国のウェイト1.2%弱)は通常の食料には入らずコア財に含めています。念のため。

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現状での物価上昇は財関係ではエネルギーが、そして、サービスでは人手不足が物価上昇を牽引しているように見えます。コアCPIの前年同月比上昇率は、今年に入ってから4か月連続でプラスを記録し、小幅ながらジワジワと上昇幅を拡大しています。私の計算によれば、コアCPI上昇率に対してエネルギーの寄与は+0.34%ありますので、ほぼすべてを説明しつくしているカンジです。また、長らくマイナスを続けていた東京都区部のコアCPIが久し振りにプラスに転じています。上のグラフでは灰色の折れ線グラフです。東京都区部の物価は、最近その傾向が崩れつつあるとはいえ、全国物価の先行指標と考えられており、先行きについても、全国ベースで秋口くらいまで上昇率のプラス幅が拡大するものと私は予想しています。ただ、おそらく、あくまでおそらくの直観的な理解ですが、日銀の物価上昇目標である+2%には今年中に届こうハズもありません。そして、国際商品市況の石油価格も、この先さらに上昇するようには見受けられませんから、早ければ年内くらいタイミングでコアCPIの上昇ペースは鈍化し始める可能性が高いんではないかと考えています。まとめれば、今年2017年10月前後くらいまでコアCPIは上昇幅を拡大させるものの、日銀の物価目標である+2%には届かず、その後、年内には上昇ペースが鈍化し始める可能性が高い、と私は受け止めています。企業間取引では4月は価格改定期なのでしょうが、何分、消費者物価にはこういったタイミングは設定されていない品目も多く、企業物価と同じような価格改定は見受けられなかったように思います。

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続いて、SPPI上昇率のグラフは以下の通りです。サービス物価(SPPI)と国際運輸を除くコアSPPIの上昇率とともに、企業物価(PPI)上昇率もプロットしてあります。SPPIとPPIの上昇率の目盛りが左右に分かれていますので注意が必要です。なお、影をつけた部分は景気後退期を示しています。ということで、SPPI上昇率は今年2016年2-3月の+0.8%から小幅に縮小を示し、4月は+0.7%となりました。引用した記事にもある通り、広告が3月の+2.8%上昇から4月には+0.7%と大きく上昇率が鈍化しています。人手不足の影響については、土木建築サービスが引き続きたい相上昇率ながら3月の+6.1%から4月には+4.7%と上昇幅をやや縮小させている一方で、情報通信は3月の+0.2%から4月は+0.5%に加速を示しています。なかなか一様ではないものの、全般的に底堅いサービス物価の動向が垣間見える気がします。
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2017年05月25日 (木) 20:29:00

東洋経済オンライン「日本企業の進出が加速している国トップ20」やいかに?

私は東南アジアはASEANの大国であるインドネシアの首都ジャカルタに家族とともに3年間の長きに渡って、インドネシア政府の国会開発企画庁にJICA専門家として派遣されていたことがあるんですが、先週金曜日5月19日付けで、東洋経済オンラインに「日本企業の進出が加速している国トップ20」のランキングが明らかにされています。タイトルがビミョーなんですが、おそらく、あくまでおそらくなんですが、日本企業がもっとも多く進出しているのは米国だろうという気がする一方で、それではランキングにならないようなカンジですから、日本企業の進出が加速している、という表現で日本企業の現地法人数につき、直近の2016年と5年前の2011年を比較しています。以下の通りです。

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東南アジアの中でも、ASEAN創設時の5か国、すなわち、インドネシア、マレーシア、シンガポーる、タイ、フィリピンといった国々もさることながら、これらから少し発展段階が後になるインドシナ半島のミャンマー、カンボジア、ベトナム、あるいは、中南米の大国であるメキシコやブラジルなどが目につきます。また、5年後、10年後はランキングが大きく変わっている可能性も否定できません。中国が20位までにランクインしていないのも、ある意味で、注目すべきなのかもしれません。
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2017年05月24日 (水) 19:58:00

リクルートジョブズの派遣スタッフ時給は下げ止まったか?

明週火曜日に失業率や有効求人倍率などの雇用統計が公表される予定となっていますが、先月も取り上げているリクルートジョブズの非正規雇用の時給調査、すなわち、アルバイト・パートと派遣スタッフの募集時平均時給の4月の調査結果が明らかにされています。リンク先は以下の通りです。


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ということで、アルバイト・パート及び派遣スタッフそれぞれの募集時平均時給の推移は上のグラフの通りです。前者のアルバイト・パート順調に賃上げがなされているんですが、派遣スタッフについては3月統計ではとうとう前年同月比で▲2%を超えるマイナスを記録した後、直近の4月統計では▲0.4%減までマイナス幅を一気に縮小しています。実は、同じ業界の「エン派遣 三大都市圏の募集時平均時給レポート」でも4月の派遣スタッフ時給は昨年2016年10月から7か月連続でマイナスを記録したものの、3月の▲2.1%減から4月は▲1.7%減と、極めてわずかながらマイナス幅を縮小させており、いずれの調査でも派遣スタッフ時給は下げ止まった可能性が示唆されていると私は受け止めています。
両社でビミョーに職種の分類が異なるので何ともいえないんですが、エン・ジャパンのデータでは2015年年央くらいから2年近く医療・介護系の派遣スタッフ時給がマイナスを続けており、リクルートジョブズでも医療介護・教育系は必ずしも上昇圧力が感じられません。もっとも人手不足していそうな業界なんですが、同時に、もっとも規制の強い分野でもあり、政府の規制により賃金が上昇していない可能性も否定できません。民間企業に賃上げを促すのも重要ですが、もしも、政府の規制によって医療・介護分野で賃上げが抑制されているのであれば、民間企業に圧力をかけることとは別にやるべきことがあるような気もします。
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2017年05月23日 (火) 20:07:00

東京商工リサーチによる「労働基準関係法令の違反企業332社」企業実態調査の結果やいかに?

やや旧聞に属する話題ですが、5月17日に東京商工リサーチから「労働基準関係法令の違反企業332社」企業実態調査の結果が明らかにされています。昨今、就職戦線では売り手市場が続く中で、いわゆる「ブラック企業」に関する注目が高まっており、労働基準関係法令の違反企業がそのまま「ブラック企業」であると主張するつもりはありませんが、例の電通新入社員自殺事件も含めて、政府の働き方改革が進められているところ、図表を引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。なお、基となるデータは厚生労働省から公表されている以下の文書です。pdfファイルを開けば300社余りの企業の実名がズラリと並んでいます。ページ番号は振っていないんですが、電通はp.15の東京労働局の4番目に出現します。


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ということで、上のテーブルは東京商工リサーチのサイトから 労働基準関係法令違反 一覧公表企業 産業別 を引用しています。まず、テーブルに入る前に、公表された334件のうち、違反した労働基準関係法令の内訳は、労働安全衛生法違反が211件59.1%に上っており、建設作業現場や製造現場などでの安全管理義務を怠ったことで事故が発生したケースが中心になっています。次いで、違法な長時間労働などの労働基準法違反が63件17.6%、賃金未払いや最低賃金を遵守しない最低賃金法違反が62件17.3%と続いています。上のテーブルから明らかな通り、産業別で最多は建設業で115社34.6%、次いで、製造業の76社22.8%、サービス業他68社20.4%の3産業が突出し、この3産業で全体の約8割を占めています。もっとも、全体の企業数なり何なりでスケーリングする必要があるのかもしれませんが、そのあたりは不明です。なお、建設業と製造業の合計191社では、労働安全衛生法違反が156社81.6%と8割に達しています。

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次に、上のグラフは東京商工リサーチのサイトから 労働基準法違反63社 産業別内訳 を引用しています。先ほどのテーブルが危険に関するものでしたが、上の円グラフは社会問題化している時間外労働の割増賃金未払いや36協定無視など、長時間労働に関する労働基準法違反の63社の産業別内訳です。製造業は引き続き2番目にランクインしてしまっていますが、この労働基準法違反では最多がサービス業他26社41.2%で4割を超えています。例の電通もこの中に含まれています。そして、製造業に次いで運輸業が12社19.1%と3番目に入っています。私はそれほどフォローしていませんが、ヤマト運輸の未払残業代はどうなったんでしょうか?

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最後に、上のグラフは東京商工リサーチのサイトから 労働基準関係法令違反 一覧公表企業 売上高別 を引用しています。公表332社のうち、売上高が判明した244社を売上高で見ると、1~5億円未満が77社31.5%ともっとも多く、次いで、1億円未満が58社23.7%、10~50億円未満が43社17.6%と続いています。売上高100億円以上も21社8.6%となっています。パナソニックの富山工場や日本郵便の新大阪郵便局も実名公表されています。ただ、売上高10億円未満の企業が約7割を占め、業績悪化や資金力の乏しさが労働基準関係法令の違反に直接、間接につながった可能性も示唆されていると、東京商工リサーチでは分析しています。
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