2017年11月14日 (火) 21:44:00

この冬のボーナスは増えるのか?

先週のうちに、例年のシンクタンク4社から冬季ボーナスの予想が出そろいました。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、ネット上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると以下の表の通りです。ヘッドラインは私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しましたが、公務員のボーナスは制度的な要因が作用しますので、景気に敏感な民間ボーナスに関するものが中心です。ついでながら、支給総額に関する見通しも可能な範囲で併せて収録しています。特に、第一生命経済研のリポートは、来年度の賃金見通しまで幅広く言及してありましたので、超長めに取っています。なお、その他の機関についても、より詳細な情報にご興味ある向きは左側の機関名にリンクを張ってあります。リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、あるいは、ダウンロード出来ると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちに Acrobat Reader がインストールしてあって、別タブでリポートが読めるかもしれません。

機関名民間企業
(伸び率)
公務員
(伸び率)
ヘッドライン
日本総研37.3万円
(+0.8%)
73.1万円
(+3.7%)
今冬の賞与を展望すると、民間企業の一人当たり支給額は前年比+0.8%と年末賞与としては3年ぶりのプラスとなる見込み。
(略)
賞与支給総額は、同+2.9%増加する見込み。一人当たり支給額の増加は小幅ながら、支給労働者数が引き続き堅調に増加することが主因。
第一生命経済研37.3万円
(+0.8%)
n.a.増加が予想されるとはいえ、伸び率自体はそれほど高いわけではない。物価上昇率を考慮した実質賃金でみるとゼロ近傍の推移が続くものと思われる。17年度後半の景気も引き続き好調に推移する可能性が高いが、それはあくまで輸出の増加を背景とした企業部門主導の回復になるだろう。
賃金の回復が実現するのは18年度と予想している。17年の春闘は、物価が下落し企業業績も伸び悩んだ16年の結果を反映したことで物足りない結果に終わったが、18年の春闘では、物価が上昇し、企業収益も好調な17年の経済状況をベースに交渉が行われる。18年の春闘賃上げ率は17年対比で上昇する可能性が高いだろう。また、17年度の好調な企業業績を反映して18年のボーナスは夏・冬とも増加が予想される。18年については、物価上昇を上回る賃金増加が実現するとみられ、実質賃金も改善するだろう。遅ればせながら家計部門への景気回復の波及が進むことが期待できる。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング37.2万円
(+0.6%)
72.2万円
(+2.4%)
2017年冬の民間企業(調査産業計・事業所規模5人以上)のボーナスは、前年比+0.6%と小幅ながら3年ぶりに増加すると予想する。内外需要の回復を背景に企業業績の拡大が続いていることが押し上げ要因となる。
雇用者数の増加が続いており、ボーナスが支給される事業所で働く労働者の数も増加が見込まれる。冬のボーナスの支給労働者数は4,288万人(前年比+2.4%)に増加し、支給労働者割合も84.9%(前年差+0.1%ポイント)に上昇しよう。また、ボーナスの支給総額は16.0兆円(前年比+3.0%)に増加する見通しである。夏に続いて冬も支給総額が増加することは、個人消費にとって追い風となるだろう。
みずほ総研37.4万円
(+1.1%)
78.9万円
(+3.5%)
2017年冬の民間企業の一人当たりボーナス支給額を前年比+1.1%増と予想している。冬季ボーナスとしては3年ぶりに増加する見込みだ。
(略)
支給対象者についても、人材確保のための正社員化や非正社員の待遇改善の動きを受けて、増加が続くとみられる。実際、2017年入り後はパートタイム比率が低下傾向にあり、正社員化の動きが進んでいるようだ。その結果、支給総額(民間企業)は、前年比+3.6%と比較的高い伸びを見込んだ。
(略)
民間企業・公務員を合わせた冬季ボーナスの支給総額は、前年比+3.6%と前年(同+2.1%)から大きく伸びが高まるだろう。冬としては2014年以来の伸びとなり、当面の個人消費を下支えするとみている。


ということで、今冬のボーナスの支給額は、3年振りに1人当たり支給額が増加するとともに、支給対象者も増加し、従って、支給総額はかなりの増加を見せると見込まれています。ただし、上のテーブルのヘッドラインにはうまく取り込めなかったんですが、大手企業については伸び悩みないし悪化すら予想されている一方で、中堅企業や中小企業では堅調と見込まれています。どうしてかといえば、大企業ではに海外経済等の不透明感や円高の影響で伸び悩んだ昨年2016年の企業業績の結果が反映された一方で、中堅・中小企業では引き続き好調な企業業績と人手不足感の強まりとを背景に冬のボーナスも明確な増加を示すものと期待されています。従来、大企業ほどボーナスがいいとの見方もあったんですが、少なくとも、今冬のボーナスの前年からの変化については、大企業で伸び悩む一方で、中堅・中小企業では好調、という結果が出るように予想されています。そして、このボーナス支給の増加は少なくとも当面の消費をサポートするものと期待されています。もちろん、いわゆる恒常所得仮説からすれば、ボーナスは恒常所得の外数であって、消費に対しては大きな影響を及ぼすものではない、と考えられていますが、さはさりながら、なかなか賃金が上がらない中でボーナスが増えれば財布の紐が緩むのは当然だという気がします。
下のグラフは日本総研のリポートから引用しています。最近時点では、ボーナスだけでなく毎月のお給料も同じ傾向ではないかという気がしますが、1人当たりの支給額はそれほど大きく増加しないんですが、正社員化の進展や非正社員の待遇改善などにより支給対象者が増加する寄与が大きくなっており、マイクロな雇用者あたりの賃上げやボーナスの増加はやや伸び率が低いものの、マクロの支給総額はかなりの増加を示すようになっています。

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2017年11月13日 (月) 23:26:00

企業物価(PPI)は国内物価の前年同月比上昇率が3%を超えて拡大!

本日、日銀から10月の企業物価 (PPI) が公表されています。ヘッドラインとなる国内物価の前年同月比上昇率は前月統計からやや上昇幅を拡大して+3.0%を示しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

10月の企業物価指数、前年比3.4%上昇、9年ぶり伸び率
日銀が13日に発表した10月の企業物価指数(2010年=100)は99.4で前年同月比で3.4%上昇した。上昇は10カ月連続。上昇率は市場予想の中央値(3.1%)を上回り、消費増税の影響を除くと08年10月(4.5%)以来9年ぶりの大きさとなった。世界経済の回復や産油国による減産を背景にした国際原油相場の持ち直しで、石油・石炭製品価格が上昇した。
前月比では0.3%上昇した。石油・石炭製品のほか、ナフサの相場上昇を背景にエチレンやプロピレンといった化学製品も値上がりした。堅調な世界景気や中国での環境規制による供給抑制を背景に銅やアルミニウムの国際相場が上昇し、銅地金やアルミニウム合金といった非鉄金属の価格も上昇した。農林水産物も値上がりした。飼料米への転作により食用米の供給減少で玄米や精米の価格が上がったほか、不漁で塩サケやイクラも値上がりした。
円ベースでの輸出物価指は前年比で9.7%上昇し、13年12月(12.7%)以来の高い伸び率となった。前月比では1.7%の上昇だった。化学製品や金属・同製品が値上がりした。輸入物価は前年比15.3%上昇し、伸び率は13年12月(17.8%)以来の大きさだった。前月比では2.6%上昇した。石油・石炭・天然ガスの価格上昇が大きく寄与した。
企業物価指数は企業間で売買するモノの価格動向を示す。公表している744品目のうち、前年同月比で上昇したのは378品目、下落は263品目となった。下落品目と上昇品目の差は115品目で、9月の確報値(110品目)から5品目増えた。


いつもながら、よく取りまとめられた記事だという気がします。次に、企業物価(PPI)上昇率のグラフは以下の通りです。上のパネルから順に、上のパネルは国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率、下は需要段階別の上昇率を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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ということで、PPIのヘッドラインとなる国内物価の前年同月比上昇率で見て、今年2017年1月に入ってプラスに転じ、+0.5%の上昇を示した後、いきなり2月には+1.1%の上昇と+1%に達し、さらに、4月には+2.1%の上昇と+2%に届き、前月の9月統計には+3.1%の上昇と+3%に乗せ、直近の10月統計では+3.4%にまで上昇幅が拡大しています。大きな上昇を示しているのがエネルギーと非鉄金属などの商品系ですので、国際商品市況における価格上昇の影響が大きいんですが、円安による国内価格押上げ圧力も見逃せません。例えば、国内物価のうちの石油・石炭製品は10月には前年同月比で+15.8%、また、非鉄金属は+22.4%の上昇をそれぞれ示しましたが、輸入物価のうちの石油・石炭・天然ガスの前年同月比は円ベースで+35.4%の上昇を示した一方で、契約通貨ベースでは+24.9%にとどまっていますし、同じく輸入物価の金属・同製品は円ベースで+30.3%の上昇ながら、契約通貨ベースでは+21.5%の上昇です。従って、石油をはじめとするエネルギーにせよ、非鉄などの金属にせよ、この円ベースと契約通貨ベースの上昇率の差の約+10%くらいは、主として円安による影響ということが考えられます。加えて、引用した記事にもある通り、農林水産物も上昇しており、+0.3%あった国内物価の前月比寄与度では玄米、精米、鶏卵などの農林水産物の寄与度は+0.08%に上っており、また、石油価格上昇の影響でエチレン、プロピレン、触媒などの化学製品も+0.07%の寄与を示しています。
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2017年11月12日 (日) 19:27:00

サンテFXネオのワンピースとのコラボ第2弾ゾロモデルを購入する!

6月28日付けのブログでも書きましたが、私の愛用しているサンテFXネオのワンピースとのコラボモデルのうち、6月に発売されたルフィーモデルに続いて、先週からゾロモデルも販売されています。私はルフィーモデルもそれなりに買い込んだんですが、どうせ必要になるからと考え、ゾロモデルもそれなりに買い込みました。
下の画像はサンテFXネオのサイトから引用しています。

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2017年11月11日 (土) 10:13:00

今週の読書も経済書は少ないながらも教養書や小説をがんばって計8冊!

今週は少し仕事の方に余裕があり、夜はせっせと読書に励んでしまいました。経済書らしい経済書は読まなかった気がしますが、地政学をはじめとして教養書・専門書の方はそれなりに読みましたし、小説と新書も2冊ずつ借りて読みました。計8冊、以下の通りです。

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まず、山田謙次『社会保障クライシス』(東洋経済) です。著者は野村総研で社会保障や医療・介護関係のコンサルタントを務めています。まあ、社会保障については、もっとも大口で所得に直接に影響を及ぼす年金ばかりが注目を集めていますが、本書では医療や介護に目を配り、2025年にはいわゆる団塊の世代がすべて75歳超になって後期高齢者になることから、現在の歳入構造のままでは政府財政が破たんするリスクがある、と警告を発しています。本書の冒頭で、そもそも、として、現在の政府の歳入と歳出の総額を上げていて、要するに、歳入、というか、国民の側から見た税負担はかなり低く抑えられている一方で、歳出は社会保障を中心に北欧などの高福祉国並みの規模になっている点を明らかにしています。一時、政府財政について「ワニの口」と称されていましたが、現在でも歳入と歳出のギャップは縮小しておらず、さらに、2025年には団塊の世代がすべて75歳超となり、医療と介護を中心に大きな公的負担の増加が見込まれる、と結論しています。200ページ余りの短い論考ですから、要約していえばそれだけです。本書の特徴のひとつとして、かなり判りやすく数字をキチンと上げている点があり、例えば、75歳超の後期高齢者になると、医療・介護費用がこれまでとは段違いに多くなる点については、医療費は全国民の平均は年間30万円程度である一方で、70歳で80万円、80歳になると90万円に上昇したり、加えて、介護が必要になる人の比率は、65歳では3%程度だが、75歳を過ぎると15%に上がり、80歳で30%、90歳で70%となる、などと解説を加えています。そして、恐ろしいのは、バブル崩壊後の就職氷河期・超氷河期に大学卒業がブチ当たり、正規の職を得られずに不本意非正規職員にとどまっている世代に、この大きな負担がシワ寄せされることです。そして、その上で、本書の著者はいくつかの解決策を提示しており、最大の解決策として国民負担率上昇の容認を上げています。明示的に、国民負担率をGDP比で60%まで許容すべきであると主張しているわけです。この負担サイドの解決策に加えて、給付サイドでは、現在のように自由に医療機関を選んで受診することを止めて、かかりつけ医の指示で受診する医療機関を指定するなど、医療提供体制の縮小を受忍する必要がある、としています。私の従来からの指摘として、マイクロな意思決定の歪みがマクロの不均衡につながっている点があり、それを付け加えておきたいと思います。本書とは直接の関係ありませんが、例えば、日本人は勤勉でよく働いて、統計には表れない生産性の高さを持っている一方で、企業サイドの資本の論理から非正規雇用を拡大して、個人及びマクロの労働力のデスキリングが進んでいるのは明白なんですが、少子高齢化についても、かなり近い減少を感じ取ることができます。すなわち、少子化の一員として、子どもや家族に対してはとても政府は厳しくて、社会保障の分け前もほとんど及ばないという事実がある一方で、高齢者にはとても手厚い社会保障が給付され、高齢者にオトクな経済社会体系ができ上がっています。子どもを出産して子育てするのに不利な社会経済である一方で、高齢者には優しい社会経済であるわけですから、少子高齢化がゆっくりと進むのは当然です。統計などでエビデンスを求めるのはムリなんですが、若者が東京に集まるのと同じ原理で、国民が子どもを産まなくなって高齢者に突き進む現象が観察されるわけですから、シルバー・デモクラシーに抗して社会保障のリソースを高齢者から子どもや家族に振り向ける政策が求められていると私は考えています。

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次に、高橋真理子『重力波発見!』(新潮選書) です。著者は東大理学部を卒業した朝日新聞の科学ジャーナリスト、なんですが、定年近い私よりもさらに年長そうなので、かなりのベテランなんだろうと思います。タイトル通りの内容で、約100年前にアインシュタインの一般相対性理論から予想された波である重力波についての解説です。そして、その前提として、ニュートンから始まる古典物理学や天文学、もちろん、アインシュタインの相対性理論から時間や暦の理論まで、一通りの基礎的な知識も前半部分で展開され、私のような専門外のシロートにも判りやすく工夫されている気がします。科学ジャーナリストとして、一般読者の受けがいいのは宇宙論と進化論であるとズバリといい切り、私もそうかという気がしてしまいます。重力波がどんなものかが分かれば、宇宙の成り立ちが理解できるといわれている点は理解した気になっていますが、誠に残念ながら、私には重力波の観測がどこまで重要な科学的事業であるかは判断できず、せいぜい、ノーベル賞に値する事業なんだと受け止めるくらいです。でも、重力波の基となる時空の歪み、そして、その時空とは何かについて、少しは理解が進んだ気がします。時間については、本書にもあるように、その昔は世界中で不定時だったわけで、日本の例なら、夜明けとともに日付が変わり、日暮れまでを等分していたわけです。もちろん、夜は夜で等分されていましたから、日の長い夏と逆の冬では時間の長さが違っていたわけですが、それは相対論的な違いではありません。それから、暦については、まさに権力の賜物であり、『天地明察』にある通りで、ユリウス暦とはローマ皇帝の権力の象徴でしょうし、グレゴリオ暦からは欧州中世における教会の知性と権力をうかがい知ることができます。なお、どうでもいいことながら、何かで読んだ不正確な記憶ながら、その昔は、というか、ローマ時代の前は月は1年に10か月だったところ、ひと月30日くらいにそろえるために、無理やりに1年12か月にしたらしいといわれています。2か月不足するので、7月にはジュリアス・シーザーの名が、8月にはアウグストス・オクタビアヌスが入れ込まれています。英語にも名残りがありますが、9月のSeptemberは明らかに「7」ですし、10月のOctoberも「8」です。タコをオクトパスと英語でいうのは足が8本だからです。さらにどうでもいいことながら、日本の数字の数え方は中国の影響で10進法ですが、英語は12進法で13からは10+3、というか、3+10のように表現しますが、ラテン語では15進法です。16から10+6で表現します。1年の月数を12としたのはひと月の日数が30日という区切りなんでしょうが、それをローマ時代に決めた後、その当時としては後進地域だった英語圏で数字の数え方が固まったような気がしないでもありません。たぶん、それまで英語圏では数字の数え方はとてもいい加減だったのではないかと勝手に想像しています。最後の最後に、私が知る限り、世界のかなり多くの言語圏で日本語でいう「新月」が誕生の意味、まさに「新しい」という意味で捉えられています。英語ではNew Moonといいますし、ラテン語でもご同様です。私はこの年になってもまだ知りませんが、満月を「新しい」と受け取る民族がどこかにいるような気もします。最後に、本書の書評に立ち戻って、なかなか私のようなシロートにも判りやすい良書だと思います。何かの折に触れた著名な物理学者、典型はニュートンとアインシュタインですが、も頻出して親しみを覚えるのは私だけではないような気がします。

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次に、ジェイムズ・スタヴリディス『海の地政学』(早川書房) です。著者は米国海軍の提督であり、NATO最高司令官も務めた海軍軍人出身です。もう一線を引退していますが、さすがに国際機関でも活躍しただけあって該博な地政学的センスは引けを取りません。どこまでホントか私は知りませんが、ヒラリー・クリントン上院議員が大統領候補となる際の副大統領候補最終6人にまで残り、また、トランプ新米国政権からは、国務長官ないしは国家情報長官のポストをと打診されたが断った、とのウワサもあったりするようです。ということで、本書は、まず、太平洋と大西洋から始まって、いくつかの地政学的に重要な海洋について歴史をたどっています。すなわち、地中海の覇権をめぐる古典古代におけるトルコとギリシア、あるいは、ギリシア諸国間、また、ローマとカルタゴなどの海戦、コロンブスやマゼランらに代表される大航海による新大陸などの発見、前世紀における太平洋を舞台にした日米の艦隊戦、台頭する中国や核・ミサイル開発を進める北朝鮮の動向などなど、古今東西の海事史に照らして地政学の観点から現下の国際情勢を見定め、安全保障にとどまらず、通商、資源・エネルギー、環境面にも目を配りつつ、海洋がいかに人類史を動かし、今後も重要であり続けるかを説き明かそうと試みています。地政学的な観点からは、いわゆるシーパワーとランドパワーがあり、日本はほぼほぼ後者になろうかと思うんですが、私なんぞも知らないことに、本書の著者によれば、日本は陸上自衛隊の支出を減らし、海上自衛隊の支出を増やしているそうです。また、専門外の私には及びもつかなかった視点として北極海の地政学的な重要性、特に、単純にこのまま地球温暖化が進むとすれば、2040-50年ころのは北極海がオープンな海になる可能性も否定できず、その地政学的な位置づけも論じています。そして、最後はシーパワーの重要性を強調するわけですが、「海を制するものは世界を制する」という安全保障の観点一点張りな論調ではなく、海を「世界公共財 (グローバル・コモンズ)」と捉えて、世界全体のネットワーク協力を勧めて締めくくっていたりします。基本的に、老人の回顧録的なエッセイなんですが、語っている内容は豊富です。ただ、最後に、基本的に米国の相対的な国力が低下し、平和維持活動などの「世界公共財 (グローバル・コモンズ)」を提供することが難しくなった現状を踏まえているんでしょうが、米国が関与したベトナム戦争は「世界公共財 (グローバル・コモンズ)」の提供だったのかどうかの視点はありません。当然ですが。

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次に、日本安全保障戦略研究所[編著]『中国の海洋侵出を抑え込む』(国書刊行会) です。著者は何人かいますが、防衛相や自衛隊関係の人ではないかと思います。タイトル通りに、いかにして中国の海洋進出を抑えるか、がテーマなんですが、決して日本単独ではなく、安保条約を結んでいる同盟国の米国はもちろん、自由と民主主義や法による統治などの価値観を同じくするオーストラリアやインド、さらには、ASEAN諸国も含めて、東アジアないしアジア広域の問題として取り上げています。そして、結論を先取りすれば、要するに、米国や世界の国連軍などの介入を待てる短期間は持ちこたえられるように軍備を拡大するとともに、有利な地政学的状況を作り出しておく、ということで、当然といえば当然の肩すかし回答なんですが、それに至る事実関係がそれなりに参考になるような気もします。例えば、世界とアジア・太平洋・インド地域の軍事バランス、中国周辺主要国の対中関係の現状、米国の対中軍事戦略および 作戦構想、さらに、中国の東シナ海と南シナ海における軍事力と戦略などに関して、私のような専門外のエコノミストには初出の気がします。お恥ずかしい話ですが、米国のリバランスとピボットが同じ意味で、欧州からアジアに戦略的リソースをシフトすることだとは私は知りませんでした。ただ、単に中国のことを考えればいいというものでもなく、自由と民主主義のサイドにいないロシアと、何といっても北朝鮮がかく乱要因として存在しており、なかなか先を読み切れないのも困りものです。最後に、現象面としては、尖閣諸島の例なんかを目の当たりにして、中国の海洋進出はとても判りやすいんですが、さらに突っ込んだ分析として、予防のためもあって、どうして中国が海洋進出するのか、という謎にも取り組んで欲しい気がします。本書では、中華帝国の再興くらいの誠に心許ない観念論で乗り切ろうとしているんですが、唯物論的に何の必要があって中国が海洋進出を試みているのか、エネルギーをはじめとする資源なのか、あるいは、他に経済外要因も含めて何かあるのか、私は興味があります。それにしても、専門外の私にの能力・理解力不足から、とても難しげな本だった気がします。

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次に、長岡弘樹『血縁』(集英社) です。著者は警察を舞台にしたミステリが人気の売れっ子作家です。私はこの作者の代表作のひとつである『傍聞き』や『教場』などを読んだことがあります。ということで、この作品は血縁や家族に関する短編ミステリ7編、すなわち、「文字盤」、「苦いカクテル」、「32-2」、「オンブタイ」、表題作の「血縁」、「ラストストロー」、「黄色い風船」が収録された短編集です。3作目の「オンブタイ」は何かのアンソロジーに収録されているのを読んだ記憶がありますので、今回はパスしました。冒頭作のタイトルである「文字盤」とは、言語障害者が意思表示のために使うコミュニケーション支援道具だそうで、コンビニ強盗の解決に役立ったりもします。次の「苦いカクテル」と「32-2」は、どちらも法律問題を題材にしており、前者はかつて読んだことのある三沢陽一の『致死量未満の殺人』とおなじようなストーリーで、後者は相続に絡んで推定死亡時刻を定めた民法の条文です。「オンブタイ」を飛ばして、「血縁」はミステリというよりホラーに近く、交換殺人を取り上げています。でも、姉が妹を亡きものとしようとする動機が私にはイマイチ理解不能でした。最後の2作「ラストストロー」と「黄色い風船」はいずれも刑務官、ないし、刑務官退職者が主人公で、なかなか含蓄鋭いストーリーです。「32-2」、「オンブタイ」、「血縁」をはじめとして、どうもイヤ味な人物が続々と登場し、読後感はそれほどよくなかった気がしますし、いつものことながら、いわゆる本格ミステリではなく、状況証拠の積み上げで確率的に犯人を指し示すのがこの作者の作品の特徴のひとつですから、やや物足りない読後感も同時にあったりします。殺人事件については、現実社会で観察される殺人は、この作品にあるように、血縁、というか、家族内での事件がもっとも、かつ、飛び抜けて多いといいます。まあ、座間の事件のようなのはレアケースなわけですので、この作品はかなり現実に即した、とはいわないまでも、現実的なプロットなのかもしれませんが、家族で殺し合う作品がいくつか含まれている分、読後感は悪いのかもしれません。

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次に、相場英雄『トップリーグ』(角川春樹事務所) です。著者は売れっ子のエンタメ作家です。そして、この作品では、役所の名前以外はすべて仮名、というか、架空の名前なんですが、テレビのニュースや新聞の報道にそれなりに接していれば、読めば自然と理解できるようになっています。三田電気という仮名で東芝の経理操作事件を取り上げた『不発弾』と題された前作から続いて、総理大臣は芦田首相ということなので、まあ、何と申しましょうかで、同じシリーズといえなくもありませんが、この作品では、戦後最大の疑獄のひとつであるロッキード事件が題材に取られています。田中元総理が渦中の人となり、商社のルートや右翼のルートなどの3ルートがあり、米国発の汚職事件で我が国の内閣が吹っ飛んだ事件でした。そのロッキード事件を背景に、2人のジャーナリストを主人公に、そして、現在の安倍内閣の官房長官を政界の要の人物に据え、物語は進みます。軽く想像される通り、ロッキード事件で解明され切らなかった右翼のルートが現在の政府首脳まで連綿と連なっている、という設定です。そして、タイトルのトップリーグとは、決して、ラグビーのリーグ戦ではなく、政治家に食い込んでいくジャーナリストの中でも、特に便宜を図ってもらえるインナーサークルの構成者と考えておけばよさそうですが、ラストでそのトップリーグにも、政界らしくというか何というか、表と裏があることが理解されます。命の危険まで感じながら取材と裏付けを続けるジャーナリストとアメとムチで迫る政界トップ、さらに、癒着といわれつつも情報を取るために政治家に密着するジャーナリスト、どこまでホントでどこからフィクションなのか、私ごときにはまったく判りません。まあ、キャリアの国家公務員でありながら、いわゆる高級官僚まで出世も出来ず、霞が関や永田町の上っ面だけしか私は知りませんのでムリもありません。そして、この作品の最大の特徴のひとつは、作者がラストをリドル・ストーリーに仕上げていることです。ストックトンの「女か虎か?」で有名な終わり方なんですが、取材と裏付けを進めた主人公のジャーナリストがアメとムチで迫る政府首脳に対して、報道するのか、あるいは、握り潰すのか、ラストが明らかにされていません。まあ、報道する道が選ばれれば、現実性に対する疑問が生じますし、逆に、握り潰す道が選ばれれば、ジャーナリストとしての矜持の問題が浮上します。いずれにせよ、どちらの結末にしようとも、一定割合の読者から疑問が呈されることになる可能性があり、その意味で無難な終わり方なのかもしれませんが、小説の作者として、何らかの結末を提示する勇気も欲しかった気もします。評価の分かれる終わり方と見なされるかもしれません。

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次に、古谷経衡『「意識高い系」の研究』(文春新書) です。著者は論評活動をしているライターのようで、多数の著書があるらしいですが、私は初めて読みました。なかなか、簡潔かつ的確に要点を把握しており、それを、実例に即して展開していることから、私のような意識の低い読者にもよく理解できた気がします。ただ、私は「系」という感じ、というか、言葉は、英語でいうシステムであって、太陽に対する太陽系のように理解しており、本書のように何かの接尾辞として「もどき」を表現するのは慣れていなかったので、最初は少し戸惑った気がします。本書では「意識高い系」の生態や考え方を批判的に分析していますが、まず、その特徴として、いわゆるリア充との対比を試みていて、リア充がスクール・カースト上で支配階級に属し、それゆえに、土地を離れる必要もなく、地元密着の土着系(この「系」はシステムであって、もどきではない)であるのに対して、意識高い系はスクール・カーストでは中途階級であったのが最大の特徴で、それゆえに、リセットのために上京したり、あるいは、もともと東京であっても大学入学を機にリセットする下剋上的な姿勢がある、というもので、さらに加えて、意識高い系は具体的なものを忌避して抽象的なイメージに逃げ込み、泥臭く努力する姿勢を嫌う、という点を上げています。そして、当然のことながら、事故に対する主観的な評価が、周囲からの客観的な評価に比較してべらぼうに高い、という点は忘れるわけにはいきません。もともとは、2008年のリーマン・ショック後の2009年の就職戦線に出て来た一部大学生のグループらしいんですが、私の周囲の中年に達したビジネスマンにも同じような傾向を持つ人物は決していないわけではないような気もします。私自身は世代的にSNSで自分のキャリアを盛るようなことを、SNSがなかったという意味でそもそも出来なかったわけですし、一応、小さな進学校の弱小とはいえ運動部の主将を務め、成績は冴えませんでしたが、スクール・カーストの中途階級ではなかったように思います。かといって、生まれ育った京都の地から上京して就職して、そろそろ定年を迎えようというわけですから、リア充でもありません。ただ、泥臭く努力することはもう出来ない年齢に達した気もします。たぶん、我が家の本家筋で、私と同じ世代の従弟が京大医学部を出て医者をやっているんですが、彼なんぞが本書でいう土着リア充の典型ではないかという気もします。それにしても、ハイカルの文学やエッセイだけでなく、サブカルのマンガや映画、もちろん、SNSをはじめとするネット情報など、とてもたんねんに渉猟して情報を集めた上での、なかなか鋭い指摘をいくつか含む分析を展開した本だった気がします。私は新書は中途半端な気がして、あまり読まないんですが、こういった本はとても興味深く読めました。

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最後に、旦部幸博『珈琲の世界史』(講談社現代新書) です。著者はバイオ系の研究者であり、この私のブログの昨年2016年5月14日付けの読書感想文で取り上げたブルーバックスの『コーヒーの科学』の著者でもあります。ということで、タイトル通りに、コーヒーの歴史をひも解いています。何となくのイメージながら、緑茶や紅茶などのお茶、あるいは、お酒という名称で一括りにしたアルコール飲料などに比べて、コーヒーはかなり歴史が浅い印象があります。本書でも起源はともかく、歴史としてはせいぜい数百年、アフリカのエチオピアを起源に、欧州からインドネシアや米州大陸をはじめとして世界各地に広まっています。Out of Africa というタイトルの映画がありましたが、ホモ・サピエンスの我々現生人類と同じでアフリカから世界に広まった飲み物です。タイトルは世界史なんですが、高校の社会かよろしく、1章を割いて日本史も語られています。著者によれば、日本におけるコーヒーはガラパゴスのように独自の進化を遂げているようです。そして、前世紀終わりから21世紀にかけてはスターバックスなどのスペシャルティ・コーヒーの時代に入ります。私はコーヒーはかなり好きで、京都出身ですのでウィンナ・コーヒーで有名なイノダがコーヒーショップとして馴染みがあるんですが、いわゆるチェーンの喫茶店としては、ドメなチェーンとして古くはUCC上島珈琲、今ではコメダ珈琲や星乃珈琲など、我が家の周囲にもいくつか喫茶店があります。もちろん、海外資本としてはスターバックスが有名で、青山在住のころには徒歩圏内に3-4軒もあったりしました。こういった喫茶店、カフェに入ってひたすら読書したりしています。また、子供達がジャカルタ育ちなもので、温かい飲み物を飲むのは我が家では女房だけで、よく見かけるタワー型の魔法瓶すらなく、子供達や私は冷たい飲み物限定だったりするんですが、少なくとも私はオフィスではホットのコーヒーを飲みます。1日2~3杯は飲むような気がします。本書の著者も冒頭に書いていますが、歴史だけでなく、好きなコーヒーのうんちく話を少し知っていれば、プラセボ効果よろしくコーヒーがさらにおいしくなるような気がします。
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2017年11月11日 (土) 08:19:00

今日は結婚記念日!

今日は結婚記念日です。
上の倅が来月で21歳の誕生日を迎えるわけですから、結婚生活も20年を大きく過ぎ、最近ではもうすっかり夫婦の会話も短くなったり、あるいは、ほとんどなくなったりしました。今週半ばの会話では、夕食の後片付けをしている女房を私がマジマジと見て「太ったな」というと、女房の方は「前から太ってるのよ」と回答してきました。すぐに会話は途切れました。
恒例のくす玉を置いておきますので、めでたいとお考えの向きはクリックして割って下されば幸いです。

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2017年11月10日 (金) 21:44:00

来週公表予定の1次QE予想は7四半期連続のプラス成長か?

先週火曜日の鉱工業生産指数(IIP)や雇用統計などで、ほぼ必要な統計が出そろい、来週の11月15日に7~9月期GDP速報1次QEが内閣府より公表される予定となっています。すでに、シンクタンクなどによる1次QE予想が出そろっています。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、web 上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下の表の通りです。ヘッドラインの欄は私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しています。可能な範囲で、足元の7~9月期以降の景気動向を重視して拾おうとしています。明示的に取り上げているシンクタンクは、テーブルの上から4機関、すなわち、日本総研、大和総研、みずほ総研とニッセイ基礎研なんですが、続く2機関、第一生命経済研と伊藤忠経済研のリポートにも何らかの先行きに関する言及があり、ほとんど1次QE予想だけで終始していたのは三菱系2機関だけでした。いずれにせよ、より詳細な情報にご興味ある向きは一番左列の機関名にリンクを張ってありますから、リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、ダウンロード出来たりすると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちにAcrobat Reader がインストールしてあって、別タブが開いてリポートが読めるかもしれません。なお、どうでもいいことながら、前回までリポートがオープンにされていた三菱UFJモルガン・スタンレー証券景気循環研究所については、「レポートを閲覧いただくには、当社の口座およびオンライントレードの契約が必要」ということになったらしく、私には利用可能でなくなってしまいました。悪しからず。

機関名実質GDP成長率
(前期比年率)
ヘッドライン
日本総研+0.4%
(+1.6%)
10~12月期を展望すると、国内需要については、高水準の企業収益を背景に、設備投資が底堅く推移するとみられるほか、個人消費も、雇用所得環境の改善や株価の上昇に伴う資産効果などを下支えに、再び緩やかな増加基調に復帰する見込み。輸出も、世界的な設備投資意欲の改善などを背景に、増加基調が続く見通し。新型スマートフォン関連の電子部品の需要動向や、自動車メーカーの不正検査問題が、サプライヤーを含めた企業の生産活動に与える影響などが懸念されるものの、底堅い内外需を背景に、プラス成長となる見込み。
大和総研+0.2%
(+1.0%)
先行きの日本経済は、基調として足下の緩やかな拡大が継続するとみている。個人消費を中心とした内需は一進一退ながら堅調な推移が続くと同時に、世界経済の回復を背景とした外需の拡大が日本経済の成長を支えるだろう。ただし、FedやECBの出口戦略に伴う外需の下振れリスクには警戒が必要である。
みずほ総研+0.2%
(+0.9%)
10~12月期以降を展望すると、海外経済の回復を背景に輸出の増勢が続くとともに、内需も再び増加基調に復することで、日本経済は緩やかな回復基調を維持するとみている。
ニッセイ基礎研+0.4%
(+1.5%)
先行きについては、輸出が底堅さを維持する中、企業収益の改善を背景に設備投資の伸びが高まることが予想される。一方、名目賃金の伸び悩みや物価上昇に伴う実質所得の低迷から家計部門は厳しい状況が続きそうだ。2017年度中は企業部門(輸出+設備投資)が経済成長の中心となる可能性が高い。
第一生命経済研+0.4%
(+1.6%)
4~6月期の段階では、輸出の牽引力が落ちてきた一方で内需の回復力が増してきたとの声も聞かれたが、7~9月期と均してみれば、結局のところ輸出は海外経済の回復を背景に引き続き増加、個人消費は緩やかな持ち直しにとどまるといった形になる。企業部門主導での成長が続いているという評価になるだろう。先行きもこうした構図が続くとみられ、輸出と設備投資を中心にした企業部門主導の景気回復が続くとみられる。
伊藤忠経済研+0.5%
(+2.2%)
今後も輸出は拡大基調を維持し景気回復を後押しする一方、設備投資の拡大は循環的にピークアウトする可能性もあるため、日本経済が回復基調を維持するためには個人消費の復調が不可欠であり、その条件が賃金の十分な上昇である状況に変化はない。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング+0.4%
(+1.5%)
2017年7~9月期の実質GDP成長率は、前期比+0.4%(年率換算+1.5%)と7四半期連続でプラスとなったと見込まれる。景気が持ち直していることを確認する結果となろうが、内需の伸びは弱く、外需主導での成長となった模様である。
三菱総研+0.4%
(+1.6%)
2017年7-9月期の実質GDPは、季節調整済前期比+0.4%(年率+1.6%)と7四半期連続のプラス成長を予測する。前期の反動もあり内需は横ばいにとどまるものの、好調な輸出を背景に外需が増加したと予想する。


ということで、多くのシンクタンクでは7四半期連続のプラス成長と、順調な景気拡大を見込んでいるようです。ただし、成長の牽引役については、今年2017年4~6月期は外需寄与度がほぼほぼゼロの内需主導型の成長を達成した後に、7~9月期では、逆に、内需の寄与度がほぼほぼゼロで外需主導型の経済成長になっているのが特徴的であり、シンクタンクによっては温度差があるんですが、7~9月期の外需主導型成長について批判的なシンクタンクがある一方で、4~6月期と7~9月期をならしてみてOKとするシンクタンクがあるのも確かです。上のテーブルに取り上げたシンクタンクの中でいえば、前者の典型は三菱UFJリサーチ&コンサルティングであり、後者の典型は第一生命経済研です。どちらに重点を置くかについては、エコノミストの考え方次第なんですが、四半期ごとに経済成長の内容を吟味する考え方はそれなりに重要な気もしますが、少しやり過ぎのキライもあるのかもしれません。いずれにせよ、目先の先行きについても緩やかながら回復・拡大基調が継続するという見方が多いように私は受け止めています。ただし、家計の消費は停滞気味であり、企業部門主導の成長が見込まれています。
下のグラフは、いつもお世話になっているニッセイ基礎研のサイトから引用しています。

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2017年11月09日 (木) 19:36:00

大きく減少した機械受注と着実な上昇を続ける景気ウォッチャーと黒字が拡大する経常収支!

本日、内閣府から9月の機械受注が、また、同じく内閣府から10月の景気ウォッチャーが、さらに、財務省から9月の経常収支が、それぞれ公表されています。機械受注では変動の激しい船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注の季節調整済みの系列で見て前月比前月比▲8.1%減の8105億円を記録し、景気ウォッチャーでは季節調整済みの系列の現状判断DIが前月から+0.9ポイント上昇して52.2を、先行き判断DIは+3.9ポイントも大きく上昇して54.9を、それぞれ示し、また、経常収支は季節調整していない原系列の統計で+2兆2712億円の黒字を計上しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

9月の機械受注8.1%減、製造業が反動減、非製造業も低調
内閣府が9日発表した9月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標とされる「船舶・電力除く民需」の受注額(季節調整値)は、前月と比べ8.1%減の8105億円と3カ月ぶりに減少した。製造業が前月の大幅増の反動で減少したほか、非製造業も低調だった。ただ、内閣府は基調判断を「持ち直しの動きがみられる」に据え置いた。
製造業は5.1%減の3921億円だった。前月に堅調だった食品製造業を中心に減少が目立ち、全体の重荷になった。汎用・生産用機械は運搬用機械や工作機械が減少した。
非製造業は11.1%減の4329億円だった。4カ月ぶりに前月を下回った。金融業・保険業のネットワークやシステム関連機器の受注が低調で、国内の鉄道車両の受注も一服した。
10~12月期の見通しは前期比3.5%減となった。7~9月期にスマートフォン向けなどが堅調だった半導体製造装置を中心に、製造業で慎重な見方が出た。非製造業は9月に大きく落ち込んだものの、建設業などで持ち直しの期待があるという。10~12月期の業種別の見通しは、製造業が9.4%減、非製造業が0.9%増だった。
10月の街角景気、現状判断指数が2カ月連続改善 好業績支え
内閣府が9日発表した10月の景気ウオッチャー調査(街角景気)によると、街角の景気実感を示す現状判断指数(季節調整済み)は前月比0.9ポイント上昇の52.2と2カ月連続で改善し、2014年3月以来の高さとなった。国内企業の堅調な業績推移を受けて企業動向が大幅に上向き、雇用も一段と上昇した。先行きも楽観的な見方が目立ち、内閣府は基調判断を「着実に持ち直している」で据え置いた。
部門別にみると企業動向が4.1ポイント改善し56.4、雇用は3.3ポイント改善し60.3と、それぞれ上昇した。半面、家計動向は台風の影響などで0.5ポイント低下の49.6とやや弱含んだ。
街角では企業動向について「取引先から売り上げ減少等のマイナス要因を聞くことがない」(九州の金融業)など、業績改善を指摘する声が多かった。「北米向け多目的スポーツ車(SUV)の輸出が好調」(北関東の輸送用機械器具製造業)など、良好な外需も意識された。雇用は「求人数の増加が顕著で、正社員求人も増加している」(九州の職業安定所)との指摘があった。小幅に下げた家計動向では台風の影響で客足が鈍化したとの声があった。
2~3カ月後を占う先行き判断指数は3.9ポイント上昇の54.9。台風の悪影響の一巡や株高による富裕層の消費拡大が、百貨店など小売り関連の見通し改善につながった。家計関連が4.2ポイント上昇の54.4となるなど、企業動向、雇用を含む3指標がそろって上昇した。
9月の経常収支、2兆2712億円の黒字 9月として10年ぶり黒字幅
財務省が9日発表した9月の国際収支状況(速報)によると、海外との総合的な取引状況を示す経常収支は2兆2712億円の黒字だった。黒字は39カ月連続で、前年同月に比べて4069億円黒字額が拡大した。黒字額は9月としては2007年(2兆8814億円)以来10年ぶりの高水準だった。貿易黒字の拡大や第1次所得収支の大幅黒字が寄与した。
貿易収支は8522億円の黒字と前年同月に比べて黒字額が1850億円拡大した。原動機や半導体電子部品の好調で輸出が14.4%伸びた。原粗油や石炭などエネルギー関連の増加で輸入も12.7%伸びたが、輸出が上回った。
第1次所得収支は1兆7025億円の黒字と、黒字幅が1925億円拡大した。円安を背景に海外子会社から受け取る配当金が増えた。
サービス収支は758億円の赤字と、赤字幅が171億円縮小した。訪日外国人の増加を背景に旅行収支が1002億円の黒字と9月としての過去最高を記録。知的財産権使用料の受け取りが増加したことも寄与した。
同時に発表した17年度上半期(4~9月)の経常収支は11兆5339億円の黒字だった。前年同期に比べて黒字額が1兆2094億円拡大し、同期間としては07年度(12兆4816億円の黒字)以来の高水準だった。貿易収支は2兆6869億円の黒字、第1次所得収支は10兆3823億円の黒字だった。旅行収支は8429億円の黒字と半期ベースで過去最高となった。


いつもながら、よく取りまとめられた記事だという気がします。でもさすがに、統計に関する記事を3本も並べると、とても長くなってしまいました。次に、機械受注のグラフは以下の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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コア機械受注については、季節調整済みの系列の前月比で見て、7月+8.0%増、8月+3.4%増を受けての反動減もあって9月統計では▲8.1%減と落ち込みましたが、季節調整済みの四半期系列でならして見ると、前期比で今年に入ってからは1~3月期▲1.4%減、4~6月期▲4.7%減の後、7~9月期は+4.7%増を記録したものの、10~12月期の見通しは▲3.5%減と見込まれており、10~12月期は特に製造業で大きく落ち込む見通しとなっています。9月統計の実績と10~12月期の見通しを受けて、引用した記事にもある通り、統計作成官庁である内閣府は基調判断を「持ち直しの動き」で据え置いています。先月に「足踏み」から「持ち直しの動き」へと明確に1ノッチ引き上げたところなので、なかなか難しいところですが、少なくとも統計を素直に見る限り、また、上のグラフを単純に見れば、それほど上向く気配もなく、ならせば2015年くらいから横ばいなんではないか、と私は受け止めています。ただし、足元や目先ではなく来年度以降について考えると、全体として業種横断的に、労働需給のひっ迫を背景とした合理化・省力化投資が見込まれる一方で、業種別には、製造業では更新投資とともに、維持・補修に関する投資が期待されるものの、能力増強に対する投資意欲は高くないように見受けられ、本格的な設備投資の増加には、輸出も含めて、さらなる需要の盛り上がりが必要であり、他方、非製造業ではインバウンド消費への対応や2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けたインフラ整備向けの投資が増加すると見込まれます。ですから、決して先行きについて悲観はしているわけではないんですが、足元から目先の年内くらいは一進一退の動きが続くんではないかと私は見込んでいます。ただ、グラフは示しませんが、四半期データが利用可能となり、達成率も明らかにされましたが、7~9月期のコア機械受注の達成率は約100%であり、エコノミストの経験則である90%ラインを割るような局面ではありません。ご参考まで。

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続いて、景気ウォッチャーのグラフは下の通りです。現状判断DIと先行き判断DIをプロットしています。いずれも季節調整済みの系列です。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期です。供給サイドの典型的なマインド指標である景気ウォッチャーですが、かなり高い水準を続けており、この好調なマインドが景気の回復・拡大を支えている面もあります。ただ、私の直観的な観察結果として、2015年中くらいまでは景気ウォッチャーにおいて家計部門と企業部門の差は大きくなかったんですが、昨年2016年に入ってから家計部門と企業部門で差がつき始め、この2017年10月統計ではかなり差が拡大したんではないかと懸念しています。すなわち、6か月ごとくらいに現状判断DIを見ていくと、2年前の2015年10月時点では家計動向関連50.6に対して、企業動向関連49.4だったんですが、1年半前の2016年4月には家計38.7、企業43.2と逆転し、1年前の2016年10月には家計46.6と企業50.4にともに改善を示しつつ、差も縮小したんですが、直近の2017年10月統計では家計49.6と企業56.4と大きな差がついてしまいました。街角景気はかなり正確で、私の直観でも現在のいざなぎ超え確実の景気拡大は家計部門ではなく企業部門が牽引しています。企業行政はかなり好調で内部留保は積み上がっているんですが、賃金で家計に還元して消費の原資として購買力をつけたり、あるいは、設備投資により企業間や産業間で好調な企業業績がスピルオーバーしたりしてはいないように見受けられます。家計にとっては、景気ウォッチャーの第3のコンポーネントである雇用関連が、2017年10月には現状判断DIがとうとう60に乗せるほどの好調なのが救いなんですが、囚人のジレンマのように各企業がひたすら内部留保を溜め込むばかりで、賃金にも、設備投資にもスピルオーバーを試みない現状をどのように打破するかが、景気回復・拡大をさらに息の長いものとするために考えなければならないのかもしれません。

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最後に、経常収支のグラフは上の通りです。青い折れ線グラフが経常収支の推移を示し、その内訳が積上げ棒グラフとなっています。色分けは凡例の通りです。上のグラフは季節調整済みの系列をプロットしている一方で、引用した記事は季節調整していない原系列の統計に基づいているため、少し印象が異なるかもしれません。引用した記事にもある通り、貿易黒字と1次所得収支の黒字が大きくなっています。円安に伴って円建て額が膨らんだことに加え、引用した記事にもある通り、インバウンド消費により旅行収支につれてサービス収支が改善しています。震災や国際商品市況における石油価格の上昇などから、経常収支は赤字化したり、あるいは、黒字幅が大きく縮小していましたが、すっかり震災前の水準に戻ったように見受けられます。ただし、米国のトランプ大統領はすでに日本を離れましたが、かつての勢いある経済を擁していた日本でしたら対外摩擦になりかねないほどの黒字を積み上げている気がします。7~9月期のGDP統計は来週水曜日11月15日の公表ですが、おそらく、7~9月期における経常収支のGDP比は4%を超えているんではないかと思います。サブプライム・バブル期末期の2007年ころの+5%近い水準には達しませんが、1990年代半ばの当時の米国クリントン政権期に日米包括協議に引っ張り出された私としては、やや気にかかるところです。
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2017年11月08日 (水) 19:43:00

9月の景気動向指数は下降するも景気拡大期間はいざなぎ超えを確認!

本日、内閣府から8月の景気動向指数が公表されています。CI先行指数は前月比▲0.6ポイント上昇して106.6を、CI一致指数も▲1.9ポイント下降して115.8を、それぞれ記録しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

景気拡大、いざなぎ超え確認 9月動向指数「改善」
2012年12月に始まった今の景気拡大の長さが高度成長期の「いざなぎ景気」を超え、戦後2番目の長さになった。内閣府は8日発表した9月の景気動向指数(CI、2010年=100)の基調判断を最も強気の「改善を示している」に11カ月連続で据え置いた。公式には時間をおいて判断するが、暫定的に今の景気拡大は9月で58カ月間に達した。
CIは生産や雇用などの経済指標の動きを総合して算出し、景気の方向感を示す。景気回復の期間などは正式には専門家でつくる内閣府の研究会が決めるが、内閣府はCIをもとに毎月、景気の基調を機械的に判断している。
茂木敏充経済財政・再生相は9月25日の月例経済報告で既に現在の景気は「いざなぎ景気を超えた可能性がある」との認識を示していた。今回の景気動向指数の判断により、これが暫定的に確認された。
いざなぎ景気は1965年11月から70年7月まで57カ月間続いた。今の景気拡大が2019年1月まで続けば、02年2月から73カ月間続いた戦後最長の景気回復を抜くことになる。


いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、下のグラフは景気動向指数です。上のパネルはCI一致指数と先行指数を、下のパネルはDI一致指数をそれぞれプロットしています。影をつけた期間は景気後退期を示しています。

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ついつい、メディアの論調の尻馬に乗ったタイトルを採用してしまいましたが、実は、私は景気拡大期間がいざなぎ景気を超えたかどうかとか、ましてや戦後最長かどうか、にはそれほど興味はないものの、まあ、景気拡大期間が短いよりは長い方が好ましく、逆に、景気後退期間は短い方が好ましい点については、ほとんどすべてのエコノミストが一般論として同意するんではないかと思います。「ほとんどすべて」であって、「すべて」ではないのは、いまだに清算主義的な考えを持つ人もいなくはなく、景気後退期間が十分な期間あって、例えば、非効率な企業の市場からの退出などが、次の景気拡大期を健全なものにする、という考え方が一掃されたわけではないからです。私は企業部門もさることながら、雇用へのダメージの方をより重視するタイプのエコノミストですので、景気後退期間は短く浅い方が望ましいと考えています。ということで、本来の目的に立ち返って、9月の景気動向指数を概観しておくと、実は、9月統計はCI一致指数、CI先行指数とも下降を示しています。一致指数については、トレンド成分だけの寄与の項目を除いてプラス寄与は商業販売額(小売業)(前年同月比)だけとなっており、投資財出荷指数(除輸送機械)、鉱工業用生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、生産指数(鉱工業)、有効求人倍率(除学卒)などが、この順で軒並みマイナス寄与しています。先行指数については一致指数ほど極端ではありませんが、それでも、日経商品指数(42種総合)、消費者態度指数、新設住宅着工床面積、マネーストック(M2)(前年同月比)などがプラス寄与している一方で、中小企業売上げ見通しDI、最終需要財在庫率指数、鉱工業用生産財在庫率指数、新規求人数(除学卒)がマイナス寄与となっています。また、内閣府が公表している「『CIによる景気の基調判断』の基準」に従えば、景気拡大の基準は「原則として3か月以上連続して、3か月後方 移動平均が上昇」なんですが、実は、9月統計のCI一致指数の3か月後方移動平均の前月差は8月統計の+0.63から大きく低下して▲0.33を記録しています。ただ、「拡大」の次のステージである「足踏み」の定義が「3か月後方移動平均(前月差)の符号がマイナスに変化し、マイナス幅(1か月、2か月または3か月の累積)が1標準偏差分以上」ということですので、前半の符号のマイナス変化は当てはまるものの、後半のマイナス幅基準が1標準偏差に達しない、ということなんだろうと認識しています。
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2017年11月07日 (火) 23:12:00

毎月勤労統計に見る実質賃金は上昇に至らず4か月連続で前年比マイナス!

本日、厚生労働省から9月の毎月勤労統計が公表されています。景気動向に敏感な製造業の所定外労働時間指数は季節調整済みの系列で前月から+0.6%増を示し、また、現金給与指数は季節調整していない原系列の前年同月比で+0.9%増となった一方で、現金給与総額を消費者物価(CPI)でデフレートした実質賃金は前年同月比で▲0.1%のマイナスとなっています。さらに、今年2017年の夏季賞与についても統計が明らかにされており、5人以上事業所で+0.4%と低い伸びにとどまっています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

9月の実質賃金0.1%減、4カ月連続マイナス
厚生労働省が7日発表した9月の毎月勤労統計調査(速報値、従業員5人以上)によると、物価変動の影響を除いた実質賃金は前年同月比で0.1%減少した。4カ月連続でマイナスだった。賃金の増加が物価上昇になお追いつかない現状を映す。厚労省が同日公表した2017年夏のボーナスは36万6502円となり、前年比0.4%増加した。
9月の名目賃金にあたる従業員1人当たりの現金給与総額は26万7427円と、前年同月に比べ0.9%増えた。16年7月(1.2%増)以来、1年2カ月ぶりの増加幅となった。他方、9月の消費者物価指数が0.9%上昇となったため、結果として実質賃金を押し下げた。
名目賃金の内訳をみると、基本給にあたる所定内給与が前年同月比0.7%増の24万2143円だった。残業代を示す所定外給与は0.9%増。その他特別に支払われた給与は前年同月比で11.6%増加した。
夏のボーナスは人手不足が深刻な中小企業を中心に増えた。事業所の規模別にみると、従業員が5~29人の事業所では前年比2.0%増、30~99人の事業所では3.6%増となった。規模が500人以上の事業所は2.8%減った。業種別では医療・福祉(前年比2.8%増)や教育・学習支援業(1.5%増)などで増加が目立った。


やや賃金に関して集中的に報じている印象がありますが、まずまずよく取りまとめられている気がします。続いて、毎月勤労統計のグラフは以下の通りです。上から順に、1番上のパネルは製造業の所定外労働時間指数の季節調整済み系列を、次の2番目のパネルは調査産業計の賃金、すなわち、現金給与総額ときまって支給する給与のそれぞれの季節調整していない原系列の前年同月比を、3番目のパネルはこれらの季節調整済み指数をそのまま、そして、1番下のパネルはいわゆるフルタイムの一般労働者とパートタイム労働者の就業形態別の原系列の雇用の前年同月比の伸び率の推移を、それぞれプロットしています。いずれも、影をつけた期間は景気後退期です。

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ということで、上のグラフに沿って見ていくと、まず、景気と連動性の高い製造業の残業時間については、鉱工業生産指数(IIP)とほぼ連動して9月は増加に転じています。次に、報道でも注目を集めた賃金については、名目賃金は前年同月比で上昇しています。ただ、本格的なデフレ脱却はまだながら消費者物価(CPI)が上昇していることから、実質賃金はわずかながら前年から減少しており、引用した記事に盛る通り、4か月連続のマイナスです。ただ、上のグラフのうちの最後のパネルに見られる通り、パートタイム労働者の伸び率がかなり鈍化して、フルタイム雇用者の増加が始まっているように見えます。ですから、労働者がパートタイムからフルタイムにシフトすることにより、マイクロな労働者1人当たり賃金がそれほど上昇しなくても、マクロの所得については、それなりの上昇を示す可能性が大きいと私は受け止めています。もちろん、企業が収益力を高める一方で労働分配率は低下を続けていますから、上のグラフの3番目のパネルに見られる通り、季節調整済みの系列で賃金を見ても、なかなかリーマン・ショック前の水準に戻りそうにありません。先行きに関しては、人手不足の進行とともに非製造業などで賃金上昇につながる可能性も大きくなっており、消費を牽引する所得の増加に期待が持てると私は考えています。マインドは株価の上昇とともに、かなり上向いてきており、冬のボーナスをはじめとして、所得のサポートあれば消費はさらに伸びを高めるんではないかと予想しています。

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11月公表の毎月勤労統計では、恒例により夏季賞与の統計が明らかにされています。上から順に、ボーナスの増減、産業別の伸び率、産業別の支給額です。2017年夏の賞与は+0.4%増と、昨年2016年の+2.3%には遠く及びませんでした。2番目のパネルを見て判る通り、もっとも伸びが大きかったのが生活関連サービス等、逆に、もっとも下げ幅が大きかったのが飲食サービス等なんですが、ともに支給額では大きくありません。そろそろ、冬のボーナスの予想がいくつかのシンクタンクから明らかにされる季節になって来ました。例年のペースなら今週中には出そろうんではないかと思います。また、日を改めて取り上げたいと思います。
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2017年11月06日 (月) 21:29:00

インテージ調査による「スマートテレビのログデータから見た都道府県別視聴実態」の結果やいかに?

3連休も終わって、お天気がよくて外出も多かったんですが、やっぱり、テレビもよく見ました。渡しの場合は日本シリーズのテレビ観戦だったんですが、昨日は駅伝もやっていたようですし、スポーツの空きが花盛りなのかもしれません。ということで、大手調査会社のインテージから10月31日に、「スマートテレビのログデータから見た都道府県別視聴実態」の結果が明らかにされています。図表を引用しつつ、簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、上のグラフは、インテージのサイトから 都道府県別テレビの総接触率 の地図を引用しています。平たくいえば、色が濃いほどテレビをよく見ている、ということなんだろうと思います。トップスリーは、北海道が26%で6時間8分、宮城県が24%で5時間50分、秋田県が同じく24%ながら5時間49分、となっており、逆にテレビを見ている時間が短いのが、鳥取県が17%で4時間5分、福井県が19%で4時間35分、宮崎県が20%で4時間41分、となっています。最長の北海道と最短の鳥取県では2時間超の差があり、北海道の人は平均的に鳥取県の人の1.5倍ほどの時間テレビを見ているわけです。何を見ているかにもよるんでしょうが、大宅壮一がテレビを称して「一億総白痴化」と称していますから、何となくイメージは湧きます。

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次に、上のグラフは、インテージのサイトから 時間帯別テレビの総接触率 のグラフを引用しています。全国平均と北海道に次ぐ第22位の総接触率の秋田県をプロットしています。見れば判る通り、朝の7時台と夜の20時台にピークがあり、お昼の12時台にも小さなピークがあります。それぞれ、通勤・通学前の朝の支度時間帯と夜の夕食後の一家団欒のひととき、加えて昼休みなんだろうと理解しています。赤いラインの秋田県は3つのピークすべてで全国を上回っていて、ほかの時間帯でもおおむね全国よりも高い接触率なんですが、唯一、深夜だけは下回っています。青森県のデータによれば、青森県は早寝も早起きも全国一番だそうで、そのあたりが影響しているのかもしれません。

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最後に、上のグラフは、インテージのサイトから 2017年夏の甲子園決勝の接触率 のグラフを引用しています。全国平均と決勝進出校の地元である広島県と埼玉県の数字です。何となくのイメージながら、一般論として、プロ野球球団もある広島県の方が首都圏の埼玉県よりも野球に熱心な気もしますが、地元校の大量得点のあたりから埼玉県でも熱が入り始め、試合終了直前はかなりのテレビ接触率を上げています。これも判る気がします。
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